個人事業主やフリーランスとしてビジネスをされている方の中には、年金は国民年金しか支払っていない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、退職後に受け取る年金が国民年金のみだと老後が心配です。そこで今回は、個人事業主やフリーランスの方が加入できる年金についてまとめました!
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
年金の基礎|年金は3階建て
個人事業主が加入できる年金の特徴を知るには、年金がどのような構造で構成された制度なのかを押さえておくと分かりやすいでしょう。
簡単にいうと、年金は3つの階層から成り立っています。このことから、一般的に「年金は3階建て」と称されています。この階層に個人事業主がどのように関わっているのかを見ていきましょう。
年金の構造
年金が「3階建て」と称されるのは、3つの階層から構成されているためです。
まず1階部分に当たるのが、国民が全員加入する「国民年金」です。2階部分は、会社員や公務員が加入する「厚生年金」です。そして3階部分は、企業が任意に行う「企業年金」です。
個人事業主は国民年金だけ
年金が3階建てだと聞くと、何か豪華なイメージがしますが、このうち個人事業主が関係するのは、1階部分の国民年金のみです。
会社員が「1階+2階」あるいは「1階+2階+3階」の年金に関わりがあることを考えると、個人事業主が受給する年金が少ないことが分かります。
つまり個人事業主の受給する年金は、同じ期間保険金を納めてきた会社員の年金受給額を超えることは、けっしてないのです。
個人事業主が年金作りに検討すべき制度4選
個人事業主は厚生年金に加入することができないため、自身で年金制度を選んで加入する必要があります。もちろん任意加入なのですが、老後の生活を考えると加入しておいた方がいいでしょう。
また、確定申告の際に、支払った掛金が所得控除の対象となるというメリットもあります。ここでは、個人事業主が国民年金以外に加入することができる年金制度を3つ紹介していきます。
国民年金基金 | 個人型確定拠出年金(iDeCo) | 小規模企業共済 | |
---|---|---|---|
掛金 | ~68,000円/月 | 5,000円~68,000円/月 | 1,000円~70,000円/月 |
※国民年金基金とiDeCoに同時加入の場合は、 合計掛金が~68,000円/月 | |||
掛金の単位 | 口数単位 ※選択できるのは2口目以降 | 1,000円単位 | 500円単位 |
控除 | 社会保険料控除として全額控除 | 小規模企業共済等掛金控除として全額控除 | |
給付形態 | 終身・確定給付 | 確定拠出(掛金±運用益) | 一括、分割、一括と分割の併用 |
注意点 | 付加年金との同時加入はできない | 付加年金と同時加入の場合は、 合計掛金が~68,000円/月 | 納付期間が240ヵ月(2年)未満だと元本割れする |
国民年金基金
厚生年金に加入することができない個人事業主などの第1号被保険者が、国民年金に上乗せするかたちで加入できる公的年金制度です。つまり、個人事業主にとっての国民年金基金は、会社員や公務員にとっての厚生年金にあたります。
厚生年金に個人事業主が加入できないように、国民年金基金に会社員が加入することはできません。また、国民年金に上乗せする制度のため、何らかの事情で国民年金の保険料を支払っていない場合も加入できません。
国民年金基金は給付の型と加入口数を自分で選択することができます。
1口目は終身型から、2口目以降は終身型と確定型(受給期間が定まっている確定年金)から選択する形になっています。国民年金基金の場合、支払った掛金は社会保険料控除として全額控除されます。
医師や税理士などの25の職業を対象とした「職能型基金」か、47都道府県に設立されており、同一の都道府県に住所がある第1号被保険者を対象とした「地域型基金」のどちらかを選んで加入することになりますが、両者に違いはありません。
掛金の上限額は68,000円/月ですが、後述する個人型確定拠出年金(iDeCo)と同時加入している場合は、その掛金と合わせて68,000円/月が上限額となります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
確定拠出年金とは、毎月拠出される掛金を企業や個人が運用し、老後にその資産を年金として受け取る私的年金です。個人事業主の場合、加入できるのは個人型確定拠出年金、通称「iDeCo」になります。
iDeCoの掛金は5,000円/月〜68,000円/月の範囲内で、1,000円単位の設定ができます。国民年金基金と同じく、掛金は全額所得控除の対象ですが、こちらは小規模企業共済等掛金控除として控除されます。
iDeCoは掛金が全額控除の対象となるだけでなく、運用益も非課税という大きなメリットがあります。ただし、運用商品は自分で選択するので、将来受け取る給付金が支払額を下回るリスクも同時にあることは気を付けた方がいいでしょう。
また、60歳になるまで掛金を引き出せない、加入時や運用にコストがかかるなどのデメリットもあります。
小規模企業共済
小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の役員が、退職や廃業時に受け取ることができる共済金を積み立てる共済制度です。年金制度ではありませんが、個人事業主であれば小規模企業共済も選択肢に入れることができるでしょう。
掛金は1,000円/月〜70,000円/月の範囲内で、500円単位の設定ができます。共済金を受け取る際には、受け取り方法として、一括または分割、および一括と分割の併用を選択することができます。
個人事業主が小規模企業共済を選ぶメリットは以下の3点です。
▼節税効果がある
小規模企業共済の掛金は小規模企業共済等掛金控除として控除されます。また、受け取りの際にも、一括の場合は退職所得控除、分割の場合は雑所得控除の対象となります。
▼掛金以上の共済金を受け取ることができる
掛金の納付期間に応じて掛金の最大120%の共済金が支払われます。
▼契約者貸付制度
小規模企業共済には契約者貸付制度という制度があり、加入者は積立金の範囲内で共済から資金を借りることもできます。いざというときの資金調達の手段になります。
また、一方でデメリットも存在します。
▼元本割れする場合がある
掛金以上の額を受け取ることができるのは、納付期間が240ヵ月間(20年間)以上からです。納付金額が240ヵ月間に満たない場合は、元本割れしてしまうので、加入する前に240ヵ月間以上掛金を納付し続けられるかどうかを考える必要がありそうです。
付加年金
付加年金とは、毎月の国民年金の保険料に加えて付加保険料400円/月を支払うことで国民年金に上乗せして受け取ることができる給付金です。「200円×納付月数」の金額が死亡するまで毎年、国民年金に加算されます。
例えば、20歳から60歳まで40年、つまり480ヵ月の間、付加保険料を支払うと、毎年96,000円を受け取ることができる計算です。40年間付加保険料を納付した場合の金額は192,000円ですから、2年で元をとることができます。付加年金の場合は、支払った保険料は社会保険料控除として全額控除されます。
付加年金自体にデメリットはありませんが、2つ注意すべきことがあります。
1つは国民年金基金と併せて加入することはできないということです。もう1つは、個人型確定拠出年金(iDeCo)と併用する場合、2つの制度を合わせて掛金の上限が68,000円/月となることです。iDeCoの掛金の設定は1,000円単位なので、付加年金と併用した場合、iDeCoの掛金の上限額は67,000/月になります。
国民年金が納付できない個人事業主の「保険料免除・納付猶予」
個人事業主の場合、売り上げが減少して、保険料の支払いが困難になることがあります。だからといって滞納をすると、年金の受給資格期間が不足して年金を受給できないといった不利益を被ることになります。
これを避けるために、保険料免除や納税猶予の手続きを行うという方法があります。そうすることで、受給資格期間に算入された状態で、保険料を免除してもらったり、納付を猶予してもらったりすることができるのです。
この保険料免除と納付猶予とは、どのような制度なのか、解説をしていきましょう。
免除制度と納付猶予制度の違い
免除制度とは、本人と配偶者、世帯主の合計所得が一定基準以下となり、国民年金保険料の納付が困難である場合に、保険料の一部もしくは全額が免除される制度です。免除の割合は、全額、4分の3、半額、4分の1の4段階です。
免除されている期間中も受給資格期間として算入されますが、年金額を算出する際は、この期間中の納付額は2分の1として扱われます。
納付猶予制度は、本人と配偶者の合計所得額が一定以下で、保険料の納付が不能である場合、本人の申請を受けて、保険料の納付が猶予される制度です。猶予期間中も受給資格期間に算入されますが、年金額の算出にはまったく反映されません。
所得の基準に応じて免除額が設定されている
免除制度では、所得の基準に応じて、次の表に示す4段階の免除額が設定されています。ここで対象とする所得の基準は、本人、配偶者、世帯主の所得の合計です。
免除額 | 所得の基準 |
全額 | (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 |
4分の3 | 78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
半額 | 118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
4分の1 | 158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
保険料免除・納付猶予を受ける方法
保険料免除や納付猶予を受けたい場合は、「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」に必要事項を記入の上、住所地の市区役所・町村役場の国民年金担当窓口、または年金事務所に提出します。
失業や倒産を理由として申請するときは、雇用保険受給資格者証または雇用保険被保険者離職票のコピーが必要です。
国民年金保険料は個人事業主の経費に計上できるのか
国民年金保険料は、毎月納めていくと、1年で相当の金額になります。個人事業主の場合、これを経費に計上できればかなりの節税ができるはずですが、はたして可能なのでしょうか。
基本的には個人事業主自身の支出とカウントされるためにNG
決論からいえば、国民年金の保険料は事業とはまったく関係のない費用であり、個人事業主自身のための支出であることから、経費に計上することはできません。
つまり国民健康保険料や生命保険料と同じ扱いだということです。
確定申告時には社会保険料として扱える
ただし確定申告時には、払った保険料は社会保険料控除として計上できます。支払った社会保険料は全額が控除の対象になるため、課税対象額を大幅に下げることができます。
家族の分の国民年金も社会保険料控除に
社会保険料控除は、生計をともにする配偶者や親族の社会保険料も含めて確定申告をすることができます。このときに誰が社会保険料を納めるのかによって、税額が異なってきます。
たとえば、夫が会社員で、妻が個人事業主のケースでみていきましょう。妻が確定申告をしている場合であっても、夫の方がはるかに高収入で、適用される税率が高いのであれば、夫が社会保険料控除をまとめて確定申告をした方が、家族総額の税金を抑えることができます。
妻が扶養家族でなくても、生計を共にしている配偶者であれば、夫が社会保険料を納めることで、妻の社会保険料も控除額に含めることができます。
ただし妻が保険料を自動引落で支払っているのであれば、妻名義の口座から引き落とされているため、夫が保険料控除をまとめることはできません。
妻の保険料を毎月銀行やコンビニで支払うことで、社会保険料控除をひとつの確定申告書にまとめることができるのです。
まとめ 個人事業主は自分に合った年金制度を選ぼう
今回は、個人事業主やフリーランスの方向けの年金制度を紹介しました。老後の生活の心配をなくすことだけでなく、節税のメリットもあるので、自分に向いていると感じた年金制度を選んでくださいね。
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