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消費税課税事業者選択届出書とは|課税事業者がお得なケースも?

最終更新日: 2024年06月28日

消費税の課税業者か、それとも免税業者かを税務署へ申告する書類「消費税課税事業者選択届出書」。本記事では、消費税課税事業者選択届出書の概要から提出しなければならない条件、課税業者になるメリット・デメリットまでくわしくご紹介していきます。

消費税課税事業者選択届出書とは

消費税に関わる申請書類の1つが「消費税課税事業者選択届出書」です。ここでは「消費税課税事業者選択届出書」の提出期限や注意点と、万が一「消費税課税事業者選択届出書」を提出し忘れたときの対処法も解説。「会社設立の初年度は提出が必要?」「昨年度提出したが、もとに戻れるか?」といったことにも触れていきます。

消費税課税事業者選択届出書の提出期日や提出先は?

「消費税課税事業者選択届出書」とは、消費税の免税事業者が「あえて」課税事業者になるために提出する申請書類です。
免税事業者が、年度の最終日までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出することで、次年度から課税事業者の認定を受けられます。管轄の税務署に直接持ち込む、もしくは、郵送でも提出可能です。

事業年度は企業ごとに異なりますので、事業年度が1月1日~12月31日の場合は12月31日まで。事業年度が4月1日~3月31日の場合には、3月31日までに提出する必要があります。

消費税課税事業者選択届出書【見本】

消費税課税事業者選択届出書の見本は以下の通りです。用紙は国税庁ホームページからダウンロードできます。

消費税課税事業者選択届出書 見本
消費税課税事業者選択届出書【見本】 出典:国税庁

消費税の免税事業者に該当するのは?

消費税の免税事業者とは、「課税事業者以外」の事業者を指します。

消費税の課税事業者とは以下の条件のうち一つでも該当する事業者のことを言います。

  • 前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える
  • 特定期間(前事業年度の前半6ヵ月など)の課税売上高が1,000万円を超え、かつ給与・賞与の支払いが1,000万円を超えている場合
  • 資本金が1,000万円以上の場合

これらに一つも該当しない事業者すべてが、免税事業者に該当します。

消費税免税事業者が課税事業者になるメリット

「消費税課税事業者選択届出書」を提出して、自ら課税事業者となった方がお得になるケース──それは、消費税の還付が受けられる場合、つまり「受け取った消費税額が、支払った消費税額より少ない」場合です。例えば50万円消費税を受け取り、100万円消費税を支払っているケースです。

課税事業者の場合、支払った消費税のほうが多ければ、その分の還付(上記の例だと50万円)を受けることができますが、免税事業者の場合は受けることができません。

逆に、受け取った消費税のほうが多ければ、課税事業者の場合はその分を納税しなければなりませんが、免税事業者に納税義務はありません。

但し、一度課税事業者になった場合、免税事業者に戻ることは大変難しいため、慎重に検討する必要があります。

課税事業者になると節税になるケース

課税事業者がお得になるケースについて、具体例を挙げてご説明しましょう。

ケース1:大規模な設備投資で、支払う消費税が多額になる見通しの町工場

工場に高額な産業用ロボットを導入するなど、明らかに当該年度の売り上げを超える課税支出(消費税がかかる購入)をしたというケースです。その場合、消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になることで、消費税の還付を受けられます。

ケース2: 輸出業者として国内で仕入れを行い、海外へ販売している

国内で商品を販売すると消費税がかかりますが、販売先が国外、つまり商品を輸出する場合は、消費税がかからなくなります。
輸出取引と認められた場合、「受け取った消費税=0円」となって仕入などで支払った消費税が還付されるのです。

年度途中から課税事業者になりたい、または免税業者に戻りたい場合

ここまでは、「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になるメリットや、提出期限などをお伝えしてきました。

では、「消費税課税事業者選択届出書」を期限内に提出できなかったり途中から認定を受けたい場合、そして再び免税事業者に戻りたい場合はどうすれば良いのでしょうか。

年度の途中から課税事業者の認定を受けたい

以下のような場合には、年度の途中から課税事業者に変更を希望されることがあると思います。

  • 「消費税課税事業者選択届出書」を期限までに提出できなかった
  • 年度の途中から消費税還付を受けたい

その場合、以下の「消費税課税期間特例選択(変更)届出書」を提出することで、年度の途中から課税事業者としての認定を受けられます。

消費税課税期間特例選択(変更)届出書 見本
消費税課税期間特例選択(変更)届出書【見本】 出典:国税庁

なお、この書類を提出して年度途中から課税事業者になると、通常1年ごとの課税期間を「1か月間」または「3か月間」に変更することになります。

年度途中から課税事業者になるメリット・デメリット

消費税の課税期間を変更(年度途中から課税事業者に変更)した場合、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。例を挙げて説明しましょう。

年度途中から課税事業者になるメリット

まずはメリットですが、年度途中または定期的に消費税の還付を受けられることです。免税事業者が年度の途中に大規模な設備投資をした場合など、多額の消費税還付を受けられる見込みがある場合は有効な手段だと言えます。

年度途中から課税事業者になるデメリット

一方のデメリットとしては、「消費税の計算が煩雑」であることが挙げられます。

事業年度が1月1日~12月31日の会社で、課税期間を3ヵ月間に区切った場合は下記のように、

  • 最初の消費税計算期間は1月1日~3月31日
  • この期間の消費税還付開始は4月1日から
  • 次の期間の申請書類提出期日は3月31日

となり、消費税の計算と申告書類の提出は年4回行われます。

同様に、課税期間を1ヵ月間に区切った場合は以下の手順になります。

  • 最初の消費税計算期間は1月1日~1月31日
  • この期間の消費税還付開始は2月1日から
  • 次の期間の申請書類提出期日は1月31日

となり、消費税の計算と申告書類の提出を、なんと年12回も行うことになるのです。

売上や仕入・経費などの集計はもちろん、消費税の申告書や「消費税課税事業者選択届出書」・「消費税課税期間特例選択届出書」の作成・提出も、選択した課税期間の区切りごとに行わなければいけないので非常に煩雑な作業となるでしょう。

さらに、最初に1ヵ月間または3ヵ月間の課税期間を選択すると、2年間継続しなければいけません。途中から「3か月間→1か月間」や「1か月間→3か月間」といった変更も認められないのです。

事業年度の途中で課税事業者になる際は、慎重な判断をするべきでしょう。

消費税免税事業者に戻りたい場合

消費税課税事業者が消費税免税事業者に戻りたい場合、以下の「消費税課税事業者選択不適用届出書」を管轄の税務署へ提出します。

消費税課税事業者選択不適用届出書 見本
消費税課税事業者選択不適用届出書【見本】 出典:国税庁

年度最終日までに提出すると、翌年度から消費税免税事業者に戻れます。

ただし、消費税課税事業者から免税事業者に戻るには以下2つの条件を満たさねばなりません。

  • 消費税課税事業者になって2年経過している。
  • 消費税課税事業者になって2年間で卸資産・調整対象固定資産の仕入れに1,000万円以上かかった場合は、課税事業者になってから3年経過している。

一度消費税課税事業者になると、簡単には免税事業者へ戻れないということですね。

消費税課税事業者選択届出書を提出するか、税理士に相談を

課税事業者・免税事業者どちらも、簡単に変更はできません。事業の状況を長期的に考えたうえで、決断を下す必要があります。

しかし、いざどちらを選ぼうかと考えたとき、「これで合っているのか?」「制度上の見落としはないか?」というような迷いや不安は起こらないでしょうか?

こういったときに心強い味方となるのが、税制の専門家である税理士です。事業展望を鑑みた上で、課税事業者と免税事業者のどちらを選択するべきなのか、適切なアドバイスをしてもらえます。提出書類の準備も、税理士がいると安心です。消費税について迷ったり困ったりしたら、一度税理士に相談してみてはいかがでしょうか?

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