会社に所属する、または事業を営むうえで欠かせない交通費ですが、支給の規定や非課税限度額について曖昧だという方は多いのではないでしょうか?この記事では車通勤や営業車、その他交通機関を利用した場合の交通費の扱いから支給・申請の注意点まで詳しく解説していきます。
この記事の監修税理士
高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷
交通費と通勤手当の違いについて
通勤交通費の非課税限度額は国によって定められていますが、支給の条件に関しては各企業の規定に委ねられています。この項では通勤手段別の非課税限度額やそれを超えて通勤交通費が支給される場合の計算方法など、基本的な知識について確認していきます。
通勤交通費とは、通勤手当のこと
通勤交通費とは会社から支給される通勤の際に必要となる費用のことです。通勤手当とも呼ばれ、会社の福利厚生の一環となっています。純粋に通勤に必要な費用ですので、取引先への訪問や出張に必要となる費用は含まれていません。
現金・定期券での支給が一般的ですが、支給方法は会社の規定によって異なりますので、あらかじめ確認しておくと安心です。
通勤手当に義務はない~労働基準法より
労働基準法には通勤手当の支払いに関する直接的な記述がないため、必ずしも企業は労働者に通勤手当を支給しなければならないという義務はありません。ただし就業規則を作成する際に必ず届け出る必要がある項目として、「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」が定められています。
上記の記述には通勤手当という文言はありませんが、通勤手当の支給条件に関する取り決めも含まれると考えられています。そのため一般的に企業は福利厚生として就業規則や雇用契約の内容に基づいて通勤手当の支給額、支給の有無などに関して独自に定めているのです。
通勤費の支給、上限は会社の規定による
通勤費の支給や金額・上限に関しては労働基準法に取り決めがないため、企業の定める就業規則や雇用契約書によって決定されます。
企業によっては、かかった費用によらず全員一律で同額を支給または一部支給といった場合や通勤費の支給自体が無い場合もあります。上限額に関しても企業ごとに差があるため、就業先を検討する場合は就業規則や雇用条件をしっかりと確認しておくようにしましょう。
通勤手当の非課税限度額は15万円(平成28年改正)
通勤に公共交通機関・有料道路、それに加え交通用具を利用している場合の非課税限度額は15万円です。
ただし「1か月当たりの合理的な運賃等の額」が非課税の対象となっているため、費用・通勤時間・距離といった点考慮したうえで最も合理的なルートを選択する必要があります。そのためいくら通勤に合理的なルートであっても、グリーン車の利用はそれが必要である合理的な理由がないため非課税とは認められません。
マイカー・自転車通勤者の通勤手当について
マイカー・自転車通勤者の非課税限度額は、通勤距離によって下記のように細かく定められています。
ただし駐車場の利用料は企業から通勤手当として支給されている場合でも課税対象となるため注意が必要です。
非課税限度額を超えた通勤交通費の計算方法
通勤交通費が非課税限度額を超えて支給されている場合、非課税限度額を超過している部分に関しては給与として見なされ、所得税の課税対象となります。
例として従業員に交通費として19,800円を支給しているとします。このとき非課税限度額を16,500円とすると、超過分の3,300円が所得税の課税対象となり、下記のような課税仕入れ処理が必要となります。
通勤交通費 15,000円 (16,500円÷1.1)
給与 3,000円 ((19,800円-16,500円)÷1.1) 仮払消費税 1,800円 (19,800円÷1.1×0.1) |
経費になる交通費と旅費交通費
出張や訪問で利用した費用の全てが旅費交通費として計上されるわけではありません。どのような場合に旅費交通費として計上されるのか、しっかりと確認しておきましょう。交通費の定義や、その他精算方法ついても詳しく見ていきます。
交通費とは会社の経費
交通費とは電車やバスなど業務上の指示によって交通機関を使用した場合の費用のことを指します。交通費は通勤手当とは違い、支払った実費を会社の経費として計上することが可能です。
多くの場合は労働者が費用を立て替え、後に会社に請求することで精算を行います。
交通費の精算方法と支払い方法
旅費交通費の支払い方法には、出張旅費規程により一定額が支給される方法と立て替えた分の費用を後日精算する方法があります。どちらの方法を取るのかは企業によって違うため、あらかじめ出張に関する規定を確認しておくと良いでしょう。
立て替えた費用を後日精算する場合は、一般的に下記の流れで行われます。
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交通費の精算時には旅費精算書と併せて利用した宿泊施設・交通機関の領収書が必要となります。しかしバス乗車時やICカードを使用した場合などは領収書をもらうことができません。そういった場合には下記の書類を証拠として提出することが可能です。
交通系ICカード利用した場合 | カードの利用履歴を提出 |
領収書が発行されない場合 | 出金伝票に支払日・交通機関名・金額・利用区間・理由を記入 |
旅費交通費精算書に支払先・取引内容・目的といった出張の詳細を記入 |
旅費交通費に含まれるもの
旅費交通費に含まれる主な費用は下記の通りです。
ただし業務上交通機関や宿泊施設を利用しても、その目的によっては旅費交通費には計上されない場合もあります。
取引先の接待・招待に使用した場合は交際費に、一般消費者を招待した場合は広告宣伝費に計上されるなど、目的によって計上する勘定項目は様々です。そのため旅費交通費の精算を申請する際には、それがどのような目的で使用した費用であるのかを明確にしておくことが大切です。
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旅費交通費の消費税の注意点
旅費交通費の精算を行う際には、消費税の二重課税に注意する必要があります。通常電車代やバス代といった交通費には消費税が含まれています。一方で宿泊費は内税の場合と外税の場合があります。そのため宿泊費が外税表記となっているからと言って精算時に交通費にも同じように消費税率を掛けてしまうと二重課税が起こってしまうのです。
旅費交通費の精算の際には内税と外税の違いについて十分確認するようにしましょう。
車の経費精算の計算方法
公共交通機関とは違い、具体的な費用が出しづらいのが業務上で車を使用した場合です。業務上の指示で車を利用する際、経費の計算は具体的にどのようにして行われるのでしょうか?経費の計算方法や自家用車の場合、社用車の場合での違いについて解説していきます。
距離とガソリン代で経費を計算する
車を利用した際の経費は、基本的に走行距離とガソリン代を考慮して計算されます。多くの場合は会社独自で決められたガソリン単価に基づき、走行距離×ガソリン単価で経費の精算を行います。
ただし企業ごとに経費の精算規定は違うため、通勤交通費の場合は通勤距離に応じた非課税限度額を上限としている場合もあります。非課税限度額を超えそうな場合は、超えた分の費用がどのようになるのかを確認しておくと良いでしょう。
自家用車の場合
自家用車の場合、走行距離に応じたガソリン代を経費として精算する方法が一般的です。自家用車は当然プライベートでの利用が主となるため、業務上で使用した際のガソリン代のみを計算するのは難しいものです。そのためあらかじめ会社で定められたガソリン単価を適用し、それに基づいて経費の精算が行われます。
一方社用車は業務上での利用が前提となっているため、自家用車と違い使用したガソリン代は全額経費として扱われます。
精算時には、給油の際に発行された領収書やレシートを証拠として提出することになります。また会社によっては給油専用のクレジットカードが用意されている場合もあります。
交通費として含まれる経費
出張や取引先への訪問の際には、様々な交通機関や駐車場を利用することになります。それぞれ利用方法や目的によって交通費として認められない場合があるので注意が必要です。そのため出張や訪問の移動計画を立てる前に一度、会社の交通費規定を確認しておくと安心です。
高速代、有料自動車道
業務上の指示により高速道路・有料道路を利用した場合の料金は旅費交通費となります。会社によってはETCカードの貸し出しが行われている場合もありますが、そうでない場合は領収書や「ETC利用証明書」を精算時に提出することになります。
「ETC利用証明書」はインターネット上で公開されているETC利用照会サービスを利用するか、サービスエリアやパーキングエリアに設置されているプリンターから印刷することができます。またクレジット機能付きのETCカードを利用している場合は、カード会社から発行される利用明細を証拠として提出することも可能です。
参考:ETC利用照会サービス |
駐車場代
出張先や取引先への訪問でコインパーキングを利用した場合の駐車場代は旅費交通費として計上されます。ただし利用の頻度が高い場合は、水増し請求を疑われてしまう可能性があります。そのため精算時は領収書と併せて行き先や目的を明確に報告する必要があります。
タクシー代
タクシー代は利用の目的によって交通費として処理されるかどうかが変わります。旅費交通費として処理されるタクシー利用の例は下記の通りです。ただし交通費として認められるかどうかは会社の規定によって異なります。またその他取引先、事業関係者の接待のための利用は交際費として計上されますので注意しましょう。
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飛行機、新幹線、その他の公共交通費
出張において利用する飛行機や新幹線、その他の公共交通費は、基本的に経費として精算することが可能です。
ただし本来飛行機を利用した方が合理的であるのに新幹線を利用するなど、移動手段が合理的でない場合については経費として認められないこともあります。特別な移動手段を利用する場合は、事前に会社の判断基準について確認しておきましょう。
グリーン車、特急料金等
グリーン車や特急料金といった交通機関を利用する場合、経費として認められるかどうかは会社ごとに定められている「旅費規程」によって異なります。「旅費規程」で定められている利用条件を満たしていない場合、グリーン車や特急料金は経費とは認められません。
交通費について注意点
取引先への交通費の請求や受給・申請する際の注意点について確認していきます。交通費は請求時や受給時に間違いやすい点や支給方法によって確認すべき項目があります。交通費に関してトラブルにならないためにも、ポイントを押えてしっかりとチェックしておきましょう。
外注、クライアント、個人事業主の場合は消費税の二重課税に注意
交通費の精算を行う際には消費税の二重課税に注意する必要があります。特に個人事業主の場合は従業員からの交通費の申請が二重課税となっていないか注意しておかなければなりません。
他にも外注先からの交通費の請求や反対にクライアントに交通費を請求する場合、二重課税というミスがきっかけで会社への印象が悪くなってしまいます。精算の際には内税のものと外税のものをしっかりと確認して計算することが大切です。
通勤交通費の注意点
下記のような場合は通勤交通費の不正受給、虚偽申告と見なされるため注意が必要です。場合によっては裁判となるケースもありますので、実際の通勤手段や合理的な最短ルートを申請しておくことが大切です。
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交通費が給料、時給に含まれている場合は所得税がかかることになる
通勤交通費が給与や時給に上乗せされて支給されている場合は、通勤交通費も所得として見なされるため所得税の課税対象となります。交通費も含めた金額で所得税が課税される場合は、給与の全体の手取金額も変わってきますので確認が必要です。
ただし給与明細に「時給・給与に交通費を含む」といった文言があれば、確定申告や年末調整で還付される可能性もあります。
監修税理士のコメント
高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷
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交通費に関して基本的なことを知っておくと、会社に確認すべきポイントが明確になります。会社とトラブルにならないためにも、会社ごとに定められている取り決めや基準について事前にチェックしておくようにしましょう。
個人事業主の場合、従業員への交通費精算にも自分で対応しなければなりません。ミツモアでは税理士に無料で見積もりを依頼することができます。交通費やその他不安なことがある場合は、一度専門家である税理士に相談してみるのがおすすめです。