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同一労働同一賃金とは?メリットやガイドライン、対応手順を解説

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最終更新日: 2024年06月28日

正社員と非正規社員と待遇差を解消するため、同一労働同一賃金の制度が2020年4月から適用開始となりました。

しかし、同一労働同一賃金の制度についてしっかり理解できていない方も多いのではないでしょうか。

2021年4月以降、中小企業を含む全企業が対象となっているので、具体的な制度の内容と、導入のポイントを押さえておくことは重要です。

同一労働同一賃金とは?

お金を数える人

同一労働同一賃金とは、政府が働き方改革の一環として掲げた制度です。

2020年4月から大企業に適用されることになり、2021年4月からは中小企業も適用の対象となっているため、ビジネス規模に関わらず、企業のマネジメント層にとっては必ず知っておく必要があるでしょう。まずは制度の概要から解説していきます。

同一労働同一賃金は賃金格差の解消を図る制度

正社員と非正規社員との間の賃金・待遇差の解消を図るのが、同一労働同一賃金制度の目的です。

同じ業務内容ならば、雇用形態に関わらず同じ賃金水準にすることが求められており、さらに福利厚生や教育訓練などの内容も、同じレベルにしなければいけません。

正当な理由なく正規雇用と非正規雇用の社員の待遇を変えてはならない決まりであり、両者の間に不平等が生じている場合、今後は法律違反とみなされる可能性があるのです。

同一労働同一賃金の施行はいつから?

同一労働同一賃金制度を実現するための「パートタイム・有期雇用労働法(短期時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」は、大企業が2020年4月、中小企業で2021年4月から施行されます。

法改正で変わった内容

改正によって変わった内容は以下の通りです。

  • 不合理な待遇差の禁止
  • 優遇に関しての説明義務の強化
  • 行政ADRの設備

この法改正により、非正規雇用労働者に対して不合理な待遇をしたり、差別的に取り扱ったりすることを禁止する規定が設けられました。

さらに、非正規社員は自らの待遇に関して雇用主に説明を求められるようになり、もし雇用主との間に紛争が発生した場合は、訴訟によらず紛争を解決する手段である行政ADRを利用できるようになったのです。

雇用主は非正規社員から雇用に関する説明を求められた場合には、それに応じる義務が課せられるようになりました。このように、同法改正は全面的に非正規社員の立場を守るためのものといえます。

正社員と非正規社員の格差がなくなるということ?

同一労働同一賃金の内容を聞いた方には、「正社員と全く同じ対応なのはおかしい」「正社員と同じ待遇をしなければいけなくなったのか」と考える方もいるのではないでしょうか。

同一労働同一賃金はあくまでも「不合理な差をつけることを禁止する制度」であり、働き方や役割の違いなどの筋が通った理由があれば、待遇差は認められます。

なので、同一労働同一賃金制度が施行されたからと言って、正社員である必要がなくなる、正社員と同じ待遇が求められるというわけではありません。

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日本の雇用の現状と海外との違い

仕事の契約をする男性2人

ここでは、同一労働同一賃金が制定された日本の雇用の現状や海外との違いについて説明します。

非正規社員の割合は増加傾向

同一労働同一賃金が制定された背景としては、非正規社員の急激な増加や、生産年齢人口の減少などがあります。

近年、日本の非正規社員は2,000万人を超えており、労働者全体の約4割を占めている状況です。さらに今後AI(人工知能)技術の発展などによって、企業の雇用がさらに減少する可能性もあります。

そのため、正規社員と非正規社員との間の待遇落差の是正を求める声が強くなったのです。

また、生産年齢人口の減少も進んでおり、企業は社員の労働生産性を維持・向上するために、社員の多様な働き方を許容する必要が出てきています。

多様な働き方を推進するには、人材の性別や人種、雇用形態に縛られない環境を実現しなければいけません。そういった事情からも、同一労働同一賃金の導入が求められてきたわけです。

参考:労働力調査(詳細集計)2021年(令和3年)1~3月期平均結果 Ι 総務省統計局

日本と海外の考え方の違い

海外においては職種ごとに賃金が決まる仕組みである一方、日本においては企業ごとに賃金を決める仕組みとなっています。

そのため、企業ごとに正社員と非正規社員の待遇差が起きやすくなってしまうのです。

同一労働同一賃金は、日本の雇用慣行も考慮しながら、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差の解消を目指すものとして作られました。

いわば、同一労働同一賃金はグローバルの労働基準に近づける方向性を持ったものだと見ることができます。

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同一労働同一賃金のメリット

お金と決算機

同一労働同一賃金制度の具体的なメリットを確認しておきましょう。非正規社員にとって大きなメリットがあるのはもちろん、雇用主である企業側にもメリットがある点は、しっかりと理解しておく必要があります。

待遇改善で非正規社員の意欲向上

待遇の全面的な改善により、非正規社員の仕事への意欲が向上するのは間違いないでしょう。賃金をはじめ、各種待遇に対する納得感が得られるため、結果的に所属する企業へのエンゲージメントも高まります。

さらに、正規社員と同様に評価してもらえると分かれば、日々の業務への取り組み方も変わってくるため、企業全体の生産性も向上するはずです。

教育訓練により非正規社員の能力向上

非正規社員の仕事へのモチベーションがアップすれば、能力の向上やさまざまなスキルの獲得が期待できます。

同一労働同一賃金制度の下では、正規社員も非正規社員も同様の教育訓練を受けられるようになるため、これまで正規社員のみ可能だったキャリアアップを、非正規社員も実現できるようになるでしょう。離職率が減少すると考えられるので、企業側も安定した雇用状態の維持が可能になります。

雇用機会の増加で人材不足の解消

雇用機会が増大することで人材不足を解消でき、さらに優秀な社員を獲得しやすくなるメリットもあります。企業に大きな利益をもたらす優秀な人材の中には、正社員としてフルタイムで働くのではなく、非正規社員として柔軟な働き方を求める人も少なくありません。

多様な人材を同じ待遇で雇用できるようになれば、優秀な人材が集まりやすくなり、画期的な商品開発やイノベーションにもつながりやすくなります。

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同一労働同一賃金のデメリット

支払い

同一労働同一賃金制度は、企業側・社員側に多くのメリットがあるものの、次のようなデメリットもあります。主に企業側の負担が大きくなるので、経営者を中心としたマネジメント層は、しっかりと対策を練っておきましょう。

賃金アップで人件費の上昇

同じ業務に従事している正規社員と、非正規社員の賃金を同一にすると、結果として企業全体の人件費が上がってしまう可能性が高いです。さらに、賃金以外の福利厚生や教育訓練などにかかる費用も増大するため、一時的に人材にかかるコストが大きく跳ね上がってしまうかもしれません。

特に、非正規社員の割合が大きい企業の場合、人件費の増加による負担が大きく、経営全体を圧迫してしまう可能性もあるでしょう。

合理的な理由を説明する必要がある

正規社員と非正規社員との間に、何らかの待遇面の差を残さざるを得ない場合、雇用主である企業は非正規社員に対して合理的な説明をしなければいけません。

待遇差を設けるに足る合理的な理由を説明できなければ、場合によっては賠償問題に発展する可能性があるため、できるだけ社員間に待遇差が出ないような仕組み作りが求められます。

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同一労働同一賃金導入のポイントと注意点

お札を持つ人

次に、同一労働同一賃金制度を導入する際のポイントと注意点を解説します。

制度の導入にあたっては、同制度の考え方や、具体例についてまとめられたガイドラインを確認しながら進めるとよいでしょう。

厚生労働省が定めたガイドラインを確認

厚生労働省は、同一労働同一賃金制度を導入する際の指針となるガイドラインを発行しているので、これを参考に、社員の報酬制度や労働環境の構築を進めることをおすすめします。

同ガイドラインでは、正規社員と非正規社員との間に、具体的にどういった待遇差があれば不合理とみなされるのか、具体例を挙げています。

例えば、基本給の基準として、社員の経験やスキル、あるいは仕事の成果などの客観的な理由から差を設けるのは問題ありません。

しかし、正社員かどうかなど、雇用形態の違いから賃金差を設けるのは不合理だとみなされます。

詳しいガイドラインについては以下の資料を参考にしてください。

参考:同一労働同一賃金ガイドライン Ι 厚生労働省

不合理な待遇差はトラブルの原因に

正規社員と非正規社員との間に不合理な待遇差を残したままでいると、これまで以上にトラブルの原因になってしまいます。

事実、休日手当や扶養手当などに差を設けていた組織が、非正規社員から訴訟を起こされ、最高裁判所が労働契約法に違反すると判断した事件があります。

このような賠償問題に発展する可能性もあるので、まずは正規・非正規の待遇差がないかを確認し、もし不合理な差が発見された場合は、速やかに是正するよう努めなければいけません。

また、両者の業務内容や責任範囲などの差を明確にしておき、待遇の違いに合理性があることを説明できるようにしておきましょう。

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同一労働同一賃金の対応手順

小銭

それでは、同一労働同一賃金制度の導入手順を紹介します。

同制度の根拠法となる「パートタイム・有期雇用労働法」に対応するための手順書が厚生労働省から発行されているので、こちらを参考に進めるとよいでしょう。

参考:パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書 Ι 厚生労働省

労働者の雇用形態、状況を確認

正規社員と非正規社員の待遇を平等にするためには、まず自社の全社員の雇用形態と状況を確認するところから始める必要があります。

同制度の対象となる社員が自社にいるのかを確認し、パートタイマーをはじめとした短時間労働者や、期限付きの雇用労働者などの区分ごとに、賃金や福利厚生に不合理な差がないかチェックしましょう。

待遇差がある場合は理由の確認と説明

調査の結果、社員間に不合理な待遇差があった場合は、なぜ待遇に差が設けられているのか理由を確認します。

業務内容や役職、働き方の違いなど合理的な理由がある場合は問題ありませんが、不合理ではない旨の説明ができるように準備しておきましょう。

待遇に差が設けられている理由を広く社員に周知しておくと、後から問題にされるリスクを軽減できます。

早期改善を目指して取り組む

社員間に不合理な待遇差があることが明らかになった場合、早期改善を目指して取り組みを始める必要があります。正規社員と非正規社員、双方の意見を聞きながら、計画的に待遇差の改善を進めましょう

社員から広く意見を集めるのは、改善の姿勢をアピールする意味もあります。

また、たとえ不合理な差がないと断言できる場合であっても、全ての社員にとって望ましい職場環境を構築するために、継続的に環境の改善を続けることが大事です。

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同一労働同一賃金の導入後は適切な対応を

付箋が貼られたノート

同一労働同一賃金制度の概要とメリット、導入の際の注意点を解説しました。

同制度は、雇用形態に関わらず、同じ仕事をしている正規社員と非正規社員を同じ水準で待遇し、不合理な差を設けることを禁止する法律を根拠とするものです。

大企業では2020年4月より施行、中小企業では2021年4月より施行となっているので、現在では全ての企業が順守しなければいけません。

不合理な待遇差が残っている場合、訴訟問題や賠償問題に発展する可能性があるので、厚生労働省のガイドラインなどに従って、迅速に待遇差の改善を行いましょう。

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