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研修費用の勘定科目と仕訳例|目的に沿った仕訳で正しい経費計上を

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最終更新日: 2024年01月16日

「研修費用を経費にしたいけど勘定科目が分からない」「会計ソフトに研修費の勘定科目がない」といった疑問を持ってはいませんか?

研修費用は使用用途によって複数の勘定科目で仕訳できます。正しい科目で仕訳を行い、経費に計上しましょう。

この記事では研修費用の勘定科目を内容ごとに解説します。ポイントも説明しているので、仕訳に迷ったときは参考にしてみてください。

この記事を監修した税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

 

研修費用の勘定科目と仕訳の方法

研修費用の勘定科目と仕訳の方法をご紹介します

研修費の勘定科目に決まったものはありません。支出した目的や内容を明確にするために、以下の科目の中から実態に適したものを使い分けましょう。

  • 研修費:業務に必要な知識を身につけるためのセミナー代・講師報酬など
  • 福利厚生費:業務に関わる資格取得の補助費など
  • 採用教育費:従業員の採用費、教育研修費用など

「弥生」や「freee」などの会計ソフトには、「研修費」という勘定科目がない場合も見受けられます。もちろん新たに「研修費」と科目をつくることも可能です。しかし「研修費」の勘定科目がない時は研修の内容によって、他の勘定科目に分けて仕訳したほうがよいでしょう。

【研修費】が適している場合

セミナーを受ける男女

  • 業務に関連するセミナーや講習会、講演会への参加費
  • 業務に関連する外部講座や技能講習の受講費
  • 業務に関連する保有資格の維持費用、資格登録費用
  • 業務に関連する資格試験の検定費用(一身専属的な資格を除く)
  • 業務に関連する研修を受けるために準備した機器の購入費用

ポイントは「業務に関連する」ことです。新入社員の研修代や営業担当が営業関係の内容のセミナーに参加した費用、経理社員が簿記検定を受ける受験費用、web研修を受けるために準備した機器など、幅広く研修にかかった費用が該当します。

ただし機器は研修以外の用途にも使用できるので、機器の購入費用は備品消耗品費で計上する場合も多いです。

【研修費】の仕訳例

10/1に従業員に参加費用6,600円(税込)のビジネスマナーに関するセミナーを受講させた。費用はセミナー当日に現金で支払った。
借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
10/1 研修費 6,600 現金 6,600 セミナー費用

セミナー受講日と支払日の発生月が異なっている場合は、「未払金」や「前払金」などの勘定科目を利用することもあります。

【福利厚生費】が適している場合

自己啓発セミナーを受ける女性

  • 業務とは関係ない、自己啓発のためのセミナーや講座を受講した場合の受講費
  • 研修後に参加社員が懇親会を行った場合の費用

福利厚生費として経費計上が認められるのは、常識的な金額の範囲内で全社員が平等に利用可能な場合です。セミナーや講座の受講は社員が希望すれば誰でも可能であり、受講費の補助も常識的な範囲の支出であること、懇親会についても社員が誰でも参加できることが必要です。受講費の補助については規程などで定めておくと良いでしょう。

【福利厚生費】の仕訳例

1/10簿記研修費用として従業員に補助費として現金10,000円を支給した。(支給した研修補助費用は、支給要件を満たしていれば従業員の誰でも受け取れるものである。)
借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
1/10 福利厚生費 10,000 現金 10,000 研修会補助費

【採用教育費】が適している場合

ビジネスシーン セミナー

  • 従業員の採用費
  • 従業員の教育研修費用

採用教育費は採用にかかる費用に関する勘定科目で、新たに採用された従業員のスキルアップや教育訓練、業務に関わる技術や知識の資格を取得する費用のことです。

例えば有料のビジネスマナー研修会の参加や、業務に必要な知識や技術を身につけるための教育用機器の費用などが該当します。

【採用教育費】の仕訳例

1/10新規従業員を社外のビジネスマナー研修に参加させ、参加費200,000円を現金で支払った。
借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
1/10 採用教育費 200,000 現金 200,000 ビジネスマナー研修代

研修にかかった食事代や交通費などの仕訳方法

研修にかかった食事代や交通費の仕訳の方法についてご説明します

研修にかかった食事代や交通費については以下の科目の中から適した科目で仕訳を行いましょう。

  • 旅費交通費:研修会に参加するために必要な交通費・宿泊費
  • 会議費:研修会を開催するのに必要な飲み物代、会場のレンタル代など
  • 新聞図書費:研修会に必要なテキストの購入費など
  • 消耗品費:研修会に必要な名札や文房具などの備品代
  • 雑費:研修費として計上したいが少額なため、特に管理が必要ない場合に使用

交通費や宿泊費は【旅費交通費】に計上

走行中の電車

  • 研修会場までの交通費
  • 研修中に宿泊を伴った場合の宿泊費

研修に伴い発生するものではあっても、内容は交通費や宿泊費なので研修費の勘定科目ではなく実態に沿って処理する方が管理しやすいでしょう。

セミナー受講料と宿泊費がセットの場合

セミナー受講料と宿泊費がセットになっている場合は、無理やり勘定科目を研修費と旅費交通費に分ける必要はなく、まとめて研修費に計上可能です。

また宿泊の目的がセミナー受講の場合も、宿泊費を研修費にまとめて問題ありません。

【旅費交通費】の仕訳例

1/10社外のセミナーに参加するために電車賃500円を現金で支払った。
借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
1/10 旅費交通費 500 現金 500 セミナー参加交通費

またクレジットカードで支払った場合、勘定科目「未払金」を使います。さらにこの場合は、クレジットカード決済をした時と、引き落としのタイミングの2回仕訳をする必要があるので注意しましょう。

1/10宿泊費25,000円をクレジットカードで支払った。(月末締め翌月10日払いとする。)
借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
1/10 旅費交通費 25,000 未払金 25,000 セミナー参加宿泊費
2/10 未払金 25,000 預金 25,000 セミナー参加宿泊費

飲み物や食事代は【会議費】に計上

ペットボトルのお茶と水

研修に関連する費用の中で「会議費」という勘定科目で仕訳を計上する内容としては、研修中に出す飲み物や食事代などが挙げられます。また会議室を賃貸した費用を会議費として処理することもあります。

【会議費】の仕訳例

1/10従業員研修を行うためにお茶50本分の代金7,500円を現金で支払った。
借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
1/10 会議費 7,500 現金 7,500 従業員研修飲み物代

研修に使用した教材は【新聞図書費】に計上

机に積み上げられた書籍

  • 研修中に使用した書籍や教材の費用
  • 日常でスキルアップのために購入した書籍の費用

いずれも実態に沿って分かり易い勘定科目を採用すると管理しやすいでしょう。

【新聞図書費】の仕訳例

1/10従業員研修に必要な教材50冊分の代金50,000円を現金で支払った。
借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
1/10 新聞図書費 50,000 現金 50,000 従業員研修教材代

文房具や名札は【消耗品費】に計上

名札を首からぶら下げた女性

消耗品費とは使っていくうちに消耗する工具や備品などで、取得原価が10万円未満のもの、または使用可能期間が1年未満のものを購入した時の勘定科目です。

研修を行うのに必要な文房具や名札といった備品は消耗品費で計上するとよいでしょう。

【消耗品費】の仕訳例

1/10従業員研修に使用する名札を50個購入し、現金で20,000円支払った。
借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
1/10 消耗品費 20,000 現金 20,000 従業員研修名札代

どれにも当てはまらないものは【雑費】に計上

コピー機で資料をコピーする女性

「雑費」は既存の勘定科目のどれにも当てはまらない内容のものを計上する科目です。研修費として計上したい内容のものが多額に発生せず、特に管理が必要ない場合には「雑費」として処理すると事務処理上の手間が省けます。

【雑費】の仕訳例

1/10従業員研修で必要なプリントが1枚不足していたため、会場でのコピー機を使用し現金で10円支払った。
借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
1/10 雑費 10 現金 10 従業員研修コピー代

研修費を経費として計上するときのポイント

経費として計上する際のポイントを押さえて、正しい仕訳を行いましょう。

経費として計上できるのは業務に直接関係あるものだけ

税務上の経費(損金)として計上できるものは支出の内容によって決まるのではなく「業務に直接関係があるもの」かどうかで決まります。そのため業務に直接関係がない費用を会社負担で支出した場合には、社員の給与扱いになり所得税の対象となるので注意が必要です。

例えば、社員が業務と関係ないセミナーや講座を受講した場合に会社が負担した費用は給与になります。

また資格取得費用であっても、取得した人が自分で開業できたり独占業務を行えるような「一身専属的な資格の取得」の場合は経費にできません。

医師の国家資格は個人に帰属すると考えられるので、医師免許が必要な職場でも学費は経費にできません。しかし運送業での特殊な免許取得費用など、業務に直接関係のある資格の取得ならば経費になります。

給与として所得税がかかる場合もある

研修費が税務上経費として認められない場合、給与となり所得税の対象になります。

また給与扱いになる研修費を支出した対象が役員であった場合、イレギュラーに給与が発生すると所得税の対象となるだけではなく、発生する給与自体も損金計上できなくなるので特に注意が必要です。

給与としたくない場合は支出した金額を返還してもらうしかありません。事前に経費として認められるかどうかよく検討しておきましょう。

前払いした研修を来期に受ける場合は【前払費用】に振り替えが必要

前払費用とはまだ行われていない物事に対して支払いを先に済ませた場合の勘定科目です。まだ費用として確定していないので、いったん資産科目として管理し、あとから研修費などの勘定科目に振り替えます

例えば何回かにカリキュラムが分かれているセミナーは、期中に全て完了するならわざわざ前払費用にする必要はありませんが、事業月をまたぐ場合は以下のようになります。

1/10従業員の教育セミナーのために費用50万円を現金で支払った。なおセミナーは5回に分かれており、そのうち2回は翌期に行われる。
借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
1/10 前払費用 500,000 現金 500,000 従業員教育セミナー代

決算期が来たので前払費用のうち当期分3回分を研修費に振り替えた。

借方 貸方
日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額 摘要(具体的な内容)
3/31 研修費 300,000 前払費用 300,000 従業員教育セミナー代

このように前払費用を資産計上し、決算の時に当期分だけ費用に振り替えます。

実務の現場では支払いの時点で全てを一度費用計上してから、決算時に未消費部分を未払費用に振り替える場合も多いです。

勘定科目は変えないことが重要

一度使った勘定科目は毎回同じように使うことが原則です。例えば一度セミナーの交通費を「旅費交通費」に計上したのに、次のセミナーの交通費は「研修費」に仕訳することがないように気を付けましょう。

途中で勘定科目を変えてしまうと帳簿が見にくくなり、経営分析を行うときに「何にどれくらい使ったのか」が正確に分析できなくなります。また経営者側の利益操作への抑止力にもなるので、毎回同じ勘定科目を使い続けることは重要です。

研修費は課税取引に該当

研修費やセミナー参加費の消費税は基本的に課税取引に該当します。つまり経費計上されるため仕入税控除の対象になります。損益計算書上でも「販売費及び一般管理費」とひとくくりになるので、こまかい勘定科目の違いは問題ありません。

ただし学校など教育機関が実施するセミナーなどは、消費税が非課税の場合もあるので領収書の消費税欄を必ず確認するようにしましょう。

研修費の上限はない

研修費は税務上経費にする金額に上限はありません。上記で述べたように「業務に関連していて金額が適正」という要件を満たしていれば、金額に上限なく経費として計上することができます。

研修費の支出は減価償却の必要はない

研修費は特に時の経過に伴ってその効果が発生するものではないので減価償却をする対象ではありません。

ただし研修に必要な機器を準備し、その機器が10万円以上の場合は固定資産扱いになり、減価償却の対象となるので注意が必要です。

個人事業主の開業前の研修費は【開業費】に計上しよう

個人事業主の開業費についてご説明します

個人事業主の場合、開業前に支出した研修関連費用を開業費として計上しておくことが可能です。経費に計上して節税を行いましょう。

開業費として仕訳できる経費

個人事業主の開業費とは、開業日までに事業準備に使った費用です。研修に関連する費用も、事業を開始するのに直接必要な費用であれば開業費として計上できます。事業を始めるために受けたセミナーの受講費や、事業に必要な資格の取得費用など、開業準備にかかった費用を集計しておくと良いでしょう。

ただしこちらも法人と同様に一身専属的な資格の取得や、事業に直接関係のないスキルアップの費用は認められないので注意して下さい。

開業費に仕訳するメリット

開業日までの経費を開業費として集計しておくと、事業を開始した後の確定申告で経費として計上できるので節税につながります。

また開業費は任意の年に経費にできます。つまり開業費の金額を開業した年に全て経費にしても良いし、開業した年は一部だけを経費にして翌年以降に残りを経費にすることも可能です。金額は任意に決められるので、所得の金額を見ながら調整できます。開業関連の費用は研修費を含めてできる限り計上しておくことがおすすめです。

監修税理士からのコメント

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

研修費として計上するには、「業務遂行に直接必要なものであるかどうか」により判断します。業務に関連していたとしても、研修費ではなく給与課税の対象となるケースもありますので、高額な支払いの生じるスクール費用等は、経費計上可能か慎重に判断するようにしましょう。

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このように研修を受けることに関連する費用には様々な勘定科目で計上される内容があり、税務上研修費として損金にならずに給与として所得税の対象となるものなど注意が必要なものがあります。判断に迷った場合には税理士に相談してみましょう。

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この記事の監修税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

風間優作(かざまゆうさく) 1985年千葉県銚子市出身。兵庫県立大学大院卒業。 上場会社経理部にて一般経理実務を経験した後、Big4監査法人及び税理士法人にて、公認会計士・税理士としての実務を経験し独立開業を果たす。現在は会計監査やIPO実務だけではなく、個人・法人税務からM&Aや事業承継に係る税務業務まで幅広く対応している。