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確定申告で自動車保険は控除や経費の対象になる?節税対策を含めて解説

最終更新日: 2024年02月09日

2023年(令和5年)分の確定申告に関して

★提出期限(所得税・贈与税の申告や納付期間)
2024年2月16日(金)~ 2024年3月15日(金)
※贈与税は2024年2月1日(木)~ 2024年3月15日(金)

確定申告や年末調整で控除を受けるため、生命保険や医療保険といった保険料の控除証明書を提出する人がいらっしゃるでしょう。そこで「自動車保険も対象になるのでは?」と思っていませんか?

実は自動車保険は確定申告や年末調整における保険料控除の対象ではありません。ただ事業用として使用する車の場合は、確定申告の際に保険料を経費として計上できるんです。この記事では自動車保険の控除や経費計上のポイント、確定申告での注意点について解説します。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

公認会計士・税理士・1級FP技能士、 1987年 香川県生まれ 2008年 公認会計士試験合格 2010年 京都大学経済学部経営学科卒業 大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

自動車保険は保険料控除の対象外

街中を走る車

確定申告や年末調整において、自動車保険は保険料控除の対象外です。平成18年以前までは「損害保険料控除」として控除の対象になっていましたが、平成19年以降から廃止されています。事業用で車を使用している場合も、個人の保険料控除の対象にはなりません。

現在の保険料控除の対象は「社会保険」「生命保険」「地震保険」の3種類となっています。対象となる保険料や所得控除額は下記のとおりです。

保険の種類 該当する保険料 所得控除額
社会保険 健康保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料など ・実際に支払った金額
・給与や公的年金等から
差し引かれた金額
生命保険 生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料など 各保険料:最大40,000円
(合計:最大120,000円)
地震保険 建物の火災保険に付帯して契約する、地震保険部分の保険料 最大50,000円

各保険の保険料控除については次の記事でくわしく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

事業用で使用する車の自動車保険料は経費として計上できる

自動車を運転する若い女性

事業に使用しているときは経費や損金として自動車保険料を計上できます。ただ「事業用の車」といっても、事業専用の車と自家用車を事業とプライベートの両方で利用する場合、経費として計上する方法が異なるので注意しましょう。

事業専用車の場合

自動車保険料は「損害保険料」、あるいは「車両費」として全額「経費」として計上できます。ただし自動車保険(任意保険)は確定申告を行う1年分の保険料を算出してから処理する「期間按分」が必要です。

自家用車を事業として利用する場合

プライベートで利用する自家用車を事業に利用する場合、経費として計上できるのは事業で使用している金額のみです。使用実態に基づき、乗車日数走行距離に応じてビジネスで使っている割合を算出します。

たとえば、1か月あたりの走行距離が80キロメートルで、そのうち40キロメートルを仕事で走行した場合、自動車保険の50%を経費として計上できます。経費として計上する分は「損害保険料」または「車両費」として仕訳しましょう。

自動車保険料を経費にする場合の仕訳・勘定科目

家族でドライブ

自動車保険料を経費にする場合、どの勘定科目で仕訳をすればいいのでしょうか。自賠責保険と任意保険に分けて解説します。

自賠責保険の場合

車を購入すると自動車事故の被害者を救済するため、自賠責保険に加入しないといけません。自賠責保険料は全額「経費」として計上でき、勘定科目は「損害保険料」または「車両費」で処理をしましょう。たとえば自賠責保険料15,000円を現金で支払った場合は、下記の通り仕訳をします。

借方 貸方
損害保険料:15,000円 現金:15,000円

任意保険の場合

補償範囲を広げることなどを目的に自由に加入できる自動車保険です。契約期間が1年以内の任意保険料の経費は、短期前払費用の特例を使えば損害保険料」または「車両費」で処理できます。ただし複数年分保険料を支払うときは原則「長期前払費用」とし、期間ごとに按分してから「損害保険料」または「車両費」として仕訳します。では具体的にどのように仕訳するのか紹介します。

損害保険料

自動車保険料を経費として計上する際、よく用いられる勘定科目です。1年以内の部分は自賠責保険と同様に仕訳し、複数年契約したときは次年度以降の分を「長期前払費用」として計上します。たとえば、1年目の期首に3年契約で6万円の「任意保険」に加入した場合、仕訳は下記のとおりです。

<1年目>

借方 貸方
損害保険料:20,000円
長期前払費用:40,000円
普通預金:60,000円

<2年目、3年目>

借方 貸方
損害保険料:20,000円 長期前払費用:20,000円

車両費

自動車保険料だけでなく、ガソリン代や車検代など、自動車関連費用をまとめて経費として計上する際に使用します。1年以内の部分は自賠責保険と同様に仕訳し、複数年契約は「損害保険料」と同じく次年度以降の分を「長期前払費用」として計上します。たとえば、1年目の期首に3年契約で9万円の「任意保険」に加入した場合、下記のように仕訳しましょう。

<1年目>

借方 貸方
車両費:30,000円
長期前払費用:60,000円
普通預金:90,000円

<2年目、3年目>

借方 貸方
車両費:30,000円 長期前払費用:30,000円

なお、ガソリン代やETC料金など、実際にどのような目的で使われたのか明確にするために勘定科目を分けて計上してみましょう。

その他自動車にかかる経費一覧

自動車保険料以外に自動車税やタイヤ交換費用など経費もあります。その勘定科目の仕訳について紹介します。

租税公課

自動車取得税や自動車重量税、印紙税など、自動車にかかわる税金を支払った際に使用する勘定科目です。たとえば、営業用として登録した自動車にかかる自動車税が7,500円の場合、下記のとおり仕訳します。

借方 貸方
租税公課(自動車税):7,500円 普通預金:7,500円

修繕費

車検代をはじめ、自動車の修理や整備にかかる費用も自動車関連の費用を仕訳する際に使われます。たとえば、車検を受けた際にかかる自賠責保険料43,000円を経費として計上する場合は下記のとおりです。

借方 貸方
損害保険料(自賠責保険):43,000円 普通預金:43,000円

駐車場代・コインパーキング代

月極駐車場をはじめとした継続して駐車場代を支払う場合は「地代家賃」として仕訳します。また利用頻度によって変わるものの、コインパーキング代金は「旅費交通費」や「車両費に仕訳できるでしょう。

減価償却費

事業用の自動車を購入した費用も経費として計上できます。10万円以上の物品は償却資産として減価償却する必要があるため、普通自動車の新車は6年、軽自動車は4年かけて減価償却費として計上しないといけません。

また、普通車であれば4年落ち以上の中古車は耐用年数が2年と短く、購入価額によって多くの経費を計上できる可能性があるため、早く減価償却をしたい人は中古車の購入も検討しましょう。

自動車付属品の購入費用

事業用としてタイヤやホイール、エンジンオイルといった自動車付属品を購入した場合も経費として計上できます。タイヤやホイールは車両運搬具の固定資産として、エンジンオイルや洗車用品は消耗品費として処理できるでしょう。

申請時に添付する書類や領収書は?

自動車保険料やガソリン代、車検費用などを経費として計上するときは確定申告書のほかに以下の書類を添付します。

  • 収支内訳書(白色申告の場合)
  • 青色申告決算書、複式簿記により作成された貸借対照表および損益計算書など(青色申告の場合)

自動車保険料をクレジットカード払いして領収書がない場合は、カードの利用明細を添付するようにしましょう。

自動車保険料を安くする方法

ここまで確定申告で自動車保険料を控除や経費にする方法についてご紹介しました。ただ自動車保険料は年間で数万円から数十万円かかるといわれています。少しでも保険料を安くしたいなら、等級を引き上げること補償内容の見直しなどで抑えられるかもしれません。具体的にどのようにするのか、解説します。

等級の引き上げ

自動車保険料を安く抑えるには、等級を上げていくことが大切です。保険会社は過去の事故歴に応じて、保険料の割引または割増を適用する「ノンフリート等級制度を採用しています。1等級から20等級まで設定されており、1等級は64%の割増率、20等級は最大63%の割引率になるので、常に安全運転を心がけましょう。

補償内容の見直し

自動車保険料が高くなる理由のひとつとして、必要以上に補償をつけていることがあげられます。対人や対物賠償を削ることはおすすめしませんが、運転者の年齢に条件をつけたり、運転者を制限したりする特約をつければ、保険料が安くなるかもしれません。

車両保険の見直し

任意保険のうち、車の修理費などを補償する車両保険に加入するかしないかで保険料は大きく変わります。車両保険にはすべての車両事故を補償する「一般型」と、補償内容は限定されますが、その分の保険料が安くなる「エコノミー型」があります。単独事故やあて逃げなどに対する補償が不要な場合は「エコノミー型」を検討するといいでしょう。なお、保険会社によって補償内容が異なりますので、くわしくは契約の保険会社に確認してください。

割引制度の利用

保険会社によってさまざまな割引制度があります。とくに利用しやすい制度が「インターネット割引」です。インターネットで自動車保険に申し込むことで保険料の割引が受けられます。このほかにも、保険会社によっては「早期契約割引」や「ゴールド免許割引」、「エコカー割引」といった制度もあるので確認してみましょう。

契約している保険会社の見直し

自動車のディーラーや修理工場など、損害保険代理店を通して自動車保険に入っている人は、インターネットや電話で直接契約するダイレクト型自動車保険への切り替えを検討してみてください。なぜならダイレクト型は代理店を挟まない分、保険料が安くなるからです。ただし補償内容を含め契約手続きの最終確認は、自分自身で行う必要があるので、対面ないと安心できない人は対面で契約する代理店型自動車保険をおすすめします。

【まとめ】自動車保険は保険料控除の対象外!事業用で使う車なら経費計上が可能

運転中の女性

自動車保険と確定申告の関係について解説しました。残念ながら自動車保険は保険料控除の対象ではありませんが、事業用で使用した分は確定申告の際に経費として計上できます。

荷物の配送や個人タクシーなど、事業用で車を利用している人は節税対策を含め、税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

監修税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

意外に経費として計上されていないのが車に関する支出です。 仕事で使っているのであれば多少なりとも経費にすることが可能なので、事業用割合を算出して自動車保険料も経費に計上し、節税に繋げましょう。

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