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相続の時は確定申告が必要?相続税だけじゃない納税対応を説明!

最終更新日: 2022年12月17日

遺産を相続すると相続税が発生することは何となく知っているという方が多いと思いますが、それ以外にも所得税の確定申告をしなければならない場合があります。また不動産を相続した際には、名義を変更するための相続登記をし、登録免許税を支払う必要があります。はたして、相続の時に必要な手続きや税金にはどのようなものがあるのでしょうか。

相続にかかわる納税と手続き

土地や家などの遺産を相続すると、まず相続税の申告が必要となる場合があります。また、状況によっては、亡くなった方の所得税の確定申告を相続人が行わなければならない場合もあります。さらに、不動産を相続した場合には、申告・納税以外にも登記手続きを進めなければいけません。このように、相続の際に生じる税金や手続きについて確認してみましょう!

相続に対する税金は相続税のみ、確定申告は不要

まずは支払わなければいけない税金についてです。原則として、相続が発生し遺産を受け取ると、相続税が発生する場合があります。相続税の申告及び納税は、亡くなってから10か月以内に行う必要があります。ただ、相続税が発生せず、申告も不要な場合もあります。これは、相続税を計算する際、基礎控除額と呼ばれる金額があり、正味の遺産額がこの基礎控除額を超えなければ相続税は発生しないこととされているためです。また、各種の特例を使って申告し、相続税が0円となる場合もあります。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×(法定)相続人の数」として計算されます。例えば相続人が3人の場合、正味の遺産額が4,800万円以下であれば相続税は発生しません。

また、遺産相続をすると自身の財産が増えるので所得税が発生するように感じる方もおられると思いますが、相続により財産を得ること自体は所得税の対象とはなりません。ただし、相続後に土地や建物を売却した場合や、相続した資産が相続後に利益を生み出した場合などは、所得税の確定申告が必要になるケースもありますので注意が必要です。これらの事項については、後ほど詳しく説明します。

故人の確定申告は必要?税金対応はどのようにするのか。

年の途中で亡くなった場合、1月1日から亡くなった日までの収入金額は故人の収入として申告する必要があります。しかし当然ながら、故人で申告や納税を行うことはできません。そのため、故人に代わって、相続人がその期間の収入金額と必要経費を計算し、相続人全員の連名により、書t九税の確定申告・納税を行います。これを「準確定申告」といいます。準確定申告は亡くなった日から4か月以内に行うこととされています。相続税の申告より期限が短いため注意が必要です。

不動産を相続した場合の手続き

不動産を相続した場合には、法務局における相続登記の手続きをやりましょう。相続登記を行わないと不動産の登記名義人が亡くなった人のままになってしまい、その後売却したり賃貸したりする際に、支障が生じる恐れがあるためです。また、その後さらに相続が発生すると本来の所有者が分からないというような事態に陥ることも考えられるため、そのまま放置しておくことは避けなければなりません。

相続人が複数いる場合、相続登記を行うためには遺産分割協議書や遺言書が必要になります。相続登記をいつまでにしなければならないという期限はありませんが、相続が完了したらできるだけ早く行うことが望ましいところです。このことについても後ほど詳細に説明致します。

相続人に確定申告が必要になる場合

相続人が確定申告をしなければならないケースとは

遺産を相続すると、正味の遺産額に基づいて相続税が課税されますが、相続税以外にも申告・納税が必要な場合があります。相続した財産を売却すると、相続した人が所得税の確定申告をしなければならない場合があります。

ここでは、確定申告が必要となる場合について事例ごとに解説していきます。

相続した財産を売却した場合

相続した財産を売却し利益が出た場合、相続した人の所得となりますので、相続した人は所得税を払う必要があり、所得税の確定申告をしなければなりません。相続の時点で、財産の所有者は亡くなった人から相続した人に代わっているからです。

不動産を売却すると、収入金額から購入した時にかかった金額(取得費)と譲渡費(譲渡にかかったお金)を引いた金額を利益とみなし、所得税がかかります。相続した不動産を売却した場合には、亡くなった方が当初取得した金額から減価の額を控除した金額を取得費とすることができ、相続から3年10か月以内の売却であれば、売却した不動産に関する相続税額を取得費に加えることができます。

また、不動産を売却した時の所得税率は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年超の場合には長期譲渡所得として15.315%(住民税5%)、5年以下の場合には短期譲渡所得として30.63%(住民税9%)となります。相続した不動産を売却した場合、その所有期間は亡くなった方が取得した日から通算して計算するため、相続直後に売却しても、長期譲渡所得として低い税率で計算できるケースが多くあります。

収益を生む財産を相続した場合

賃貸アパートや貸駐車場を相続すると、亡くなった日以後の家賃収入や、駐車場収入は相続人のものとなります。よって、相続人はその収入に対して所得税の確定申告をしなければなりません。

不動産を賃貸して発生する所得は、不動産所得に区分されます。この不動産所得の計算を行う際、一定の規模以上の貸し付けであれば、事業として行っているものとして、青色申告の場合65万円の青色申告特別控除が適用できるなどの特典があります。この一定の規模とは、アパートの場合は10室以上、独立した家屋の貸し付けの場合は5棟以上、駐車場の場合は50台以上がその基準となります。

青色申告をすると、①青色申告特別控除を適用して所得金額から最高65万円控除できる、②生計を一にしている配偶者などに対し青色事業専従者給与を支払い、必要経費とすることができる、③損失が発生した場合には、翌年以後3年間にわたって繰り越すことができる等の特典があります。ただし、青色申告をするためにはあらかじめ税務署に青色申告承認申請書を提出して承認を得なければなりませんので、忘れないようにしましょう。

財産を売却したのち相続した場合

不動産を複数の相続人で共同で相続する場合、公平に分割することが難しい場合があります。その場合、相続財産を売却して現金に換え、この現金を共同相続人で分けることがあります。これを「換価分割」といいます。

換価分割をすると、相続した不動産を売却していることとなるため、「相続した財産を売却した場合」と同じく所得税が課されます(取得費などについても同じ考え方です)。換価分割で現金を受け取った人は所得税の確定申告もしなければなりません。

相続した財産を寄付した場合

個人から法人に財産を寄付すると、寄付をした時の時価で財産を譲渡したものとみなして所得税の計算を行います。

相続により取得した不動産を法人に寄付した場合も同じで、所得税の確定申告をしなければなりません。ただし、寄付の相手先が国や地方公共団体、公益法人など一定の要件をみたす法人である場合は、所得税が非課税となります。

また相続税の計算においても、相続税の申告書の提出期限までに特定の公益法人に寄付した財産は非課税となる場合があります。

ただ、寄付の相手先やその後の使用状況等によっては、非課税とすることが認められない場合や、後から取り消される場合もあるため、慎重に判断しなければなりません。

準確定申告 - 故人分の確定申告

準確定申告をしなければならない相続人
故人分の所得税の確定申告を相続人がするケース(画像提供:Ground Picture/Shutterstock.com)

相続した財産の名義が相続人に変わったあとに所得が発生すると、相続人は所得税の確定申告をしなければならないと説明しました。ただ、相続があると故人の所得税の確定申告を相続人がしなければならないこともあります。ここからは、故人分の所得税の確定申告を相続人がする場合についても説明していきます。

準確定申告が必要なケース

故人分の所得税の確定申告を相続人が代わりにすることを準確定申告と言います。準確定申告が必要な場合には、故人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの期間に、

①事業所得や不動産所得がある場合

②給与収入が2,000万円超の場合

③複数の勤務先から給与をもらった場合

④公的年金の収入が400万円超の場合

⑤不動産を売却した場合

などがあります。

また、医療費控除の適用を受ける場合、給与や年金を受け取って年末調整が済んでいない場合などは、準確定申告をすると税金が還付されることがあります。還付になる場合、準確定申告の義務はありませんが、準確定申告をしなければ税金は還ってきません。

準確定申告は「誰が」「いつまでに」おこなうのか

亡くなる日までの所得は故人に帰属しますが、申告・納税に関する手続きは相続人が行います。

所得税を納付しなければならない場合は、税額を相続分により各相続人に按分して納付します。一方、所得税が還付される場合には、相続分に応じて受け取るか、代表者がまとめて受け取るかのいずれかの方法によります。

準確定申告で支払った税額は、相続税の計算上、被相続人の債務となり相続財産から控除されます。逆に受け取った還付税金は、相続財産にプラスされます。

準確定申告書の提出及び納税の期限は、①1月1日から3月15日までに亡くなった場合は、亡くなる前年の所得税額と、1月1日から亡くなった日までの所得税額をそれぞれ計算し、相続開始から4か月以内に申告、納付する必要があります。

②3月16日から12月31日までに亡くなった場合、1月1日から亡くなった日までの所得税額を計算し、相続開始から4か月以内に申告、納付しなければなりません。いずれの場合も相続税より申告期限が短いため、申告が必要かどうかの判断も含めて早めに対応する必要があります。

申告期限切れの罰則

申告期限内に申告書を提出していないと、無申告加算税がかかります。こちらは、納付すべき税額に対して最大20%の割合で計算されます。

また、所得税を納付期限までに納付しないと、延滞税がかかります。延滞税の利率は、2018(平成30)年の場合、納付期限から二か月を経過するまでは年2.6%、納付期限から二か月を経過した日以後は年8.9%とされており、預金利息や住宅ローンとは比較にならないほど高い割合で計算されます。

このように、申告や納付の期限が定められているものについては、その期限を超えてしまうと思い罰則が定められています。必ず期限内に申告・納税を行うように注意しましょう。

不動産の相続登記は重要

確定申告以外で戸惑いがちな手続きに相続登記があります。不動産を相続すると、遺産分割協議書に誰が相続したか記載されますが、それだけでは不動産の所有者が誰かを証明することはできません。義務ではないので登記しないこともできますが、大きなデメリットがありますので、この章ではそれを説明します。相続が完了した際には相続登記をして、不動産の所有者の名義を変更しておきましょう。

相続登記は義務?

相続登記とは、法務局で相続した不動産の名義を亡くなった人から相続人へ変更する手続きです。ただ、相続登記は法律上の義務ではありません。日常生活では、不動産の名義を変更しておく必要性を感じることはなく、亡くなった人の名義のままでも不都合はないことや、登記の手続きにはお金がかかるため、相続登記をしなくてもよいと考える人もいます。

そのままにしておいても罰則はないのですが、相続登記をしなかった場合にはデメリットがあるため、必ず行った方がよいです。相続登記をしなかった場合のデメリットについては、以下に説明していきます。

相続登記をしないデメリット① 売却に支障が生じる

相続登記をしないと、相続後に不動産を売却しようと思ってもできません。通常、買主は登記上の名義人としか売買契約を結ばないためです。たとえ親子や親族であったとしても、登記上の名義人と契約上の売主が異なる状態では、売買契約は成立しにくいです。

相続登記をしないデメリット② 時間がたつほど難しくなる

相続の際に登記の名義人を変更せず放置しておくと、その後相続した人が亡くなった際に、その不動産の所有者が誰なのか分からなくなる可能性があります。分からないからといってさらに放置しておくと、相続のたびにその実質の所有者が何人にも、何十人にも増えてしまう可能性があります。売却、賃貸、建物の建設や取壊しなどをしたくても、所有者全員の同意が必要ですので、そうなるとその同意を集めることは相当むずかしくなってしまいます。こうなると、不動産を放置しておくしかありません。

相続登記の費用

相続登記には登録免許税がかかります。不動産の相続があった場合の登録免許税は、「固定資産税評価額×0.4%」として計算されます。例えば、固定資産税評価額3,000万円の土地を相続した場合の登録免許税は12万円です。

また、売買や贈与により不動産の所有者が代わると不動産取得税がかかりますが、相続の場合はかかりません。

登記の手続きは誰でもできますが、専門家である司法書士に依頼すると、その報酬として数万円から十数万円程度かかります。ただ、何度も法務局へ足を運んだり、必要書類を自分で集めたりする必要がなく、大きなメリットがあります。

相続対策は税理士に相談を

相続税に強い税理士
相続税の相談は税理士へ依頼を(画像提供:yoshi0511/Shutterstock.com)

相続税がいくらになるのか不安に思っている方や、不動産を相続した後に売却したいと考えている方は、早めに専門家である税理士に相談してみましょう。不動産の相続・売却の流れや必要な手続きを確認できます。また、実際に発生する税金についても、概算額を事前に算定できます。税理士に相談し対策をすることで、不安を少しでも解消し、効果的な相続対策を行いましょう。

相続対策の重要性

財産が多く相続税が高くなってしまう、あるいは相続財産が不動産ばかりで相続税を現金で支払えないような場合に相続対策を考える方が多いと思います。ただ、実は相続対策はそれだけではありません。

相続で揉めないためには、相続の発生する前から相続人全員の納得できる環境づくりが欠かせません。相続財産がトータルでいくらあり、現預金や不動産、有価証券などの内訳ごとにどれだけあるのかを相続人も含めた全員が共有しておくだけで、その後の遺産分割がスムーズにいく可能性が高くなります。

また、元気なうちに相続対策を始めれば、実際に相続が発生するまで時間があるため、いろいろな対策を検討することができます。その中から、最適な方法を実行することができるため、相続対策の効果も大きくなります。

相続対策は生前に行うべし

生前に相続対策を行うのは、生前にしかできないことがあるからです。その一つに遺言書の作成があります。遺言書を作成しておけば、亡くなった後も相続人どうしで揉める可能性が格段に下がります。

遺言書には、どの財産を誰が相続するかを記載します。また、相続人に対する思いを残すこともできます。遺言書を作成して、遺産分割の考え方と各相続人に対する思いを残しておくことには大きな意味があります。

家族全員仲がいいから対策は必要ないと思っていても、いざ相続の時に揉めるというのはよくある話です。我が家は大丈夫とは思わず、相続対策をしておきましょう。

納税額が変わるポイント

相続税の計算において、代表的な大きな控除額がある特例に「小規模宅地等の特例」と「配偶者控除」があります。これらの特例を適用すると大幅に相続税額を減らすことができますが、適用に複雑な要件があったり、長期的に考えないと結果的に損をしてしまう場合もあり、綿密に検討する必要があります。

また、適用要件を誤ると追徴課税を受ける可能性がありますので要注意です。

税理士の専門性

相続税のことはとりあえず税理士に聞けば大丈夫、と思っていませんか。実は、税理士にも得意分野や実務上対応できる分野があります。特に相続税の申告は、法人税や所得税に比べると申告件数が少なく、中には相続税の申告書を一度も作成したことのない税理士もいます。

また、税理士試験では相続税は必須科目ではないため、相続税法を全く勉強したことのない税理士も珍しくありません。したがって、税理士であれば誰でも相続について相談できるというのは間違いです。

税理士にも専門分野や得意分野があるので、相続の相談は相続に詳しい税理士に依頼するべきです。ミツモアを使うと希望する条件にあった税理士を探すことができます。相続に詳しい税理士に相続の相談をして、あなたにあった相続対策を早速始めてみませんか。