従業員数が増えてくると、自作の表計算ソフトによる給与計算は限界を迎えます。現場を兼任する経営者や1人の総務にとって、パートやアルバイトの複雑な時給計算や社会保険の適用拡大への手動対応は、過不足を発生させる一因です。
手作業の負担を解消する手段として、手軽にスマートデバイスで動かせる給与計算アプリが力を発揮します。税率の自動計算や、Web明細の発行機能を網羅でき、スマホを活用すれば、移動中のすき間時間に実務を完結できるでしょう。
個人事業主や自社に最適な給与計算アプリについて、選び方や注意点を含めて紹介します。
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給与計算アプリおすすめ比較表
従業員5名から30名規模の企業や店舗が導入すべき給与計算アプリと、個人向けの時給計算アプリを網羅した一覧表は、下記のとおりです。
| 製品名 | 初期費用 (税込) | 月額費用 (税込) | 無料期間 | 利用可能な人数 | データ保存期間 | 勤怠管理アプリとの連携 | 年末調整の可否 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| freee人事労務 | 0円 | 2,200円~(5名分含む) | 30日間 | 制限なし(6名以降は1名あたり月額440円追加) | 制限なし | ○ | ○ |
| スマレジ・タイムカード | 0円 | 2,420円~(※1) | 30日間 | 制限なし | 制限なし | ○ | ○ |
| シフトボード | 0円 | 0円 | なし | 組織利用は不可 | 制限なし | ○(エアーシフトとの連携) | × |
| シフト手帳 | 0円 | 0円(広告非表示などの有料要素あり) | なし | 組織利用は不可 | 制限なし | ×(手動入力のみ) | × |
| シフト給料計算カレンダー | 0円 | 0円(※2) | なし | 組織利用は不可 | 制限なし | ×(手動入力のみ) | × |
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※1:11名以上の場合、1人あたり385円の追加料金が発生
※2:広告非表示はアプリ内課金500円
給与計算アプリでできる機能
給与計算アプリの主要な機能は、計算や給与明細の発行などを含め、以下のとおりです。
法令や税制にあわせた社会保険料と税金の自動計算機能
システムに登録された従業員情報と、取り込んだ勤怠データをもとに社会保険料や所得税を自動で算出する仕組みです。給与計算の実務では、所得税率の変更や複雑な税計算に対応しなければならず、2026年も段階的に進む短時間労働者への社会保険適用拡大を含め、法改正を正確に把握する必要があります。
ベンダー側が自動で計算エンジンをアップデートするため、面倒な確認作業を行う手間はありません。労務知識が乏しい担当者でも、法令違反や未払いといった深刻なコンプライアンスリスクを確実に回避できるでしょう。
スマホで完結するWEB給与明細の発行と閲覧機能
確定した給与データをもとに、給与明細や賞与明細、源泉徴収票をオンライン上で瞬時に発行して従業員のスマホへ配信します。毎月の明細の印刷や封入、手渡しといったアナログな実務を行わずに済むでしょう。
従業員は専用のマイページやモバイルアプリから、自身のデバイスを使っていつでも過去の明細を確認でき、明細のメール送り忘れや紛失によるトラブルも発生しにくくなります。バックオフィスへの再発行依頼といった問い合わせ自体なくなるため、業務ストレスの大幅な軽減とペーパーレス化を同時に達成できるでしょう。
一括振込をスムーズにするファームバンキングデータの自動生成機能
給与計算が確定した後に、銀行での振り込み手続きに必要な全銀フォーマットのデータを自動生成します。各従業員の口座情報や支給額をインターネットバンキングへ一件ずつ手入力するアナログな振込作業は、多大な時間がかかる上に誤送金の危険性もありました。
この機能を使えば、出力されたファームバンキングデータを銀行のシステムにアップロードするだけで一括振込が完了します。
勤怠データやシフト管理システムとのダイレクトな連携機能
給与計算アプリは、外部の勤怠管理アプリやスマートレジとボタン一つでデータを同期する連携機能を完備しています。従来の運用では、勤務実績を一度CSVファイルとして書き出してからアップロードする手作業が必要なため、データの加工漏れや選択ミスによるエラーが発生する可能性があります。
自動連携機能を活用すれば、日々の打刻データやシフト情報がクリックだけで直接給与計算に反映することが可能です。管理者が店舗の現場や移動中の隙間時間であっても手軽に実務を進められるため、データ転記にともなう人為的ミスや、再計算の労力を防げるでしょう。
おすすめの給料計算アプリ5選
従業員5名から30名規模の企業や店舗、個人事業主向けの給与計算アプリは、以下のとおりです。
freee人事労務(フリー株式会社)
freee(フリー)人事労務は、フリー株式会社が提供している給与計算機能を搭載したクラウド型の人事労務管理アプリです。管理者のスマホアプリから勤怠申請や身上変更の確認、承認、代理申請が行えます。
従業員はアプリで打刻やWeb明細の閲覧、年末調整のスマホ回答を完結することが可能です。出入りの激しいパートの稼働状況にあわせて不要な課金を抑える仕組みもあります。労務知識が乏しく、バックオフィス全体の自動化を急ぐ小規模店舗のオーナーやスタートアップ企業への導入に適しています。
スマレジ・タイムカード(株式会社スマレジ)
スマレジ・タイムカードは勤怠管理、シフト作成、給与計算などの機能を搭載し、日々の業務負担を軽減する勤怠管理および給与計算アプリです。iPhoneやiPad用のタイムカードアプリを用意しており、画面タッチと同時に顔写真を撮影する本人確認や笑顔認証、位置情報の記録が行えます。
店舗の売上データと勤怠実績を連携させて人件費の自動計算や予実管理が行えるため、効果的な店舗経営に直結するメリットがあります。他事業所へのヘルプ出勤といった臨時勤怠の自動反映も可能です。
シフトボード(株式会社リクルート)
シフトボードは、リクルートが提供する、個人のシフト管理と給料計算をサポートする人気の無料スマホアプリです。カレンダーに予定を入れるだけで、時給や勤務時間、深夜手当、交通費まで1分単位で給料を自動計算します。
目標金額との差分もグラフで一目で確認でき、勤務先がシフト管理システムのエアーシフトを導入していれば、希望スケジュールをアプリから直接提出可能です。自身の収入計画を正確に立てられるため、アルバイトやパートを掛け持ちする個人事業主や、働く現場とのスケジュール管理を効率化したい人に適切です。
シフト手帳(GMOプロダクトプラットフォーム株式会社)
シフト手帳は、GMOタウンWiFi株式会社が提供する、アルバイトやパートの勤務管理と給料計算を一体化したスマホアプリです。勤務パターンを選択してワンタップで簡単にシフトを入力でき、残業代や深夜手当を反映した見込み金額がリアルタイムでわかります。
複数の掛け持ち先の管理にも対応しており、扶養内で今月どのくらい稼げるかを即座に確認することが可能です。ダブルワークで収入計算を自動化したい主婦や、年収の壁を意識して扶養範囲を超えないように調整しながら働く個人事業主の乗り換えにおすすめします。
シフト給料計算カレンダー(Prospect Technology)
シフト給料計算カレンダーは、Prospect Technologyが提供する、カレンダー形式でシフトとアルバイト代を手軽に管理できる無料アプリです。見やすいカレンダーへ一括入力する優れた操作性で、早退や残業、深夜手当など変則的な割増計算や交通費の算出に対応します。
日ごとの給料や月の合計勤務時間がひと目で確認でき、アラーム機能で出勤日のうっかり忘れを防ぐことが可能です。メモ機能も備え、遊びの予定も手帳のように一括表示できます。
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給与計算アプリの選び方
給与計算アプリは、自社の規模や現在の実務環境にあわせて以下の視点を持って選ぶことが大切です。
無料プランと有料プランでできる実務の範囲はどう違うか
アプリを選ぶ際は、無料版で対応できる実務の範囲と有料版への切り替えが必要な境界線を見極めましょう。従業員が5人以下の無料枠であっても、年末調整や他システムとの連携は有料プラン限定という制限を設けている製品が多いためです。
過去データの保存期間が30日間に制限されている無料プランでは、法令で義務づけられている5年間の法定帳簿保存義務を満たせません。自社が行いたい実務が無料の範囲で完結するのか、長期保存や年次業務のために有料契約を前提とするかを明確にする必要があります。ここを整理することが、適切な導入への近道です。
法改正や社会保険適用拡大への自動アップデートの有無
頻繁に行われる所得税の改正や社会保険の適用拡大へ、自動で追従するシステムを選びましょう。2026年現在も短時間労働者への社会保険適用拡大が段階的に進んでおり、小規模企業であっても適切な労働条件の判定を求められます。
自作の表計算ソフトで手動管理を行うと、料率の変更を見落とし、支給額に過不足が生じる可能性が高くなるでしょう。システム側で計算エンジンが自動で更新される仕組みであれば、面倒な確認作業を行う必要はなく、労務知識が乏しい担当者でも法令違反を確実に回避できます。
スマホでのWeb給与明細の発行と閲覧がしやすいか
従業員が利用する専用画面やモバイル用の画面設計が、直感的で使いやすい製品が便利です。給与明細の電子化はペーパーレス化に貢献する一方で、従業員側にとって操作が難しければ意味がありません。
ログイン方法がわからない、スマホから明細が綺麗に見えないといった不満が現場から出ると、問い合わせ対応が増えて業務負担が重くなります。年齢やITリテラシーを問わず、誰でも自身の端末から迷わず過去の明細や源泉徴収票を閲覧できる優れた画面を備えている製品が適切です。
既存の勤怠管理アプリと連携できるか
現在自社で利用している勤怠管理アプリと、直接データを同期できるか確かめましょう。ただし、導入すれば初期設定なしで動くわけではなく、双方のシステムで従業員番号や氏名データを完全に一致させ、時間外手当の計算ルールをあらかじめあわせる作業が前提です。
登録情報の紐づけがズレてると連携エラーを引き起こします。設定の手間を省きたい場合は、freee人事労務のように同一のデータベースで勤怠から給与までを一括管理するシリーズ製品で統一するやり方が確実でしょう。
給与計算アプリ利用時に気をつけるポイント
給与計算アプリは維持費を抑える手段として有効ですが、実務で運用する際は下記のポイントに注意が必要です。
法改正への対応遅れ、または手動による計算ミスが発生しやすい
給与計算アプリの一部は法改正への対応速度が遅く、利用者が自分で料率を書き換える必要があります。健康保険料率の改定や複雑な税計算が自動で反映されない環境は、自作の表計算ソフトによる運用と変わりません。
料率の見落としが起これば、支給額に過不足が生じる原因となり、故意ではない計算違いであっても、従業員との信頼関係悪化や追徴課税といった不利益に直結します。手作業を減らす目的でシステムを選んでも、設定漏れによる損害の危険が残るのです。
データ保存期間が短く法定帳簿の保存義務に引っかかる可能性がある
労働基準法により、企業は賃金台帳などの法定帳簿を原則5年間保存しなければなりません。無料の給与計算アプリのなかには、過去のデータ保持や閲覧期間が30日間や3ヶ月間など短い期間に限定されている製品が存在します。
保存期間が短い状態のままでは、数ヶ月前の給与内容を振り返る作業が難しくなります。税務調査や労務紛争が発生した際に、正当性を証明する書類を提示できないという致命的な事態を招きかねません。無料版は機能のテスト運用にとどめ、本番の業務では有料プランの契約を視野に入れる必要があります。
有人サポートがなく計算ミス発生時に給与振込が遅延する事態を招きやすい
給与計算アプリの多くは、電話やチャットによるオペレーター対応などの有人サポートが提供されません。利用者はオンラインのマニュアルやよくある質問のページを頼りに、自力で問題を解決する仕組みです。
給与支払いには厳格な期日があり、1日の遅れでも会社の信用を揺るがす重大な問題へと発展します。ログインできないトラブルやデータの出力ミスに直面した際、相談相手がいない環境は担当者へ強いプレッシャーを与えます。業務の継続性を重視するならば、サポート体制が保証された製品の選択が賢明です。
Excelから給与計算アプリへ移行するやり方
Excelによる手計算から給与計算アプリへ切り替えるやり方は、次のとおりです。
従業員情報を整理して共通形式のデータを作る
在のExcel台帳をあらかじめ更新し、氏名や住所、生年月日、扶養情報などを整理します。多くの給与計算アプリは、共通のデータ形式であるCSVファイルの取り込みに対応しているためです。
スマートデバイスでの運用を想定したアプリへスムーズに移行するため、指定されたテンプレートに沿って情報を入力します。1人ずつ手入力を行うと、タイピングミスによる計算違いの原因となるため、正確な運用基盤を作る最初の段階として丁寧に進めましょう。
アプリとExcelを同時に動かして計算結果を突合する
給与計算アプリの導入直後は、従来のExcel計算と新しいアプリを同時に動かす並行運用を行います。過去3ヶ月分の勤務実績データを用いてテスト計算を行い、金額が一致するか確認する作業です。
マスタの設定不備や雇用保険の料率設定の誤りを事前に検知し、従業員への支払いミスを未然に防ぎます。手動の計算式から自動計算へと切り替える移行期には、数値の不整合が起きやすくなるため、正しく動いているかを検証する重要な防波堤となります。
従業員のスマートフォンへ案内を送り同意を確認する
計算の正確性が確認できたら、従業員へWeb給与明細への切り替えを案内しましょう。給与計算アプリが提供する従業員向けのログイン画面や操作説明の案内文を配布する流れです。
法律上、給与明細のデジタル化には従業員の事前の同意が必須になるため、初回ログイン時に画面上で電子交付への同意をあわせ取る仕組みを構築します。
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給与計算ソフトは製品によって特徴や機能もさまざま。「どの製品を選べばいいかわからない・・・」といった方も多いのではないでしょうか。
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