標準報酬月額とは、社会保険料や年金保険料の算出基準となる重要な数値です。本記事では、標準報酬月額の定義から決定方法、手続きのタイミング、そして社会保険料の計算方法までをわかりやすく解説します。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、社会保険料を算出するための基準額で、労働者が受け取る給与を一定の範囲(等級)に区分したものです。日本の健康保険や厚生年金保険で用いられ、4〜6月の3カ月間の平均給与を基に決定されます。
標準報酬月額は原則1年間固定されるため、保険料の計算が簡便化されます。給与計算担当者にとって、毎月の給与額をもとに保険料を計算する代わりに、固定された基準を使うことで作業が効率化されるメリットがあります。
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標準報酬月額の基本的な計算方法
実際の標準報酬月額の計算に使用される表を参考にしながら、計算方法をわかりやすく説明します。
健康保険料の計算方法とポイント
健康保険料は、標準報酬月額表にもとづいて算出されます。協会けんぽやほかの健康保険組合でも同様に、従業員の給与に対応する標準報酬月額等級を標準報酬月額表から確認します。標準報酬月額表には各等級ごとの健康保険料とその折半額(表の赤枠内)が記載されているため、実際には計算をする必要がありません。
たとえば東京都の場合、健康保険料率が9.98%なので、標準報酬月額300,000円に該当する等級の健康保険料は標準報酬月額表を見て確認すると折半額は14,970円となっています(表の黄色枠)。この金額を従業員の給与から控除すればよいのです。
計算方法は以下のようになります:
300,000円 × 9.98% = 29,940円 標準報酬月額に9.98%を掛けます。(保険組合によって掛ける値が異なります)
29,940円÷2=14,970円 折半なので2で割ります。この金額を従業員の給与から控除します。
厚生年金保険料の計算方法とポイント
厚生年金保険料も、標準報酬月額表をもとに算出されます。標準報酬月額に対して全国共通の保険料率18.30%(2023年4月時点)が適用されますが、標準報酬月額表には各等級ごとの厚生年金保険料とその折半額が記載されています(表の赤枠内)。
たとえば標準報酬月額が300,000円の場合、標準報酬月額表を使って該当する厚生年金保険料を確認すると折半額は27,450円です(表の黄色枠内)。この金額を従業員の給与から控除します。
300,000円 × 18.30% = 54,900円 従業員と企業の折半なので2で割ります。54,900円÷2=27,450円 この金額を従業員の給与から控除します。
介護保険の被保険者かどうかで見る列が変わる
標準報酬月額表の見方では、介護保険第2号被保険者に該当するかどうかによって保険料が異なります。介護保険第2号被保険者は、40歳から64歳までの被保険者を指し、このグループは健康保険料に加えて介護保険料も負担します(表の左から2番目の赤枠内)。
一方、それ以外の年齢層では介護保険料が発生しないため、健康保険料のみが適用されます(表の1番左の赤枠内)。標準報酬月額表で保険料を確認する際は、該当する年齢層に応じて、介護保険の有無を確認する必要があります。
標準報酬月額の基礎となる報酬
標準報酬月額を正確に算出するためには、どの項目が報酬として含まれるかを理解することが重要です。報酬の具体的な定義を解説します。
報酬に含まれる | 報酬に含まれない |
基本給 | 賞与(ボーナス) |
役職手当 | 退職金 |
通勤手当 | 結婚祝い金 |
在宅手当 | 弔慰金 |
家族手当 | 見舞金 |
残業代 | 一時的な支給額 |
その他の経常的な手当 | その他の臨時的な支給 |
報酬に含まれるもの: 基本給、手当、残業代など
標準報酬月額の算定において報酬に含まれるものには、月々経常的に支払われる基本給や各種手当、残業代が含まれます。
基本給は従業員が労働の対価として毎月受け取る固定的な給与です。手当には役職手当、通勤手当、住宅手当、家族手当などがあります。さらに時間外労働や休日労働に対して支払われる残業代も報酬の一部に含まれます。
これらの項目はすべて標準報酬月額の基礎として使用されます。一方、賞与(ボーナス)は標準報酬月額には含まれず、別途「標準賞与額」として扱われます。標準報酬月額は経常的に支払われる報酬要素を総合的に反映して算定されるため、社会保険料の算出基準として使用されます。
報酬に含まれないもの: 例外となる項目
標準報酬月額の算定において報酬に含まれないものには、臨時的な支給や特定の条件下で支払われる金額が該当します。
具体的には、賞与(ボーナス)、退職金、結婚祝金、弔慰金、一時的な見舞金などが含まれません。これらは経常的な給与とは異なり、一度限りの支給や特定のイベントに関連して支払われる金額です。
標準報酬月額は、毎月経常的に支払われる給与を基に算出されるため、臨時的な支給額は報酬として含まれません。
標準賞与額
標準賞与額とは、労働者が受け取る一時的なボーナスに対して設定される基準額です。標準報酬月額とは別に扱われ、ボーナス支給時に健康保険料や厚生年金保険料を算出するために使用されます。
標準賞与額は賞与の総額から1,000円未満を切り捨てた金額で算出されます。健康保険と厚生年金の年間上限額が決まっており、これを超える部分は保険料計算の対象外となります。
標準報酬月額の決定タイミング
標準報酬月額は、社会保険料の算出基準として重要です。その決定方法には、資格取得時の決定、年1回の定時決定、そして報酬額が大幅に変動した際の随時改定の3つのケースがあります。これらの3つの方法について、それぞれ解説します。
資格取得時決定: 新たに被保険者資格を取得した際
新たに被保険者資格を取得した際、標準報酬月額は資格取得時決定にもとづいて算出されます。従業員が入社や転職などで新たに社会保険に加入する場合に適用されます。
この際の標準報酬月額は、各種手当や残業代も含めた初月の給与をもとに決定されます。資格取得時に設定された標準報酬月額は、次の定時決定まで有効です。
定時決定: 年1回の基準時期
標準報酬月額は、毎年の定時決定で見直されます。定時決定は、4月から6月の3カ月間の給与を平均し、毎年7月に実施されるものです。
この期間の平均給与をもとに、従業員の新しい標準報酬月額が設定されます。定時決定で決定された標準報酬月額は、翌年の6月まで固定され、その間適用されることになります。
随時改定: 昇給・降給時や報酬額が大幅に変動した際
随時改定は、昇給や降給、その他の理由で従業員の報酬額が大幅に変動した際に実施されます。具体的には、固定的賃金が継続して2等級以上変動した場合、各月の初日から3カ月間の平均給与を基に標準報酬月額を再計算します。
この改定により、新しい報酬水準に合わせて社会保険料が適切に算出されます。随時改定は、従業員の給与事情に迅速に対応するための重要な手続きです。
標準報酬月額の特例改定のタイミング
標準報酬月額の特例改定は、通常の定時決定や随時改定とは異なる特別な状況に適用されるものです。この改定により、特定の条件下で従業員の報酬に応じて標準報酬月額が変更され、適切な社会保険料が算出されます。
特例改定の適用条件: 育児休業等終了のタイミング
特例改定は、特別な条件が満たされた場合に適用されます。たとえば産前産後休業や育児休業からの復帰時に報酬が大幅に変動する場合がこれに該当します。
具体的には、育児休業等終了後の最初の給与が休業前の標準報酬月額より下がる場合、特例改定が適用されます。この条件を満たすことで、従業員の負担を軽減し、適正な保険料を算出するために標準報酬月額が再計算されます。
標準報酬月額の注意点
標準報酬月額は、保険料や給付額の基準となる重要な数値です。正確な計算や手続きが求められるため、設定時や変更時には注意が必要です。標準報酬月額に関する重要なポイントについて解説します。
保険料額表の料率は変更される場合がある
保険料額表の料率は、経済状況や保険運営の状況に応じて変更されることがあります。例えば、健康保険料率や厚生年金保険料率は毎年見直されることが一般的です。このため、給与計算担当者は最新の料率を常に確認し、適用する必要があります。
また、料率の変更は従業員の給与控除額にも影響を与えるため、事前に従業員へ適切な説明をおこなうことが求められます。最新の保険料額表は、協会けんぽや各保険組合の公式サイトなどで確認できます。
労働保険料は計算方法が異なる
労働保険料(労災保険料や雇用保険料)は、健康保険料や厚生年金保険料と異なる計算方法が用いられます。労働保険料の計算は、支払われた賃金総額に対して一定の保険料率を掛ける方式です。
たとえば雇用保険料は雇用保険法に基づき、賃金総額の一定割合を保険料として計算されます。これに対し、労災保険料は業種ごとに定められた料率を用いて計算されます。したがって、給与計算担当者は各保険料の計算方法の違いを理解し、適切に対応することが重要です。
傷病手当や出産手当の計算も標準報酬月額を基にする
傷病手当金や出産手当金の給付額は、標準報酬月額を基に計算されます。これらの手当は、病気や出産で働けない期間においても生活をサポートするための給付です。具体的には、傷病手当金は標準報酬月額の約3分の2相当額が支給され、出産手当金は標準報酬月額の約3分の2が産前産後期間に渡って支給されます。標準報酬月額が正確に算出されていることが、適正な給付額の確保に直結します。正確な手続きと報酬管理が求められます。
標準報酬月額の決定後に必要な手続き
標準報酬月額が決定された後には、事業主が必要な手続きをおこなうことが求められます。これには被保険者への通知と関連する書類の提出が含まれます。適切な手続きをおこなうことで、従業員の保険料が正確に計算され、円滑な保険運営が可能となります。
事業主の通知義務および提出書類
標準報酬月額が決定した後、事業主には被保険者へその旨を通知する義務があります。この通知は、従業員自身が保険料の算定基準を理解し、適正な金額が給与から控除されていることを確認するために重要です。
また事業主は「標準報酬月額決定通知書」や「被保険者の資格取得届」などの書類を年金事務所や健康保険組合に提出する必要があります。
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