成果主義とは「実績」や「結果」を評価基準とする人事評価のこと。日本では20世紀の終わりから多くの企業で取り入れられ始めました。
しかし実際取り入れた企業の中では成功、失敗例どちらも頻出。以来現代の日本における正しい人事評価方法は本当に成果主義なのかという議論が取り沙汰されています。
本記事では成果主義とは何かから、日本企業で実際にあった成功例、失敗例までを解説。本当に自身の会社にとって成果主義が正しいのか考え、自身のビジネス観創出に役立ててください。
成果主義とは
成果主義とは業務実績や成果に基づき、給与や昇進などを決める仕組みです。
会社で決められた年次や通期ごとの目標達成度に対して報酬を決めるシステムですが、近年では基本給を決めるために取り入れられることも多くなってきました。
成果主義で評価される点は以下の2つです。
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例えば、ある会社において「商品Aの販売を中心に売上を伸ばそう」という方針があった場合、売上が同じだったとしても、商品Aを中心に販売していた人のほうが評価されます。
また真面目に働いていたとしても業績を上げられない場合、待遇が上がらないばかりか減給・降格といった処分が下ることもあるでしょう。成果主義では「行動(過程)が結果に繋がっているか」を判断しています。
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成果主義が広まった背景
成果主義はもともと欧米で取り入れられている手法でした。
現在では中国などアジア圏にも進出し、韓国でも1970年代導入から50年経った今やほとんどの企業が取り入れるようになりました。日本ではバブル崩壊があった1990年代ごろから、年功序列制度の見直しや雇用形態の多様化を理由に急速に広まっています。
バブル崩壊後の年功序列制度の見直し
バブルが崩壊する以前は、年功序列制度が一般的でした。しかしバブル崩壊後、多くの企業は業績が悪化してしまい、コストの削減が課題となります。
そこで、人件費を削減する手段の一つとして、成果主義を導入しました。成果主義は企業の業績アップにもつながりやすいためバブル崩壊後の不況を解決できると期待されたのです。
雇用形態が多様に
バブル崩壊に伴い従来の終身雇用制度も崩壊しました。その結果、働き方は多様化し、正社員以外にも派遣や請負、パートタイマーといったさまざまな雇用制度が生まれることとなります。
従業員の成果に応じて給与を支払うことが必要となり、成果主義の導入が進んだのです。
新型コロナウィルスも成果主義を後押し
新型コロナウイルスの流行に伴い、さらに日本では成果主義が広まりつつあります。従来は労働時間や勤務態度に基づいて給与が支払われていました。
しかし、新型コロナウイルスの影響から、外出をしないでリモートワークを行う必要が出てきます。従来のように時間を管理したり対面で人事評価をしたりすることが難しくなったのです。
成果主義がコロナによって後押しされているのは、人事評価を行うために従業員の成果を見る必要が出てきたことが原因として挙げられます。
成果主義で日本企業は成長するのかも議論に
年功序列制から成果主義に切り替えたことで、同年代や同職種の間でも給与や報酬に差が出るようになりました。そのため、働き方そのものへの改革や従業員の意識向上にもつながったといえるでしょう。
しかし一方で利益や成果ばかりを重視し、自分の成果に直結する以外の仕事は行わない人や評価基準に意義を唱えモチベーションが下がる人なども現れたのです。
その結果日本人の気質に、成果主義に則った人事評価制度が本当に正しいのかどうかの議論も進められています。
重要なのは成果主義のメリットデメリットを把握し、企業に本当にあっているのかを見極めること。そしてその上で企業カルチャーと親和性の高い方法で導入する必要があるでしょう。
日本企業の成果主義導入例
成果主義は様々な日本企業で取り入れられています。中でも特に有名なのが花王とマクドナルド。2つの企業の成功例と失敗例をご紹介いたします。
成果主義導入の成功例:花王
花王は現在「職群制度」という人事制度を採用しており、成功を収めています。
「職群制度」とは、管理職以外の主任クラスから一般社員まではフィールド(職種)ごとに役割等級の仕組みを変えた制度のことです。
具体的には、生産部門では評価項目に習熟度という独自の項目を加えたり、研究部門では長期的な観点で研究成果を見たりするなど、評価の方法を職種によって変えています。
このような目標管理で組織の効率を高めることに加え、社員の能力開発や創造性の発揮を促す環境を整備することを重要視しているようです。
このように、社員1人1人の成長を考えて、各部署に対応した柔軟な評価基準を設けたことが成功につながっているとわかります。
成果主義導入の失敗例:マクドナルド
マクドナルドは2006年に定年制を廃止しました。その目的は、社員たちの競争意識によって成長を促進しようというものです。
しかし、若手を育てるはずのベテラン社員は、若手の育成よりも自分の成果を上げることを優先しました。そのため、若手が導入以前よりも育たないという事態に陥ってしまい、定年制を再導入することになりました。
原因として挙げられるのは「人材育成」を目的としていたにもかかわらず、人材を育成することに成果を与えなかったことです。
成果主義では、業績を上げた社員が評価されるため、個人プレーに走りやすく、自分の持つノウハウを他人に共有しようとはしません。人材を育成したいのであれば、人材育成に前向きになれるような取り組みを行う必要がありました。デメリットをしっかりと押さえたうえで、対策を練っておくことが重要ですね。
成果主義で成功する会社
成果主義を基準とした人事評価方法は、企業によって合う合わないがあるでしょう。基本的に成果主義に向いているのは以下のようなカルチャーの会社です。
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成果主義の導入は、基軸として人事評価制度のフローそのものを見直す必要があるでしょう。
現行の人事評価フローそのままで、評価点を成果に変えるだけの安易な方法では100%と言っていいほど成功しません。
仕組みを柔軟に変えることができ、かつ社員が規定概念に囚われない思考を持てるようなカルチャーの企業が成功しやすいのです。
成果主義と年功序列、能力主義、実績主義の違い
企業の評価制度は多岐にわたり、成果主義以外に、年功序列や能力主義、実績主義などがあります。それぞれの違いを以下にてまとめました。
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成果主義と他の人事制度を比較することで、成果主義が自社に適しているかを判断できます。
年功序列との比較
年功序列と成果主義の大きな争点は以下の3つです。
年功序列 | 成果主義 | |
評価 | 基準:勤務年数
評価しやすい |
基準:過程と結果
評価しにくい |
定着 | 若い世代で離職が多い | 評価されにくい部署での離職が多い |
労働意欲 | 消極的になる | 積極的になる |
【評価】
成果主義は評価基準があいまいなため、公平に評価することが難しく、成果の見えやすい部署とそうでない部署との格差が大きくなってしまいがちです。そのため、成果の見えにくい部署では不満感が募り、離職率が高くなる傾向にあります。
しかし、年功序列では勤務年数を基準にするため、評価が簡単であり透明性が保たれやすいです。そのため、部署ごとの格差は生じにくいでしょう。一方で、若い世代はどれだけ努力しても評価につながりにくいので、不満を抱きやすく離職が多いです。
【定着】
成果主義では、努力が結果に結びつかなかった人やそもそも評価されにくい仕事をしている人は、評価への不満・評価の不平等さから離職してしまいます。
しかし、年功序列では、会社に長く勤務するほど評価されるので、社員の帰属意識が強くなる傾向にあり、定着率が高いです。
【労働意欲】
年功序列では、勤務年数によって評価されるため、成果が評価につながりにくいです。そのため、目的意識を持ちにくく、労働意欲も失せがちになるでしょう。つまり、生産性が向上しにくくなります。
しかし、成果主義では、成果が評価につながるので、目的意識を持ちやすく、モチベーションを向上させやすいです。そのため、生産性の向上が期待できるでしょう。仕事に前向きな若者や社員は、会社のためにより意欲的に働くはずです。
【まとめ】
- 成果主義では、社員が意欲的に働くことが期待できる。しかし、評価の難しさから不満を感じる部署も出てしまう
- 年功序列では、評価がしやすく、定着率もよいが、労働意欲が低下する傾向にある
能力主義との比較
能力主義と成果主義は評価基準が異なります。
能力主義 | 成果主義 | |
評価基準 | 仕事に対する能力 | 仕事の過程と結果 |
【評価基準】
能力主義では、成果に左右されず、本人のポテンシャルによって評価が定まるので、マルチスキルを持った優秀な人材が確保しやすくなります。また、一時的に成果が出なくても、評価に直接影響するわけではないので、社員は新事業や長期計画に積極的にチャレンジしやすいです。
成果主義では、過程だけでなく結果も重視するので、新事業や長期計画に失敗すると評価が下がってしまう恐れがあります。そのため、能力主義ほど積極的にチャレンジできません。
しかし、能力主義では、チャレンジばかり行い、事業が成功しない・成果が出ていない場合でも給料や評価を与える必要があり、会社が立ち行かなくなる可能性もあります。
【共通点】
能力主義と成果主義の共通点は評価が難しいということです。
どちらも評価基準があいまいであるため、評価に対して不満を感じる人が現れるケースもあります。
【まとめ】
- 成果主義では、過程だけでなく、結果も重視するため、会社の利益が保証されやすいが、新事業や長期計画にそこまで積極的にチャレンジできない
- 能力主義では、仕事に対する能力を評価するため、優秀な人材を集めやすく、新事業や長期計画に積極的にチャレンジできるが、結果が伴わないことが続いてしまい、会社が立ち行かなくなる可能性がある
実績主義との比較
実績主義と成果主義は、評価基準と評価しやすさが異なります。
実績主義 | 成果主義 | |
評価基準 | 結果のみ | 過程と結果 |
評価しやすさ | 簡単 | 難しい |
【評価基準】
実績主義では、結果のみを評価対象とします。そのため、営業成績の最終的な数値が評価の全てになるので結果を出せば正当に評価され、あいまいな判断基準によらない公正な評価が可能です。
しかし、過程に関しては評価してもらえないので、努力したにもかかわらず結果につなげることのできなかった人は、仕事への意欲が低下してしまうでしょう。
一方で、成果主義では、過程に関しても評価するので、結果が出なくても実績主義ほど評価は下がりにくいです。そのため、結果が出なかった社員が労働意欲を失い、離職してしまうリスクを抑えることができるでしょう。
【評価しやすさ】
実績主義では、数字といった結果のみを評価基準とするため、評価が簡単で公平であるといえます。
しかし、成果主義では、過程といったあいまいなものも評価基準となるので、評価することが難しいです。
【共通点】
また、実績主義と成果主義の共通点としては、結果がわかりやすい部署とわかりにくい部署との評価の差が非常に大きく、不満を感じる人が出てしまうという点です。
【まとめ】
- 成果主義では、過程も重視するため、結果が出なかった社員の離職リスクを抑えることができるが、評価基準があいまいである
- 実績主義では、結果を重視するため、評価が簡単かつ公平であるが、努力しても結果が出なかった時にモチベーションの低下や離職のリスクがある
成果主義の適切な運用で組織力強化の実現を
企業の生存競争が激化する中、年功序列制度を維持し続けられる会社は多くありません。競争力が問われる現代のニーズに即した成果主義は、組織力を高めるために役立ちます。
しかし成果主義にはモチベーション向上や人件費削減といったメリットがある半面、仲間意識の希薄化や定着率の低下といったデメリットも否定できません。
導入する際にポイントとなるのは、いかに評価制度を自社の特性にあわせていけるかという点です。課題を着実にクリアして成果主義の効果的な運用を目指しましょう。
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