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公正証書遺言とは?必要な書類や作成方法を詳しく紹介

最終更新日: 2023年12月15日

公正証書遺言とは、公証人によって作成される遺言です。法的な有効性が高く、遺産分割に自分の意思を反映させやすい点がメリットといえます。作成に当たっては公証人への依頼や、書類・費用の準備が必要です。公正証書遺言の概要や作成方法を紹介します。

公正証書遺言とは『公証人』によって作成される遺言書

公正証書遺言とは、公証人が遺言者の意思に基づいて作成する遺言です。公正証書遺言作成のメリットやデメリット・自筆証書遺言との違いを詳しく解説します。

公正証書遺言を作成するメリット

公正証書遺言を作成する主なメリットは以下の通りです

  • 遺言の信頼性・有効性が高い
  • 自筆が難しい人でも作成できる
  • 遺言の検認が不要
  • 原本は公証役場で保管される

公正証書遺言を作成する公証人は、裁判官・弁護士・検察官などを長年勤めた法曹資格者や、それに準ずる人が担います。遺言の作成は正確な知識と豊富な実務経験に基づいて行われるため、遺言が無効になる心配がありません。

自筆が難しい人も公証人のサポートを受けることで、法的に有効な遺言を作成することが可能です。

また遺言原本は公証役場が保管し、遺言の内容は検認(相続人に遺言の存在・内容を明確に提示し、偽造・変造を防止する手続き)なしで実行されます。改ざんリスクが少なく、遺言の実行がスムーズな点もメリットといえます。

公正証書遺言を作成するデメリット

公正証書遺言で注意したいのは、以下の2点です

  • 作成費用を用意する必要がある
  • 証人を依頼する必要がある

公正証書遺言を作成する場合、公証人手数料令によって定められた作成手数料が必要です。加えて各種証明書類をそろえる際、発行手数料がかかります。

そのほか遺言の作成を専門家にサポートしてもらう場合は、報酬も必要でしょう。金額は依頼先によって異なるものの、数万円から数十万円が相場です。

また公証役場での公正証書遺言作成に当たり、以下に該当する人を証人として2名選定します。

  • 成人している者
  • 推定相続人ではない者
  • 遺贈を受けない者
  • 推定相続人および遺贈を受ける者の配偶者および直系血族などにあたらない者

自筆証書遺言との違い

自筆証書遺言とは、遺言者が自筆で作成する遺言です。公正証書遺言との違いは以下の通りです

  • 自分だけで作成できる
  • 遺言書作成費用・証人は不要
  • 字が書けない人は利用できない
  • 紛失・改ざんのリスクがある
  • 遺言内容の実行の際に検認が必要

自筆証書遺言はパソコンで簡単に作成できます。作成費用がかからない上、証人を用意する必要もありません。ただし書き方や内容が法律に則していない場合、無効になる恐れがあります。加えて保管は自己責任となるため、紛失や改ざんのリスクもあります。

また遺言を実行する前に、家庭裁判所での検認が必要な点も、公正証書遺言との大きな違いです。

なおパソコンでの遺言作成は可能ですが、自筆で日付の記載・署名・押印は必須です。手書きが困難な人は、自筆証書遺言を作成できません。

公正証書遺言を作る前に準備する書類

公正証書遺言の作成に当たっては、各種証明書類や遺産関連の資料などが必要です。公正証書遺言作成の際、準備すべき書類を紹介します。

ただし個人の事情による部分も大きいため、詳細については必ず最寄りの公証役場で確認しましょう。

遺言者本人を確認できるもの

公正証書遺言の作成を希望する場合は、3カ月以内に発行された本人名義の印鑑登録証明書が必要です。証明書を用意できない場合は、官公署発行の顔写真付き身分証明書で代用しても構いません。

遺言者本人を確認できる資料として認められているのは、運転免許証・パスポート・マイナンバーカード(個人番号カード)・住民基本台帳カード(有効期間内のものに限る)などです。

遺言者と相続人の続柄が分かるもの

遺言者の財産を譲り受ける相続人と、遺言者本人との続柄を証明できる書類も必要です。居住地の市区町村役場で、遺言者と相続人の戸籍謄本を取得しましょう。

また遺言者によっては、相続人以外の人に財産を相続させたいという希望を持つ人もいるかもしれません。この場合は、相続させたい人の住民票や、手紙・はがきをはじめとする住所が分かる書類を用意します。

遺産の内容が分かるもの

公正証書遺言で不動産を相続対象とする場合は、その不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)が必要です。法務局に足を運び、書類を入手しましょう。預貯金などの相続については、通帳原本または通帳のコピーを準備します。

そのほか固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書の提出も必須です。万が一、紛失してしまった場合は、市区町村役場の窓口で『固定資産評価証明書』を発行してもらわなければなりません。

証人の詳細が分かるもの

公正役場に自ら選んだ証人を随行させる場合は、証人予定者それぞれの氏名・住所・生年月日・職業を記載したメモを準備します。当然ながら、証人を公正役場に一任する場合は不要です。

なお証人について民法では『2人以上』としていますが、実際には証人を3人以上そろえるケースはほぼないといわれています。証人候補が複数いる場合でも、公証実務に即して2人としましょう。

公正証書遺言を作るときの流れ

公正証書遺言をスムーズに作成するコツは、事前準備を徹底することが重要です。公正証書遺言の着手から完成まで、順を追って解説します。

財産一覧メモを作成する

まずは遺言者の財産の内容を洗い出し、リストアップします。相続の対象の財産となるのは、お金に換算できるもの全てです。資産価値のある自動車から、骨董品・絵画まで、細かく挙げていきます。

相続の争点になりやすいのは、預貯金・不動産・有価証券・生命保険や権利関係などです。書きもれによって親族間の争いが発生しないよう、慎重に内容を精査しましょう。

遺産配分の決定と必要書類を収集する

『どの相続人に』『どの財産を』『どのように』相続させるかを決定します。詳細を決めたら、一覧にしてまとめておくことが大切です。また遺産配分を考える段階で、前項で紹介した必要書類の収集も始めましょう。

遺産配分を考えるときに注意したいのは『遺留分』への配慮です。

遺留分は相続権を持つ人に保障された『一定の割合の相続財産』を指し、遺言者の意思よりも優先されます。配分を考えるときは、相続人ごとの遺留分についても確認しておきましょう。

なお遺言の実行に不安がある場合は、士業や信頼できる第三者を『遺言執行者』に指定しておくと、実行の確実性が高まります。

証人を依頼する

証人には遺言作成の立ち会いと、原本への署名・押印という役割があります。公証役場に随行してくれる第三者を選び、証人となってくれるよう依頼しなければなりません。

証人を依頼するときの注意点は、始めから終わりまできちんと立ち会ってくれる人を選ぶことです。証人が中座すると、遺言が無効になる可能性があります。

妥当な人が見つからない場合は無理をせず、公証役場に手配してもらった方が無難です。

公証人への依頼・面談を行う

相続内容の決定や書類の収集、証人の選定が終わったら、公証人に面談の予約を行います。日本公証人連合会『公証役場一覧』で最寄りの公証役場を探し、連絡を取りましょう。

予約が取れたら各種書類やメモを持参して、遺言書作成について打ち合わせします。面談後に提示が必要な書類などが出てきた場合は、メール・FAX・郵便などで送ることも可能です。

面談は1~2回実施されるのが一般的ですが、個人の事情によってはそれ以上になることも少なくありません。

公証人が公正証書遺言案を作成する

受け取ったメモや資料を元に、公証人は公正証書遺言のベースとなるものを作成します。遺言者に異議がある場合は、変更や修正の相談も可能です。遺言者が全ての内容に納得すれば、公正証書遺言の内容は確定し、相談の上、公正役場での遺言作成日が決定されます。

遺言作成日の当日に行われるのは、遺言者自身による口頭での遺言内容の告示です。内容について公証人が適切であると判断すれば、遺言者・証人による遺言公正証書原本への署名・押印が実施されます。最後に公証人が署名・押印を行うと、公正証書遺言は完成です。

公正証書遺言を作るときの費用(手数料)

公正証書遺言の作成に当たっては、手数料と実費が必要です。どのくらいの費用が必要になるのか、大まかなところを把握しておきましょう。

財産の価額に応じた手数料

公正証書遺言の手数料は、遺産対象となる財産の価額に応じた手数料が必要です。料金は『公証人手数料令第9条別表』に基づいて算出されます。

財産の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円~200万円 7,000円
200万円~500万円 1万1,000円
500万円~1,000万円 1万7,000円
1,000万円~3,000万円 2万3,000円
3,000万円~5,000万円 2万9,000円
5,000万円~1億円 4万3,000円
1億円~3億円 4万3,000円+1億円から5,000万円超えるごとに1万3,000円
3億円~10億円 9万5,000円+3億円から5,000万円超えるごとに1万1,000円
10億円~ 24万9,000円+810億円から5,000万円超えるごとに8,000円

出張手数料や実費

公証人が病床に出向いて公正証書遺言を作成した場合、交通費や日当を支払わなければなりません

交通費は、現地に行くまでにかかった費用の全てです。一方、日当は1日2万円で、4時間までの場合は1万円とされています。また出張手数料として、公証人手数料に50%加算されるケースもあるようです。

なお作成済みの公正証書遺言について撤回したい場合も、手数料が必要です。撤回のみの手数料は、1万1,000円とされています。

公正証書遺言を作るのが難しい場合は専門家にサポートしてもらおう

公証人によって作成される公正証書遺言は、法的な信頼性が高い点がメリットです。遺言内容が実行される可能性が高く、遺産配分について確実に自分の意思を反映させたい人に適しています。

公正証書遺言の作成は個人でも行えますが、財産の調査や配分に難航するケースも少なくありません。正しく確実な遺産配分を実施したい場合は、行政書士・弁護士・司法書士といった法の専門家に相談する方が賢明です

納得できる公正証書遺言を作成し、相続の不安を解消しましょう。

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