御社は就業規則を作成していますか?会社を守るのに就業規則は重要です。
ここでは就業規則を作ったほうがいい3つの理由について説明します。
就業規則の作成は必須?
就業規則は、会社と従業員が守らなければならないルールを、事業所ごとに定めたものです。このルールを守ることで、職場のトラブルを予防し、労使が協力して安心して働くことを目指します。
ここでは、就業規則の作成義務や効力について見ていきましょう。
就業規則作成が必須の事業所って?
就業規則作成が必須の事業所は、常時使用労働者数10人以上の事業所です。
常時使用労働者数10人未満の事業所は就業規則の作成は必須ではありませんが、次に説明する3つのメリットの他、労使トラブルになったときに就業規則が無いと事業主側が不利となることもあるので、ぜひ作成してください。
常時使用労働者数10人って?
常時使用する労働者数10人以上とは、雇用形態に関係なく雇用している労働者が常態として10人以上いることです。
常時使用労働者数にはパートやアルバイトなどの非正規の従業員も含まれます。
含まれない人は、臨時で雇い入れた従業員や役員になります。
例えば、正社員3名、パート4名、アルバイト3名の事業所は常時使用労働者数10名なので、就業規則の作成が必須です。
また別の例として、正社員7名、パート2名、期間の定めのある労働者を一時的に4名雇入れる事業所は常時使用労働者数9名なので、就業規則の作成は必須ではありません。
就業規則が効力を持つためには
就業規則は作成しただけでは、就業規則に定める規定の効力は発生しません。
効力は、作成した就業規則を従業員へ周知することにより発生します。
周知の方法は、事業所内にファイルで備え付ける、掲示板に掲示する、社内サーバーに保存するなどの方法がありますが、どの方法でも、従業員がいつでも見たいときに見れる状態にしなければなりません。
なお、常時使用労働者数10人以上の事業所は、作成した就業規則を事業所の管轄の労働基準監督署へ届出しなければなりません。
届出は、従業員の意見を聞いた意見書と就業規則届の添付が必要になります。提出する就業規則は2部用意し、労働基準監督署の受領印を押印してもらい保管しておきましょう。
就業規則の作成は、事業所毎に行う必要がありますので、本社以外に多数の支社がある会社は、その支社ごとに管轄の労働基準監督署へ届出をしなければなりません。
本社とまったく同じ内容の就業規則であれば一括届出することができます。
就業規則のメリット1:会社を守る事ができる
就業規則を作成することにより、職場で問題が起こった場合、就業規則に規定する懲戒処分により、注意やけん責、減給といった処分が出来ます。
また、従業員に守ってもらいたいルールや服務規律を記載することにより、会社の方針が明確になり、トラブルを予防することができます。
問題社員を懲戒解雇できる
例えば、横領や重大で悪質な意思によって会社に損害を与えた従業員に、「もう解雇する、明日から来なくて良い!」と言っても、懲戒解雇の事由について就業規則で定めていないと、懲戒解雇をすることは原則として出来ません。
就業規則に、どのような事由が懲戒処分になるかを記載しなければなりません。
有給休暇の計画的付与ができる
有給休暇は、法律に定められた日数を従業員に付与しなければなりません。
2019年4月から、年10日以上付与された従業員は、有給休暇が付与されてから1年以内に5日以上の有給休暇を取得しなければなりません。取得していない場合は、事業主に30万円以下の罰金が科せられます(実際には罰金の前に、指導や注意がされます)。
有給休暇の取得方法は、
①従業員本人から申出
②労使協定による計画的付与
③従業員の意見を聴き、その意見を尊重して使用者が時季指定
の3つの方法があります。
そして②③の方法で有給休暇を取得させる場合は、就業規則に記載しなければなりません。
①の本人からの申出のみで有給休暇を取得すると、会社の繁忙期に有給休暇を取得してしまい、人手不足に陥り会社が困ってしまうこともあります。会社は時季変更権がありますが、有給休暇の取得により事業の継続が非常に厳しい場合等に限られ、時季変更権が行使できる条件は厳しいです。
そのため、②③を就業規則に記載し、計画的に有給休暇を取得してもらいましょう。
情報漏洩を未然に防げる
会社には、営業機密、商品情報、マイナンバーなどの社外秘となる機密情報が沢山あり、個人情報を取扱うすべての事業者には個人情報保護法が適用されます。
就業規則に情報漏洩防止に関する規定を定めることにより、どの情報が漏洩禁止となるのか、漏洩した場合どのような懲罰が課されるのかを記載して情報漏洩を防止します。
また、退職後も漏洩禁止であることを記載し、退職後も情報漏洩禁止であることを周知しましょう。
就業規則のメリット2:トラブルに対応できる
就業規則の服務規定や懲戒処分となる事由を定めることにより、労務トラブルを防止することができます。
セクハラ・パワハラ問題への対応
セクハラ対策はすべての事業者の義務です。その対応としておおまかに、次の①から⑤が雇用管理上講ずべき措置とされています。
①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
②相談窓口を設置することにより、相談及び苦情に応じ、適切に対応するための必要な対応を整備
③職場におけるセクハラにかかわる事後の迅速かつ適切な対応をすること
④相談・行為者等のプライバシーの保護
⑤セクハラに関し、不利益な取り扱いの禁止
また、「妊娠・出産・育児休業等」についてもハラスメントの防止措置が事業主に義務付けられています。
今後、パワハラに関しても上記①から⑤のような措置を講じることが義務となる予定です。
ハラスメント行為の予防は、就業規則に記載することにより、予防効力が高まります。
就業規則に定めるのは、
①事業主がセクハラ・パワハラ等のハラスメントを許さず、対策をすることを表明する
②セクハラ・パワハラはどのような行為が該当するか
③相談窓口はだれが担当か
④セクハラ・パワハラの行為者にはどのような処分が科されるのか
などを決めて就業規則に記載します。
身勝手な退職への対応
突然「明日やめます!」と従業員が言ってきたら困ります。
そこで就業規則に退職の申出はいつまでに行ってくださいと規定することができます。
従業員が辞める場合、引継ぎや採用をするので、最短でも30日以上前には退職する意思を申出してもらわないと困るのではないでしょうか。
そこで就業規則に、退職する場合は退職する日の30日以上前までに退職届を提出することと規定します。そうすれば30日間は引継ぎをしてもらえます(民法上は、14日以上前までに申出することで、退職することが可能です)。
就業規則には退職の申出の時期以外に、退職の申出後は完全に引継ぎをしなければならないこと、会社の備品は返却しなければならないこと、退職の申出後も事業主の指示により勤務しなければならないことも規定してください。
就業規則のメリット3:働きやすい職場づくりに役立つ
就業規則には、守るべきルールや労働条件が雇入れ時に渡される労働条件通知書より詳しく記載されています。
従業員は就業規則を見ることにより、守らなければならない事項を確認して守り、良い職場環境になるよう努力します。
従業員が安心して働ける環境になる
職場で守るべきルールが分かると、従業員は安心して働くことができます。
どのような行為が賞罰の対象となるのか分かれば、職場での行動も変わってきます。
就業規則には、賃金規定、育児介護休業規定、退職員規定、出張規定等も含まれます。それらが規定されていることにより、従業員がどのような権利があるかも知ることができます。
職場の秩序を保てる
就業規則には、はじめに会社の理念が記載されています。
そして就業規則の絶対的必要記載事項の他に、服務規律や尊守事項等があり、職場で皆が気持ち良く働けるように定めています。
定めないと、職場で守るべきルールが分からず、それぞれが勝手に行動し、無秩序になってしまいます。
就業規則で定めることで、会社のルールを周知し、尊守することで職場の秩序を保つことが出来ます。
最後に
就業規則は作成して安心するのではなく、法改正に対応することや、職場で発生した事例により、服務規定や賞罰規定を見直すことが必要です。
そのため、可能であれば1年に1回は見直しましょう。
就業規則を変更した場合は、常時使用労働者数10人以上の事業所は、労働基準監督署へ提出する必要がありますので、従業員の意見書と就業規則変更届を添付して管轄の労働基準監督署へ提出します。
就業規則のひな型は、厚生労働省のホームページに公開されており、法改正があったときは、都道府県の労働局のホームページで公開される場合もあります。
しかし、ひな型をそのまま使用すると、会社の実態に沿った就業規則でなく、会社を守ることができず、会社が不利な状況になりかねません。
会社の実態にあった就業規則を作成し、より良い職場環境を作るために、しっかりした就業規則を作成する必要がありますので、専門家である社会保険労務士に依頼することも検討するといいでしょう。
この記事を監修した社労士
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