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就業規則の届け出には意見書が必要!書き方や記入例をわかりやすく解説

最終更新日: 2024年06月28日

時間外労働の上限規制や年休5日付与義務化などを受け、就業規則の変更を検討している会社も多いかと思います。

就業規則は、労働契約の内容を定める重要なものであり、その変更にあたっては、労働者側に意見を聴き、意見書を提出してもらうことが必要です。この記事では意見書の書き方や記入例をわかりやすく解説していきます。

就業規則の意見書

就業規則 意見書
就業規則の意見書(画像提供:Mangostar/Shutterstock.com)

労働基準法第90条に基づき、会社は就業規則の作成または変更にあたり、労働者側の意見を聴かなければならず、意見書という書面を書いてもらう必要があります。

違反した場合には、会社に対して罰則があり、とくに注意が必要です。ここでは、労働者への意見の聴き方や意見書の書き方を、例文を交えながら解説していきます。

意見書とは?

意見書は、就業規則の作成または変更の内容に対し、労働者側の意見を記載する書面です。労働基準法第901項によれば、使用者は、就業規則の作成または変更について、当該事業場に、過半数労働組合がある場合においてはその労働組合、過半数労働組合がない場合においては過半数代表者の意見を聴かなければならないとされ、同2項にて、使用者は、就業規則を届け出る際、同1項の意見書を記した書面を添付しなくてはならないとされています。

法の趣旨としては、就業規則の作成または変更について、一定範囲で労働者側に発言の機会を与え、その内容をチェックさせるというものです。会社はこの意見聴取義務に違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられます。なぜこのような決まりがあるかというと、就業規則が労働契約書の意味合いをもつ重要なものであることが挙げられます。労働契約法をみてみると、以下のように書かれています。

労働契約法第7条より、労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとするとされています。

また同第9条にて、使用者は、労働者と合意することなく就業規則を変更することにより労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできないことを原則としつつも、同第10条より、使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ就業規則の変更が労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は当該変更後の就業規則に定めるところによるものとするとされています。

つまり、就業規則は、実態として労働契約書の役割を担っており、かつ一定の要件を満たせば、使用者が就業規則の変更を通じて労働契約の内容(労働条件)を変更できることになっています。そのため、意見書の提出を会社に義務付けることで、就業規則の変更が一方的に行われることを防止し、一定の労使交渉を経る仕組みとなっているのです。

意見書の作成単位

原則として、就業規則は常時10人以上の労働者を使用する「事業所ごと」に作成します。それに対応し、意見書も「事業所ごと」に必要です。例えば、A事業所の就業規則については、A事業所の労働者の過半数で組織する労働組合のA支部がある場合はA支部に意見書を作成してもらいます。

過半数労働組合がない場合は、A事業所の過半数代表者に依頼します。ただ実際は、就業規則は事業所ごとではなく、本社で一括して作成することが多いと思われます。この場合に注意すべきことは、就業規則は一括であっても、意見書は事業所ごとに必要です。

一部労働者を対象とした意見書

職場には正社員、パート、契約社員等、多様な雇用形態の労働者がいるかと思います。その場合、常時使用する労働者が10人以上であるならば、就業規則の作成義務は当然これらすべての労働者について生じます。例えば、正社員に適用する就業規則はあるが、パートに適用する就業規則はない場合、就業規則作成義務違反となります。

雇用形態に応じて就業規則をわける場合は、漏れなく作成し、届け出るよう注意が必要です。なお、雇用形態に応じ、別個の就業規則を作成する場合、同一労働同一賃金の観点にも注意が必要です。正社員より待遇が劣るにも関わらず、パートや契約社員に対しても正社員と同様の強い業務命令権を規定した内容では、同一労働同一賃金(待遇)の考え方にそぐわず、最悪の場合、訴訟に発展してしまいかねません。

一部労働者を対象とした就業規則の作成または変更をする場合であっても、それに対する意見書は、事業所の過半数労働組合、ない場合は事業所の過半数代表者に記入してもらいます。パートや契約社員の就業規則であっても、正社員を含めた事業所の過半数労働組合、ない場合は過半数代表者に意見書を記入してもらいます。

仮に、労働組合がなく、事業所の過半数代表者がパートであった場合は、正社員の就業規則であってもその過半数代表者であるパート職員に意見書を記入してもらうことになります。

意見書の作成

意見書 作成
意見書の作成

ここでは、意見書の作成方法を具体的に解説していきます。必要記入事項や書式について、例文も交えながら紹介します。また、意見書フォーマットの入手方法も紹介していますので、参考にしてください。

意見書の必要記入事項

意見書へ記入する事項は、「就業規則に対する意見」、「労働組合の名称又は労働者の過半数を代表する者の職名、氏名」、「労働者の過半数を代表する者の選出方法」です。異議がない場合は、「異議がありません」と記入してもらいます。代表者の選出方法は「投票による選挙」などと記入します。

意見書の書式

意見書の書式については、法的に定まったものはありませんが、参考となるフォーマットが以下のサイトから入手できます。

労働基準法関係 様式集|東京労働局

Wordで入手できますので、こちらを使って作成すると便利です。なお、就業規則はHTML形式で作成したうえで、CDなどの電子媒体で届け出ることが可能ですが、意見書は書面で提出する必要がありますのでご注意ください。

参考:(H25.4.4 基発0404第1号)|厚生労働省

意見書の記入例

意見の記入例をいくつかご紹介します。

 異議がない場合:

    就業規則について特に異議はありません。 

 異議がある場合:

    就業規則について、次のとおり要望します。これ以外の事項については異議ありません。

    1 第〇条: 定年を65歳として頂きたい

    2 第〇条: 所定労働時間を7時間30分として頂きたい

    3 第〇条第3項: 特別休暇については、5日として頂きたい。

意見書の記入者

実際に意見書を記入してもらう人について、要件などを具体的に解説していきます。過半数労働組合が有るか否か、意見書の記入を拒否されたか否かなどで対応が分かれてきますので、注意が必要です。

意見書は誰が書く?

労働基準法第901項によれば、使用者は、就業規則の作成または変更について、当該事業場に、過半数労働組合がある場合においてはその労働組合、過半数労働組合がない場合においては過半数代表者の意見を聴かなければならないとされ、同2項にて、使用者は、就業規則を届け出る際、同1項の意見書を記した書面を添付しなくてはならないとされています。

つまり、事業所の過半数労働者が加入する労働組合がある場合には、その労働組合の長に意見書を記入してもらいます。過半数労働組合がない場合は、事業所の過半数代表者に記入してもらいます。

なお、すでに述べた通り、一部の労働者に適用する就業規則に対する意見書であっても、過半数労働組合か、ない場合は事業所の過半数代表者に記入してもらう必要があります。

労働組合とは?

憲法は、労働者に対して団結、団体交渉および団体行動ができる権利を保障しています。具体的には、労働者は労働組合を組織することで、経済的に強い立場にある使用者と対等に交渉することが可能になってきます。また、そういった背景から、労働組合への使用者の利益代表者の加入は許されていません。

過半数代表者の選出方法

過半数代表者は、労基法41条第2項の管理監督者でないことが必要です。また、代表者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者である必要があります。投票、挙手以外では、行政通達(平11.3.31 基発169号)によれば、労働者の話合い、持回り決議等、労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きが該当するとされています。

なお、代表者を使用者側が指名するなど不適切な取扱いがみられた状況を踏まえ、労働基準法施行規則に、過半数代表者の要件として、「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」が明記されています。

その他、親睦会の代表者等一定の地位にあるものの自動就任も適切ではないとされています。また、使用者は、過半数代表者がその事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないこととされ、「必要な配慮」には、例えば、過半数代表者が労働者の意見集約等を行うに当たって必要となる事務機器(イントラネットや社内メールを含む。)や事務スペースの提供を行うことが含まれるものであるとされています。

参考:基発 1228 第 15 号|厚生労働省 

従業員に同意してもらえない場合の対応

従業員の同意を得るには
従業員の同意が得られなかったら?

意見書の趣旨は、就業規則の作成または変更に対し、一定範囲で労働者側に発言の機会を与え、その内容をチェックさせるというものです。そのため、内容によっては労働者側が納得せず、意見書記入を拒否する場合も起こりえます。ここでは、意見書を記入してもらえない場合の手続きについてわかりやすく解説していきます。

手続き上同意は必要ない

法的には、労働者の「意見を聴かなければならない」のであって、「同意をえる」や「協議をする」ことまでは要求されていません。もちろん意見を尊重するべきことは当然ですが、その意見に従わなくとも、届け出により就業規則の効力は発生します。

なお、労働組合から団体交渉を申し込まれた場合には、団体交渉義務が生じますので注意してください。

意見書すら出してもらえない場合は報告書を提出

意見書を記入してもらえない場合であっても、使用者が「意見を聴いたことが客観的に証明できる限り」行政官庁はこれを受理すべきとされています。実務的には、書面により一定の期限を設けて労働者側へ意見書の記入を求め、同期限を超えても回答を受領できなかった旨を時系列に書面に記し、意見書の代わりに提出するもしくは「意見書を提出しない」という過半数代表者の書面を添付する等になります。

従業員との話し合いが必須

労働基準法第90条では、就業規則の作成または変更に際し、労働者の「意見を聴くこと」を義務付けています。しかし、単に一方的に意見を聴くだけでは、円滑な労使関係を損ない、団体交渉への発展や、最悪の場合は労働紛争のきっかけとなってしまうかもしれません。就業規則は労働契約書としての側面もあることを踏まえ、十分に労使で話し合うことが重要です。

まとめ

いかがでしょうか。意見書の作成に際しては、これまで述べてきたように多くの注意点があります。少し面倒な印象を持たれたのではないでしょうか。そんな時は専門家である社労士に任せてしまうことも一案かと思います。

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この記事を監修した社労士

ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区中道

社会保険労務士資格を取得後、人材派遣会社の本社勤務を9年経験。 その後、「問題を解決するためのドラフトを提案する」という理念を基に独立開業し13年目を迎える。前職の経験を活かし、派遣元責任者講習の講師を担当。派遣元・派遣先の双方の立場など派遣業界の仕組みを理解しての講義には定評がある。同一労働同一賃金・ハラスメントのセミナーも年間数十回実施。また、海事代理士事務所を併設することにより陸上労働者のみならず海上労働者の働き方改革にも従事している。 ●重点取扱分野 労務相談/過労等の疾病・過労死の労災申請・障害年金申請代理 派遣元責任者講習講師/労働局・労働基準監督署等の監査立会業務 派遣業・職業紹介業の許可申請業務 ●働き方改革推進支援センターアドバイザー/教えて!goo・Yahoo!知恵袋 認定専門家/経済産業省後援ドリームゲートアドバイザー。 ●ドラフト労務管理事務所 代表社会保険労務士 鈴木圭史 〒537-0025 大阪市東成区中道 JR玉造駅から東へ徒歩3分

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