確定申告が初めての方にとって、経費精算は頭を悩ませる問題ですよね。「レシートでも経費計上していいのか?」「何も書類が残っていないけど経費にはできないのか?」など次々と疑問が浮かんでくることでしょう。
確定申告では領収書の代わりにレシートで経費計上が可能です。本記事ではレシートを領収書の代わりに使える4つの条件や経費として認められる具体例について解説します。レシートがない場合の対処法についても解説していますので「レシートを失くしてしまった」「レシートをもらい忘れてしまった」という方はぜひ参考にしてください。
この記事の監修税理士
京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台
確定申告の経費計上をレシートで行う際のポイント
経費計上は領収書だけでなくレシートでも可能です。記録された経費が客観的に証明できるのであれば、証明書として認められます。確定申告の際にレシートを提出する必要はありませんが、5~7年の保管義務があります。
レシートは領収書の代わりになる
レシートは領収書の代わりとして確定申告に利用できます。確定申告で経費を申請する際は、いくつかの条件を満たしていればレシートでも領収書でもどちらでも問題ありません。またレシートだけでも経費計上を済ませることができます。
コンビニやスーパーなどでの購入で領収書をもらい忘れてしまった場合には、レシートで経費申請を行いましょう。
なぜレシートでも確定申告できるのか?
確定申告の際「領収書やレシートが必要」と言われるのは、記載されている経費を客観的に証明するためです。もちろん領収書があればベストですが、レシートでも大抵の場合は経費の証明書として認められます。むしろ少額の場合はどんなものに支出されたのかが明確なレシートの方が好まれることもあります。
ただし数万円、数十万円というような金額の場合は、領収書がないと経費として認められない場合も多いです。なぜならレシートには支払った人の名前が記載されておらず、支払いの証拠として不十分な部分もあるからです。
レシートで経費を計上するための4つの条件
レシートで経費を計上するためには次の4つの内容が明記されている必要があります。
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所得税法により記載が求められているこれら4つの条件が記載されているのであれば、レシートも経費計上に利用できます。その際、金額に上限はありません。青色申告・白色申告どちらの場合も同様です。
ただし仕入税額控除を利用する事業者が領収書・レシートの保存をする場合、所得税法に加えて消費税法を遵守する必要が出てきます。その場合にはもう一つ領収書・レシートへの記載が必要になります。
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もし条件のうちレシートの記載に不足している内容があれば、補記によりそれを補うことができます。レシートを受け取った者の氏名(自社名)や交際費・会議費の申請に必要な同席者名など、不足している情報をレシートの裏や余白に手書きで記載してください。これらの情報があると、より確度の高い証憑としてレシートで経費計上できる可能性が増すでしょう。
個人事業主だと家事按分が問題になる
個人事業主の場合、領収書やレシートがあるからといって全額経費になるとは限りません。個人事業主は実態に沿って「家事按分」を行う必要があり、生活費(私費)に該当する金額は経費計上から除く必要があります。
家事按分とは「事業に必要な経費と個人的な支出を分けること」を指します。
例えばスマホの通信費や自宅兼事務所の家賃など、事業にも生活にも使用しているものがあるとします。このような費用を経費計上する場合、経費にできるのは「事業として」使用していると認められる部分の金額のみです。「生活費である」と判定された部分の金額は経費計上できません。
これは領収書やレシートのある費用計上でも同様のことがいえます。事業にも生活にも使用するものを購入したり役務の提供を受けたりした場合には、適切な按分方法によって経費計上する金額とできない金額を按分し、経費計上可能な部分のみ経費にするようにしましょう。
レシートは提出不要!ただし青色は7年・白色は5年の保管義務あり
実は確定申告の際には税務署にレシートを提出する必要はありません。しかしレシートには保管義務があります。白色申告で5年、青色申告は7年です。これは税務調査が入った際に確定申告書の内容が事実であることを証明するためです。税務調査では過去の分もあわせて、領収書やレシートで入出金の内容が確認されます。
ただしレシートは感熱紙(時間が経つと文字が消えてしまうタイプの用紙)に印字されているものも多くあるので、事前にコピーしておくとしっかり手元に残せて安心でしょう。
経費として認められる基準は「業務上必要かどうか」
個人事業主のみならず、領収書は「業務上、明らかに必要な支出である」と認められなければ経費算入できません。
例えばライターをしている方であれば、パソコンやインターネットに接続するための通信機器、電話などの通信料、原稿作成のための書籍などが仕事に必要なものとして経費にできます。他にも名刺や打ち合わせの際のコーヒー代なども経費と認められます。誰が見ても「どうしてもこれがなければ仕事にならない」と言える出費が経費になる、と考えておくとよいでしょう。
経費算入できないものが入っていると申告の修正を求められることがあります。量が多いと税務調査が入って、調査を受けた末に追徴課税が課される場合もあります。逆に経費として認められるものが算入されていないと申告額が大きくなり、税金を過分に支払ってしまうことになります。いずれにしても業務上必要な支出かどうか、レシートを注意深く確認することが必要です。
前提:税制優遇措置が受けられるのは青色申告
前提として、確定申告で税制優遇措置が受けられるのは青色申告の場合のみです。白色申告には税制優遇措置がないので注意してください。
確定申告で青色申告を利用するには、事前に税務署へ届け出を行う必要があります。届け出は下記の期日までに行いましょう。
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上記どちらかの期日までに届け出を行っていない場合には、自動的に白色申告となります。
なお青色申告を利用できるのは事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う方のみです。雑所得では青色申告は利用できませんので注意しましょう。事業所得と雑所得の違いについては以下の記事でくわしく解説しています。ぜひあわせて参考にしてみてください。
レシートがない時の3つの対処法
レシートをうっかり捨ててしまったり、電車代やバス代など領収書もレシートも発行されない費用があったりする場合はどうすればいいのでしょうか?
レシートも領収書もないからといって、経費精算を諦める必要はありません。レシートや領収書がない場合でも「出金伝票」や「クレジットカードの明細」を活用すれば経費精算が可能です。
出金伝票を使う
領収書もレシートもない場合は出金伝票による伝票処理ができます。出金伝票とは以下の事項を明確に記載する伝票のことです。
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出勤伝票は文房具店や100円ショップなどで販売されているので、手軽に利用できます。
仕事関係で支払った冠婚葬祭に関する費用なども出金伝票で処理します。領収書もレシートも紛失してしまった、という際も出金伝票が使えるでしょう。
クレジットカードの明細を利用する
業務上必要なものの購入費をクレジットカードで支払った際には、レシートの代わりにクレジットカードの明細が支払いの証拠になります。ただし4条件のうち特に資産又は役務の内容(商品名など)の記載があるかどうかを確認しましょう。ない場合は別途で領収書が必要です。
またネット購入などでweb明細を貰った場合は早めに印刷をしておきましょう。web明細は表示期間が決まっているので、放置しておくと消えてしまい経費計上ができなくなる恐れがあります。
銀行口座の入出金記録を出す
銀行口座から引き落としや振込で支払った場合も、通帳の記載が支払いの証拠になります。領収書やレシートなどを保管しておく必要はありませんが、振込をした場合は念の為振込伝票を保管しておくとよいでしょう。
可能であれば仕事用の口座を開設して、大きな支払いは振込等で行うようにすれば入出金の管理が通帳でできるので便利です。また青色申告事業者であれば、屋号で口座が開設できます。
レシートを保管するおすすめ方法3選
確定申告が終わった後もレシートは保存し続けなければなりません。白色申告の場合は5年間、青色申告の場合は7年間の保存が義務付けられています。ここからはレシートを保存するおすすめの方法を3つご紹介します。
1.レシートを月ごとにノートで管理する
レシートの数が多い方は月ごとにレシートを分類しましょう。1か月分のレシートをノートに貼り、見直す際にどのページを確認すればよいのかわかりやすい状態にします。
レシートは後日税務調査が入った際などに見直す可能性があります。月ごとに分類しておけば、その際にスムーズに確認できるでしょう。
2.クレジットカード明細だけにする
経費精算の数が多くレシートや領収書が膨大な量になる場合には、クレジットカードの利用明細を代わりにするという保管方法があります。経費にする費用を1枚で支払うようにしておくと便利でしょう。
ただしクレジットカードの利用明細を領収書・レシートの代わりとするには、4条件を満たしているかどうか確認してください。条件が揃っていない利用明細では、領収書やレシートの代わりにすることはできません。
3.レシートを写真データにして電子化保存する
レシートは写真に撮って電子データとして保存しておくこともできます。これを可能にしたのが電子帳簿保存法のスキャナ保存制度です。
2017年に電子帳簿保存法の改正が行われ、それまで以上に国税関係帳簿書類を紙以外で保存しやすくなりました。2021年に更なる改正を受け、現在では要件さえ満たせばレシートを電子化して保存することが可能になっています。
レシートを電子化するには「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たす必要があります。具体的にいうと、一定水準以上の解像度でレシートを読み取ったりモニターを備え付けたりすることが該当します。タイプスタンプの付与も必要です。
これらの条件を自力で満たそうとすると、資金や時間が必要になります。そのため個人事業主の方にはアプリの利用をおすすめします。あらかじめスキャナ保存制度の要件をクリアしたアプリを利用してレシートを画像で保存すると、自ら法律の要件をクリアしているかどうか確認する必要がありません。
経費として認められるレシートの具体例
一見経費にはできないと思えるような費用であっても、事情によっては経費にできる可能性もあります。自分の場合は適用できるのかどうかを考えながら読んでみてください。
認められやすい経費と勘定科目
経費は、指定された勘定科目に分類して計算します。簿記の知識がない人でも、これらの項目と確定申告の際の損益計算書(青色申告)や収支内訳書(白色申告)を知っておくと、帳簿をつける際に困りません。
以下は青色申告決算書に記載されている勘定科目です。同じ種類の経費はすべて同じ科目に入れるようにします。今年と去年で科目が異なる、ということがないように気をつけましょう。
勘定科目 | 経費の内容 |
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租税公課 | 事業税、登録免許税、印紙税、消費税(税込経理方式の場合に限る)、事業用車両の自動車税 |
荷造運賃 | 商品の運送費、宅配便代、ダンボール箱やガムテープなどの梱包資材費 |
水道光熱費 | 仕事で使用した水道代、電気代、ガス代、灯油代 |
旅費交通費 | 仕事で使用した航空券代、電車代、バス代、タクシー代、宿泊費 |
通信費 | 仕事で使用した電話代、インターネット使用料、切手代 |
広告宣伝費 | 広告に使ったチラシ代、インターネットや新聞の広告代 |
接待交際費 | 取引先との飲食代、お中元・お歳暮代、従業員との飲食代 |
損害保険料 | 事業用車両の保険料、事務所や店舗の火災保険料 |
修繕費 | 事務所や事業用車両の修理費や維持管理費、パソコンの修理代 |
消耗品費 | 10万円未満、もしくは法定耐用年数が1年未満のものを購入した際の費用 文房具、パソコンなどの事務用品、名刺 |
減価償却費 | 固定資産として計上した高額な資産を一定期間(パソコンは4年、車は6年など)計上する費用 コピー機、自動車、パソコン、カメラ |
福利厚生費 | 慰安や医療など従業員の福利厚生のための費用。青色申告の自営業やフリーランスの場合、事業者負担の従業員の健康保険、厚生年金保険等も福利厚生費に含まれる |
給料賃金 | 雇用している従業員の給与、賞与 ただし、青色専業専従者への給与は専従者給与として処理する |
外注工賃 | 業務を外部委託業者に依頼した際の費用 |
利子割引料 | 金融機関からお金を借りた際の支払利息 事業で利用する自動車のローン利息 など |
地代家賃 | 事務所や店舗、駐車場などの賃借料 |
貸倒金 | 取引先の事情などで回収できかったお金 |
雑費 | どの勘定科目にも属さない少額経費 |
専従者給与 | 青色事業専従者に支払う給与 |
各勘定項目に計上できる経費には、業種によって認められやすいものや認められにくいものがあります。具体的な例で考えてみましょう。
【例1】個人事業主のスーツ購入費
残念ながら、個人事業主の場合にはスーツ代は原則として経費として認められません。仕事のときだけ着用していることが明確ではない、というのがその理由です。制服や作業服などの仕事だけで着用する衣服であれば、消耗品費として計上できます。
一方で2012年の税制改正により給与所得者(サラリーマン)であれば、スーツ代も経費として認められるようになりました。サラリーマンにとってのスーツは、制服と同じ位置付けであるという考え方からです。ただし、会社からの証明書類が必要になる等の要件があるので注意が必要です。
【例2】移動費・海外渡航費
リモートで働いている場合、会社への出向や会議で移動したり、場合によっては海外渡航したりする機会もあるでしょう。この場合は「どこに行って、どんなことをしたのか」という記録があれば、航空券代などを旅費交通費として経費計上できます。
記録とは取引先の名刺や店舗での買い付け費用の領収書など、誰が見ても明らかなもののことです。写真や視察の感想だけでは「個人旅行ではないか」と言われることもあり、認められない場合もあります。
【例3】ゲーム会社のゲーム購入費
ゲーム開発を行っているようなフリーランスのプログラマーが研究のために購入したのであれば、ゲーム購入費やスマホアプリ代も経費として計上できます。ただしソーシャルゲームやLINEスタンプの購入費など、開発している製品との関連性を証明する必要があります。
食費も経費として申請できる
場合によっては食費も経費として申請できます。経費にできる食費とは「事業に直接関係のある」食費のことです。
例えば個人事業主がカフェのWi-Fiを利用してWeb会議や作業をした場合、その際の飲食代は事業に関わる必要事項ということになり、経費として計上可能です。
確定申告前には食費のレシートを改めてチェックし、事業に関係ある食費とない食費の分類を行いましょう。
おむつ代も申請すれば医療費控除を受けられる場合がある
条件を満たせば大人のおむつ代で医療費控除が受けられます。
まず自身の確定申告に入れられる費用は、自分または自分と生計を一にしている配偶者・親族のみです。これらに該当する方のおむつ代であれば医療費控除を受けられる可能性があります。
大人のおむつ代で医療費控除を受けるには、下記の書類が必要になります。
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該当する可能性のある方は、おむつ使用証明書の発行が可能かどうか医療機関に確認してみましょう。
【まとめ】レシートでも条件を満たせば確定申告できる!
領収書がない場合でも、次の4つの条件を満たしているレシートなら経費計上に使用できます。
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仕入税額控除を利用する企業の場合には下記の記載もあればより安心でしょう。
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また領収書・レシートのどちらも見つからないときには次の方法で経費計上が可能です。
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領収書やレシートを紛失してしまったからといって経費計上を諦めるのではなく、経費計上の要件を充たすことができる代替的な資料がないか確認してみましょう。
監修税理士からのコメント
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このレシートは経費になる?不安になったら税理士へ相談しよう
「領収書やレシートはあるけれども、どこまで経費にしてよいのだろうか・・・」と判断に悩むケースも多いのではないでしょうか。特に自宅で仕事をしていることも多い個人事業主の場合、光熱費や通信費をどこまで経費として計上できるか、複雑でわからない部分もありますよね。
そんなときは税金のプロ、税理士に相談するのがおすすめです。税理士に依頼するメリットはいくつか挙げられます。
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