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個人事業主になるには?開業届から確定申告までメリットを徹底解説!

最終更新日: 2021年12月21日

副業をもっと広げたい、趣味を事業として展開したい、特技を生かして独立したい、など個人事業主を目指す人が増えています。個人事業主とはどんな仕事の形を指すのか、届け出の方法や保険のこと、税金のことに加え、活用できる補助金、助成金まで。個人事業主になりたいあなたに必要な情報を徹底解説します!

この記事の監修税理士

越智聖税理士事務所 - 愛媛県松山市天山

 

個人事業主とは?

デザイナーや飲食店経営者など個人で仕事をしている人が個人事業主です
デザイナーや飲食店経営者など個人で仕事をしている人が個人事業主です

個人事業主とはどんな立場なのでしょうか。また、個人事業主になるためには、どんな手続きが必要なのでしょうか。まずは、個人事業主の基本的な定義をご紹介します。

個人事業主とは?法人との違い

個人事業主とは、文字通り「個人で事業を行っている人」のことです。

この場合の「事業」は継続して繰り返し行う業務を指します。例えば、同じようにフリマアプリで商品を販売していても、年に数回だけ、自分の不用品を販売している場合は「事業」とはみなされません。一方、毎月なんらかの商品を出品し、継続的に販売している場合は「事業」とみなされ、個人事業主となります。

個人事業主とは別に「法人」という言葉もあります。法人とは、株式会社や合同会社などの会社組織を設立している場合を指します。従業員を雇用していても、法人として登記をしていない場合は個人事業主になります。

個人事業主と法人の違いは、社会的な認知と信用度合いのほか、融資等に係る責任範囲、資本金の有無などの設立手続き、税金の内容などさまざまなものがあります。

<個人事業主と法人の違い>

 個人事業主法人
社会的認知認知度は低い認知度が高い
社会的信用信用度は高くない信用度が高く融資を受ける場合は有利
責任範囲無限(負債全額の支払い義務がある)有限(出資額が限度)
資本金不要必要(1円~)
手続き必要事項を記入した開業届を税務署に提出定款や登記書類を作成し法務局、税務署、自治体、年金事務所等で必要な手続きを行う
税金の種類所得税法人税

個人事業主として行う事業の種類には決まりはありません。デザイナーやライターなどの「クリエイティブ系」、講師やインストラクターなどの「先生系」、税理士や弁護士などの「士業」などは、個人事業主として仕事をしている人が多い業種です。個人で店舗経営をしている店主個人事業主です。

<主な個人事業主の業種>

種類業種例
クリエイティブ業グラフィックデザイナー、WEBデザイナー、ライター、フラワーデザイナー、翻訳家、エンジニア、プログラマーなど
講師・コンサルタント業塾講師、着付師、カメラ教室講師、マナー教室講師、コンサルタント、カウンセラーなど
士業行政書士、税理士、弁護士、社会保険労務士、中小企業診断士など
飲食業カフェ、居酒屋、レストランなどさまざま
小売業雑貨店、文房具店、ネット通販、古着屋など
美容・健康業美容師、治療院経営、サロン経営 など
農業・漁業個人や家族で営む農業者、漁業者 など
建設業職人、建築士、設計士 など

個人事業主とフリーランスは違うのか?

個人事業主とは別に「フリーランス」という言葉もあります。実は、フリーランスと個人事業主は同じものを指しているわけではありません。

フリーランスとは「仕事ごとに契約を結んで、独立して仕事する」ことを指します。デザイナーやプログラマー、コンサルタントなどの働き方がこれにあたり、一定期間、または一回だけ請負契約や業務委託契約などを結んで、特定の仕事を行う場合を指します。

例えば、飲食店やサロンを経営している個人事業主は、誰かと契約を結んで仕事をするわけではないのでフリーランスにはなりません。個人としてレストラン経営やメニュー開発を請け負っている料理人が、一定期間、ある飲食店において契約で決められた仕事をする場合はフリーランスになります。

個人事業主以外でも法人を設立してフリーランス契約で仕事をしている人もいます。

個人事業主には会社員でもなれるのか?

個人事業主には、会社員でも開業届を出せばなれます。副業を行っている会社員が、その収入を確定申告する際は、個人事業主のほうがメリットがある場合もあります。

個人事業主になれば、確定申告の際「青色申告」を選択できます。青色申告は、個人事業主控除や専従親族の給与控除、赤字の繰越などを活用でき、税額を抑えることが可能なのです。

青色申告は、必要な帳簿づくりなど手間もかかりますが、それほど収入額が大きくない場合は、個人事業主のほうが大きなメリットがあります。

個人事業主と自営業の違い

個人事業主と自営業には違いがあるのでしょうか。

個人事業主と名乗れるのは「開業届を出し、法人格をもたないもの」と法律で定められています。

一方の自営業は「自分で事業を営んでいる人」を表す社会的名称です。個人事業主だけでなく、株式会社などの法人を設立している社長も、自分で事業を営んでいるので「自営業」になります。

個人事業主も法人の社長も「自営業」であり、その中で法人格をもたない人が個人事業主ということになります。

 個人事業主になったら「開業届」を提出しよう

個人事業主になるためには開業届を税務署に提出します
個人事業主になるためには開業届を税務署に提出します

個人事業主になるためには「開業届を提出すること」が法律で定められています。個人として何らかの事業を始めた場合は、開業届を出さなければならないことに注意しましょう。

開業届とは?

個人事業主になるために必要な開業届。「個人事業の開業・廃業届出書」というのが正式な名前です。

事業を始めた際、開業届を提出することは法律で義務付けられていますが、ペナルティがないため、提出していない人もいます。

しかし、開業届を提出しなくてもよいわけではありません。出さずにいると、節税効果が高い青色申告ができないなどの大きなデメリットもあります。事業を始めたときは、開業届を提出するようにしましょう。

開業届の提出期限は、原則として開業日から1カ月以内とされています。開業日の基準は決まっているわけではありません。自分で決めることができるので、自分に都合がよい日や記念になる日を開業日にしている人が多いようです。

開業届は国税庁のホームページからダウンロードできます。

【参考】国税庁 [手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続

開業届には個人事業主として事業を行う際に使う屋号のほか、どこで、どんな事業を行うのかを記載します。屋号を届け出ると、屋号名義で銀行口座の開設ができるようになります。

開業届を提出する際には、提出用と控用(写し)の2部を提出します。郵送した際は、返信用封筒を同封しておけば、控用に受け取った役所名と受付日を押印して返信してくれます。この控えは、税務関連の書類を提出する際や、金融機関から融資を受ける際などに提出を求められることがあるので、大切に保管しておきましょう。

開業届の提出に必要な書類

個人事業主として登録するためには、開業届を1枚提出するだけで申請は完了します。しかし、確定申告の際により多くの控除を受け、納税額を抑えるためには、いくつかの書類を提出する必要があります。

全ての書類が必要なわけではありません。必要に応じて準備しましょう。

<提出が必要な書類一覧>

書類名内容
青色申告承認申請書確定申告を青色申告で行う場合に提出。開業から2カ月以内に提出すれば、その年分から青色申告での確定申告が可能
青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書青色申告で、家族への給与を必要経費にするための届出書
青色申告で、家族への給与を必要経費にするための届出書

給与支払事務所等の開設届出書
従業員を雇用する場合に提出。最初の給与支払いから1カ月以内に提出する。
源泉所得納税期の特例の承認に関する申請書従業員を雇用する場合に提出。通常翌月10日に納税する、給与から源泉徴収した所得税について、半年ごとの納税に変更することができる(従業員が10人未満の場合に限定)

専門業種に必要な資格や届け出を調べよう

そのほかにも、個人事業主になる場合、業種によって資格が必要なものや、別途届出や許可が必要なものもあります。都道府県や警察署、保健所など、申請する場所が異なるだけでなく、都道府県によって条件が変わる場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

<専門業種で必要な資格や届出(主なもの)>

業種必要な資格・書類
飲食店飲食業許可、食品衛生責任者、防火管理者、スナックの開業手続き、喫茶店・カフェの開業手続き など
美容室美容室開設届(施設の平面図、見取り図、従業員の免許、従業員の医師による診断書)など
リサイクルショップ古物商許可
酒類の販売酒販免許
建設業建設業許可

個人事業主の社会保険手続き

個人事業主は国民健康保険、国民年金に加入します
個人事業主は国民健康保険、国民年金に加入します

会社に所属していたときには、健康保険や厚生年金などの社会保険への加入は会社がやってくれました。個人事業主になったら、自分で社会保険の手続きが必要です。これまで家族の扶養に入っていた人は、収入によって扶養に入れるかどうかが決まるので、事前に調べておきましょう。

個人事業主の国民健康保険加入について

これまで会社員だった人が独立して個人事業主になる場合は、通常、会社で加入していた健康保険を外れ、国民健康保険への加入手続きを行います。手続きは退職の翌日から14日以内に、住んでいる市町村への届け出が必要です。

届出を忘れてしまうと、病気やケガをした際、保険適用が受けられないので注意しましょう。

国民健康保険の保険料は、前年の所得と世帯人数、加入者の年齢で決まります。家族一人ひとりに保険料がかかるため、思いのほか保険料が高くなることもあります。会社員として会社の健康保険に加入していた人が個人事業主になる場合は、会社の保険をそのまま継続する「任意継続」という方法も検討しましょう。

任意継続は、退職後の2年間、会社の健康保険組合を継続できる制度です。退職日から20日以内に手続きを行えば、それまで使っていた健康保険をそのまま継続できます。

ただし、保険料は全額負担。社員だった間は会社が保険料を半分負担しているため、それまで支払っていた保険料の倍額になると考えるとよいでしょう。それでも、一人分の保険料で家族全員が加入していることになるので、家族が多い場合は保険料が安くすむ場合もあります。

個人事業主の健康保険では、もう一つ、国民健康保険組合も選択できます。この保険は同種同業種の人が加盟できるもので、医師や建設業、税理士、飲食業など、それぞれの業種で組合がつくられています。

国民健康保険組合の保険料は固定料金の場合が多いので、国民健康保険より保険料が安くなります。自分の業種で保険組合があるかどうか、また、加入の条件にはどんなものがあるか、一度調べておきましょう。

個人事業主の国民年金

年金加入は国民の義務。会社員から個人事業主になったら、国民年金の加入手続きが必要です。また、専業主婦として会社員の家族の扶養に入っていた人も、年収130万円を超えると、国民年金に加入することになります。

年金を支払うことで、将来の年金支給額が決まります。会社員の場合、国民年金に厚生年金額が加算されますが、個人事業主は国民年金のみ。将来の生活費に不安がある場合は、「国民年金基金」に加入して、保険料を積み立てておくと安心です。

また、毎月の国民年金保険料に400円をプラスで納めることで、将来もらう年金額が増える「付加年金」という制度もあります。これは、会社員や扶養に入っている主婦は加入できない制度。毎月少額でも、将来の安心感は大きいので、検討してみましょう。

小規模企業共済

このほかにも、個人事業主が加入できる共済制度もあります。共済とは、加入者が掛け金を出し合って「相互扶助」する仕組みのこと。みんなが持ち寄ったお金を活用して、困った人を助け合う制度です。

小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の経営者が加入できる共済。廃業した際の生活保障だけでなく、退職時の生活資金としても支給されます。加入者特典として、融資制度もあり、資金調達も支援してもらえます。

中小企業倒産防止共済

中小企業倒産防止共済は経営セーフティ共済とも呼ばれる制度です。中小企業が加入でき、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなった場合、無担保・低金利で貸付が受けられます。

倒産以外でも、急な資金が必要になった場合の貸付に対応してくれ、いざというときの安心につながります。

共済への掛け金は経費扱いにできるので、節税にもつながります。

フリーランス保険

フリーランスとして仕事をする個人事業主は、仕事がなくなったり、病気やケガで収入がなくなるなど、常にリスクと隣り合わせ。そんな場合を補償してくれるのがフリーランス保険です。

仕事中の事故だけでなく、情報漏洩や納期遅延に伴う賠償リスクの補償、ケガや病気で働けなくなった場合の所得などをカバーしてくれます。

加入者に対しては、業務効率化ツールの優待や、新しい仕事獲得のチャンスにもなる、会員同士の交流の場の提供など、さまざまな特典もあります。

フリーランスと名前はついていますが、フリーランスとして働いていない人でも加入OK。副業をしている会社員も加入できます。

雇用保険はどうなる?労災、失業保険について

会社員のときに加入していた雇用保険はどうなるのでしょうか。

雇用保険は、雇用されている労働者に対する制度です。労働者が失業した際に失業保険として生活を支援するための制度なので、雇用された労働者ではない個人事業主やその家族は、雇用保険に加入することはできません

ただし、個人事業主として一人でも社員を雇用する場合は、雇用保険に加入する義務があります。もし、加入しない場合は罰則(6カ月以上の懲役、または30万円以上の罰金)を科せられます。

同じ理由で、失業保険や労災保険も、個人事業主には適用されません。会社を退職後、失業手当を受給いていた人は、開業届を出すことで「失業状態」ではないとみなされます。個人事業主としての収入がなかったとしても、手当はもらえなくなるので注意しましょう。

個人事業主の税金について考える

個人事業主は確定申告をして納税額を計算します
個人事業主は確定申告をして納税額を計算します

納税は国民の義務。個人事業主は確定申告をして、さまざまな税金を納めることになります。個人事業主はどんな税金をいくらぐらい払うことになるのでしょうか。しっかり準備をしておくことで得られる節税対策についても考えておきましょう!

個人事業主が納める税金は4つ

個人事業主が納める税金は主に4つです。

  • 所得税
    所得に応じてかかる税金。売上から必要経費、控除などを差し引いて決定する。
    <計算式>
    売上-必要経費-各種控除=課税所得
    課税所得×税率-課税控除=所得税額
  • 住民税
    住民全員にかかる均等割と、所得に応じて決定する所得割を合計して決定する。
    <所得割の計算式の例>
    (所得金額-所得控除)×10%-税額控除額=所得割
  • 消費税
    課税売上額が1,000万円以上など、一定の条件を超えた事業主が納める。開業して2年間も、免除される。
  • 個人事業税
    個人事業主が納める。ただし、売上から経費や控除を引いた金額が290万円以下の場合免除される。

個人事業主になれば、これら税金全てを納めなければならない、というわけではありません。消費税と個人事業税は、ある程度の収入がある事業者のみが納めます。

個人事業主が受けられる控除

税金を計算する際に重要になるのが控除です。控除とは、事業に必要な支出や生活に必要な金額などを収入から差し引いて計算する制度。個人事業主に適用される控除にはさまざまなものがあります。税金を計算する際には、間違いなく適用できるよう、控除の種類はしっかり確認しておきましょう。

控除には収入から経費を引いた所得から差し引く「所得控除」と、計算して得られた税額から差し引く「税額控除」の2つがあります。

<所得控除の種類> 

控除名控除内容
基礎控除誰でも受けられる控除。一律38万円
医療費控除10万円以上の医療費を支払った際受けられる控除。10万円を超えた額が控除される
雑損控除災害や盗難にあった場合に適用される控除
寄附金控除国や都道府県、認定NPO法人や公益法人へ寄付した際に寄付額が控除になる。ふるさと納税の控除もこの一つ
生命保険料控除生命保険の保険料の一部を控除できる
地震保険料控除地震保険の保険料の一部を控除できる
配偶者控除配偶者の所得が38万円以下の場合に適応される控除
配偶者特別控除配偶者の所得が48万円以上133万円以下の場合に適用される控除
扶養控除16歳以上の親族を扶養している際に受けられる控除。高齢の親を扶養している際などに適用される
社会保険料控除国民健康保険や国民年金などの社会保険料額が控除額になる。家族の保険料も控除対象
小規模企業共済等掛金控除共済の掛け金のほか、確定拠出年金の掛け金も控除対象
障害者控除本人に障害がある場合に受けられる控除
寡婦控除本人が一定の条件を満たした寡婦(寡夫)である場合に受けられる控除
勤労学生控除働きながら学校に通っている学生が受けられる控除

<主な税額控除の種類>

控除名控除内容
配当控除所得の中に剰余金配当などがある場合、その所得の10%または5%が控除できる
外国税額控除外国での仕事で得た所得のうち、外国で課税されている場合、二重課税にならないよう控除が受けられる
政党等・認定NPO法人・公益社団法人等寄付金特別控除政党や認定NPO、公益社団法人などに一定の寄付をした場合に受けられる控除。寄付金控除と二重には受けられない
住宅借入金等特別控除住宅ローンを組んで新築や増改築をした際に受けられる控除
中小企業者が機器の購入、経営力向上設備を購入したときの特別控除中小企業者が機器の購入、経営力向上設備を購入したときの特別控除

税額控除を受ける際には、適用条件を満たすことを証明する書類が必要な場合があります。控除を受けようとする場合は、国税庁のHPなどで事前に確認しておきましょう。

個人事業主が考えるべき節税対策

さまざまな控除があるとはいえ、どんな条件で、どのくらいの控除が受けられるのか知らなければ、無駄な税金を支払うことにもつながります。確定申告の際に慌てなくて良いように、日ごろからしっかり考えておくことが重要です。

個人事業主が節税対策としてまず考えるべきことは、いかに所得額を抑えるか。事業に関連する経費の計上漏れがないか、日々の帳簿付けできちんと計算しておきましょう。

自宅を事務所として使っていたり、車を事業用に使用したりしている場合は、使用の割合を明確にすることで「家事按分」として経費計上できます。また、自動車税や登録免許税、個人事業税など、税金の一部は経費として計上できます。

また、小規模企業共済等掛金への加入は事業のリスクを抑えながら節税にもつながる方策。将来を見据えながら、どのように加入するか検討してもいいですね。

個人事業主の確定申告

個人事業主の多くは青色申告で確定申告をしています
個人事業主の多くは青色申告で確定申告をしています

個人事業主になると、確定申告で自分の収入や所得を申告し、毎年の納税額を確定します。基本的な確定申告の方法を解説します。

個人事業主の確定申告について

確定申告は、さまざまな理由で収入を得ている人が、自分の所得にかかる所得税を計算し、税務署に申告するためのものです。

会社員に確定申告が不要なのは、会社が年末調整で社員の確定申告を行っているから。そのため、独立して事業を行っている個人事業主だけでなく、副業を行っている人も確定申告をする必要があります。

確定申告が必要なのは、収入から経費を差し引いた所得が、基礎控除額である38万円を超えている人、また、給与以外の収入が20万円以上ある人です。

それ以外の個人事業主でも、あらかじめ報酬から所得税を源泉徴収されている場合は、確定申告をすれば、払いすぎた税金が還付金として戻ってきます。

確定申告は
毎年2月16日から3月15日までに
前の年の1月1日から12月31日までの所得
について申告します。

確定申告では、所定の確定申告書に必要事項を記入して提出します。確定申告書は税務署のホームページからダウンロードすることもできます。

青色申告に必要な書類と申告方法について

個人事業主の確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。違いは、提出する書類の内容。それによって、控除額などが大きく異なります。帳簿作成の手間と控除額を考慮した上でどちらにするか決めてよいことになっています。

<青色申告と白色申告の違い>

 青色申告白色申告
必要な帳簿仕訳帳・総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など入金額と必要経費を記載した必要最低限の帳簿
必要な書類損益計算書、貸借対照表、棚卸表など作成した棚卸表など
帳簿や領収書の保存期間7年7年
控除特典青色申告特別控除、青色事業専従者給与、貸倒引当金、純損失の繰越しと繰戻し、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 など事業専従者控除

青色申告をすると、控除額が大きくなるので、多くの個人事業主は青色申告を選択しています。青色申告で確定申告をするためには、税務署に「青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。開業後、白色申告から青色申告に変更する場合は、1月1日から3月15日までに申請書を提出しましょう。

個人事業主の経費

所得税額を抑えるためには、業務に使った費用をどれだけ経費にできるかが大きなポイントです。どんなものが経費になるかを確認した上で、忘れずに計上するようにしましょう。

個人事業主が経費として計上できるものにはさまざまなものがあります。

<経費の一覧>

科目経費の例
租税公課個人事業税などの税金 など
荷造運賃宅配便や郵便物の送料、発送時の梱包資材 など
水道光熱費水道・ガス・電気の料金 など
旅費交通費仕事で使った公共交通の料金、ガソリン代、タクシー代、宿泊費、駐車場代 など
通信費電話代、インターネット料金、切手代、レンタルサーバー代 など
広告宣伝費チラシ、パンフレット制作費、ホームページ作成費 など
接待交際費取引先との飲食費、お中元・お歳暮代、お祝い代 など
損害保険料自動車保険、事務所の火災保険 など
修繕費事務所の修理費、自動車やパソコンの修理代 など
消耗品費文房具、電球、名刺、印鑑 など
減価償却費パソコン、コピー機、自動車などの購入費を一定期間に渡って計上
福利厚生費従業員の慰安旅行費、レクリエーション費、従業員の健康診断費 など
給料賃金従業員の給与
外注工賃外部業者に委託した工事費、デザイン費、開発費 など
利子割引料自動車ローン など
地代家賃事務所の賃貸料、駐車場代 など
貸倒金回収できなくなった売上などを計上
雑費どの科目にも入れられない少額の必要経費
専従者給与青色事業専従者として従事している家族への給与

これ以外にも、打ち合わせの際のコーヒー代なども、会議費などの項目で計上できます。

自宅を事務所として使っている場合は、家賃や光熱費なども経費の一部にできます。ただし、経費計上が認められるのは、仕事で使っている部分だけ。どの程度を仕事で使っているのかを明確にし、その基準で仕事用、プライベート用に分けて計算します。これを「家事按分」といいます。

分け方のルールは自分で決められますが、明確な根拠が必要です。

<家事按分の例>
50平方メートルの自宅で、10平方メートルを仕事で使用
→家賃の5分の1が経費

誰が見ても仕事スペースに見えるよう、区分けされている必要もあります。

同じように、電気代やインターネット代、携帯電話代なども使っている時間などから割合がでれば、家事按分が可能です。水道代やガス代は、業種によっては認められにくいかもしれません。

間違ったものを計上してしまえば、脱税が疑われ、税務調査が入ってしまうこともあります。無理に経費にしようとせず、誰が見ても納得できる基準で、按分のルールを決めておきましょう。

個人事業主の補助金、助成金、融資について

個人事業主が活用できる補助金・助成金は各省庁のホームページで確認できます
個人事業主が活用できる補助金・助成金は各省庁のホームページで確認できます

新しい事業を行いたい、仕事を継続するために資金が必要、という場合、個人事業主を支援する補助金や助成金を活用するのも一つの方法です。目的に応じて、国や市町村からはさまざまな種類の補助金、助成金が出されています。

個人事業主でも受けられる補助金と助成金について

個人事業主が活用できる多くの補助金や助成金。どちらも返済が不要で事業に使えるお金です。この二つは名前が違うだけ、ではありません。

助成金=一定の条件を満たせば支給されるもの。雇用や開発を対象にしたものが多い

補助金=期間内に応募し、採択されたら支給されるもの。審査があり、誰でももらえるものではない

補助金や助成金を申請する際には、規定の申請書類の作成と提出が必要です。申請書類には、どんなことにどんな費用が必要なのか、また、その事業を行うことで、自分の事業がどのように広がって収入増や市場開拓につながるのか、などを具体的に記載します。

補助金や助成金の情報は、国の関係省庁や自治体のホームページに掲載されています。例えば、中小企業が活用できる経営革新や新事業創出などに使える補助金は中小企業庁や経済産業省から情報が得られます。

また、中小企業基盤整備機構のビジネス支援検索サイト(J-NET21)や、補助金情報だけをまとめたポータルサイト「みんなの助成金」「補助金ポータル」などを活用するのもおすすめです。

【参考】

自分の希望にあった補助金や助成金をもっと手軽に探したいのであれば、地域の商工会議所所や商工会に相談してみるのもおすすめ。専門の相談員が、申請書の作成などのアドバイスもしてくれます。

個人事業主が申請すべき補助金と助成金

それでは、個人事業主が申請したい補助金や助成金について、いくつかご紹介しましょう。

  • 小規模事業者持続化補助金
    個人事業主など従業員が少ない事業者が応募できる補助金です。事業を維持継続させる目的なので、販路開拓や商品開発などに使う費用が補助対象となります。補助金額は上限50万円で経費の3分の2まで。最寄りの商工会議所や商工会の相談員の支援を受けて、経営計画を作成することが条件です。
  • ものづくり補助金
    「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」が正式名称。新しい製品やサービス開発、海外事業の拡大のための設備購入やシステム導入に使える補助金です。個人事業主などの小規模事業者は、製品開発であれば上限1,000万円で3分の2の補助率になっています。
  • IT導入補助金
    「ホームページを作りたい」「顧客管理ができるITシステムを導入したい」など、ITを活用したいときに活用できる補助金です。IT導入支援業者に登録されている事業者でホームページの作成やITツールの提供をしてもらうと、その費用の一部が補助されます。
  • 生涯現役起業支援助成金
    起業の際、満40歳以上の人に給付される助成金です。60歳以上の労働者を1人以上雇用する、などの条件を満たせば、雇用に必要な求人情報掲載費用や就職説明会の実施表などが上限200万円、3分の2まで助成されます。
  • 創業補助金
    創業の際に必要になる設備費や広報費などを支援してくれる補助金です。上限200万円で、経費の2分の1までが給付されます。多くの補助金が、創業していることが条件になっているのに対し、創業前でも申請できるのがメリットです。
  • 人材開発支援助成金
    従業員を雇用している個人事業主が、従業員の能力開発を目的とした講座や実習、OJTでの教育訓練を受けさせた際に支給されます。対象となるコースが設定されており、条件にあったカリキュラムや教育計画を提出する必要があります。
  • キャリアアップ助成金
    アルバイトやパート従業員などの非正規雇用労働者を、正規雇用社員にするための訓練を受けさせる際に活用できる助成金です。教育だけでなく、賃金や諸手当制度の共通化など、非正規雇用者の労働環境改善を図った場合に助成されるコースもあります。
  • 両立支援等助成金
    従業員が仕事と家庭を両立できるような制度を作った際に受けられる助成金です。育児休業や介護休業などの制度を導入したり、出産や介護などを理由に離職した従業員を再雇用する際も支給されます。
  • 地方再生中小企業創業助成金
    地方再生を目的に創業して従業員を雇用した際に支給される助成金です。適用される業種は都道府県によって異なっており、対象の業種で創業すると、創業支援金として設立日から6カ月以内にかかった経費の3分の1が助成されます。さらに、雇用した従業員1人につき30万円が支給されます。

それぞれの補助金、助成金には規定の募集期間があります。興味がある方は早めに締切を確認して準備しておきましょう。

※予算の状況によって、申請できる補助金や助成金や、申請の条件が変わっていることがあります。申請の際には、各補助金、助成金の公募要領を必ずご確認ください。

個人事業主は融資が受けられるのか?

どんな事業でも、創業する際にはいくらかの創業資金が必要になります。事業資金の調達方法としてまず考えるのは、金融機関からの融資です。

個人で事業融資を受けるのは、ハードルが高いように思われがちですが、多くの銀行では個人事業主でも融資が受けられます。銀行融資は金利が低く、限度額も大きいのがメリット。一方で、具体的で詳細な事業計画や担保が必要など、書類作成に手間がかかるのがデメリットです。

【2020年必読!】コロナによる給付金について知っておこう

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で個人事業主も大きな影響を受けました。そんなときだからこそ活用したい、新型コロナの状況を踏まえた給付金も出ています。

例えば、小学校の臨時休校で仕事ができなくなった個人事業者向けの支援金や、コロナ禍で売上が大幅に減った人に支給される持続化給付金など。これまでに紹介した「小規模事業持続化補助金」もコロナ対応型で補助額が増額されたりしました。

今後も、状況によって新たな給付制度や、募集が終了した補助金の期間延長などの可能性もあるので、注意しておきましょう。

※各支援制度は条件や募集期間などが変更される場合があります。利用される場合は、必ず募集要項などをご確認ください。

個人事業主のメリット

個人事業主になると屋号で銀行口座やクレジットカードが作成できます
個人事業主になると屋号で銀行口座やクレジットカードが作成できます

開業届を提出して個人事業主になるのは、義務ではありません。また、従業員の雇用を考えるのであれば、法人化してしまうという方法もあります。個人事業主になるメリットにはどのような点があるのでしょうか。

事業用の銀行口座、クレジットカードが作成できる

個人事業主になるメリットの一つが、屋号で事業専用の銀行口座やクレジットカードが作成できるという点です。プライベートのお金とビジネスのお金が混在していまいがちな個人事業主ですが、口座やカードを分けておけば、資金の状況もすぐにわかります。帳簿管理もカードの明細を確認すれば、比較的簡単です。

赤字の繰り越しが3年間できる

事業を始めてすぐは、売上が少なく赤字になることも少なくありません。青色申告の申請をすれば、この赤字を3年間繰り越すことができ、節税にもつながります。

一定の収入までは税負担が少ない

個人事業主になると、個人事業税などそれまでは払わなくてよかった税金も発生します。しかし、個人事業税や消費税は、収入が一定以下であれば、免除されます。青色申告特別控除等も活用できるので、税負担が少なくなります。

確定申告申請が法人よりも簡便に行える

個人事業主の確定申告は、白色申告か青色申告のどちらか。難しいといわれる青色申告でも、クラウドの会計ソフトなどを使えば比較的簡単に作成することが可能です。

法人になると、決算書の作成など経理の知識がなければ作成できない書類が多くなります。そのため、法人の確定申告では、専門知識をもった税理士などと契約して必要な書類の作成を依頼しています。

税理士費用も法人よりも低く抑えられる

確定申告の支援をしてくれる税金のプロが税理士。個人事業主でも確定申告の時期だけ、税理士に依頼して書類作成を支援してもらう人も少なくありません。とはいえ、帳簿作成など必要な作業は法人の確定申告より少ないため、費用は低く抑えられます。

監修税理士のコメント

越智聖税理士事務所 - 愛媛県松山市天山

所得控除の適用が漏れている方は意外に多くいらっしゃいます。同居の家族を扶養家族として申告できるのに扶養控除を適用していない方、障害者手帳をお持ちなのに障害者控除を受けておられない方などです。不明点があれば一度税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

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個人事業主になれば、日々の帳簿付けや確定申告だけでなく、助成金や補助金などを活用した事業拡大など、お金にまつわるさまざまな疑問や課題が発生します。そんなときに強い味方になってくれるのが税とお金のプロである税理士です。創業時から支援してもらっていれば、新規事業を考えたときにも、心強いですね。

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この記事の監修税理士

越智聖税理士事務所 - 愛媛県松山市天山

越智聖(おちさとる)1980年愛媛県今治市生まれ。香川大学経済学部卒。大学卒業後愛媛県西条市の税理士事務所で12年間の勤務の間に税理士試験に合格し平成27年4月に愛媛県松山市にて独立開業。スタッフ5人。法人の顧問先102件、確定申告約130件(平成30年実績)相続税申告年間約5件。“人の為に動く”を経営理念とし、愛媛県で一番話しやすい税理士と言われている。