「従業員数が少ないから、まずは無料の給与計算ソフトで十分」と考えていませんか?その判断には、将来的なコスト増大や業務停滞を招く大きな落とし穴があります。
多くの経営者やバックオフィス担当者が「5名まで無料」という言葉に惹かれて導入を決断します。しかし、6人目を採用した瞬間に月額料金が跳ね上がる「6人の壁」や、年末調整の時期になって初めて気づく「機能制限」により、後から有料ソフトへの移行やデータ移管の手間に苦しむケースが後を絶ちません。また、コストを惜しんでExcel管理を続けた結果、72%の担当者が属人化や計算ミスにリスクを感じているという調査結果もあります。
本記事では、現時点の安さだけでなく、「1年後の従業員数」や「必要な機能」を見据えた最適なソフト選びのポイントを解説します。特に、従業員が増えた際にコストがどう変化するかを3つのパターンでシミュレーションし、あなたの会社に最適な選択肢を具体的に提示します。
少人数向け給与計算ソフトを選ぶ3つのポイント
少人数の企業が給与計算ソフトを選ぶ際、単に「無料かどうか」だけで判断するのは危険です。事業の成長スピードや、担当者のスキルレベルに合わせた視点が必要です。
今の人数だけではなく「1年後の人数」を予測する
最も重要なのは、現在の従業員数ではなく「1年後に何人になっているか」です。
多くのソフトが「従業員5名」や「10名」を無料と有料の分岐点に設定しています。このラインを超えた時、コスト構造がどう変わるかは製品によって全く異なります。
- 従業員数が5名以下で推移する: ずっと無料で使える「完全無料型」や「階段型」が最適です。
- 近いうちに増員の予定がある: 人数が増えても単価が安い「従量課金型」や、大人数利用で割安になる「定額制」を選ぶべきです。
目先の0円にとらわれず、採用計画と照らし合わせてソフトを選定することが、将来のコスト削減につながります。
無料プランの機能制限を確認する
「無料プラン」には必ず制限があります。特に致命的になり得るのは以下の2点です。
- 年末調整機能の有無: 毎月の給与計算はできても、最も煩雑な年末調整は「有料プランのみ」または「機能自体がない」ケースがあります。この場合、年末調整だけ税理士に依頼するか、別途ソフトを用意する必要があり、かえって手間とコストがかかります。
- サポート体制: 多くの無料プランには電話サポートがありません。操作に不慣れな場合やトラブル発生時に、自力でマニュアルを調べて解決する時間が「見えないコスト」としてのしかかります。
勤怠や会計など他のバックオフィス業務と連携できるか確認する
少人数組織では、1人が総務・労務・経理を兼任することも珍しくありません。
給与計算ソフト単体で選ぶのではなく、「勤怠管理システム」や「会計ソフト」との連携を重視してください。例えば、勤怠システムからボタン一つで労働時間を取り込み、確定した給与データをそのまま会計ソフトに仕訳として流すことができれば、手入力によるミスはゼロになり、毎月の作業時間は劇的に短縮されます。
5人から6人になると料金はどうなる?有料プランへ移行するコスト増加シミュレーション
多くのソフトで「無料」の上限となることが多い「5名」。ここから「6名」になった瞬間、料金体系は劇的に変化します。これを「6人の壁」と呼びます。
失敗しない選定のために、代表的な3つのコスト増大パターンをシミュレーションします。
パターンA:6人目から全員有料になるサービスの場合
代表例:フリーウェイ給与計算
5名までは完全に0円ですが、6名になった瞬間に無料枠が消滅し、有料プラン(月額1,980円)への契約切り替えが必要になります。
- 5名時: 0円
- 6名時: 月額1,980円(年額23,760円)
一見コストが急増したように見えますが、この有料プランは「人数無制限」です。つまり、従業員が20名、30名と増えても料金は月額1,980円のまま変わりません。将来的に20名規模を目指す企業にとっては、1人あたりのコストが約99円となり、非常にコストパフォーマンスが高い選択肢となります。
パターンB:無料プランの枠が広いサービスの場合
代表例:PayBook
他社よりも無料枠が広く「10名」まで0円で利用できます。
- 5名時: 0円
- 6名時: 0円
- 11名時: 月額1,000円(スタンダードプラン)
「6人の壁」が存在せず、10名まで無料で粘れるのが強みです。さらに11名以上になっても月額1,000円(従業員数無制限)という破格の設定です。ただし、無料プランでは年末調整データの出力ができない等の制限があるため、機能面での割り切りが必要です。
パターンC:無料プランなしだが単価が安いサービスの場合
代表例:ジョブカン給与計算、freee、マネーフォワード
最初から有料、または無料プランの実用性が低く事実上有料利用が前提となるパターンです。
- ジョブカン: 1名月額400円ですが、「最低利用料金2,000円」という設定があります。そのため、3名で利用しても5名で利用しても月額2,000円かかります。6名になると2,400円となり、人数に応じてなだらかにコストが上昇します。
- freee / マネーフォワード: 基本料金+従量課金の構成が多く、5名時点で月額2,500円〜3,000円程度のコストが発生します。
これらは「安さ」よりも、勤怠連携や機能の網羅性、サポートの手厚さで選ぶべき製品群です。
【全8製品】少人数向け給与計算ソフトの比較表
「無料枠」「コスト」「サポート」の観点から、主要8製品を比較しました。自社のフェーズに合った製品を見定めてください。
| 製品名 | 無料枠 | 5名時の月額コスト(税抜) | 6名時の月額コスト(税抜) | 年末調整 | 電話サポート | 特徴 |
| フリーウェイ給与計算 | 5人まで | 0円 | 1,980円 | 対応(無料版も可) | × | 5名以下なら機能・コスト共に最強 |
| 円簿給与PRO | 無制限 | 0円 | 0円 | 対応 | × | 広告表示ありの完全無料ソフト |
| PayBook | 10人まで | 0円 | 0円 | △(有料推奨) | × | 10名まで無料。UIが使いやすい |
| ジョブカン給与計算 | 5人まで(制限有) | 2,000円(※1) | 2,400円 | 対応 | 〇(有料) | 勤怠管理との連携がスムーズ |
| freee人事労務 | 30日体験のみ | 約2,600円(※2) | 約3,000円 | 対応 | 〇(プランによる) | 労務・給与を統合管理 |
| マネーフォワード | 1ヶ月体験のみ | 2,980円(※3) | 3,280円 | 対応 | 〇(プランによる) | 会計ソフトとの連携に強み |
| 弥生給与 Next | 体験プラン有 | 0円(初年度CP等) | 要確認 | 対応 | 〇(有料) | 初心者も安心の手厚いサポート |
| ジンジャー給与 | – | – | – | 対応 | 〇 | 最低10名〜利用可能。中規模以上向け |
(※1) 最低利用料金が適用されるため。
(※2) ミニマムプラン年額払いの月割り換算目安。
(※3) スモールビジネスプラン年額払いの月割り換算目安。
【従業員5名以下におすすめ】無料で使える給与計算ソフトおすすめ4選
従業員数が少なく、とにかくコストを抑えたい場合に適した4製品です。それぞれの「無料の範囲」と「注意点」を詳しく解説します。
フリーウェイ給与計算
「5名まで永久無料」かつ「年末調整まで対応」の決定版
5名以下の企業にとって、最も有力な選択肢です。他社の無料プランでは省かれがちな「年末調整」や「全銀データ出力(給与振込用)」まで無料で利用できます。
Windows/Mac両対応で、クラウド型のため法令改正も自動アップデートされます。
- メリット: 無料範囲でも機能制限が少なく、実務に耐えうる。
- 注意点: 操作画面がシンプルで少し古風に感じる場合があること、無料版には電話サポートがないため、マニュアルを見て自走できるリテラシーが必要です。
円簿給与PRO
人数無制限で全機能が無料。広告モデルのソフト
画面上に広告が表示される代わりに、利用人数や機能に制限がなく、すべて無料で利用できるユニークなソフトです。データは暗号化されておりセキュリティも確保されています。
- メリット: 人数が増えてもコストが一切かからない。
- 注意点: 画面上の広告が業務の集中を削ぐ可能性があります。また、他社ソフトのようなAPI連携機能が弱いため、勤怠データの取り込みなどは手作業が多くなる可能性があります。
ジョブカン給与計算
勤怠管理とセットでの導入なら最有力
「ジョブカン勤怠管理」と併用することで、勤怠データをワンクリックで給与計算に反映できます。
ただし、無料プランは「データ保存期間30日」等の厳しい制限があり、実務での利用は推奨されません。 実質的には有料(月額最低2,000円〜)での利用が前提となりますが、その分機能は充実しており、シリーズ累計の導入実績も豊富です。
- メリット: 勤怠管理システムとの連携が非常にスムーズ。
- 注意点: 単体利用で5名以下の場合、最低利用料金の関係で割高になります。
PayBook
10名まで無料。タブレットでも使えるモダンなUI
「5人の壁」を超えて、10名まで無料で使えるのが最大の魅力です。iPadなどのタブレット操作にも対応した直感的な画面デザインで、PC操作に不慣れな方でも使いやすい設計です。
- メリット: 無料枠が広く、有料化後も月額1,000円(スタンダード)と非常に安価。
- 注意点: 無料プランでは年末調整ソフト用のデータ出力ができません。年末調整までソフトで完結させたい場合は有料プランにするか、他社製品を検討する必要があります。
【従業員10名以上におすすめ】コスパが高い有料給与計算ソフトおすすめ4選
従業員が増えてくると、単純な「安さ」よりも「業務効率」や「サポート」が重要になります。月額数千円の投資で、バックオフィス業務全体を効率化できる製品です。
ジンジャー給与
人事労務データを一つのデータベースで統合管理
従業員情報が「人事」「勤怠」「給与」ですべて繋がっているため、入社手続きや異動に伴う情報更新の手間がありません。
ただし、最低利用人数が10名なので、ある程度の規模感がある企業向けです。専任担当者が付き、初期設定からサポートしてくれるプランもあります。
freee人事労務
給与計算だけでなく「労務管理」全体をカバー
給与計算ソフトという枠を超え、入退社手続き、勤怠管理、年末調整までを一つのプラットフォームで完結できます。会計ソフトfreeeと連携すれば、給与明細の確定と同時に経理処理も完了します。
「労務の知識がない初心者」でも、画面のガイドに従うだけでミスなく業務が進められるUIが特徴です。
マネーフォワード クラウド給与
会計ソフトとの連携重視ならこれ。複雑な給与体系にも対応
「マネーフォワード クラウド会計」を利用している企業なら、迷わずこちらを選ぶべきです。複雑な手当の計算式設定にも柔軟に対応でき、給与計算の結果をワンクリックで会計ソフトに連携できます。Web給与明細や社会保険料の自動計算など、必要な機能は全て網羅されています。
弥生給与 Next
業務ソフトシェアNo.1の実績。手厚いサポートで安心
「弥生」ブランドの信頼性と、手厚いサポート体制が魅力です。給与計算の業務自体に不安がある場合、電話や画面共有で操作サポートを受けられるプラン(ベーシックプラン)を選ぶことで、安心して運用を開始できます。
「年末調整は税理士に任せる」という企業向けのエントリープランも用意されており、ニーズに合わせたプラン選択が可能です。
給与計算ソフトとは
給与計算ソフトとは、毎月の従業員給与の計算、税金・社会保険料の算出、年末調整、給与明細の発行などを自動化するツールです。
従来の手書きやExcel管理と比較して、法改正への自動対応や計算ミスの防止といった面で圧倒的な優位性があります。現在はインターネット経由で利用する「クラウド型」が主流で、初期費用を抑えて手軽に導入できるのが特徴です。
少人数でも給与計算ソフトを使うメリット
「人数が少ないから手作業でもなんとかなる」は大間違いです。少人数だからこそ、ソフトを使って本業に集中すべきです。
- 入力ミスを防ぎ正確に給与計算ができる: 自動計算により、残業代の計算ミスや保険料の控除漏れといったヒューマンエラーを根絶できます。
- 給与計算業務にかかるコストを削減できる: 社労士に丸投げすると月額数万円かかりますが、ソフトなら月額数千円、あるいは無料で内製化が可能です。
- 法対応への自動対応によりコンプライアンスの遵守ができる: 毎年のように変わる社会保険料率や税制に、自動アップデートで対応できます。
- データの一元化と連携による労務管理効率化: 勤怠データや従業員情報が一元管理され、バックオフィス業務全体の無駄がなくなります。
Excelでの給与計算を避けるべき2つの理由
多くの企業がExcelでの管理を行っていますが、そこには経営リスクが潜んでいます。
法改正対応の手間と計算ミスのリスクがある
2024年の「定額減税」のように、突発的かつ複雑な税制改正があった場合、Excelの計算式を自力で修正するのは至難の業です。
実際、Excel管理をしている担当者の72%が「属人化」や「ミス」にリスクを感じているというデータがあります。計算式が壊れていても気づかず、長期間にわたって給与の過不足が発生し、発覚後に遡って修正する手間は計り知れません。
月額数百円で「安心」を買うのが現代のスタンダード
「Excelでなら給与計算がタダで行える」と考えられがちですが、法改正のたびに情報を調べ、シートを修正し、ミスがないか検算する「人件費」はタダではありません。
月額数百円、あるいは無料のクラウドソフトを導入することは、これらの煩雑な作業とリスクから解放され、経営者や担当者が「本来やるべき仕事」に集中するための、極めてコストパフォーマンスの高い投資です。
給与計算ソフトを導入して効率よく業務を進めよう
従業員数が少なくても、給与計算ソフトを導入するメリットは絶大です。「6人の壁」や「必要な機能」を理解し、自社の成長フェーズに合ったソフトを選ぶことで、コストを抑えながら業務効率を劇的に改善できます。
まずは無料プランやトライアルを活用し、実際の操作感を試してみることから始めましょう。Excelから脱却し、安心で効率的なバックオフィス体制を構築してください。
給与計算ソフトの製品をさらに詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
ぴったりの給与計算ソフト選びはミツモアで

給与計算ソフトは製品によって特徴や機能もさまざま。「どの製品を選べばいいかわからない・・・」といった方も多いのではないでしょうか。
そんなときはミツモアにおまかせ。最短1分の自動診断で、ぴったりの給与計算ソフトが見つかります。
ぴったりの給与計算ソフトを最短1分で無料診断
従業員数や欲しい機能などの項目を画面上で選択するだけで、最適な給与計算ソフトを最短1分で自動診断。もちろん費用はかかりません。
ぴったりの料金プランも一緒にお届け
希望条件に沿った料金プランも製品と一緒に診断します。概算金額を見積もりからチェックして、理想のプランを探してみましょう。
診断結果は最大5製品!比較・検討で最適な給与計算ソフトが見つかる
最大で5製品の診断結果をお届けします。検討していた製品だけでなく、思わぬ製品との出会いもあるかもしれません。
ミツモアなら、ぴったりの給与計算ソフトがすぐに見つかります。









