屋上防水とは、屋上の下地コンクリートなどの上に「防水層」を形成し、建物への浸水ダメージを防ぐための施工です。
マンションやビルなどに多い屋上(陸屋根)は、一般家庭の屋根と違って勾配がありません。勾配がなく平らなので雨水がたまりやすく、排水しにくいのです。
防水層を作ることによって、雨水がたまっても浸水せず、建物の耐久性を維持することができます。逆に言えば、防水層が劣化してしまうと建物に浸水するリスクが上がってしまうことに。
この記事では、屋上防水の種類など基礎知識を紹介しつつ、劣化のサインやメンテナンス時期の目安、そして施工にかかる費用の相場を解説します。
屋上防水とは?
屋上防水とは、おもにビルやマンションなどの平らな屋上(陸屋根)に施工される、防水工事のことです。
一般家庭の三角屋根などは勾配があるため、雨が屋根の傾きに沿って下に流れ落ちていきます。しかし平らな陸屋根は、雨水を流すことが出来ず、排水性が低いのです。
屋上の素地の上に「防水層」を作ることで、溜まった雨水の浸水を防ぐことができます。
しかし防水層も、経年劣化していくため、定期的な改修やメンテナンスが必要です。しっかり防水工事をしても7〜10年で劣化し防水の性能が落ちます。
屋上防水の種類
耐用年数 | 単価相場 | |
塗膜防水 | 10~12年 | 3,000~8,000円/㎡ |
シート防水 | 10~15年 | 4,000~8,000円/㎡ |
アスファルト防水 | 15~25年 | 5,500~8,000円/㎡ |
それぞれの屋上防水を簡単にまとめると上記のような耐用年数、単価相場です。
実際には施工方法や使用する材料によって料金に違いがあるため、表にまとめると差が分かりにくいかもしれませんね。
イメージとしては、安くてコストパフォーマンスが良いのが「塗膜防水」、丈夫で費用が若干高いのが「シート防水」、コストは高いけれど性能が高く長持ちするのが「アスファルト防水」という感じです。
ある程度の広さがある屋上なら、シート防水やアスファルト防水が主流。せまい屋上や、複雑な形状の場所であれば塗膜防水が採用されることが多いです。
ちなみにベランダの防水工事では、塗膜防水が最適だとされています。ベランダ防水について、詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
塗膜防水の施工方法と費用相場
塗膜防水は、屋上に塗料を塗りつめて防水層を形成する工法です。
使う塗料の種類によって、「ウレタン防水」と「FRP防水」との2種類に分かれます。
ウレタン防水
耐用年数 | 10〜12年 |
単価相場 | 3,000〜5,000円/㎡ |
施工日程 | 4〜5日 |
ウレタン防水は、ウレタン樹脂という塗料を流し込み、防水層を形成する施工方法です。日本で行われる防水工事のなかで、もっとも採用されていると言われています。
複雑な形状の屋上でも対応可能で、他の防水工事に比べて費用もおさえられます。
ウレタン防水が向いている場所
|
ウレタン防水が向いているのは、上記のような場所です。職人がコテなどを使って手作業で施工するため、あまり広い屋上には向いていません。また職人の技術力によって仕上がりに差が出やすいのも特徴です。
しかし改修時には防水層を上塗りできるため、メンテナンスコストが抑えられます。施工単価も安いので、新築で初期費用を抑えたい場合には最適です。
ウレタン防水の施工方法
ウレタン防水には2種類の施工方法があります。
直接下地に塗料を塗っていく「密着工法」、そして通気をよくするためのシートを敷いてから塗料を塗る「通気緩衝工法」です。
通気緩衝工法では塗膜の内部に湿気がたまるのを防ぐことができ、それによって劣化症状を未然に防ぐことができます。このメリットの大きさから、現在は主流の工法です。
詳しくは以下の記事でも紹介しているので、ウレタン防水を検討している方は参考にしてみてください。
FRP防水
耐用年数 | 10〜12年 |
単価相場 | 4,000〜8,000円/㎡ |
施工日程 | 1〜2日 |
FRP防水は、「繊維強化プラスチック」という素材を使用した塗膜防水。プラスチックの硬さを活かしつつ、割れやすいというデメリットをガラス繊維シートによってをカバーしています。
そのため丈夫さが売りで、摩耗や重量に強いのがメリット。薬物耐性にも優れ、プールや浴室にも使われる防水工事です。そのぶん、単価相場はウレタンよりも若干高くなります。
一般的には紫外線に弱いというデメリットが懸念され、屋上に採用されるイメージはあまりありません。ですが実際には、トップコート塗装などで表面を守ることができるため、屋上駐車場などに採用されることもあります。
また塗膜の乾燥・効果がはやいため、施工時間が短いのもポイント。
FRP防水が向いている場所
|
FRP防水をオススメできるのは、上記のような条件の場所です。
プラスチックの特性上、伸縮性は乏しいため、あまり形状変化が起きない狭めの場所に最適。そのためFRP防水が最も採用されるのは、一般家庭のベランダです。
また、木造建築だと時間が経つことで形状が変化していきますが、FRPはそれに追従できないためオススメできません。広い屋上も、地震などによってひび割れするリスクが高まります。
FRP防水の施工方法
FRP防水は、基本的に密着工法での施工になります。
下地補修や高圧洗浄などをしたのち、1回目の下塗り。その上にガラスマットを敷いて補強効果を高め、中塗り・上塗りをしていきます。
ちなみにガラスマットを1枚使う場合には「1プライ」、2枚なら「2プライ」と呼ばれます。主流は「2プライ」ですが、それぞれの工法に適したガラスマットを使用していれば、どちらの工法でも問題ありません。
シート防水の施工方法と費用相場
耐用年数 | 10〜15年 |
費用相場 | 5,000〜10,000円/㎡ |
施工日程 | 4〜5日 |
シート防水は塩化ビニルシート(塩ビ系)や、加硫ゴム系シートなどを屋上面に被せる工法です。
既製品のシートを上から被せるという方法なので、既存の防水層を撤去する必要がないのがメリットです。
またムラなく均一に施工できる一方で、凹凸が多い屋上(四角形ではない)には向いていないという側面も。
シート防水が向いている場所
|
ただしシート防水は、ウレタン防水に比べて施工できる業者が少ないという点に注意が必要です。
不慣れな業者だと、シートの継ぎ目から浸水しやすくなるなどの施工不良が多いので、シート防水の実績がある業者を選びましょう。
シート防水について、以下の記事で詳しく解説しています。
塩ビシートとゴムシート
シート防水に使用する素材は、大きく分けると「塩化ビニル(塩ビ)」と「硫化ゴム」の2種類です。それぞれ、特徴やメリット・デメリットがあります。
塩ビシートの特徴
塩化ビニルとは、プラスチックの一種です。一般家庭の排水管などにも使われていて、っ防水性の高い丈夫な素材。
これをシート状にして防水層を作るのが、塩ビシート防水です。
ゴムシートと比べると物理的なダメージに強く、耐用年数が13~15年と長いのが特徴。
ゴムシートの特徴
ゴムシート防水は、硫化ゴムという素材のシートを使う工法。
かつては日本のシート防水で主流とされていましたが、ゴムなので衝撃に弱く、鳥につつかれて破けるなどのデメリットから使用されなくなりました。
現在では施工できる業者も限られるため、新築物件に施工するのはあまりオススメできません。
シート防水の施工方法
シート防水には2種類の施工方法があります。1つは、接着剤などで防水シートを張る「密着工法」。
もう1つは「機械式固定工法」といい、専用の固定金属で防水シートを屋上に打ち付ける施工方法です。こちらは塩ビシートのみ施工可能。
【密着工法】
密着工法は、下地を綺麗に整えたあと、直接シートを密着させていきます。
施工が比較的カンタンというメリットはありますが、下地の影響を受けやすく、早期での劣化が出やすいのも特徴。
現在は主流の工法ではありません。
【機械式固定法】
機械式固定法は、下地の上から通気シートを敷いて、金具によってシートを固定します。
剥がれなどの不調を起こしにくく、通気性が高いので劣化も起こりにくいのがメリット。現在シート防水を行うときには、この工法が主流です。
ちなみに機械式固定工法は、ゴムシートには採用できません。
アスファルト防水の施工方法と費用相場
耐用年数 | 15年〜25年 |
費用相場 | 5,500~8,000円/㎡ |
施工日程 | 6〜7日 |
アスファルトとシートを組み合わせて防水層をつくるのが「アスファルト防水」です。
かつては溶かしたアスファルトを直接流し込みながらシートを張っていく「熱工法」が主流でしたが、特有のにおいが発生するため現在は減っています。
その後、主流となっているのが「トーチ工法」です。防水シートの裏側にあらかじめアスファルトをコーティングしており、炙りながらはることで下地と密着させていきます。
アスファルト防水が向いている場所
|
アスファルト防水は、広い屋上に向いています。基本的には熱を使ってアスファルトを融解させるため、少し大規模な工事になるのが特徴。施工期間も、5~6日ほどかかるため、工期を短くおさえるのには向いていません。
費用も3つのなかで一番高い工事ですが、耐久性が高く寿命も長いため、あまりこまめなメンテナンスをすることができないビルやマンションの屋上に施工するのがオススメ。
また、表面をコンクリートで押さえつける仕上げ方法も選べるので、屋上緑化をしたいときにも採用されます。
アスファルト防水の施工方法
アスファルト防水の仕組みは、塗膜防水とシート防水の「いいとこ取り」のようなイメージ。
溶かしたアスファルトによって隙間を埋めながら、防水用のアスファルトシートを数枚重ねて密着していきます。
「熱工法」は溶かしたアスファルトを流し込む工法、「トーチ工法」はシートに付着しているアスファルトを溶かす工法です。
これ以外には、「冷工法」という選択肢も。アスファルトを溶かさずに、粘着性のある成分を使ってシートを重ねていく工法です。冷工法であれば、少し広めのベランダなどにも施工することができます。
詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
屋上防水の工事の時期は?劣化症状をチェック
劣化への対処が遅いと大掛かりな修繕工事が必要になったり、場合によっては立て直す必要が出るかもしれません。
屋上防水の劣化サインは、築7〜10年の間に現れてくると言われています。
小さな劣化だとしても、のちに悪化して雨漏りなどの原因になるので、定期的にチェックしましょう。
屋上の床がひび割れている
屋上の防水層がひび割れている症状で、水が染み込む危険性があります。例え小さなヒビでも、浸水することで建物自体の寿命を縮めてしまいます。
防水シートが剥がれている場所がある
防水シートのつなぎ目がだんだん剥がれていく症状です。紫外線や雨水により劣化することで起こります。
シートが膨らみ歪んでいる場所がある
防水層の下に水がたまり、その水が蒸発しようとして膨らむ症状です。「昼間は膨張」「夜間に収縮」を繰り返して防水層が劣化します。
水たまりができている
屋上の床面が歪んでしまうことで、水はけが悪くなり、水たまりができる症状です。
水たまりができることでさらに屋上の歪みがひどくなったり、雨漏りにつながったりします。
雑草が生えている
ひび割れた屋上に雑草が生える症状で、かなり劣化が進んでいるサインです。
すぐに抜きたくなりますが、抜くことで防水層に傷をつけ水漏れの原因になる可能性があります。
また、すでに根が防水層を突き破って成長している可能性も。
メンテナンスで防水層を長持ちさせよう
防水層を寿命までしっかり維持するために、定期的なメンテナンスを行いましょう。
|
排水溝(ドレン)の掃除は、3か月に1回くらいのペースで行いましょう。飛来した葉っぱなどがつまり、水たまりを作ったり、防水層の耐久性を弱めてしまいがちです。
また防水シートの上に塗るトップコート(仕上げ塗装)を定期的に塗り替えるのも有効です。表面の塗膜が剥がれることで防水層が紫外線などにさらされてしまうので、5年に1度くらい塗り替えるとよいでしょう。
最後は定期点検です。一軒家の三角屋根などと違って、屋上(陸屋根)は足を運びやすい場所です。自分で目に付くところはしっかり確認し、また10年に1回くらいは業者に点検してもらうことをおすすめします。
関連記事:トップコート塗装とは? | ミツモア |
屋上の防水工事はDIYできる?
屋上の防水工事はそこまで頻繁に必要ありませんが、それなりに費用がかかります。
確かに個人で道具を用意したほうが費用面では安く抑えられますが、慣れない作業で大変ですなうえ時間もかかり、また仕上げが悪ければかえって寿命を縮めてしまうことに。
劣化の原因は見える部分だけとも限らないため、専門業者に発注するのがおすすめです。
ミツモアで防水工事の無料見積もりを依頼できます
今回は、屋上防水の種類や施工方法、耐用年数、費用相場などについて解説しました。
建物を守る屋根の役割は、一般住宅の屋根も、屋上(陸屋根)の場合も同じです。ひび割れや雨漏りなどを放置せず、適切なタイミングで点検・屋上防水工事を行いましょう!
ミツモアは簡単な質問に答えるだけで防水工事のプロに見積もりの依頼ができます。
最大5件の見積もりを受け取ることができ、詳しい見積もりの内容、相談はチャットで行うことができます。依頼する事業者が決まったら、決定ボタンを押すだけ!手数料は無料です。
屋上防水のメンテナンスや修理を検討している方は、まずはミツモアで見積もりを依頼してみませんか?