電気が本来通るはずの電線やケーブルの外へ流れてしまうことを「漏電」といいます。漏れた電気にふれると感電したり、火災を引き起こしたりと、さまざまな危険があります。
この記事では、漏電が起こる原因を解説した上で、漏電を検知する方法や予防法を紹介します。
室内で漏電が起こる原因
電化製品と水分の接触
電化製品の本体や配線部分・コンセントに水分が接触すると漏電が起こります。生活するうえで触れる水には不純物が含まれいるため電気を通しやすく、水を通じて本来とは別のルートで電気が漏れ出てしまいます。
水回りで使う家電の場合、絶縁は防水性の高い素材で覆われているのが通常です。しかし劣化によって防水性能が落ちると、漏電が起こりやすくなるので注意が必要です。水を使う場所に古い電気機器がある場合は、水分が付いていないかよくチェックしておきましょう。
水周りで使用しない電気製品は、コードの絶縁に防水加工を施していない製品がほとんどです。水に接触しない場所に移動させると漏電のリスクを減らせます。
電化製品の経年劣化
電化製品の経年劣化でも漏電は起こります。電源プラグやコード、絶縁体にも損傷が出てきて電線が細くなり、電気が漏れやすくなるのです。
絶縁が劣化によって傷んでくると、電化製品自体は正常に動きながらも漏電が起こるケースが少なくありません。正常に動いており見た目では漏電を疑うのは難しいため、平均使用年数を超えた電化製品があるなら小まめな点検がおすすめです。
頻繁に漏電が起こるようであれば、電化製品の買い換えも検討した方がよいでしょう。
電気コードの破損
電化製品とコンセントをつなぐ電気コードが破損した場合も漏電しやすくなります。電気コード自体を折り曲げたり小さく束ねたりして使っている人は、特に注意が必要です。
電流が上手く流れなくなり1点に電流が集中した結果、電気コードが破れる・溶けるなどの破損が起こります。破損した部分は電流にとって格好の逃げ道です。
扱い方に問題がなくてもネズミなどの害獣にかじられて、コードが損傷するケースもあるでしょう。見えない位置にある・大きな家具に隠れているという電気コードは、電線が細くなっていないか、特に小まめなチェックが必要です。
ホコリによるトラッキング現象
「トラッキング現象」とはコンセントと電源プラグの間で起こるトラブルです。挿しっぱなしでホコリがたまった電源プラグの差し込み部分に、湿気が加わることで放電が起こります。
放電による熱で差し込んだ刃(差し込む金属部分)の間にできるのが、「トラック」と呼ばれる電流のルートです。本来電源プラグの中を通るはずの電流が、トラックから外に漏れ出てしまいます。
漏電だけでなく火災にもつながる危険な現象ですので、コンセントを挿しっぱなしにせずホコリは定期的に掃除しておきましょう。またコンセントをしっかり挿し込むようにしてゴミが溜まらないようにしましょう。
屋外で漏電が起こる原因
漏電というと室内設備の異変を疑いがちですが、屋外にも電気の通るケーブルや設備が多くあります。
エアコン室外機の浸水や不具合
エアコン室外機の不具合が原因で漏電が起こることがあります。
具体的には、電気系統が雨水にさらされたり、経年劣化によって内部の絶縁が損傷したところに結露がふれたりする可能性があります。
室外機は基本的に雨風に耐えうるように作られています。しかし古くなってきたり、雨風がひどかったりすると、室外機内部の電気制御部分に水が流れ込んで漏電の原因になることがあるのです。
また室外機内部に取り付けられているコンプレッサーも漏電を起こしやすいです。コンプレッサーに取り付けられているヒーターは稼働時の温度変化や振動が激しく、絶縁体を劣化させやすいからです。
エアコンの寿命は約10年なので、劣化による漏電事故を引き起こす前に買い替えた方が良いでしょう。
ケーブルに発生した塩害
塩害(えんがい)とは塩分の多い水や風によって、建物や設備が被害を受ける現象です。塩害に遭ったケーブルは被膜が腐食し、電気が漏れやすい状態になってしまいます。
屋外に設置するケーブルの多くで防水性が高められていますが、塩分には強くありません。海沿いの地域にある家と鉄筋コンクリートの住宅は、特に塩害に気を付けなければなりません。
沿岸部の住宅では潮風によって運ばれる塩分が多く、ケーブルが塩害を受けやすくなります。鉄筋コンクリートでは材質に含まれる塩化物イオンがケーブルを腐食させ、漏電を引き起こすのです。
電化製品を屋内に移動させたり、防錆性能の高い処理を行うなどの対策を取りましょう。
こんな症状が見られたら漏電かも!
漏電が起きたときはある程度決まった症状が現れます。どのような状態のときに漏電を疑えばよいのかを知っておくと、早めの対処が可能です。ここでは代表的なサインを三つ紹介します。
漏電ブレーカーが落ちる
家庭用の分電盤には家全体の電力供給をコントロールするメインブレーカーの横に、漏電を知らせる「漏電ブレーカー(漏電遮断機)」が設置されています。漏電ブレーカーが落ちた時は家のどこかで漏電が起きているので、「ブレーカーで漏電を調査する」を見て漏電箇所を特定してください。
ただし漏電ブレーカーが落ちているのは漏電が原因とは限りません。ブレーカー自体の故障が原因のこともあるので、「テストボタン」を用いてブレーカーが正常に動くか確認してみましょう。
雨が降るとよく停電する
雨が降っている日によく停電が起こるなら、漏電を疑いましょう。電化製品や配線に水がかかると電流が漏れ出やすくなります。この場合に落ちているのはアンペアブレーカーではなく、漏電ブレーカーです。
直接雨風に当たっていない室内で起こる場合もあります。屋根裏や物置など気づきにくい場所で雨漏りが発生し、外から入り込んだ水で漏電が起きているかもしれません。
室内の電線だけでなく庭や玄関先の外灯も視野に入れて、漏電が疑われる場所がないかチェックしましょう。
急に電気代が高くなった
漏電が起きると使用している電気機器や、コードの外にも電流が流れます。電化製品を使う頻度が増えていないのに電気代が急増したときは、漏電の可能性も考えましょう。
気づかないうちに電気の使用量が膨大になっていたという事態を防ぐためにも、分電盤が正しく機能しているか定期的に調べておくと安心です。
家の金属部分がピリピリする
家の金属部分に触れてピリピリとした微かな痛みを感じる場合は、漏電の疑いがあります。より強い電流が流れる前に業者に依頼して修理してもらいましょう。
漏電している場所を確認する方法
「漏電しているかも」と思った場合は、以下のような方法で漏電箇所を特定しましょう。漏電箇所を特定したら、該当箇所のコンセントを抜き、速やかに業者に修理を依頼してください。
ブレーカーで漏電を調査する
分電盤を見て漏電ブレーカーが「切」になっていたら、次の手順で漏電箇所を特定します。
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安全ブレーカーとは部屋やエリアごとの回路に流れる電流を制御するブレーカーです。特定の安全ブレーカーを上げたときに漏電ブレーカーが落ちたら、その回路で漏電が起こっている証拠です。
安全ブレーカーのつまみに書いてある場所を確認して、該当するエリアの電化製品は全て電源を落とします。漏電自体の修理は業者に依頼しましょう。
テスターを使用する
専用のテスターを用いて漏電を確かめる方法があります。
クランプメーター
クランプメーターは漏れ電流と負荷電流を計測することができるテスターで、微妙な電流も察知できるため精度が高い方法です。「架線電流計」とも呼ばれます。ブレーカーの各配線を挟むだけで漏電調査ができます。
ただし金属などから磁気の影響を受けやすく、計測結果が狂う場合もあるので注意が必要です。
メガー
メガーは配線が絶縁しているかどうかを基準に、漏電のチェックができるテスターです。「絶縁抵抗計」とも呼ばれ、電圧や回路、電流を測定することができます。
業者に調査を依頼する
漏電箇所の特定
漏電箇所の特定は電気工事のプロに依頼することもできます。自力で漏電箇所を特定する自信がない場合は速やかに業者に調査を依頼しましょう。詳しい費用は「漏電の修理にかかる費用は?」をご覧ください。
漏電箇所の特定は、電気保安協会にも依頼することができます。ただし、電力会社は漏電箇所の特定作業を受け付けていないので注意してください。
漏電箇所の修理
漏電箇所の修理は電気工事のプロに頼みましょう。配線に触る漏電修理は「電気工事士」の資格を持つ業者しか対応できないからです。依頼先を選ぶときは必ず資格を確認してくださいね。
漏電によって起こる「感電」「火災」のリスク
漏電を放置するのは危険です。ここでは漏電がもららす2つのリスクを紹介します。
電気が人体に流れる「感電」
漏電が起こったときにまず気を付けたいのが「感電」です。感電とは漏電している部分に直接触れてしまうことで、体内に電流が流れ込む現象を指します。
流れる電流が大きいほど人体へ強いダメージを与えることになり、最悪の場合は死に至る危険なトラブルです。電気が人体に流れた時は以下のような反応があります。
電流の大きさごとの人体への影響
電流 | 影響 |
1mA |
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5mA |
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10mA |
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20mA |
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50mA |
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100mA |
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漏電による感電を避けるには、アース線の設置が重要です。アース線は漏電が起こっても電流を地面に逃がしてくれるので、感電事故の予防になります。
周囲に引火して起こる「火災」
火災も漏電が起こったときに注意が必要な現象です。漏電している部分から周辺にあるものへ引火すると、火災が起きます。
漏電による火事の原因は主に金属です。長時間電気が流れ込んだ金属は徐々に熱せられます。高温になった金属が近くにある紙やホコリ・油といった可燃性の物質に引火し、火災を引き起こすのです。
熱くなった金属は見た目に分かりにくいことも多いため、気づかないうちに漏れ出した電気が火災につながるケースもあります。特に外壁がモルタル塗で、下地に金網(ラス網)を使用している建物は、漏電によって深刻な火災が発生する恐れがあるので注意してください。
漏電による被害を予防する方法
漏電は危険なので、普段から電子機器の使い方に注意しておきましょう。以下のような点を意識してください。
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電源コードを束ねて使用しない
コンセントの近くで電化製品を使用するとき、コードの余った部分を束ねたままで使う人がいるかもしれません。
コードを束ねた状態で電気を流すと、熱がこもって負荷がかかります。熱でコードの被膜(絶縁部分)が溶けたり、強い力が加わって断線したりするおそれがあります。
漏電や発火の原因になるので、コードを伸ばした状態で使用しましょう。
濡れた手でコンセントやプラグ、電化製品を触らない
水は電気を通しやすい性質を持っているので、電化製品や接続部分の周りでは水気を避けましょう。
特に電源プラグの金属部分やコンセントの穴は絶縁処理がされていない部分なので、濡れた手で触ると、本来のルートを逸れて人体のほうに電気が流れてしまう恐れがあります。
たとえ電化製品やケーブルに異常がなくても感電してしまうので、必ず手を拭いてから触るようにしましょう。
水回りの家電はアース線を接続する
キッチンや洗面所など、水気の多い場所で使う電化製品には緑色のアース線がついていることが多いです。きちんとアース線を接続していれば、万が一漏電してもアース線を通って大地に電流を逃がしてくれます。
アース線をつながなくても電化製品は作動しますが、事故を予防するためにも接続しておきましょう。
コンセント側にアース線をつなぐ部分がない場合の対処法は以下の記事をご覧ください。
関連記事:コンセントにアースがない場合は?正しい対策と注意点を解説|ミツモア |
漏電ブレーカー・漏電遮断器をつける
前述の通り、漏電ブレーカーは家屋内の電気回路で漏電を検知して自動的に電気供給を止めてくれる安全装置です。近年建てられたほとんどの住宅には設置されていますが、古い住宅だとついていない可能性もあります。
分電盤に上の図のようなブレーカーがついていなければ、電気工事業者に相談して取り付けを検討することをおすすめします。
個々の電化製品の漏電を検知できる「プラグ型漏電遮断器」もあります。こちらは工事なしですぐに取り付けられるので、アース線をつなげない水回りの電化製品などの接続部分におすすめです。
コンセントや電源プラグの周りを掃除する
こちらは正確には漏電ではなく「ショート」という現象を防ぐ方法です。
コンセント周りにホコリがたまっていると、ホコリを介して電流が本来のルートより近道をしてしまうのです。ショートが起きると火花が散って火災の原因になります。
配線の付近は普段あまり見えないことも多く、ホコリがたまりやすいので注意しましょう。
漏電の修理にかかる費用は?
漏電の修理にかかる費用は以下のようなものがあります。
作業内容 | 費用相場 | 備考 |
基本調査 | 6,000円前後 | – |
測定器による調査/設備や機器の分解 | 3,000円~ | 数値で異常箇所を特定 |
分電盤の調査 | 7,000円~ | 分電盤内を測定器調査し漏電している回路を特定 |
漏電している回路の特定・原因調査 | 10,000円~ | 漏電している回路を特定 |
漏電ブレーカー交換 | 15,000円~ | – |
絶縁処理 | 3,000円~ | 漏電箇所に通電しないようにする |
高所・床下・壁の中での作業 | 15,000円~ | 隠ぺい配線:4,000円~
露出配線:2,000円~ |
コンクリートの穴あけ | 11,000円~ | 穴をあける |
関連記事では漏電の修理費用についてより詳しく解説しています。
関連記事:漏電ブレーカーの修理・調査費用はいくら?相場と安く抑える方法・どこに依頼すべきか|ミツモア |
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