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ウレタン防水の基礎知識まとめ!メリット・デメリットから補修のタイミング、施工費用までまるわかり

最終更新日: 2022年12月27日

屋上やベランダなどの平面には、「防水工事」を行います。コンクリートなどの建築素材がむき出しの状態だと、雨などの浸水に弱いためです。

とくにベランダ防水では、「塗膜防水」が主流です。塗料を塗り重ねることで「層」を作り、防水性を高めるというもの。

近年は、「ベランダ防水ならFRP」というイメージもありますが、ウレタン防水との違いはどこにあるのでしょうか。

この記事ではウレタン防水の特徴やメリット・デメリット、工法などを紹介し、ウレタン防水を施工するかどうかのポイントを見ていきたいと思います。

ウレタン防水とは?

ウレタン防水 屋上防水

「ウレタン防水」とは、名前のとおり「ウレタン樹脂を塗り重ねて、防水性を高める工事」のことです。

屋上(陸屋根)や、バルコニー、ベランダなどに施工する防水工事のなかでも、安価でコストパフォーマンスに優れているのが特徴です。

ウレタン防水のように、塗料を塗り重ねて防水層を形成する工事を、「塗膜防水」といいます。塗料を塗るというシンプルな工法なので、凹凸が多いような複雑な場所にも施工可能です。

外壁塗装に使われる「ウレタン塗料」を想像すると、耐久性が弱く、長持ちしない印象もあるかもしれません。

しかし防水工事としては日本で最も採用されていて、これまでの改良によって高い防水性・順応性が備えられています。

ウレタン防水のメリット・デメリット概要

ウレタン防水

ウレタン防水のメリット・デメリットをまとめると、以下のようになります。

メリット デメリット
  • どんな場所にも施工可能
  • 寿命が来たら、重ね塗りするだけ
  • 費用が安く済む
  • 職人の腕によって出来が決まる
  • FRP防水よりも工期が長い

ウレタン防水は、塗膜によって防水層を形成できるので、塗料を塗れる場所ならどこでも防水工事できるのがメリットです。塗料なので継ぎ目もなく、シームレスな仕上がりに。

また普通の建材と同じく、防水層にも劣化や寿命がくるのですが、そのときには上からウレタン防水の塗料を重ねるだけで済みます。ほかの防水工事の場合、下地をいったん剥がしてからでなくては施工できません。

また、施工単価もイチバン安い価格帯なので、コストパフォーマンスに優れています。

一方で施工の難易度が高いというデメリットも。いくらウレタン防水が継ぎ目のない仕上がりになるとはいえ、完璧にキレイな見た目にするには、手作業で施工する職人の腕にかかっています。

また塗料が乾燥して硬化するまで時間がかかるので、通常の工期は4~5日ほど。ベランダに多いFRP防水が1~2日で終了するのと比べると、長く感じますね。

関連記事:ベランダ・バルコニー防水工事は種類によってどう違う? | ミツモア

ベランダにはFRP防水の方がいい?

FRP防水につかう塗料

ウレタン防水以外の「塗膜防水」に、「FRP防水」というものがあります。

こちらはプラスチックに使われる樹脂塗料を塗る工法。プラスチックだけだと強度がないので、ガラス繊維などを混ぜることで高い耐久性を得ています。

近年、一般家庭のベランダ防水ではこちらのFRP防水のほうが主流になりつつあります。塗膜の硬化が早いので、1~2日あれば施工できるという、気軽さが魅力的です。

ただしプラスチックという特性上、紫外線に弱いため屋上にはあまり使われません。

またベランダ防水としても、面積や形状によってはウレタン防水の方が適している可能性があるので、的確な判断が必要です。

関連記事:FRP防水はベランダに最適?メリット・デメリットを解説 | ミツモア

施工する前に、現在の防水の種類を確認

frp防水のベランダ

ベランダや屋上で防水工事を検討しているなら、いま現在の防水層がどの種類なのかを把握しましょう。とくにDIYを検討しているなら、必ずチェックする必要があります。

既存の防水層がウレタン防水なら、ウレタンを重ね塗りするだけで施工できるというメリットがあります。

しかし既存のものがFRP防水やシート防水なら、一度これらを剥がしてから下地の建材に直接施工しないと、防水機能が得られません。

下にある別の防水層が劣化している状態では、いくら上からウレタン防水を重ねたところで、劣化部分に水が侵入しやすくなっているからです。

【ウレタン防水とFRP防水の見分け方】

繊維強化プラスチック frp
FRP防水に使われる繊維の特徴

FRP防水とウレタン防水は、どちらも塗膜防水なので見分けがつきづらいですが、見分けるポイントが2つあります。

1つめは劣化部分を確認すること。FRP防水は、ガラスマットという繊維質のシートを挟んでいます。そのためすり減った劣化部分をみて、ザラザラとした繊維質が露出していればFRP防水だと分かります。

もう1つは、触ってみること。FRP防水は固く、押してみても弾力がありません。しかしウレタン防水なら、押してみたときに柔らかさ・弾力を感じるはずです。軽く爪でひっかくと跡になるのも、ウレタン防水の特徴です。

ウレタン防水の施工方法・費用相場

ウレタン防水には、大きく分けて2種類の施工方法があります。

下地に直接塗料を密着させる「密着工法」と、塗膜の下に通気緩衝シートを敷く「通気緩衝工法(絶縁工法)」です。

ちなみに密着工法と同じ工程でも、補強のためにメッシュシート(増強布)を敷く方法があり、これは「メッシュ工法」と呼ばれます。

それぞれの工法について、それぞれのメリット・デメリットや費用相場を紹介します。

密着工法、メッシュ工法

ウレタン防水

費用
  • 3,000~5,000円/㎡
  • 4,000~7,000円/㎡(メッシュ工法)
メリット
  • 下地の処理が必要ない
  • 費用が安い
デメリット
  • 下地の影響を受けやすい
  • 湿気・水分の影響を受けやすい
向いている場所
  • 狭いベランダ
  • 新築物件の屋上など

密着工法は、下地のうえから直接ウレタン塗料を塗り、塗膜防水をつくるという施工方法です。費用相場は3,000~5,000円/㎡ほど。メッシュシートをはさむ場合には、4,000~7,000円前後に。

通気緩衝工法と比べると、リーズナブルな価格で、工期も少し短くできるのがメリット。

ただしデメリットとして、下地の影響を受けやすい点があります。

すでに傷んでいる下地に施工すると、上塗りしたウレタン防水に隠れて、下で劣化が進行してしまいます。また下地がひび割れたりしたときには、防水層にも歪みが生まれ、ひび割れや膨れの原因に。

また通気緩衝工法とは違って、湿気や水分の逃げ道がありません。湿気がたまりやすい建物・地域の場合は気をつけましょう。塗膜が膨れるなどの劣化症状につながりやすくなります。

これらを踏まえると密着工法は、下地に劣化が少ない場所や、比較的新しい建物に防水対策を施したい、というケースに向いている工法です。

【密着工法の施工手順】

  1. 下地の高圧洗浄、補修
  2. プライマーで下塗り
  3. ウレタン樹脂の下塗り
  4. メッシュシートを敷く(メッシュ工法の場合)
  5. ウレタン樹脂の上塗り
  6. トップコート塗装

ウレタン防水の「密着工法」は、ザックリと上記のような手順です。

まずは下地を整えるために、高圧洗浄や清掃。ひび割れ箇所には、コーキング剤を詰めるなどして補修します。下地の影響を受けやすい密着工法にとって、大切な工程です。

次にプライマー塗布によって接着効果を高め、そのうえから1層目のウレタン樹脂を塗布。

メッシュ工法の場合は、下塗りのつぎにメッシュシートを貼り付けます。これによって、地震などの衝撃への耐性を高めるのです。

そして2層目のウレタン樹脂を塗り、ウレタンの防水層が完成。

最後に表面をトップコート塗装して、施工完了です。トップコート自体には防水機能はありませんが、表面をコーティングすることで防水層を守ってくれます。

関連記事:トップコート塗装とは? | ミツモア

通気緩衝工法

ウレタン防水 通気緩衝シート

費用
  • 5,000~8,000円/㎡
メリット
  • 通気性に優れている
  • 下地の影響を受けにくい
デメリット
  • 費用が高い
  • 防水専門業者しか施工できない
向いている場所
  • 広いルーフバルコニー
  • ~100㎡くらいの屋上
  • 築年数が古い建物

「通気緩衝工法」(または絶縁工法)は、下地の上に「通気緩衝シート」をはさんでからウレタン樹脂を塗っていく施工方法です。費用相場は5,000~8,000円/㎡で、密着工法よりは少し高め。

下地と防水層とが密着しないので、下地が劣化していても影響を受けにくいのがメリットです。

また脱気筒を設置して通気性を高めるので、防水層が劣化して水分をふくんだときの「膨れ」という症状を予防できます。

経年劣化が進んでいて、すでに防水機能がだいぶ落ちているとき、また雨漏りなどの症状がでているときに向いている工法です。

【通気緩衝工法の施工手順】

ベランダ防水、屋上防水の脱気筒
脱気筒
  1. 下地の高圧洗浄、補修
  2. プライマーで下塗り
  3. 通気緩衝シートを敷く
  4. 脱気筒を取り付ける
  5. ウレタン樹脂の下塗り
  6. ウレタン樹脂の上塗り
  7. トップコート塗装

通気緩衝工法の手順は、おおまかに上記のような流れで進みます。

まずは高圧洗浄や補修作業をして、下地を整え、接着剤のような働きをするプライマーを塗ります。ここまでは密着工法と同じです。

つぎに通気緩衝シートを敷き、空気や水蒸気の逃げ道となる「脱気筒」を取り付けます。ここが密着工法との最大の違いです。

あとはウレタン樹脂を複数回に分けて塗布。最後に、防水層の表面を守るためにトップコート塗装でコーティングすれば施工完了です。

ウレタン防水のDIYがオススメできない理由

塗装 塗料 道具

ウレタン防水をDIYで施工するのは、あまりオススメできません。

ウレタン樹脂の塗布は、手作業でおこないます。ウレタン防水は継ぎ目がなくシームレスな仕上がりが魅力ですが、キレイな見た目に仕上げることができるのは、技術あってのこと。

防水工事のプロでも均一な塗膜防水を形成するのは難しく、仕上がりに差が出やすいものです。ましてや素人が施工すると、初期の施工不良や、早期の劣化につながってしまいます。

また費用面でも、DIYのほうが劇的に安いとは言えません。たとえば平均的な8㎡のベランダを考えると、材料費だけで「30,000~40,000円」は必要です。

業者に依頼する場合には、条件や工法によって差がありますが、およそ「45,000~70,000円」ほど.

「自分で施工してやり直しになるくらいなら」と考えて、プロに依頼するのが賢明だと言えるでしょう。

ウレタン防水の劣化サインは?見つけたら補修しよう

ベランダ ひび割れ

ウレタン防水の屋上やベランダなどでは、以下のような劣化症状を見つけたら補修しましょう。

  • 表面のひび割れ
  • 色あせしている
  • 塗膜の浮き・膨れ
  • 水たまりが出来ている
  • コケや雑草などが生えている
  • 雨漏り
  • ドレン(排水溝)のつまり

表面がひび割れているときには、その隙間から雨水などが侵入してしまうため、雨漏りにつながってしまいます。

また、すでに水分を含んでしまっている場合には、塗膜の浮きや膨れが出来るので注意が必要です。

水たまりが出来ているときには、その部分に凹凸があるということです。その部分だけ防水性が下がってしまうため、補修しましょう。

またコケや雑草は、比較的軽度な場合もありますが、根を張ることで下地の奥深くまで影響を及ぼす可能性があります。

そして最終的に、これらの劣化が積み重なると「雨漏り」という結果を引き起こすことに。

関連記事:ベランダのひび割れ原因と補修方法を解説 | ミツモア

トップコート塗装で定期メンテナンス

ベランダ 防水層

ウレタン防水の寿命(耐用年数)は10~12年ほどですが、これは適切な時期にメンテナンスをした場合の年数を指します。

FRP防水やシート防水にも言えることですが、寿命まで長持ちさせるには、トップコートを定期的に塗装しなおすことが必要です。

トップコートは、防水層の表面をコーティングすることで外部からの影響を防ぎ、防水機能を保持してくれるものです。

小さなひび割れをあなどらず、その都度に補修するようにしましょう。ひとつの場所で劣化が始まると、そこから水分が侵入するなどして、どんどん拡大するためです。

自分で出来るメンテナンス方法は?

ベランダ掃除に必要な道具

ウレタン防水のベランダや屋上など、長持ちさせるために自分でできることはあるのでしょうか?普段から、以下の2点を心がけましょう。

  • 排水溝(ドレン)の掃除
  • 定期点検

排水溝は、飛んできた枯れ葉などが詰まってしまうことがあります。そうなると排水溝のまわりに水が溜まり、その部分の劣化が早まってしまいます。

排水溝は3か月に1回程度のペースで、定期清掃をしておきましょう。

またその際、塗膜表面のひび割れや浮き・膨れ、色あせなどがないかあわせてチェックしておくと安心です。

ウレタン防水と他の防水工事を比較

施工できる場所

屋上 シート防水
シート防水の屋上

ウレタン防水は、面積が比較的小さい場所の方がメリットが大きいです。具体的には、50~100㎡ほどが最適です。

というのも「シート防水」や「アスファルト防水」は大きなシートで防水層を作るため、駐車場やビルの屋上など、広い場所だと効率的に作業することができるのです。

一方で、ウレタン防水は手作業で塗装していく必要があるので、あまり効率的とは言えません。100~300㎡くらいの広い屋上ならシート防水をオススメします。

ただしシート防水だと、シート同士の継ぎ目が出来てしまいます。どうしてもシームレスな仕上がりを期待するなら、業者に相談してみましょう。

関連記事:シート防水の特徴は? | ミツモア

施工費用、耐久性

耐用年数 施工単価
ウレタン防水 10~12年 3,000~8,000円/㎡
FRP防水 10~12年 4,000~8,000円/㎡
シート防水(塩ビ) 10~15年 3,500~7,500円/㎡
シート防水(ゴム) 10~15年 2,500~7,000円/㎡

ウレタン防水は、シート防水やFRP防水と比べると、費用をおさえられるのがメリット。

シート防水と比べると塗膜防水の耐用年数は短いですが、寿命が来たときにも、ウレタン防水なら重ね塗りするだけ。シート防水のように廃材が出ないので、長期的にみてもメンテナンスコストが低くなります。

また住宅に使われる外壁・屋根の建材は、重ければ重いほど負荷がかかり、耐震性が落ちることに。塗膜防水であるウレタン防水やFRP防水はかなり軽量で、耐震性に優れていると言えます。

ただしマンションやビルなどの広い屋上なら、メンテナンスコストを考えればアスファルト防水のほうがいい可能性もあります。屋上防水にかんしては、以下の記事を参考にしてみてください。

関連記事:屋上防水の種類・施工方法ごとに、費用や耐用年数を解説 | ミツモア

施工内容、工期

ウレタン防水を施工する様子

ウレタン防水の表面を均一に、そしてなめらかに施工するには、熟練した技術と防水工事の知識が必要です。そのため、業者によって仕上がりに差が出やすいというデメリットがあります。

その一方でシート防水は、既製品のシートをつなげて施工するので、あまり技術力による差は生まれません。

また防水工事に使用するウレタン塗料は、FRP防水と比べると硬化するのが遅いという特徴があります。

FRP防水は1日前後あれば施工可能ですが、ウレタン防水は通常であれば4~5日かかります。しかもこの日程の中で雨が降ってしまえば、乾燥がさらに遅れてしまうことに。

ウレタン防水を検討するなら、業者の実績をしっかり確認し、天気にも気を配りましょう。

防水工事の業者を探すポイント

ベランダ防水工事の業者

業者により仕上がりが異なるウレタン防水は、経験豊富で実力のある業者探しが大切です。適切な業者を見つけるポイントを押さえて、スムーズな業者選びをしましょう。

相見積もりを取る

初めてウレタン防水を依頼するときには、適正金額が分からないこともあるでしょう。

そんなときは、まず「相見積もり」を取るのがオススメ。3社以上の業者から見積もりをもらって比較し、相場とズレがないか確認できます。

また見積書の丁寧さや、顧客対応なども見比べることができるので、後悔しないためにも相見積もりをとっておきましょう。

ホームページなどで実績を確認

プロに依頼するときには、ウレタン防水をおこなった実績が豊富な業者を選びましょう。

塗膜防水を均一な状態に塗り上げるのは、熟練の技と知識が必要です。

ホームページなどを確認し、実績があるプロかどうか、また写真などを載せながら丁寧に解説しているかどうか、といった点に注目。

定期検査やメンテナンスを依頼できると安心

「定期検査」や「メンテナンス」があることもポイントです。ウレタン防水は1度施工すれば終わりではありません。

定期的なメンテナンスをすることで、トラブルを予防しながら長く使い続けられます。

見積もりのときには、工事内容と合わせて、点検やメンテナンスについても確認しましょう。

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この記事では、ベランダや屋上などで施工されることが多い「ウレタン防水」について紹介してきました。仕上がりのキレイさや、コストパフォーマンスのよさが魅力的です。

しかし塗膜を形成するのはプロでも難しく、ウレタン防水に詳しい業者や、実績豊富な業者に依頼しなくてはいけません。

ミツモアを使えば、簡単な質問に答えるだけで防水業者に見積もりの依頼ができます。

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