データを効率的に活用するためのスクレイピングの技術は、企業のマーケティングやシステム運用に欠かせなくなっています。スクレイピングの概要と目的、実践方法を解説します。特に情報管理に関わる人は、基本的な仕組みだけでも知っておきましょう。
スクレイピングとは?
スクレイピング(Scraping)とは、本来は「こする」「引っかく」といった意味を持っていますが、ITの世界では必要な情報を収集し、わかりやすく加工する技術を指します。まずは、どのような技術なのか、基本的なところを知っておきましょう。
情報を効率的に取得・加工するための技術
情報を効率的に取得し、後から利用しやすいように加工する技術がスクレイピングです。主にインターネット上から必要な情報を集め、収集したデータをスムーズに活用するための技術として知られています。
専用のツールやプログラムを使ってスクレイピングを自動化すれば、マーケティングで必要な情報をインターネットから効率的に収集できます。
さらに後から使いやすいように加工された状態でデータベースに保存されるので、企業のデータ運用にかかる手間を大幅に削減可能です。
クローリング技術との違い
スクレイピングと似た技術に「クローリング」があります。こちらは単にインターネット上からデータを収集する技術を指し、データの抽出・加工の工程は含みません。
クローリングで有名なのが、Googleをはじめとした検索エンジンのソフトウェアロボットです。
検索エンジンのクローラーは世界中のWebサイトの情報を収集し、データベースに登録しています。これによって、インターネットユーザーが検索した際、必要な情報を閲覧できるようになっているわけです。
このようなクローリングに加えて、データの抽出や加工までするのがスクレイピングです。スクレイピングをうまく使えば、あらかじめ情報が加工された状態で利用できるので、より効率的かつスピーディーに情報を活用できるようになります。
スクレイピングの基本的な仕組み
スクレイピングでは、初めにどのような情報を集めたいのかをユーザーが定義し、それが調査対象のどこに記載されているのかをプログラムが検索します。
検索エンジンのクローラーほど調査範囲は広大ではありませんが、限られた対象範囲の中を巡回し、必要な情報を抽出します。
さらに抽出した情報を一定のルールに従って加工し、不要な部分を削ったり情報を補足したりするまでがスクレイピングのプログラムの役割です。
ユーザーはプログラムが抽出・加工した状態のデータを活用できるので、情報をいちから検索するよりも、圧倒的に早く情報の有効活用ができるわけです。
スクレイピングの目的
企業がスクレイピング技術を導入するのは、主にマーケティングデータの収集・活用のためと、Webサービスやアプリケーションの開発に使う目的の2点が挙げられます。
マーケティングデータの収集・活用
自社商品の類似品や競合の製品などの価格を調べたり、Webサイトの検索順位などを確認したりするのに、スクレイピングを活用している企業は多くあります。
また、新商品の開発・リリースにあたって、同じカテゴリーの商品がどれぐらいの価格で販売されているか、ユーザーの商品レビューの内容はどうなっているかなども、事前にスクレイピングによって調査するケースも少なくありません。
用途はさまざまですが、主に商品開発やマーケティングに必要な情報を効率的に収集するために、情報収集用のプログラムを開発している企業が多いようです。
Webサービスやアプリケーションの開発
スクレイピングの機能を有するWebサービスやアプリケーションの開発など、技術そのものを機能の一種として提供している企業もあります。
例えば、複数のWebサイトから特定の情報をスクレイピングできるプログラムを組み込めば、価格比較サイトやソフトウェアの情報サイトなどを開発できます。特定の範囲に特化して詳細な情報を収集できるWebサービスの提供も可能でしょう。
スクレイピングの実践法
それでは、スクレイピングの実践法を紹介します。大きく分けて、専用のツールやサービスを利用する方法と、専用のプログラムを自社で開発する方法があります。
スクレイピングに使用される言語
スクレイピングのプログラムを自社開発する場合、PythonやRuby、JavaScriptなどの言語を使います。
最もよく使用されているのがPythonで、専用のライブラリが多く利用でき、さらにプログラミングの初心者でも学びやすいことで知られています。
もともとプログラミングの素養のある人ならば、スクレイピング用のツールを開発するのはそれほど難しくはありません。
ライブラリやフレームワークなどを活用しながら、取得した情報源から必要な情報を検索、抽出して加工するまでのプログラムを開発しましょう。
スクレイピングの対象を決める
専用ツールを使用する場合でも、自社で専用のプログラムを開発する場合であっても、情報を集めるには、まずデータを収集する対象を決めなければいけません。情報を検索・抽出する範囲を定義しましょう。
有益な情報を集めるには、どこを検索すれば情報が集められるのかを知っておくことが大事です。検索範囲の定義は基本的にユーザーがしなければならないので、事前に調査対象にすべきWebサイトを絞り込んでおきましょう。
対象ページからデータを取得する
調査対象を決めたら、対象ページから任意の情報を集めます。専用ツールを使えば自動で特定のキーワードや情報を効率的に収集できるので便利です。プログラムを使って収集する場合は、専用のライブラリを用いて当該ページの情報を収集しましょう。
例えばPythonを用いてデータを取得する場合、「urllib」や「Requests」といったライブラリを活用して必要なデータを集めることが多いです。テキストデータのみならず、特定の画像も収集できます。
スクレイピングの注意点
Webスクレイピングは他のWebサイトから、任意のデータを抽出する行為です。そのため、実行にあたっては以下の点に注意しなければいけません。
収集元のサイトに負荷を掛けない
必要な情報を収集するため、スクレイピングでは対象となるWebページに頻繁にアクセスすることになります。
近年のサーバーはスクレイピング程度では何の問題も起こらないスペックを持っていますが、アクセス頻度によっては情報収集元のWebサイトに、過剰な負荷がかかってしまう可能性があるので注意が必要です。
ほかのユーザーが当該ページにアクセスしづらい状況になってしまうと、対象ページの運営者からすれば、サイバー攻撃を受けているのと同じ状況に感じられてしまうでしょう。情報収集元のサイトに迷惑をかけないように配慮する必要があります。
著作権法に抵触しないように注意する
スクレイピングで収集したデータの取り扱いには十分注意しましょう。データ解析以外に使用しないのはもちろん、事前に対象のWebサイトが情報収集行為を禁止していないか確認しておくことも大事です。
相手の意思に反して一方的にスクレイピングをした場合、著作権法などに抵触する恐れもあります。
とくに、禁止されているのにもかかわらず情報収集をしていると、最終的には訴訟に発展してしまう可能性もあります。事前に調査対象とするWebサイトの利用規約は、しっかりとチェックしておきましょう。
スクレイピングで効率的な情報収集を実現
スクレイピングは情報を効率的に取得・加工・生成するための技術であり、主に対象となるWebページから必要な情報を抽出するWebスクレイピングを指します。
マーケティングデータとしての活用や、Webサービスの開発などに活用できますが、調査対象となるWebページに過度な負荷をかけたり、著作権法に違反したりしないように十分注意しましょう。
スクレイピングの方法や調査対象とするページによっては、違法行為となってしまうリスクがあります。
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