会社で働いている人のひと時の楽しみ、それは有給休暇。
ライブや旅行、スポーツ観戦、なかには好きだったアイドルグループが解散するショックから取得する人もいます。取得する理由は千差万別!
賃金は支払われつつも、希望の日に休めること。このありがたさは、社会人になると身に染みます。
企業に勤めていればたいてい付与される有給休暇ですが、その有給休暇はパートやアルバイトにも適切に付与できていますか?
2019年4月からは働き方改革のひとつとして、「有給休暇を年5日消化させなければいけない」という指定義務化がありました。今までの「有給休暇の取得者が0だけど、誰からも文句がこないかやいいや」という考えでは甘いです。
この記事では、雇用形態別の有給休暇の条件、労働日数が変更された場合、有給取得時の給与の計算方法を解説しています。
有給休暇が付与される条件とは?
正社員という働き方もあれば、パートやアルバイトで収入と労働時間を調整して働く方法もあります。
雇用形態により環境や条件は違いますね。これまで、パートやアルバイトには有給休暇は不要(与えていない)という会社は多かったです。
しかし、雇用形態には関係なく、対象の労働者に有給休暇を与えることが義務付けられています。そして、この度の法改正でアルバイトやパートであっても、年10日以上有給休暇が付与される労働者には、年5日の有給休暇を取得させることが義務となりました。
今まで与えてこなかった、取得できるような空気じゃなかった会社では罰せられる可能性もありますよ!
年次有給休暇とは
「有給」休暇と呼ばれるゆえんは、欠勤扱いにはならず給与が支払われる休暇のため。心身ともに休ませて、生活にゆとりを与えることが目的です。年次とは1年のこと。
有給休暇は、雇用形態や勤務時間によって与えられる日数が決められています。
有給休暇が付与される2つの条件
有給休暇の発生条件は、
- 入社をして6か月経った時点を初回として、それ以降、1年経過するごとに付与される
- 所定労働日のうち80%以上の出勤率
以上の2つです。ほとんどの労働者が条件を満たしていることがわかりますね。
たとえば、1か月に16日働くとしたら、6か月で96日です。そのうち77日以上働いていれば、条件を満たすことになります。
パートやアルバイトの有給休暇付与の条件と日数
パートやアルバイトの有給は、これまで認めてこなかった会社では、少し経費がかさむことにはなります。しかし会社にメリットもあるのです。
先日、zozotownの時給が1,300円になりアルバイトの応募が殺到しましたね。
人手が足りない会社は人が来ないことを嘆くのではなく、従業員の待遇を改善することで問題が解決することがわかりました。有給休暇もその一つでしょう。
フルタイムの場合
フルタイムとは、会社が定めている営業時間中、全時間帯に働いていることです。
営業時間が9:00~17:00ならば、その時間いっぱい勤務していることになります。
このようなフルタイム勤務の方は、有給休暇の付与日数は正社員と同じです。アルバイト、パートなど雇用形態に関係なく正社員と変わりのない有給休暇を取得可能です。
継続勤続年数の行で0.5とありますが、これは働き始めて6か月のことを意味します。1.5は1年6か月、2.5は2年6か月、3.5は3年6か月……と見ていきます。
フルタイム以外の場合
週の所定労働日数が4日以下、かつ週の所定労働時間が30時間未満の場合は、有給休暇は比例付与されます。
労働時間や労働日数を何をもって基準とするのかというと、入社の際に結ぶ雇用契約書をもって判断をします。雇用した際は週3日勤務ならば、継続勤務6か月目で有給は5日ですね。
もし、次の有給付与時点で契約内容に変更があれば、付与日数も変わります。週3日から週2日に変わっていたら有給は4日になります。
所定労働日数が不定の場合や変更された場合
事務仕事のパートならば、雇用契約書などで働く日数を把握できます。
しかし、飲食などのサービス業ではそうはいきません! ある週でシフトに入る日数が多くても、翌週ではそうではないこともあります。
所定労働日数が決まっていないパターンを、きちんと把握しておきましょう。
所定労働日数が不定の場合
パートやアルバイトの中には、1週目は4日勤務だったけど、2週目で2日になったなど労働日数の計算が難しい方がいます。
そのような場合は、間近6か月の勤務状況を見て判断をします。
たとえば、6か月前にパートとして入社した後、欠勤なしで働き、労働した日数は80日であったとします。この「6か月間で80日働いた」という実績が基準になります。
半年で80日、1年で160日なので、1年間の所定労働日数を160日間として計算をします。
そうすると、「②所定労働日数が121日間から168日」に該当しますね。そのため、入社日から6ヶ月経過後の有給休暇は5日の付与となります。
この計算をするためには、従業員一人一人の出勤日数を正確に把握することが必要です。
所定労働日数が変更になった場合
次の付与日を迎えて、改めて計算をして労働日数が変わっていた場合は、付与日数も合わせて変わります。
有給休暇取得時の給与の計算方法
有給休暇とは欠勤扱いにならず、給与が支払われる休暇ですね。そのためには有給休暇をいくらにするのかという問題がでてきます。
パートやアルバイトは時給制です。さて、何時間分の賃金を有給1日分と計算するのか? そもそも時給から計算をするのか? ここでは有給休暇取得時の賃金の計算方法を3通り説明します。
所定労働時間から算出される賃金
一番多いのが所定労働時間からの算出です。
所定労働時間とは、会社であらかじめ決めている「働く時間」です。雇用契約書や就業規則に記されています。
たとえば、始業が9:00で、終業が17:00の場合は、休憩時間が1時間発生して実質労働時間は7時間です。この7時間が所定労働時間となります。
時給が1,000円の会社ならば、
時給1,000円×所定労働時間7時間=7,000円
以上のように、従業員も納得できるうえ、カンタンに計算できるのが所定労働時間からの算出です。ただし、就業規則などで労働時間等を明確にしておく必要があります。
平均賃金
平均賃金とは、過去3か月の日数と支払われた給与から計算します。そして、最低保障額と比べて高い方を支給します。
そのため、平均賃金と最低補償額の2つを計算することになります。
平均賃金の計算式:
平均賃金=算定事由発生日以前3か月間の賃金総額÷算定事由発生日以前3か月間の暦日数
最低保障額の計算式:
最低保障額=(算定事由発生日以前3か月間の賃金総額÷算定事由発生日以前3か月間の実労働日数)×60%
暦日数で計算した金額と実労働日数の60%で計算した金額を比べて、高い方を有給1日分の金額として採用します。
例として、算定日数を4月1日~6月30日とします。暦日数は91日です。そのうちの労働日数は65日。その期間中に支払われた賃金総額は50万円とします。
平均賃金=賃金総額50万円÷暦日数91日=約5,495円
最低保障額=(賃金総額50万円÷実労働日数65日)×60%=約4,615円
この場合は、平均賃金の方が高いですね。
しかしながら、平均賃金からの計算は正直申し上げて面倒です。なぜならば、有休休暇を取得するたびに計算をしなくてはいけないからです。
社会保険の標準報酬日額から算出
社会保険料の基礎となる標準報酬月額を30で割ったものが、標準報酬日額。30というのは日割りしたイメージですね。
標準報酬日額=標準報酬月額÷30
すでに計算されている金額を、さらに30で割るだけで算出されるのでとてもカンタンです。しかし、健康保険に加入していない従業員には適用できないことがあります。
また、労使協定も必要です。
その他の注意点
有給休暇は労働者にとって大切な権利ですね。
しかし、注意点もあります。
それは、
- 有給休暇には2年の時効がある
- 退職時の有給休暇取得はトラブルのもと
以上の2つです。
有給休暇の時効は2年
働いている方の中には、与えられた有給休暇をすべて消化できない方もいることでしょう。じつは有給には時効があるのです……。
2019年4月に入社をし、10月に勤続6か月を迎え、有給が10日付与されました。
その後、5日分を消化し、1年半の付与日に11日の有給が新たに与えられました。最初の有給5日分と11日分があるわけです。
この場合は、残っている有給5日が2021年10月で消滅します!
有給休暇の買い取りは原則として認められていません。もめる原因にもなりかねませんので、2年の時効を迎える前に消化をするように働きかけましょう。
退職時の有給休暇の申請はどうする?
退職をする従業員にしてみれば、残っている有給休暇をすべて消化したいのが本音でしょう。有給休暇は労働者の権利ですので、原則として断ることはできません。しかし、それを認めると、引き継ぎ業務が行えない可能性もあります。
そのため、引き継ぎ業務を終えてから、有給休暇を取得するように会社から働きかける必要があります。また、就業規則の中に引継ぎ業務を終えてから有給を取得する事項を設けることもできます。
そして、先述したように有給休暇の買い取りは原則として認められていません。
理由は、有給休暇そのものが健康的に働くために設けられるためです。買い取りを認めてしまっては、有給休暇が正しく機能しなくなる可能性もあるのです。
まとめ
有給休暇の条件から付与日数、注意点まで見てきました。
フルタイム勤務の場合は、パートでもアルバイトでも正社員と扱いが変わりませんでした。フルタイム以外でも比例して与えられます。
今まで、正社員以外には有給休暇を与えてこなかった経営者にとっては恐ろしいことですね。社会保険労務士に相談をし、新しく整備することを強くおすすめします。
また、買い取りなどは原則として行えないため、適度に有給休暇を消化するように働きかけることも必要ですね。
有給休暇で社内を健全に運営しましょう!
この記事を監修した社労士
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