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株の損失は確定申告の「損益通算」と「繰越控除」を活用しよう!

最終更新日: 2024年06月28日

「株取引をして損失があった場合は、確定申告が必要?」「確か開いた口座は確定申告は不要だった気がする…。」

こうした疑問は曖昧なままにせず、しっかりと確認を行いましょう。今回は株取引の損失があった場合に確定申告をして賢く株の損失を相殺する方法をお教えします!

この記事を監修した税理士

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

 

一般口座か特定口座かによって確定申告の有無が変わる

一般口座か特定口座かによって確定申告の有無が変わる
口座ごとに確定申告の有無が変わる

株式投資を始める前に、証券会社や銀行で専用口座を開設することになります。この際に選択しなければならないのが、「特定口座」にするのか「一般口座」にするのかということです。

「特定口座」「一般口座」は税金の納め方が違うものですので、この違いを正しく理解する必要があります。

特定口座の源泉徴収有りなら確定申告は不要

一般的には株式投資で利益が出た場合にはその利益の20.315%を税金として納める必要があります。こうした納税に関わる業務は投資家本人が行うものですが、非常に面倒です。この負担を軽減してくれるのが「特定口座」なのです。

特定口座を選べば年間の利益や損失を計算して「年間取引報告書」にまとめてくれるのです。自分で数字を拾って計算しなくてもよいために「特定口座」を選べば納税の際の負担は軽減されます。

更に「特定口座」には源泉徴収のありなしを選択することが可能です。「源泉徴収あり」を選択すれば証券会社や銀行が投資家に代わって税金を納めてくれ、確定申告も不要となります。

「源泉徴収なし」を選ぶと年間取引報告書を基に投資家自身が確定申告をする必要があります。

まとめると次のようになります。

・特定口座(源泉徴収有り)…確定申告は不要、投資家は特に何もしなくてよい。
・特定口座(源泉徴収なし)…年間取引報告書を基に確定申告を行う。
・一般口座…税金の計算、確定申告、納税まで全て投資家が行う。

【譲渡益にかかる税率(上場株式・非上場株式)】

譲渡益×20.315%

つまり、面倒な手続きを省略したいと考える人は「特別口座の源泉徴収有り」を選ぶと良いでしょう。しかし、株で損をしても敢えて確定申告をすることで得になるケースがあります。

株で損をしても確定申告すべき

「特定口座の源泉徴収有り」を選ぶと確定申告をする必要がありません。しかし、上場株式を売却して損失を出してしまった場合は、特例があります。これらは確定申告をすることで初めて適用されるものです。

  • 利益と損失を相殺できる「損益通算」
  • 株の損失を3年間繰り越し、その間の利益と相殺できる「繰越控除」

これらの特例については詳しく後述したいと思います。まずはこうした特例があり、確定申告をすることで適用になるということだけ覚えておいてください。

住民税も節税できる

「配当金で利益を得て、かつ課税される総所得金額が900万円以下の場合」も確定申告をすることで節税になります

「特定口座の源泉徴収有り」を選ぶと、得た配当金は源泉徴収されてから証券口座に振り込まれるために、確定申告は不要です。

しかしその配当金を「総合課税」という方法で確定申告すれば、配当控除という税金面での優遇を受けられます。ここで知っておきたいのは「総合課税では所得が少ない人は税率が低い」ということです。

配当金の課税方法についてまとめてみましょう。

・源泉徴収…上場株式:税率20.315%、非上場株式:20.42%
・確定申告(総合課税)…課税総所得額に応じて変動7.2%~43.6%
・確定申告(申告分離課税)…税率20.315%

更に住民税を節税する方法もあります。それは所得税を「総合課税」、住民税を「分離課税」で納税するというやり方です。この方法で納税を行えば課税所得900万円以下の人までは節税になります

このあたりは年間の投資成績や課税所得により、どんな納税の仕方が最も節税になるのかが異なってきますが、知識がないとせっかく得た利益を減らす結果になります。節税については税金の仕組みを理解することが重要です。

株の損失を損益通算で節税する

株の損失を損益通算で節税する
損益通算で大きな節税

上場株式を売却して損失を出してしまった場合は、特例があり確定申告を行うことで適用されます。まずお伝えしたいのが、「損益通算」で節税を行う方法です。

損益通算とは、上場株式の譲渡損失をその年の利子・配当所得と相殺できる制度を指します。ここでは実際に数字を見ながら例を見ていく事にしましょう。

売却損と売却益・配当益を相殺

たとえば、去年の年間の損益が「売却損100万円」で、「売却益・配当益10万円」であったとしましょう。合計すると去年は90万円の損失です。

「利子と配当所得10万円」に税率がかかります。税率20.315%なので単純に20,315円が源泉徴収されることになります。

しかし昨年の損失は90万円ですので、この利益10万円にあたる分が全額相殺されます。これが「損益通算」で節税を行う方法です。「損益通算」は複数の口座でも適用されます。

複数の証券口座でも可能

投資家には、複数の証券会社で口座で運用している人も多いと思います。前述した「損益通算」で節税を行う場合には、複数の口座を持っていても大丈夫です。

具体的に例をあげて見ていきましょう。A証券口座で10万円の売却益・配当益があり、B証券口座で10万円の売却損があった場合、2つの口座に渡り損益を相殺できるため、A証券口座で源泉徴収される20,315円は還付されることになります。

上場株式配当等受領委任契約で確定申告いらず

「特定口座の源泉徴収有り」の口座を選択していれば、「上場株式配当等受領委任契約」を結ぶことができます。この契約を結ぶことで、口座内で配当金と売却損を損益通算(利益と損を相殺して節税する方法)して節税するができます。

給与所得は損益通算できない

「損益通算」は認められた範囲でのみ行われるものです。株式などの売買での損失は、給与所得など他の所得とは「損益通算」することはできません。

同様に他の所得で赤字があっても、金融商品での利益と「損益通算」できないのです。たとえば不動産所得などで損失があっても配当金や株式の売買益での黒字とは「損益通算」できません。

あまりこういった知識のない人であれば、赤字と黒字があるなら、それを相殺した金額が課税対象額になると考えてしまいそうですが、「損益通算」には法律が認める範囲内で行われるものなのです。

NISA口座は損益通算の対象にならない

他に「損益通算」の対象にならないものとしてNISA口座をあげることができます。なぜならNISA口座では損失はないものと扱われるためです。

そのため、NISA口座内で赤字と黒字が出ても相殺することはできませんし、NISA口座以外の取引とも損益通算はできないということになります。

NISAはもともと非課税ですが、損益通算できないのがデメリットということになるのです。

株の損失を繰越控除で節税する

株の損失を繰越控除で節税する
繰り越し控除で大きな節税

繰越控除とは、確定申告を行うことで損失を翌年以降の3年間にわたり繰り越すことができる制度で、損失を翌3年間は利益と相殺できるものです。たとえば、年間損失100万円であった場合、翌3年間は100万円を超える利益をあげてから課税されるようになります。

3年まで繰越控除可能

「繰越控除」は前述した「損益通算」をしてもまだ年間の損失が残っている場合に有効となります。残っている損失を、年を跨いで損益通算出来るというイメージです。そのため、「損益通算」と「繰越控除」は別のものではなく、1つのセットとして認識すべきでしょう。

では、具体例を見ることにしましょう。

2019年 「損失100万円」(残100万円繰越)
2020年 「利益30万円」→利益30万円は2019年の損失で相殺(残70万円繰越)
2021年 「利益50万円」→利益50万円は2019年の損失で相殺(残20万円繰越)
2022年 「利益0万円」→相殺なし(残20万円あるが3年経過したため繰越できない)

2019年に損失が100万円出た場合には、その損失は2022年まで繰り越しすることができます。3年間で使いきれなかった損失は2023年には消滅となりますので注意しましょう。節税効果を改めて計算してみると、2020年の30万円の利益に税率20.315%で60,945円、2021年の50万円の利益に税率20.315%で101,575円の税金を節税することができるということになります。

毎年確定申告しなければならない

「繰越控除」には注意点があります。それは「損失の繰越控除」をしている期間は、毎年確定申告を行う必要があるということです。確定申告をしないと繰越損失の枠は消滅してしまうのです。

株で損した時の確定申告の方法

株で損した時の確定申告の方法
確定申告の方法とは

源泉徴収あり特定口座なら確定申告はいりませんが、これまで述べてきたように年間通じで売却損が出たときは確定申告をした方が税制面で有利に働きます

確定申告をしたことのない人からすると非常に難易度が高くデメリットに感じるかもしれませんが、決して難しいものではありません。まずは基本的なルールを確認してみましょう。

株取引の確定申告の期限

株取引の確定申告の期限は1年間(受渡日ベースで1月1日~12月31日まで)の譲渡に関して、原則、翌年の2月16日から3月15日までに手続を行うことになります。住民票のある所轄の税務署で申告を行いましょう。

必要書類

「特定口座(源泉徴収あり)」で利益があり、他の口座で損失が出た場合の確定申告を行う際には次の書類が必要となります。

  • 給与所得、退職所得、公的年金などの源泉徴収票
  • 特定口座年間取引報告書
  • 取引報告書など一年の取引の損益が計算できる書類一式
  • 個人番号および本人確認書類
  • 申告書(第一表・第二表)
  • 申告書第三表(分離課税用)
  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(1面.2面)
  • 申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の繰越用)

書類の作成にはある程度時間がかかるかと思いますので、1月には特定口座年間取引報告書などで確定申告するべきかどうかを早めに決定して準備を始めると良いでしょう。

紙の書類の提出方法は郵送か窓口

書類が揃ったら提出を行います。確定申告を書面で提出する場合、提出方法は郵送か税務署の窓口に直接提出します。

毎年確定申告の時期には税務署の窓口が非常に混雑するので、郵送の方がスムーズですが、税務署員からのチェックを受けることができないというデメリットもあります。

地域によっては確定申告時期に税務署外で相談会を行っているケースもありますので積極的に利用してみましょう。

参考:令和4年分確定申告期の確定申告会場のお知らせ – 国税庁

e-Taxの確定申告がおすすめ

確定申告は書面だけでなく、Web上で手続きが完結する「e-Tax」を利用して申告をすることができます。

e-Taxを利用することで還付金の振込が早くなる、確定申告の期間中は24時間いつでも提出が可能であるなどのメリットが多いために積極的に利用したいところです。

参考:e-Tax 国税電子申告・納税システム

監修税理士からのコメント

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

近年、銀行に預けてもほとんど利息が付かないため、預金から投資へ関心を持つ人が増えています。1万円くらいで始められる少額投資が増え、スマートフォン上で株式の取引を可能にするサービスも始まっています。 株式投資の確定申告は、ルールが多く難しく感じるかもしれません。NISA口座を使えば確定申告をする必要はなくなりますが、損益通算が出来ない等のデメリットもありますので、制度の特徴を理解することが大切です。

株取引の確定申告は税理士に相談しよう!

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株取引の確定申告は通常の確定申告と異なり、やや複雑です。特定口座か一般口座か、特定口座の場合には、源泉ありを選択しているか源泉なしを選択しているかによって、確定申告をすべきか否かが変わってきます。

また、年間の株取引の結果やなどに応じて節税効果を期待できる方法があります。それらを全て知識として身に付け、対応できる株主投資家は多くないと思います。

株取引の確定申告は効果的に節税できなければ意味がありません。そのため、税理士に相談するというのも1つの手段です。

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この記事の監修税理士

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

仙台市宮城野区岩切に事務所を構える税理士の菅野歩と申します。日々の経理業務、会計・税務業務など経営者の皆様のニーズに合わせた適切なサポートを全力で行い、わかりやすくご説明させていただきます。