★提出期限(所得税・贈与税の申告や納付期間)
2025年2月17日(月)~ 2025年3月17日(月)
株取引で損失を出した場合、原則として確定申告は不要です。ただし確定申告をすることで節税ができる場合もあります。
この記事では、株取引において損失が出た場合の確定申告について解説します。
株取引において確定申告が必要になる場合
株取引においては、口座の種類や利益の大きさによって、確定申告の必要性が以下のように変わります。
利益>損失の場合の確定申告 | 利益<損失の場合の確定申告 | |
特定口座(源泉徴収あり) | しなくていい | しなくていい |
特定口座(源泉徴収なし) | する | しなくていい |
一般口座 | する | しなくていい |
それぞれについて詳しく見ていきます。
株取引で損失が出た場合
株取引で利益より損失が大きい場合は、口座の種類にかかわらず確定申告の義務は発生しません。確定申告を行うことのメリットはあるものの、しなくても罰則やリスクはないのでご安心ください。
株取引で利益が出た場合
株取引で利益が出た場合は、以下の条件に当てはまる場合は確定申告の義務が発生します。
口座の種類 | 確定申告が必要になるケース |
特定口座(源泉徴収あり) | 確定申告は必要なし |
特定口座(源泉徴収なし) | 株の利益を含めた給与以外の所得が年間20万円を超えたら確定申告が必要(会社員) |
一般口座 |
特定口座(源泉徴収あり)の場合、証券会社が源泉徴収を行うので、自分で確定申告をする必要はありません。
そのほかの口座の場合は、年の所得が20万円を超えたら確定申告が必要になります。ただし個人事業主やフリーランスなら、1円でも利益が出たら確定申告が必要です。
年間の所得額と確定申告の関係については、以下の記事でより詳しく解説しています。
株取引で確定申告が不要になるその他のケース
株取引において確定申告の必要性がないその他のケースを3つ紹介します。
- NISA口座で取引している場合
- 株式を売却していない場合
NISA口座で取引している場合
NISAで取引をしている場合であれば、原則非課税かつ確定申告不要です。
ただし以下の場合は、例外として確定申告が必要になります。
- 非課税期間が終了し、課税口座へ払い出す場合
- 配当金の受け取りが株式数比例配分方式でない場合
詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせて参考にしてみてください。
株式を売却していない場合
株式を持っているだけで売却していない場合は、実際に利益を受け取っているわけではないので、確定申告をする必要はありません。
株取引で損失が出ても確定申告をしたほうが良い2つの理由
株で損失が出た時でも、確定申告をすることで節税効果が期待できます。
ここでは、損失が出たときでも確定申告をしたほうが良い理由を紹介します。
「損益通算」によって節税効果が期待できるから
損益通算とは、上場株式の損失を同じ年の利子・配当利益と相殺できる仕組みです。相殺をすることで、課税対象の利益が減って税金の支払い額が少なくなります。
たとえば上場株式の損失が30万円、利子・配当利益が20万円の場合、確定申告をしないと利益である20万円をもとに税金が計算されます。
一方で確定申告において損益通算をすれば、損失の20万円から利益の30万円を差し引くことで、課税対象の所得が0円になります。この場合は税金を支払う必要はありません。
損益通算は複数の口座間でも行える
損益通算は別の証券口座とも行えます。
たとえば証券口座Xで損失30万円、証券口座Yで利益30万円の場合、損益通算をすることで利益を相殺できます。
「繰越控除」によって節税効果が期待できるから
繰越控除とは、損益通算をしても損失額が出た場合、その損失を翌年以降の3年間まで利益と相殺できる制度です。
上場株式の損失が30万円、利子・配当利益が20万円の場合、損益通算をしてもまだ10万円の損失が残っています。もし翌年に利益が出たら、その利益から残った損失の10万円を差し引くことができるのです。
株取引にかかる税金と確定申告の必要性
株取引で売却して利益を得た場合、株式の種類や証券会社などで開設した口座の種類によって、所得税の確定申告による納付が必要になります。
対象になるのは「譲渡益にかかる税金」と「配当金等にかかる税金」の2種類です。
「譲渡益」を得たときにかかる税金
「株式」には金融商品取引所に上場している企業の株や国債などを含む「上場株式等」と呼ばれるものと、それ以外の株式「一般株式等」があります。
原則として申告分離課税制度による確定申告が必要なのは、株式等の売却益から損失額を差し引いて利益を得た人でかつ、源泉徴収ありの特定口座以外の人です。利益は「特定口座(源泉徴収あり)」を持っている人は金融機関から源泉徴収されますが、「特定口座(源泉徴収なし)」を持っている人は確定申告で税金を納めます。
株の譲渡で所得を得たら、「上場株式等」と「一般株式等(非上場)」の場合、下記の税率で税金を納めないといけません。
譲渡で得た所得 × (※)税率20.315%
※内訳:所得税15%、住民税5%、所得税額の2.1%に相当する復興特別所得税0.315%
「配当金等」を得たときにかかる税金
株の利子や配当金が支払われる際は「源泉徴収ありの特定口座」かどうか関係なく、金融機関から源泉徴収されます。それに伴って納めなければいけない税金は下記のとおりです。
上場株式等のケース
株式の利子等・配当等の所得 ×(※) 20.315%
※内訳:所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%
一般株式等(非上場)のケース
配当等の所得 × (※)20.42%
※内訳:所得税および復興特別所得税20.42%、住民税なし
株の確定申告をする時の必要書類と書き方
株の確定申告をする際、用意するべき必要書類が何点かあります。必要書類について事前に押さえておけば、確定申告がスムーズに進められて安心でしょう。
また確定申告には期限や書き方など、さまざまなルールがあります。誤った方法で進めてしまうとトラブルにつながる恐れがあるため、確定申告のやり方全体について把握する必要があります。
株の確定申告をするための必要書類
株の確定申告で税務署に提出する書類は以下の通りです。
- 確定申告書:第一表・第二表・第三表
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
- 「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」(損益通算または繰越控除をする場合
確定申告書は国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成すると簡単に進められます。
続いて確定申告を進めるために必要な書類です。
- 株式投資の金額がわかる資料(特定口座の場合は「年間取引報告書」)
- 源泉徴収票
- マイナンバーカードなど本人確認書類
株の確定申告を行なう際の必要書類の書き方
税務署に提出する各書類の書き方について、例をもとに解説していきます。
- 年収:714万円(会社で源泉徴収された税額は169,500円とする)
- 株式投資による譲渡益:200万円
- 株式投資による譲渡損:100万円
確定申告書・第一表(左欄)
①:源泉徴収票を用意し、必要事項を記載していきます。今回のケースのように年収714万円の場合、「収入金額等」の「給与」欄に給与額7,140,000と記入します。続いて「所得金額等」の「給与」⑥欄に給与所得控除後の金額を記入し、「合計」欄に合計金額を記入します。
②:源泉徴収票や保険料控除通知などを参考に、「所得から差し引かれる金額」に該当する項目の控除額を記入します。全て記入したら「合計」欄に合計金額を記入します。
確定申告書・第二表
③:「所得の内訳」に源泉徴収票の「支払額」と「源泉徴収額」の内容を転記します。給与からの源泉徴収税額は169,500円なので、その金額を記載します。
④:社会保険料控除等、該当する控除額があれば記載します。②に対応している項目があるので、その場合は「源泉徴収のとおり」と記載してください。金額は源泉徴収票の「社会保険料等の金額」から転記します。
⑤:「住民税・事業税に関する事項」のなかの「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」の欄に住民票の納税方法を記載します。給与以外の所得について住民税を納税したことを会社に知られたくない場合には「自分で納付」を選択します。
確定申告書・第三表
⑥:株式取引による収入を「上場株式等の譲渡㋡」欄に記入します。また所得は「上場株式等の譲渡(72)」欄に記入してください。今回のケースのように譲渡益が「200万円」で損失が「100万円」の場合、収入は株式の売却代金の総額を、所得は1,000,000円と記入します。
⑦:「総合課税の合計額」⑫欄と「所得から差し引かれる金額」㉙欄を計算のうえで記入します。それぞれ第一表の合計額⑫と㉙を転記してください。
⑧:「課税される所得金額」の「⑫ 対応分」(77)欄と「(71)(72) 対応分」(80)欄を記入します。最終的には(77)から(84)に課税所得金額、(85)から(92)にそれぞれ対応する税額を記入し、(93)に合計金額を記入してください。
「課税される所得金額」に対応する税金の計算は「所得税の速算表」を参考に計算しましょう。
確定申告書・第一表(右欄)
⑨:「上の㉚に対する税額又は第三表の(93)」㉛欄に第三表(93)の金額を記入。「差引所得税額」㊶欄に同じ金額を記載。「再差引所得税額(基準所得税額)」㊸を記入し、そこに復興特別所得税をかけて「復興特別所得税額」㊹欄を記入。「所得税及び復興特別所得税の額」㊺欄を記入します。
⑩:「源泉徴収税額」㊽欄を記入し、「申告納税額」㊾欄もあわせて記入。最終的な金額を「第3期分の税額」欄に記入します。
所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表・1面
①:「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」①欄と「上場株式等に係る譲渡損失の金額」②欄を証券会社から送られてきた「特定口座年間取引報告書」を参考に記入していきます
②:(2)「本年分の損益通算前の分離課税配当所得等金額」に「証券会社名」や「収入」、「負債の利子」の金額を記載します
③:「特定口座年間取引報告書」に記載されている「特定上場株式等の配当額」の合計額を④欄に記入します
所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表・2面
④「翌年以後に繰り返される上場株式等に係る譲渡損失の金額」⑪欄に、1年目は1面の(3)「本年分の損益通算後の上場株式に係る譲渡損失の金額」を記入します
【注意】申告期間は株式投資翌年の2月16日~3月15日
確定申告の期間は株式投資翌年の2月16日~3月15日です。ただし3月15日が土日の場合、翌月曜日が期日となります。
たとえば令和6年分の株式投資については、令和7年2月17日(月)~3月17日(月)に申告する必要があります。
期限を過ぎてしまった場合でも「期限後申告」として受け付けてもらえますが、無申告加算税や延滞税など、ペナルティを課される恐れがあるため注意しましょう。確定申告の時期を逃さないよう、余裕を持って手続きを進めると安心です。
【注意】譲渡益は「申告分離課税」
株式投資によって発生した譲渡益は、給与など他の所得と分けて税金の計算を行なう「申告分離課税」に当てはまります。
所得税は所得が上がるほど税率が高くなる「累進課税制度」が適用された税金です。もし株式投資で大きな所得が出た場合、給与所得と合算して税額を計算してしまうと給与所得にも高い税率が課せられてしまいます。このような事態を防ぐため、株式投資など大きな金額が発生する可能性のある所得については、分離課税によって他の所得と分けて計算されます。
株の譲渡益は「申告分離課税」です。正確な税額計算のため、区分や方法を誤らないよう注意しましょう。
令和3年度分からはe-Taxでスマホからも提出できる
令和3年分から、e-Tax(国税電子申告・納税システム)でスマホからも確定申告書の提出が可能になりました。株式投資の確定申告をスマホで行なう場合、以下の3点のいずれかを満たす必要があります。
- マイナポータルアプリをスマホに入れ、利用者登録をする
- ICカードリーダライタを用意する
- 「ID・パスワード方式の届出完了通知」を税務署で発行してもらう
また特定口座で得た譲渡益・配当金を申告する方は、特定口座年間取引報告書の内容を入力するために以下のいずれかの準備が必要です。
- マイナポータルの連携をする(申告することを選択した特定口座の情報が自動入力される)
- 証券会社から受領した特定口座年間取引報告書のXMLデータの読込み・直接入力
ただしマイナポータル連携を利用するには、証券会社がマイナポータルに対応している必要があります。詳細は以下より確認してください。
このようにスマホで対応できれば、手間が少なく非常に便利です。ただしスマホから提出するためには事前準備が必要なため、余裕をもって進める必要があります。
【まとめ】株で損失または利益が20万円を超えたら申告しよう
株式投資で損失を出してしまった場合は、確定申告することで損益通算や繰越控除、ふるさと納税を利用し節税につなげられます。一概に悪いことばかりとは言えないでしょう。
また一般口座・特定口座(源泉徴収なし)で、株式投資で20万円を超える利益が出た場合など、確定申告が必要な条件に該当する場合には必ず確定申告を行ないましょう。必要なのに申告しないと国へばれて更なる課税が加えられてしまうので注意が必要です。
会社へばれたくない場合には特定口座(源泉徴収あり)を使って申告不要制度を利用するか、確定申告時に「住民税を自分で納付する」と選択するようにしましょう。
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