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【就業規則】雛形を使って作成する際のリスクや注意点を徹底解説!

最終更新日: 2019年11月20日

就業規則とは雇用主と従業員の間の労働時間や賃金や服務規程などのルールを定めたもので、原則10人以上の従業員がいる事業所には作成義務があります(従業員が10人以下でも作成することが好ましいとされています)。そして、就業規則のポイントは、企業単位でなく事業所単位での作成が必要なところです。

今回は、就業規則の雛形を利用して就業規則を作成する時のリスクや注意点を徹底解説していきます。

就業規則の雛形

就業規則の雛形
就業規則の雛形

労働基準法の第89条により、従業員が10人未満の事業所でない限り、基本的には就業規則を作成し所轄の労働基準監督署長に届け出ることが義務付けられています。

また、この場合の労働者には正社員だけでなくパートタイム、アルバイトの従業員も含まれます。そのため、多くの事業所に就業規則の作成義務が生じてくるでしょう。就業規則を作成をしなければならなず、どのように作成したら良いかで悩んでいる方もいらっしゃると思います。

もちろん、社会保険労務士などの専門家に依頼して作成する方法もあります。また、インターネット上のテンプレートや雛形を利用して自分で作成する方法も考えられます。

本項では、自分で作成する場合についての注意点などを詳しく見ていきます。

就業規則は自分で作れるの?

就業規則を自分で作るには、テンプレートなどを利用して作成する方法があります。「就業規則 雛形」や「就業規則 テンプレート」などで検索すれば、就業規則を作成するためのツールを発見することができるのです。

また、各事業所に応じて就業規則が作成できるように、厚生労働省が「モデル就業規則」という雛形を提供しています。就業規則を自分で作成したい事業所は、規定や解説を参考に作れるためとても便利です。

厚生労働省が公開している以下のサイトでは、入力フォームに必要事項を記入することで、労働基準監督署に提出が可能な就業規則を作成することができます。

就業規則作成支援ツール|厚生労働省

しかし、モデル就業規則や他のテンプレートを利用して就業規則を作成する場合、いろいろな難点があります。難点については、この記事の以下の項で説明していきます。

就業規則のテンプレート

厚生労働省が就業規則の作成例を公開しています。Word版とPDF版があり、好みのフォーマットでダウンロードすることができます。

就業規則の作成例|厚生労働省 東京労働局

厚生労働省による業種別モデル就業規則は以下になります。

就業規則に記載する事項

就業規則に記載する事項
就業規則に記載する事項

就業規則はただ作成するだけでなく、書かなければならない事項が決まっています。就業規則に記載する事項は、大きく以下の3つの事項に分けられます。

  • 絶対的必要記載事項(労働時間に関する事項など絶対に記載しなければならない事項)
  • 相対的必要記載事項(決まった制度がある場合に記載しなければならに事項)
  • 任意的記載事項(事業所などが任意で記載する事項)

本項では、この3つの事項について詳しく解説していきます。

絶対的必要記載事項

就業規則に絶対に記入しなければならない事項は以下3項になります。

  • 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇 並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項

始業時間や終業時間が勤務の形態や業種などによって異なる場合には、原則すべてを記載する必要があります。また、労働時間においては、労働基準法において定められた時間の範囲内での記載が必要です。

2019年4月(中小企業は2020年4月)から時間外労働の上限規制が導入されます。以下に詳細が記載されているので、就業規則作成の際に参考にしてください。

参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省

休暇については、年次有給休暇や産前産後休業や特別休暇などについてわかるように記載する必要があります。

  • 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の 締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

就業規則には、臨時のものを除く賃金についての決定や計算の方法や支払い方法やいつ支給するかなどを記載しなければなりません。また、昇給の時期や条件についても記載する必要があります。

  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

退職、解雇、定年の年齢などの事項について、記載する必要があります。

相対的必要記載事項

就業規則に記載する相対的必要記載事項とは、定めがある場合に記載しなければならない以下8項になります。

  • 退職手当に関する事項
  • 臨時の賃金(賞与等)、最低賃金額に関する事項
  • 食費、作業用品などの労働者の負担に関する事項
  • 安全衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰、制裁に関する事項
  • その他全労働者に適用される事項

任意的必要記載事項

任意的必要記載事項は、事業所などの使用者が任意に記載できる事項です。目的や適用範囲や採用手続など、公序良俗に反しなければ自由に記載することができます。

雛形を使った就業規則のリスク

雛形を使った就業規則のリスク
雛形を使った就業規則のリスク

インターネット上で探した雛形を利用することで、自分で就業規則を作成することもできます。しかし、雛形を利用することにより就業規則を作成することには、いろいろなリスクが発生します。

ここでは、インターネット上で探した雛形を利用した就業規則のリスクについて詳しく解説していきます。

法改正に対応できていない可能性がある

サンプルとして無料で配布されている就業規則の雛形の中には、何年も放置されっぱなしのものもあります。労働基準法やその他の労働関係の法律は、絶えず法改正をしています。

そのため、法改正にまったく対応できていない就業規則の雛形を利用してしまう可能性があるのです。法改正に対応できていないと、法律の基準を満たしていない就業規則になってしまうかもしれません。

会社の実情に合っていない可能性がある

就業規則の雛形は基本的には従業員が沢山いる企業など向けに作られているものが多く、従業員が少ない場合などそれぞれの会社の実情によって変わってくるものには対応できてない場合が多いです。例えば、退職金制度が無い会社もありますし、休職制度についても一人が長期間休職すれば回らなくなる会社もあり、雛形通りにはいかない場合もあります。

このように、就業規則の雛形では会社のそれぞれの実情に当てはまらないことがあるため、そのまま利用するのが難しいことがあります。

個別の労働条件に対応できない

会社には、正社員や契約社員やアルバイトなどのいろいろな形態の従業員が働いているところが多いです。また、それぞれの労働形態によって、労働条件や働き方や責任の重さが異なっています。

しかし、就業規則の雛形では、それぞれの個別の労働形態に適用できたものとはいえないのです。

就業規則の雛形を使う際の注意点

就業規則の雛形を使う際の注意点の例
就業規則の雛形を使う際の注意点の例

前項で説明している通り就業規則の雛形は基本的に大企業向けに作られていることが多いため、それぞれの企業によって当てはまらないケースもあります。本項では厚生労働省による規則であるモデル就業規則を例に、それぞれの規定における注意点を解説していきます。

服務規律に関する規定

服務規律は職場の秩序の維持にとても大切なことですが、モデル就業規則に記載されている禁止事項はかなり少なくなっています。中小企業などではそれぞれの会社の業種や実情などによって服務規律も異なってくるため、雛形での禁止事項では対応できないことも多々あります。

それぞれの企業の実情に応じた服務規律を記載することが大切です。

休職に関する規定

モデル就業規則の休職に関する規定は一般的な休職について記載されていて、休職が長くなる場合についても当たり前に記載されています。しかし、中小企業などでは一人が長期間の休職をする場合には、仕事が回らなくなる可能性も高くなります。

そのため、休職理由や勤続年数や従業員の形態によって休職期間を定めるなど、もっときめ細かい規定を行う必要があるのです。

退職金に関する規定

モデル就業規則の退職金に関する規定では、別に定める規定がない場合、正社員だけでなくパートやアルバイトでも退職金が発生するようになっています。また、企業によって退職金を支給しないところもありますし、支給の仕方もそれぞれ異なります。

それぞれの企業の実情や、勤務形態などにあった退職金規定を作成する必要があるのです。

その他多くの注意点が存在

モデル就業規則には、その他労働時間や休日、賃金、昇給、退職などの規定について記載されています。自分で就業規則を作成する場合には、手間もかかるので雛形をそのまま利用しがちです。

しかし、それぞれの企業の実情によって、すべての規定が雛形とは異なるはずです。就業規則を作成するのに雛形を利用する場合には、ここに挙げた規定だけでなくすべての規定に対して大きな修正をする必要があるのです。

社労士コメント:雛形を用いた就業規則の作成における注意点

ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区中道

厚生労働省のモデル就業規則は、定期的に見直しがなされ、法改正にも対応しているようになっており、就業規則の作成にあたっては参考にすることを推奨しております。ただし、上記に説明があったように、個々の事業所の実態に即していない為、そのまま使うと不具合が出てしまうケースもあります。 就業規則で定めたことは、会社のルールであり、事業主及び労働者はそれを守る必要があります。特に懲戒や賃金に関することは、トラブルになりやすい部分です。労使トラブルで裁判になった場合、就業規則がどうなっているかで判決が大きく変わってきます。また、一度定めた規定を不利益に変更する場合、反発が起こることもございます。就業規則を作成される場合は、時間をかけ念入りに作成するようにしましょう。

まとめ

このように、テンプレートや雛形を利用して就業規則を自分で作成することは、とても難しいことです。雛形を参考にすることは良いことですが、そのまま使うのではなく、自社の実情に合うように記載・変更することが大切です。

就業規則を自分で作成することは、時間も手間もかかる作業になります。このように難しく手間もかかる作業は、就業規則を作成するプロである社会保険労務士に依頼してみてはいかがでしょうか。プロにまかせればレベルの高い就業規則が作成できますし、時間の短縮にもなりますのでおすすめです。

この記事を監修した社労士

ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区中道

社会保険労務士資格を取得後、人材派遣会社の本社勤務を9年経験。 その後、「問題を解決するためのドラフトを提案する」という理念を基に独立開業し13年目を迎える。前職の経験を活かし、派遣元責任者講習の講師を担当。派遣元・派遣先の双方の立場など派遣業界の仕組みを理解しての講義には定評がある。同一労働同一賃金・ハラスメントのセミナーも年間数十回実施。また、海事代理士事務所を併設することにより陸上労働者のみならず海上労働者の働き方改革にも従事している。 ●重点取扱分野 労務相談/過労等の疾病・過労死の労災申請・障害年金申請代理 派遣元責任者講習講師/労働局・労働基準監督署等の監査立会業務 派遣業・職業紹介業の許可申請業務 ●働き方改革推進支援センターアドバイザー/教えて!goo・Yahoo!知恵袋 認定専門家/経済産業省後援ドリームゲートアドバイザー。 ●ドラフト労務管理事務所 代表社会保険労務士 鈴木圭史 〒537-0025 大阪市東成区中道 JR玉造駅から東へ徒歩3分

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