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外注費と給与の違いは? 判断基準や判例、仕訳例も解説

最終更新日: 2019年12月21日

社内の人員リソースで業務をこなし切ることが難しい場合に、フリーランスや派遣会社のスタッフなどに仕事をお願いすることはよくあるケースです。このような時は外注費で処理するのが一般的です。

ところが税務調査においては、支払った経費が外注費と給与のどちらになるのかが問題となった事例をよく見聞きします。

この記事では、外注費と人件費の税務上の取り扱いの違いや判断基準などについてご紹介いたします。

外注費と給与の違い

外注費と給与の違い
外注費と給与の違い

外注費と人件費の大きな違いは3つ。消費税・源泉所得税・社会保険の取扱い方です。外注費が発生する場合、まずはこれらの違いについて正しく理解する必要があります。

【外注費と給与の違い】

外注費 給与
消費税 課税区分 課税 非課税
仕入控除 控除できる 控除できない
源泉所得税 業種により必要 必要
社会保険 会社負担が不要 会社負担が必要

外注費とは

外注費とは「外部の会社や個人事業主との請負契約・業務委託契約を結び、会社業務の一部を外部に委託する時の費用」です。業務委託(アウトソーシング)とも呼ばれ、以前はコンサルタントやIT関連など専門的な領域での業務委託が主流でした。

最近では、自社の社員をより付加価値の高い業務に従事させ、事務仕事やサポート業務など重要性の低い業務を派遣社員という形態でアウトソースすることが一般的になってきています。

会社としては給与という固定費の削減が図れるとか、業務品質の一定化が期待できるなどの経営の効率化を期待できるでしょう。

 給与とは

給与とは「雇用契約などの契約に基づいて、社員が受け取る役務の提供の対価」です。

所得税法において、給与所得とは「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう」と定められており、「給与」は「給料」よりも範囲が広いです。

雇用形態としては、特定の雇用条件に該当する従業員を「正規社員」とし、それ以外を「非正規社員」の定義で分けている会社が多くなっています。

更に「非正規社員」は、「契約社員」「嘱託社員」「パートタイマー」「アルバイト」など細かく分けられています。外注費の税務調査では、外注先の社員を「非正規社員」とする事例が多いです。

 外注費として処理する3つのメリット

フリーランスなど外部に業務を委託した場合に、人件費ではなく外注費として処理すると3つのメリットがあります。

メリット① 消費税の納税額が減る

消費税の課税事業者が本則課税で申告する場合には、外注費として支払うと消費税の課税仕入として控除することができます

一方で、外注費ではなく給与として処理すると、消費税の課税仕入れとして控除することができません。

又、給与として処理した場合は、消費税相当分が経費(損金)として認められ法人税の納税額は給与で処理した場合が少なくなります。

【例:売上1,000円の時の消費税納税額の差】

外注費として処理 給与として処理
売上 1,000(円) 1,000(円)
売上に係る消費税 100 100
外注費(給与) 300 330
外注費に係る消費税 30 0
消費税の納税額 100-30=70 100-0=100
課税所得 1,000-300=700 1,000-330=670
法人税(仮に20%) 140 134

メリット② 社会保険料の負担が減る

給与で処理すると雇い主が社会保険料を負担しなければいけませんが、外注費であれば負担の必要はありません

社会保険とは「国や地方自治体などの公の機関が管理・運営する社会保障」です。具体的には、①雇用保険②労災保険③健康保険④介護保険⑤厚生年金保険の5つを指します。

一定の要件を満たした法人や個人事業主は、必ず加入しなければなりません。社会保険料は雇い主と従業員でそれぞれ負担することになります。料率は業種や地域で若干異なります。

下表の事例では、約8万円/月額の負担が生じます。

【例:東京都、卸売・小売業、年齢50歳、月額給与50万円の場合】

社会保険 従業員負担率 事業主負担率 事業主負担額
雇用保険 0.3% 0.6% 3,000
労災保険 0.0% 0.3% 1,500
健康保険 4.95% 4.95% 24,750
介護保険 0.865% 0.865% 4,325
厚生年金保険 9.15% 9.15% 45,750

メリット③ 源泉徴収などの事務コストの負担が減る

外注費として個人事業主に支払う場合は、報酬の種類によっては所得税の源泉徴収が必要となることもありますが、所得税の源泉徴収そのものが不要となるケースが多いです。

法人に支払う場合は、源泉徴収自体がごく限られた場合だけになります。そのため、源泉徴収に係る会社の事務コストは大幅に少なくなるでしょう。

一方給与として処理する場合、給与などの支払いの度に所得税を源泉徴収し、原則として翌月10日までに納付しなければなりません。

住民税についても給与から控除し、市区町村に納付する必要があります。また前述した社会保険料についても、制度の変更や社員の異動の度に各種届け出や複雑な計算処理など事務コストがかかります。

外注費として認められず、給与認定された時のペナルティ

税務調査により請負契約などが外注費として認められず給与として指摘された場合には、ペナルティが発生します

税務調査は過去5年間を調査期間とされる場合が多いため、請負契約などが数年間にわたる契約であると数年間の追徴課税を受ける可能性があります

長期間に渡る追徴課税の場合、追徴額も含め延滞税などのペナルティも大きくなり、資金繰り的にも損益的にも非常に厳しい状況に陥る可能性が高くなります。

具体的なペナルティの内容は以下の通りです。なお、延滞税の税率については平成30年1月1日から令和元年12月31日までの税率となっております。

ペナルティ ペナルティの内容
消費税 追加納税 未納付分の追加納付
無申告加算税 ・自主的に納付した場合→ 消費税の金額×5%

・指摘後に納付した場合→50万円以内15%、50万円を超える部分20%

延滞税 ・法定納期限の翌日から2月を経過する日まで→2.6%/年

・法定納期限の翌日から2月を経過した日以後→8.9%/年

源泉所得税 追加納税 未納付分の追加納付
不納付加算税 ・自主的に納付した場合→ 源泉所得税の金額×5%

・指摘後に納付した場合→ 源泉所得税の金額×10%

延滞税 ・法定納期限の翌日から2月を経過する日まで→2.6%/年

・法定納期限の翌日から2月を経過した日以後→8.9%/年

外注費と給与の判断基準6つ

外注費と給与の判断基準6つ
外注費と給与の判断基準6つ

税務調査で指摘されると重いペナルティを課されるリスクのある外注費。給与と外注費の判断基準としては、「契約」と「業務実態」の2つの観点で判断します。

まず「契約」での判断。雇用契約またはこれに準ずる契約に基づく対価の場合は「給与」、請負契約又はこれに準ずる契約に基づく対価の場合は「外注費」として処理するのが原則となります。

民法上は「請負契約」や「委任(準委任)」が規定された契約ですが、現実のビジネスでは、「業務委託契約」や「派遣契約」など色々な契約形態があります。民法上に直接規定されている契約態様ではないため、契約の定義自体も確かなものではありません。

そのため、契約の内容や区分での判定が難しい場合には、独立性や従属性など次の6つの観点から「業務実態」を判断することになります。

判断基準 給与 外注費
時間的拘束性がある ×
時間によって給与が決まる ×
自分以外の人が代わりにできる ×
材料や道具代を自分で支払っている ×
業務について会社の指揮監督を受けている ×
成果物が滅失しても報酬を受けられる ×

①時間的拘束性:作業時間が厳密に決められている?

Yesなら給与と見なされる可能性が高くなります。

外注費と認められるためには、委託先が就業時間を自主的に決定できる裁量が必要となります。

②報酬の労務対価性:時間によって給与が決まる?

Yesなら給与と見なされる可能性が高くなります。

委託先は、請負契約などに基づいて成果物の価値に基づいて金額を計算する必要があります。委託元が、社員の給与体系に基づいた時間単金を単位として計算している場合は、給与と見なされるリスクが高いです。

 ③代替性・専属性:自分以外の人が代わりにできる業務?

Yesなら外注費と見なされる可能性が高くなります。

第三者であればどの委託先にも委託することができる業務の場合は、外注費となります。

 ④費用負担:作業のための道具や材料を自分で調達している?

Yesなら外注費と見なされる可能性が高くなります。

外注であれば成果物を完成させるために必要な道具や材料などを自ら調達し、調達に要した諸経費に自分の工賃を加算して請負金額を計算する必要があります。

 ⑤業務遂行上の指揮監督:仕事の遂行について会社の指揮監督を受けている?

Yesなら給与と見なされる可能性が高くなります。

社員が上司の指示や会社のルールに従って仕事を進めた場合は、給与と見做されます。外注費の場合は、仕事の進め方や時間等について自分の意志や都合によって決めることができます。

⑥危険負担:引き渡していない成果物を滅失した場合に報酬を請求できる?

Yesなら給与と見なされる可能性が高くなります。

外注先は契約期限内に商品を納品できなかった場合は、契約金額の支払いを求めることができません。

プロセスにも報酬を支払うのが給与成果にのみ報酬を支払うのが外注費とするとわかりやすいですね。

外注費と給与に関する判例

外注費と給与に関する判例
外注費と給与に関する判例

租税に関する法的な紛争を解決する手段としては、行政庁への不服の申立てと裁判所への訴訟の提起があります。判例とは、租税に関わる裁判所の判決や国税不服審判所による裁決で重要であり先例となるものをいいます。

下記は、外注費として処理した報酬が給与とされた判例です。

職人に支払った報酬が外注費ではなく給与とされた判例

雇用契約書がなく外注費として一人親方に支払った報酬が、職人を雇用して給与等として支払ったものとされました。判決理由は以下の通りです。

  • それぞれの職人の独立した仕事として認められないこと(代替性・専属性)
  • 報酬が、基本賃金や時間外勤務手当等の支払基準により支払われていること(報酬の労務対価性)

出典:国税不服審判所|裁決事例集 No.25 – 60頁

大学非常勤講師の報酬が給与とされた判例

大学の非常勤講師が雑所得として申告した報酬が、給与等であるとされました。判決理由は以下の通りです。

  • 講義の時間や場所が大学に指定されていること(時間的拘束性)
  • 講義内容は大学の指定するカリキュラムに沿ったものであること(業務遂行上の指揮監督)
  • 一定期間の契約があり、月額の報酬であること)(報酬の労務対価性)

出典:裁判所|行政事件裁判例|昭和49(行ウ)4

この記事を監修した税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

給与と外注費では、報酬を受け取る側の税務申告上の取扱いも異なってきます。 6つの要件に照らし合わせて、実態により合った方で処理するようにしましょう。

外注費仕訳方法と勘定科目

外注費仕訳方法と勘定科目
外注費仕訳方法と勘定科目

外注費は、色々な取引があります。そのため、多くの会社がその取引内容をわかりやすくするために色々な勘定科目を使用しています。

日々の経理処理で外注費が発生した時の経理処理のポイントは二つ。「外注費は給与と異なり消費税の課税取引となること」と「一定の個人への支払いには源泉徴収が必要なこと」です。

決算では外注費の内容によって、棚卸資産(製造原価)や固定資産への振替も必要になることへも留意が必要となります。

外注費に使用される勘定科目

一部の業務を外部に委託する場合、予算管理や経理処理などを簡明にするために、色々な勘定科目を使用しているのが一般的です。

【外注費の勘定科目例】

勘定科目 内容
支払手数料 弁護士や税理士などの外部の専門家への報酬
人材派遣料 人材派遣会社に支払うスタッフ派遣費用
外注工賃 製造業や建設業などで、仕事の一部を外部に委託する費用→製造原価
システム開発費 外務にシステム開発を委託する費用→ソフトウェア(無形固定資産)

外注費の仕訳例

外注費の仕訳で留意するポイントは①消費税の課税取引であること②一定の個人には源泉徴収が必要なこと③決算時の振替処理です。

① 消費税の課税取引

外注費は消費税の課税取引ですので、委託元が課税事業者である場合は消費税の会計処理を行なってください。

尚、消費税の経理処理には税抜経理方式と税込経理方式の2種類があります。この記事では税抜経理方式で仕訳例を紹介します。

【例:人材派遣料として110,000円(消費税10,000円)を支払った(税抜経理方式)】

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
人材派遣料 100,000 現預金 110,000
仮払消費税 10,000

② 源泉徴収の処理

源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲は以下国税庁のサイトに記載されています。

参考:国税庁|源泉徴収が必要な報酬・料金等とは

実務的には、原稿料や講演料などや税理士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金で源泉徴収するケースが多くなります。

徴収した源泉所得税は、原則として翌月10日までに納付する必要があります。

【例:10月31日に、税理士に報酬100,000円(消費税込110,000円)のうち源泉徴収10,210円(10.21%)を控除し、残額99,790円を支払った11月10日に源泉徴収した10,210円を納付した。】

日付 借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
10/31 支払手数料

仮払消費税

100,000

10,000

現預金 89,790
預り金 10,210
11/10 預り金 10,210 現預金 10,210

③決算時の振替処理

支払時に外注費として費用処理した場合でも、必要に応じて決算仕訳が必要となります。

【例:IT会社に自社の社内システム構築を依頼し、期中に総額3,000,000円の支払いを行っている。システムの利用を開始し、資産の計上要件も満たしているので、決算で、ソフトウェア(無形固定資産)に計上する。】

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
支払時 システム開発費 3,000,000 現預金 3,000,000
決算時  ソフトウェア 3,000,000 システム開発費 3,000,000

この記事を監修した税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

副業解禁の流れもあり、フリーランスが増えて行っている昨今、外注費として支払う報酬も多くなってきていると思います。 給与と外注費は支払う側、支払われる側ともに税務上の取扱いが異なります。実態に合った方の勘定科目で処理し、適切に税務処理を行ないましょう。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・CFP?) 1987年 香川県生まれ 2008年 公認会計士試験合格 2010年 京都大学経済学部経営学科卒業 大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。

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