毎月の給与計算で、タイムカードの集計に丸1日かかっていませんか?打刻ミスや転記ミスが発生し、スタッフへの給与支払いを間違えてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。
勤怠管理の方法は大きく分けて、紙のタイムカードと勤怠管理システムの2種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、企業の規模や業種、働き方によって最適な選択は異なります。
「タイムカードで十分なのか、それともシステムを導入すべきなのか」――この判断を間違えると、無駄なコストや手間が発生し続けることになります。
本記事では、タイムカードと勤怠管理システムの違いを徹底比較し、業種別・規模別にどちらが適しているかを具体的に解説します。コストの目安や法令対応のポイントも紹介しますので、自社に最適な勤怠管理方法を見つけてください。
タイムカードと勤怠管理システムの違い【比較表で一目瞭然】
| 項目 | 紙のタイムカード | 勤怠管理システム |
|---|---|---|
| 基本機能 | 打刻の物理的記録 | リアルタイム自動集計、残業アラート、休暇管理 |
| 集計・転記 | 手動作業が必要 | 完全自動化 |
| 打刻方法 | 物理カードのみ | スマホGPS、ICカード、生体認証、PC打刻 |
| 不正防止 | 困難 | 高い防止機能 |
| 複数拠点管理 | 物理的な回収が必要 | クラウドで一元管理 |
| 初期コスト | 低い(約32,000円) | 0円から高額まで幅広い |
| 運用コスト | 低い | 月額課金制が多い |
| 法令対応 | 高リスク | 高コンプライアンス |
| 給与ソフト連携 | なし | APIまたはCSV連携可能 |
タイムカードと勤怠管理システムは、労働時間を管理するという目的は同じでも、機能やコスト、法的リスクの観点で大きく異なります。
特に2019年4月の労働安全衛生法改正により、客観的な労働時間の把握が義務化されました。この法改正によって、勤怠管理の選択は単なる利便性の問題ではなく、企業のコンプライアンス体制そのものに関わる経営判断となっています。
基本機能の比較
タイムカードは出勤・退勤時刻を物理的に記録するだけのシンプルな機能です。
一方、勤怠管理システムは打刻データをリアルタイムで自動集計し、残業時間が一定時間を超えるとアラートを発する機能や、有給休暇の管理機能まで備えています。従業員が打刻した瞬間にデータがクラウド上に保存され、管理者はどこからでも勤怠状況を確認できます。
このリアルタイム性が、経営判断のスピードを大きく向上させるでしょう。
コストの比較(初期費用・ランニングコスト)
初期コストでは、タイムカードが圧倒的に安価です。タイムレコーダー本体が約32,000円で購入でき、従業員数10名未満であれば1台で運用可能です。
勤怠管理システムはクラウド型であれば初期費用0円のサービスも多く存在します。ただし、ランニングコストが発生する点に注意が必要です。一般的なクラウド型システムは、1ユーザーあたり月額200円から300円程度が相場となっています。従業員30名規模であれば、月額6,000円から9,000円程度のコストが継続的に発生するでしょう。
一方、タイムカードは紙カード代のみで済むため、月々の運用コストは極めて低く抑えられます。
打刻方法・管理方法の比較
タイムカードは物理的なカードを打刻機に挿入する方法のみです。
これに対し、勤怠管理システムは多様な打刻方法を提供しています。スマートフォンのGPS機能を使った打刻では、従業員がどこで打刻したかの位置情報も記録されます。交通系ICカードをかざすだけの打刻、指紋や静脈による生体認証打刻、PCからのログイン・ログオフ時刻を自動記録する方法など、働き方に応じて最適な打刻方法を選択できます。
直行直帰が多い業種や、リモートワークを導入している企業では、タイムカードでは対応できない働き方にも柔軟に対応可能です。
法令対応の比較
法令対応に関しては、最も大きな違いがあります。
2019年4月の労働安全衛生法改正により、企業は客観的な方法で労働時間を把握することが義務化されました。厚生労働省のガイドラインでは、PCログやシステム記録といった客観的な把握手段があるにも関わらず、タイムカードのみに頼ることは原則として認められていません。タイムカードは「自己申告」に分類される可能性があり、法的リスクが高まります。
勤怠管理システムは、打刻時刻、打刻場所、修正履歴のすべてを客観的なログとして保存するため、労働基準監督署の調査に対して強力な証拠となるでしょう。また、法改正があった際も自動アップデートされるため、常に最新の法令に対応できます。
紙のタイムカードのメリット・デメリット
紙のタイムカードは、そのシンプルさゆえに長年多くの企業で採用されてきました。しかし現代の経営環境、特に複数の拠点や多様なシフトを持つ飲食店などにおいては、そのデメリットがメリットを上回るケースが増えています。
紙のタイムカードのメリット
紙のタイムカードのデメリット
メリット①導入コストが安い
タイムカード運用の最大のメリットは、初期投資の低さです。
物理的なタイムレコーダーは、集計機能がないシンプルなものであれば1台あたり約32,000円程度から入手できます。従業員数10名規模であれば、この1台の投資で運用を開始できるため、開業直後や予算が限られている小規模事業者にとっては魅力的な選択肢となります。
また、月々のランニングコストは紙カード代のみなので、継続的な費用負担も最小限に抑えられるでしょう。設備投資を抑えたい創業期の企業には、タイムカードは現実的な選択と言えます。
メリット②操作がシンプルで誰でも使える
操作が直感的である点も大きな利点です。
従業員は出勤時と退勤時にカードを挿入するだけで、ITスキルに関わらず誰でも即座に使用方法を理解できます。入社初日のアルバイトスタッフでも、特別な研修なしにすぐ使えるシンプルさは、人の入れ替わりが激しい飲食店やアパレル店などでは重宝されます。システム操作に不慣れな年配のスタッフが多い職場でも、抵抗なく導入できる点は見逃せないメリットでしょう。
デジタル機器に不安を感じるスタッフへの配慮という観点では、タイムカードの心理的ハードルの低さは大きな強みです。
メリット③視覚的にわかりやすい
従業員は、カードに印字された打刻記録を物理的に視認できます。これにより、自分の勤務状況をその場で確認できるという安心感があります。「ちゃんと打刻できたか」「何時に出勤したか」といった情報を、システムにログインすることなく即座に把握できる点は、従業員にとってわかりやすいでしょう。
また、管理者側も紙のカードを手に取れば、その従業員の勤務パターンを一目で把握できます。アナログならではの直感性は、デジタルツールに慣れていない層にとっては依然として価値があります。
デメリット①集計・計算に手間と時間がかかる
集計と計算作業にかかる手間と時間は、紙のタイムカードを使って勤怠管理を行う際における最も大きなコストです。
月末の締め作業では、全従業員分の紙カードを回収し、打刻時間を読み取り、電卓やExcelを使って手作業で労働時間、残業時間、深夜労働時間を集計する必要があります。従業員数が多かったり、複数店舗を管理していたりするオーナーが、この作業に丸1日を費やすといったケースは珍しくありません。
この「隠れた人件費」を時給換算すると、実は月額数千円のシステム利用料よりも高額になる場合もあります。
デメリット②ヒューマンエラーや不正のリスクが高い
手作業による集計は、必然的にヒューマンエラーを誘発します。「9時05分」を「9時00分」と読み間違える、Excelに「8.0」と入力すべきところを「8.5」と打ち間違えるなど、小さなミスが給与の支払い間違いという重大なトラブルに直結します。
また、タイムカードは従業員同士の「代理打刻」が容易です。遅刻しそうな同僚のために代わりに打刻してあげる、いわゆる「代理打刻」は防げません。さらに、手書きで修正が可能なため、遅刻をごまかしたり、残業時間を水増し請求したりといった不正の温床にもなりやすいです。
これらのリスクは、従業員との信頼関係を損ねかねない深刻な問題でしょう。
デメリット③保管に物理的なスペースが必要
労働基準法により、タイムカードのような労働時間の記録に関する書類は一定期間保存することが義務付けられています。保管期間は原則として5年間ですが、経過措置として当面は3年間でもよいとされています。
紙のカードはかさばるため、従業員数に比例して保管に必要な物理的スペース、つまりキャビネットや倉庫が増大していきます。たとえば、3店舗・30人分の紙カードを5年間分、検索可能な状態で保管・管理する作業は、膨大な手間です。
オフィススペースが限られている企業にとって、この物理的な保管負担は見過ごせないデメリットです。
デメリット④法令対応が難しい
タイムカードは「客観的な記録」として認められにくいリスクがあります。厚生労働省のガイドラインでは、PCログやシステム記録といった客観的な把握手段が他にあるにも関わらず、タイムカードのみに頼ることは原則として認められていません。
また、複雑な割増賃金の計算を手作業で行うため、計算ミスが法的な賃金未払いにつながるリスクが常につきまといます。時間外労働は25%以上、深夜労働は25%以上、法定休日労働は35%以上、月60時間超の時間外労働は50%以上といった複雑な割増率を、従業員の人数分、正確に計算するのは至難の業でしょう。
給与の支払い間違いは、従業員との信頼関係を損ねるだけでなく、法的な追及を受ける原因ともなります。
勤怠管理システムのメリット・デメリット
勤怠管理システムは、タイムカードのデメリットをほぼすべて解決するために設計されたソリューションです。特にクラウド型システムは、多店舗展開やリモートワークといった現代の働き方に不可欠なインフラとなりつつあります。ここでは、システム導入による具体的なメリットと、注意すべきデメリットを解説します。
勤怠管理システムのメリット
勤怠管理システムのデメリット
メリット①集計・転記が自動化され業務効率が大幅アップ
従業員が打刻した瞬間、データはクラウド上のサーバーに送信され、即座に自動集計されます。労働時間、残業時間、深夜時間などが、あらかじめ設定した就業規則に基づいて自動で計算されるため、タイムカードでの管理につきものの、丸1日かけた集計作業はなくなります。
月末の締め作業が数時間から数分に短縮されることで、管理者は本来の経営業務に集中できる点が大きなメリットです。また、手作業による転記ミスや計算ミスが根本から撲滅されるため、給与計算の正確性が飛躍的に向上します。この業務効率化は、システム導入の最大のリターンと言えます。
メリット②多様な打刻方法で直行直帰・リモートワークにも対応
タイムカードでは物理的に不可能だった多様な働き方に対応できます。
スマートフォンのGPS機能を使えば、従業員がどこで打刻したかの位置情報も記録されるため、店舗やオフィスといった指定範囲内でのみ打刻を許可できます。これにより不正な打刻を防ぐことが可能です。
建設業や営業職の直行直帰にも対応でき、交通系ICカードをかざすだけの打刻、指紋や静脈による生体認証打刻なども選択できます。生体認証は本人以外絶対に打刻できないため、代理打刻を100%防止できます。店舗のWi-Fiに接続している状態でのみ打刻を許可する設定も、不正防止に有効です。
メリット③リアルタイムで労働時間を把握できる
管理者は、オフィスや自宅からでも全店舗の「今、誰が働いているか」をリアルタイムで把握できます。月末を待たずに人件費の状況がわかるため、「今月は人件費が膨らみそうだ」といった経営判断を月の途中で行うことが可能になります。
複数店舗を経営する飲食店オーナーであれば、各店舗の勤怠状況を一元管理でき、店舗間の人件費比較や、ヘルプ勤務の労働時間を正確に按分することも可能です。このリアルタイム性は、迅速な経営判断を支える重要な基盤となります。
メリット④法令遵守が容易になる
法務リスクの低減は、システム導入の最大のメリットの1つです。
システムログは修正履歴も含めてすべて保存されるため、労働基準監督署が求める「客観的な記録」の条件を完全に満たします。また、割増賃金率の変更や有給休暇の取得義務化など、法改正があるとクラウド型システムは自動でアップデートされます。
経営者が自ら法改正をキャッチアップし、Excelの計算式を修正する必要はありません。さらに、従業員の残業時間が法定の上限に近づくと、管理者と本人に自動でアラートが通知される機能があり、意図しない法令違反を未然に防げるでしょう。
この自動的なコンプライアンス維持機能は、経営者の法的リスクを大幅に軽減します。
メリット⑤給与計算システムとの連携で二重入力が不要
多くの勤怠管理システムは、主要な給与計算ソフトと連携できます。勤怠管理システムが自動集計した「確定済みの勤怠データ」をボタン1つで給与計算ソフトに送信できるため、手作業による二重入力が不要です。
たとえばfreee会計を利用している企業であれば、freee勤怠管理Plusのような同一ベンダーの製品を選択すると、最もシームレスなAPI連携が期待できます。この連携により、給与計算ミスを根本から撲滅でき、月末の給与処理にかかる時間を大幅に短縮できます。
集計から給与計算までの一連の流れが完全自動化されることで、経営者は本来の業務に専念できます。
デメリット①導入・運用にコストがかかる
タイムカードと比較した場合、月額のランニングコストが発生します。
料金体系は多くの場合「1ユーザーあたり月額〇〇円」という従量課金制です。たとえば、従業員30名規模の場合、月額6,000円から9,000円程度が相場です。クラウド型システムであれば初期費用は0円のサービスも多いですが、長期的なコストを見据えた検討が必要です。
ただし、このコストは集計作業に奪われる時間の人件費、給与計算ミスによるトラブル対応コスト、法的リスクへの備えといった「隠れたコスト」と比較する必要があるでしょう。月額数千円のシステム利用料は、実は月末の丸1日の集計作業の人件費より安い場合もあります。
デメリット②システム定着まで教育が必要
新しいシステムを導入する際は、従業員への操作説明や管理者側の設定作業が必要です。特にITツールに不慣れなスタッフが多い職場では、一時的な混乱や抵抗が起こる可能性があります。システムの使い方がわからず、打刻忘れが頻発したり、管理者が設定に手間取ったりすることもあるでしょう。
導入期の教育コストや定着までの期間は、事前に想定しておく必要があります。ただし、多くのシステムは直感的な操作性を重視して設計されており、電話やチャットでのサポート体制も充実しています。初期のハードルを乗り越えれば、長期的には業務効率が大幅に向上するでしょう。
デメリット③自社ルールに合わないリスクがある
安価なシステムや汎用的なシステムの場合、自社の複雑な就業規則に対応しきれない場合があります。たとえば飲食店特有の「中抜け休憩」や「大入り袋」のカウント、変形労働時間制やフレックスタイム制など、業種や企業ごとの独自ルールに柔軟に対応できるかは事前に確認が必要です。
システムを選ぶ際は、自社の勤務形態や就業規則に対応しているかを必ずチェックしましょう。
無料トライアル期間を活用して、実際の業務フローに合うかを検証することをおすすめします。システムに自社の運用を合わせるのではなく、自社の運用に合うシステムを選ぶことが成功の鍵となります。
【業種・規模別】タイムカードと勤怠管理システムどちらを選ぶべきか
企業の状況によって、最適な選択は異なります。ここでは、業種と規模の観点から、どちらが適しているかを具体的なケーススタディで解説します。
タイムカードが向いている企業の特徴
タイムカードが現実的な選択肢となるのは、以下のような条件が揃っている場合です。
- 従業員10名未満
- 事業所が1か所のみ
- 従業員全員が同じ場所に出社し、勤務時間がほぼ固定
- 経営者が常に現場におり従業員の出退勤を直接確認できる
従業員が10名未満の特定の事業では、法定労働時間が週44時間まで認められる「特例措置」が適用されます。しかし従業員が10名以上になるとこの特例が外れ、週40時間の原則が適用されます。
「10名の壁」は、法的な勤怠管理の複雑性が一気に増すラインであり、タイムカード運用が限界を迎える1つの目安です。
勤怠管理システムが向いている企業の特徴
勤怠管理システムの導入を強く推奨するのは、以下のような企業です。
- 従業員10名以上
- 事業所が複数あり複数拠点での管理が必要
- シフト制で勤務パターンが複雑
- 直行直帰や在宅勤務・フレックスタイム制を適用している
- 給与計算ミスや集計の手間をなくしたい
- 法令順守を徹底したい
上記の条件に1つでも当てはまる場合、タイムカードでは対応しきれない可能性が高いです。特に複数店舗を展開している飲食店やアパレル店では、各店舗の勤怠データをリアルタイムで一元管理できるクラウド型システムが不可欠となります。
【ケース1】従業員10人・全員出社の小規模オフィス → タイムカード(ただし注意が必要)
この規模であれば、まだタイムカードでの手動集計も可能です。ただし「10名」は法的特例が外れる危険なラインです。集計の手間と、将来の従業員増加を見越して、この段階で無料または安価なシステム導入を検討する価値は十分にあります。
HRMOSやポチ勤のような無料プランのあるシステムも存在しますが、データ保存期間が1年に制限されている場合、法律で定められた3年から5年の保存義務を満たせません。結局、管理者が毎年手動でデータをエクスポートし別途保管するという「手作業」と「リスク」が復活します。
月額数千円の有料プランは、この「法的に必要なデータを自動で長期間保存する」義務を代行してくれる費用、すなわち「コンプライアンス維持費用」でもあると理解する必要があります。
【ケース2】従業員20人・フレックス制・リモートワーク多めのIT企業 → システム
勤怠管理システムが必須です。タイムカードでは、フレックスタイムのコアタイム管理や、リモートワーク中の労働時間を客観的に記録することが不可能です。
PCのログイン・ログオフ時間で自動的に打刻できるようなシステムが適しています。従業員が自宅から業務を開始した時刻、終了した時刻を正確に記録し、労働時間を客観的に証明できることが重要です。
働き方改革が進む現代において、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を支えるには、勤怠管理システムは不可欠なインフラです。
【ケース3】従業員30人・直行直帰が多い建設業 → システム
勤怠管理システムが必須です。現場に直行し、現場から直帰する従業員の労働開始・終了時刻をタイムカードで記録することはできません。
このケースでは、スマートフォンのGPS打刻機能が必須です。これにより「いつ、どの現場で」業務を開始・終了したかを客観的に証明できます。現場での労働時間を正確に把握することは、適正な給与支払いだけでなく、労働安全衛生の観点からも重要です。
建設業特有の働き方に対応できるシステムを選ぶことが、コンプライアンスと従業員の信頼を守る鍵となります。
【ケース4】従業員30人・シフト制の飲食店(単店舗) → タイムカード(非推奨)またはシステム
タイムカードでも運用は可能ですが、30名分の複雑なシフトを手動で集計するのは非常に手間がかかり、給与計算ミスの温床となります。この規模の単店舗飲食店向けに、極めて安価なシステムが存在します。
たとえばMAIDO SYSTEMは、1店舗あたり月額1,980円で利用人数無制限で提供されています。管理者が1日に費やす集計作業の人件費と比較すれば、コスト上のメリットは明確です。
【ケース5】従業員30人・シフト制の飲食店(複数店舗) → システム
勤怠管理システムが絶対に必要です。まず、単店舗とは根本的に経営の複雑性が異なります。
まず複数店舗分の紙のタイムカードを月末に回収して回る物流コストと手間が発生します。次に店舗間でスタッフが応援に行く際の労働時間を、店舗ごとに正確に按分する必要があります。そして複数店舗の勤怠データをリアルタイムで一元管理できなければ、店舗ごとの正確な人件費比較や迅速な経営判断ができません。
これらの課題は、クラウド型の勤怠管理システムでなければ解決不可能です。Sync Upやfreee勤怠管理Plusのようなシステムを導入することで、経営者はどこからでも全店舗の勤怠状況を把握でき、データに基づいた迅速な意思決定が可能になるでしょう。
勤怠管理システムの選び方【4つのチェックポイント】
勤怠管理システム導入を決めた後、無数にあるサービスから自社に最適なものを選ぶための4つの基準を解説します。
①自社の勤務形態・就業規則に対応しているか
システムが自社のルールに適合しているかを確認します。
特に飲食店や小売業の場合、複雑なシフトパターンに対応できるか、深夜割増の自動計算ができるか、複数店舗間のヘルプ勤務に対応できるか、フレックスタイムや変形労働時間制に対応できるかを必ずチェックしましょう。
自社の就業規則が複雑であるほど、システムの柔軟性は重要です。無料トライアル期間を活用し、実際の勤務パターンでテスト運用することをおすすめします。システムに自社の運用を無理に合わせるのではなく、自社の運用にフィットするシステムを選ぶことが成功の鍵です。
②給与計算ソフトとの連携は可能か
業務効率化を考える際に、最重要のポイントです。現在使用している給与計算ソフトと連携できるかを確認します。
連携には大きく分けて2つのレベルがあります。
CSV連携は、勤怠データをCSVファイルとして出力し、それを給与計算ソフト側で手動で取り込む方式です。
API連携は、両システムが裏側で自動的に接続され、ボタン1つで勤怠データが給与計算ソフトに反映される方式です。API連携の方が手間がゼロに近くなりますが、CSV連携でも手入力より効率的です。
たとえば自社がfreee会計を利用している場合、freee勤怠管理Plusのような同一ベンダーの製品を選択すると、最もシームレスな連携ができます。
③コストは予算内か(無料プラン・月額相場)
コストは重要な選定基準です。月額相場としては、一般的なクラウド型システムは1ユーザー月額200円から300円が相場です。
無料プランも存在しますが、注意点があります。HRMOS勤怠は30名まで無料、ポチ勤は人数無制限で無料といったサービスもありますが、無料プランには機能制限やデータ保存期間の制限が設けられている場合があります。無料プランのデータ保存期間が1年だった場合、法律で定められた3年から5年の保存義務を満たせません。結局、管理者が毎年手動でデータをエクスポートし別途保管するという「手作業」と「リスク」が復活します。
月額数千円の有料プランは、この「法的に必要なデータを自動で長期間保存する」義務を代行してくれる費用、すなわち「コンプライアンス維持費用」でもあると理解する必要があります。
④サポート体制は充実しているか
特に初めてシステムを導入する場合、サポート体制は重要です。初期設定である就業規則の登録などでつまずかないよう、電話、メール、チャットで迅速に対応してくれるベンダーを選びましょう。freeeやMAIDO SYSTEMなど、導入支援サービスを提供している企業もあります。
システムの機能が優れていても、困ったときに相談できる窓口がなければ、社内での定着は難しいです。導入初期のサポートが手厚いベンダーを選ぶことで、スムーズな移行が実現できます。
勤怠管理で押さえるべき法令のポイント
最後に、勤怠管理の選択がなぜ「経営マター」であるのか、その根拠となる3つの重要な法的ポイントを解説します。これらは、労働基準監督署の調査で必ず確認される項目です。
労働時間の客観的な把握義務(2019年4月施行)
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、事業者は管理監督者を含むすべての従業員の労働時間を「客観的な方法により」把握することが法律上の義務となりました。
厚生労働省のガイドラインが示す「客観的な方法」とは、原則として「タイムカード、ICカード、PCの使用時間の記録など」です。しかし同ガイドラインは「タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録などのデータを有する場合にも関わらず、自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは、認められない」とも釘を刺しています。
つまりタイムカード、特に手書きや改ざんが容易なものは「自己申告」とみなされるリスクがあり、システムログのような客観的記録が利用可能であるにも関わらず、タイムカードのみに依存している場合、「客観的把握義務」を果たしていないと指導される可能性があるでしょう。
タイムカードの保管期間は5年(経過措置で当面3年)
労働基準法により、タイムカードや出勤簿などの労働時間の記録は、原則として5年間保存することが義務付けられています。
ただし2020年の法改正に伴う経過措置として、「当分の間は3年間」の保存でもよいとされています。紙のタイムカードでこの3年から5年の保管義務を果たすには、膨大な物理スペースと管理台帳が必要になります。
一方、勤怠管理システムの有料プランであれば、この法的要件を満たすデータが自動的にクラウド上に保管されます。システムの月額利用料は、単なる集計の効率化費用だけでなく、法令遵守のための「保管代行費用」でもあると考えるべきでしょう。
残業時間の上限規制と36協定
36協定を結んだ場合でも、時間外労働には上限が定められています。この上限時間を超えると、たとえ割増賃金を支払っていても法律違反となります。
さらに割増賃金の計算は非常に複雑です。法定時間外労働は25%以上、深夜労働は25%以上、法定休日労働は35%以上、月60時間超の時間外労働は50%以上となります。
たとえば飲食店などで深夜に時間外労働が重なれば割増率は50%となり、深夜に法定休日労働が重なれば60%となります。
これらの複雑な計算を手作業で行うのは、給与計算ミスの温床です。勤怠管理システムは、これらの割増賃金を就業規則に基づいて1分単位で自動計算するため、ヒューマンエラーによる賃金未払いのリスクをゼロに近づけられます。
給与の支払い間違いは、従業員との信頼関係を損ねるだけでなく、法的な追及を受ける原因ともなります。勤怠管理システムの導入は、この最も基本的かつ重大なリスクを回避するための、現代の経営者にとって不可欠な投資と言えます。
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