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相続税の申告書と添付書類を徹底解説!申告書は自分で作成できる?【税理士監修】

最終更新日: 2024年06月28日

大切な人が亡くなり、葬儀や法要などがひと段落。やっと、故人との思い出に浸れるようになった、と思い始めた頃、1通の封筒が届くことがあります。

封筒には「相続税の申告書についてのご案内」「相続税についてのお知らせ」などの文字が。そんなに財産はないはずだけど、相続税の申告書を提出しないといけないのか、申告書はどのように書いたらいいのか、悩む人も増えています。

今回は、そんな方のために、わかりにくい相続税の申告書について、必要な書類、添付書類、活用したい控除制度などを徹底解説! 困ったときに相談できる心強い味方、税理士さんについてもご紹介します。

相続税の申告書を提出しないとどうなるの?

忘れやすい相続税の申告期限

分かっていてもついつい先延ばしにしてしまう申告手続き。申告手順の説明の前に申告しなかった場合のことについて簡単に説明します。

税務調査で追徴課税

相続税を払わないと、税務調査が行われて追徴課税が課され、本来払うはずだった税金よりも多くの金銭を納めないといけなくなります。

国税庁の平成28年度の実地調査によると、税務調査は相続税を収めた人のうち20~30%の割合で行われるといわれています。実に3人に1人が調査を受けている計算になります。それもそのはず、相続税は、税務署が最も申告内容の調査に力を入れている税金なのです。

対象になった人のうち82%の人に申告漏れがありました。追徴課税の金額は、1件あたりなんと全国平均で591万円。東京にいたっては平均880万円という金額です。

申告漏れ財産の割合は、現金・預貯金(34%)、有価証券(16%)、土地(12%)の順で多くなっています。特に預貯金は、家族名義の通帳であっても実質的に被相続人の財産なのであれば相続財産に加算されることがあるため、そのような場合に申告漏れが発生しやすいようです。

また、相続税の税務調査は相続税申告後1~2年後を目安にやってきます。遺産の相続から1~2年もたてば、相続財産を住宅ローンの返済や学費などに充てて使ってしまっている人も多いはず。まとまったお金が無くなったタイミングで591万円もの金額を支払うのは、家計にとって大きな痛手です。

相続税の課税対象になったら、期限内に正しい相続税申告をして、追徴課税に脅かされないようにしたいですね。

追徴課税の計算方法!

期限を過ぎた時にかかる税金は「延滞税」「無申告課税」等です。

延滞税は相続税の納付期限までに税金の納付がされなかった場合に発生する税金で、納付期限の翌日から2か月以内に納付した場合は年7.3%もしくは前年11月30日の公定歩合+4%のいずれか低いほう、納付期限から2か月を超えた場合は年14.6%が課されます。

また、無申告課税は正当な理由なく申告期限までに申告しなかった場合に課される追徴課税で、法定期限後に自主的に申告する場合は5%、税務調査により期限後申告する場合は納税額のうち50万円の部分は15%、納税額のうち50万円を超える部分は20%が課されます。

申告期限までに遺産分割ができなかった場合や、相続税が不要だと思っていたけれど、遺品整理の際に知らない通帳がでてきて相続税が発生しそう、という場合は、「3年内分割見込書」を提出します。法定の割合で相続したと仮定して申告書を提出する、というものです。

この申告に基づき、納税しておけば、ペナルティを取られることはありません。遺産の分割が確定した後、分割の割合に応じて、追加の相続税納付や、税金の還付手続きができます。

相続税に関する追徴課税は、遅れた場合だけでなく、誤った申告をして修正のために期限を過ぎた場合にも適用されます。できるだけ早く、正確な申告書を作成することが重要です。

相続税の申告書提出のために準備しなければならないこと

相続税の申告は、申告書を書けばよい、というわけではありません。申告書作成のために、事前にしておくべきことや、添付書類として準備をしておくべき書類がたくさんあります。

相続税申告のための準備一覧
相続税の申告にかかる手間は膨大

相続税の申告書提出とは?

相続税の申告書提出とは、お亡くなりになった方から財産が相続される場合に課される税金の申告手続きのことです。相続税を申告し、納付する義務は相続人=財産を相続する人に課せられます。

必要な書類について

・死亡届の提出
相続の開始は、死亡時点です。死亡を証明する死亡届は、死亡から7日内に役所に提出することが定められています。通常は、病院や葬儀会社から案内があるので、それに従って手続きをしましょう。

死亡届が提出されると、その情報は、自動的に税務署に通達され、相続税が発生しないかどうか、税務署が調べることになっています。

・戸籍謄本の収集
相続人を確定するために、亡くなった方が生まれてから死ぬまでの戸籍謄本を集めます。家族が知らない相続人がいるかもしれないからです。たとえ、相続人が明確な場合でも、戸籍謄本は相続税の申告だけでなく、銀行口座や土地名義の変更など、その後の手続きでも必要なので、早めに取得しておくとよいでしょう。

・相続承認または放棄の手続き
相続する財産には、借金などの負債も含まれます。借金が多い場合や、土地など分割できない財産の相続で、他の家族だけに相続させたい場合は、相続放棄の手続きが必要です。

相続放棄する場合は、相続開始から3カ月以内に手続きをします。これを過ぎると、承認したとみなされてしまいます。

・所得税の準確定申告
生前、何らかの形で確定申告をしていた人は、相続開始から4カ月以内に所得税の準確定申告を行います。その年の1月1日から亡くなった日までの所得を申告して、所得税を確定させておきます。

・相続財産評価と財産目録作成
相続税を計算するために、遺産の総額を算出する手続きです。特に、建物や土地などの不動産は、計算方法が複雑。評価基準などは国税庁のホームページで確認できますが、簡単にわかるものではありません。

誤った金額を算出してしまい、誤りではなく不正とされ、税務調査が入ることもあります。そのため、相続税申告書の提出後に困らないよう、税務署や税理士に相談して、計算する人が多いようです。

財産の評価額が決まったら、相続財産目録を作成します。目録は、不動産や預貯金などのほか、借金などマイナスのものも記載します。どんなものがどのくらいあるのか、ひと目でわかるように記載するのがポイントです。

目録は、遺産をどのように分割するか話し合う際の材料にもできます。そのために、ほとんど金額価値がつかない、衣類や家具などを「一式 1万円」などと記載することもあります。

・遺産分割協議書の作成
財産目録に基づき、どのように遺産を分割するのかを記載した書類です。誰が、どんなものをどのくらい相続するかわかるように記載し、相続人全員が実印を押します。

遺産分割協議書は、実際に遺産を受け取る場合、つまり、土地や預貯金の名義変更の際にも必要です。不動産がある場合は法務局へ、預貯金や株式がある場合は、銀行などの金融機関にも提出します。

ここまでの手続きが終わると、ようやく相続税の申告書が作成できるようになります。

申告期限・納付期限はいつまで?

相続税の申告書の提出期限は、相続人の死亡を知った日から10か月間と決められています。また、納税期限も同じ10か月間です。

申告期限の日が土日祝日にあたる場合は、その翌日が申告期限となります。

10カ月と聞くと、余裕がありそうですが、亡くなってからしばらくは、葬儀や法要、遺品の整理などさまざまな雑事に見舞われます。その後、戸籍謄本の取得や、財産評価、目録作成などを行うのですが、準備も含め、申告書作成には、最低でも1カ月以上かかるのが通常。気がつくと、期限ギリギリになってしまった、という事例も多いのです。

さらに、慣れない財産の評価など、相続税の計算は間違いも多いもの。税務署からの質問や修正に追われて、期限を過ぎてしまうことも考えられます。

相続税の納付は、現金一括払いが原則。不動産の評価が高額で納税額が高くなってしまった場合などは、現金を調達しなければなりません。けれど、不動産の売却などは時間もかかります。書類作成だけでなく、納付のことも考えて、準備を始めるようにしましょう。

相続税申告の全体の流れ

相続税の申告期限と納税の流れ
相続税の申告書提出と納税の流れ

専門家コメント: 『意外と時間がない!申告スケジュールの注意点』

大原政人税理士事務所 - 神奈川県川崎市川崎区

川崎・横浜起業支援、相続、確定申告センター代表の大原政人です。相続案件は約200件 確定申告案件は約1200件。セミナー・研修会講師 約180回。当事務所ではお客様と密接な関係を築き、悩みや問題を共有し、その解決に二人三脚で全力で取り組んでいる。

注意していただきたいのは、申告・納付まですべて同時並行で進めていく必要があるということです。だいたいみなさん49日を過ぎてから相談に来られます。2か月以内に相談に来ていただければ、相続するか、放棄するか、限定承認するかなど検討する時間があります。しかし、財産、債務を確定させるには、財産、債務の裏付けとなる資料を集める時間を確保する必要があるため、専門家に相談してすぐに動き始めなければ間に合いません。また、申告と納税は10か月以内とされていますが、これもまだまだ先の話と悠長に構えている暇はありません。基本的に納税資金は現金です。預貯金がない場合は分割、延納、物納などを検討する必要があります。納税資金の確保は相続が発生してから2か月目頃から既にスタートしていただかなければいけません。そのためには、誰が何を相続するかも決まっている必要がありますので、遺産分割協議ももっと早い段階で進めておく必要があるのです。このように、10か月と聞くと、なんだか長いようにも感じますが、実はあっという間なのです。

相続申告書の作成に必要な資料とは?一覧にして紹介

相続税の申告書には、たくさんの様式があります

相続税申告書は、どのような書類なのでしょうか。添付すべき書類のほか、自分で作成する際、間違いが少ない作成順序なども、わかりやすく一覧で紹介します。

相続税申告書に必要な様式

相続税申告書は以下の様式です。相続税の申告書は第1表で、それ以外のものは、計算書や明細書などです。

【相続税申告書 様式一覧】
第1表    相続税の申告書
第2表    相続税の総額の計算書
第3表    財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額の計算書
第4表    相続税額の加算金額の計算書
第5表    配偶者の税額軽減額の計算書
第6表    未成年者控除額・障害者控除額の計算書
第7表    相次相続控除額の計算書
第8表    外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書
第9表    生命保険金などの明細書
第10表  退職手当金などの明細
第11表  相続税がかかる財産の明細書
第12表  農地等についての納税猶予の適用を受ける特例農地等の明細書
第13表  債務及び葬式費用の明細書
第14表  純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額・出資持分の定めのない法人などに遺贈した財産・特定の公益法人などに寄附した相続財産・特定公益信託のために支出した相続財産の明細書
第15表  相続財産の種類別価額表

相続人全員が該当しなければ、その書類を作成する必要はありません。特別な条件や特殊な相続財産がない場合は
第1表 相続税の申告書
第2表 相続税の総額の計算書
第9表 生命保険金などの明細書
第11表 相続税がかかる財産の明細書
第13表 債務及び葬式費用の明細書
第15表 相続財産の種類別価額表
を作成します。

相続税申告書の記入には守るべき順番がある!

相続税の申告書を作成する際、注意すべきことは、各書類で、金額や内容の整合性が取れていること。少しでも相違があると不正とみなされるため、番号順に作成するのではなく、以下の順序で作成していきます。

【相続税申告書の作成順序】

順番 様式 内容
1 第9表 生命保険金などの明細書
2 第10表 退職手当金などの明細
3 第11表 相続税がかかる財産の明細書
(付表、2表、表の順に作成)
4 第12表 農地等についての納税猶予の適用を受ける特例農地等の明細書
5 第13表 債務及び葬式費用の明細書
6 第14表 純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額
・出資持分の定めのない法人などに遺贈した財産
・特定の公益法人などに寄附した相続財産
・特定公益信託のために支出した相続財産の明細書
7 第15表 相続財産の種類別価額表
8 第4表 相続税額の加算金額の計算書
9 第5表 配偶者の税額軽減額の計算書
10 第6表 未成年者控除額・障害者控除額の計算書
11 第7表 相次相続控除額の計算書
12 第8表 外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書
13 第1表 相続税の申告書
14 第2表 相続税の総額の計算書
15 第3表 財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額の計算書

9、10、11の2表、11の付表の内容をもとに、11表を作成。さらに、13、14の内容を加えて15表と1表を作成、2表の内容と整合性をもたせます。4、5、6、7、8表は控除や特例を利用する場合に作成。3、12表は、農業相続人がいる場合に作成します。

相続税の申告書作成はエクセルテンプレートが便利

様式や記載例は国税庁から送付されることもありますが、ホームページからのダウンロード(PDF形式)や、地域の税務署に取りに行くこともできます。相続税は基本的に申告税なので、原則的には、自分で手に入れることになっています。

ただ、金額の計算をしたり、同じ数字を別の書類に転記したり、間違いやすい記載箇所も多いのが、相続税の申告書。しかも、間違うと修正申告の手間だけでなく、追徴課税がかかる可能性もあります。

そんなときに便利なのが、税理士事務所などのホームページに掲載されているエクセル形式の申告書テンプレートです。計算式などがあらかじめ入力されており、合計値や転記場所など、間違わずに作成できて便利です。「相続税 申告書 エクセル」などのキーワードで検索できます。

相続税申告書の添付書類とは?

戸籍謄本や住民票など、市町村区に請求する書類もさまざま
戸籍謄本や住民票など、市町村区に請求する書類もさまざま(画像提供:PIXTA)

相続税の申告には、申告書以外にさまざまな添付書類が必要です。相続する遺産の内容や適用したい特例によって、必要な添付書類は異なりますが、必ず提出を義務付けられるものが2種類あります。1つは、相続人の身分に関する書類、そして、財産に関する書類です。そのほかにも、債務に関するものや、特例を適用する際に必要な書類もあります。

身分関係に関する添付書類とは?

相続人の身分や被相続人について証明する書類です。いずれも市区町村の役場などで取得できます。一つでも抜けていると申告書を提出できません。

近くの市区町村で取得できるものもありますが、書類によっては、遠方の市区町村から取り寄せなければならないこともあります。すぐに集められると思わず、できるだけ早めに準備しておきましょう。

相続税の申告書の添付書類は、原本でなければならないものと、コピーでよいものがあります。戸籍謄本などはコピーでも提出可能になりました。国税庁のホームページで「コピー」や「コピー可」とあれば、原本でなくてもよいのですが、「写し」とある場合はコピーではなく、役所から発行された原本を提出する必要があります。注意しましょう。

被相続人に関する添付書類

亡くなった方、つまり被相続人について証明する書類です。

書類名 交付期間等
出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本) 市区町村役所・場(領事館)
住民票の除票 市区町村役所・場
略歴書 自分で作成

戸籍謄本は、出生から死亡まで連続していることが重要です。一番新しい戸籍謄本を取得した後は、結婚や離婚、転籍などの内容に基づき、さかのぼりながら、過去に本籍地があった役所で取得します。

戸籍謄本は、相続税の申告書に添付する以外に、不動産などの名義変更手続きにも必要になるので、2~3通取得しておくとよいでしょう。

略歴書は、出生地や学歴、職業、死亡原因などを記載したものです。戸籍謄本などを参考に作成します。不明な部分を無理に記載する必要はありませんが、嘘がないように記入します。税理士事務所などのホームページでテンプレートが掲載されていることもあるので、検索してダウンロードすると便利です。

相続人に関する添付書類

相続人の身分を証明する書類は、すべての相続人について以下が必要になります。この書類も、名義変更等に使用するので、2~3通準備しておきましょう。

書類名 交付機関等
戸籍謄本 市区町村役所・場
住民票 市区町村役所・場
印鑑証明書 市区町村役所・場

財産関係に関する書類とは?(相続財産確定)印鑑証明書は遺産分割協議書がある場合に必要です。

財産関係に関する添付書類は、どのような財産を相続するかによって準備するものが異なります。

・土地や建物などの不動産関係
・株式などの有価証券関係
・預貯金や現金関係
・生命保険や年金、退職金など
・その他、自動車、家財や権利関係

いずれも、財産目録に記載している遺産の項目の分の資料を準備します。

不動産に関する添付書類

土地や不動産を相続する際に必要な書類は、自分で作成したり手元にあるものをコピーしたりするほか、法務局や市町村役場などで証明書を取得します。

法務局などで取得するものは下記があります。

書類名 交付機関等
土地の登記簿謄本 法務局の各出張所
土地や建物の固定資産税評価証明書 市役所(固定資産税課)共有分含む
地積測量図又は公図の写し 法務局の各出張所
建物登記簿謄本 法務局の各出張所

そのほかには下記を用意します。

書類名 交付機関等
住宅地図(ゼンリン地図など) インターネット等
土地の実測図 法務局の各出張所
建物の間取り図 お手元のものをご利用ください
賃貸借契約書(貸家、貸地、借地の場合) お手元のものをご利用ください

有価証券に関する添付書類

有価証券に関する添付書類は、名義が被相続人ではなくても、被相続人が所有していたとみなされれば、相続財産になります。そのため、子どもの名義で所有していても、親が取引していたものであれば、相続財産として記載しなければなりません。

上場株式の場合は以下の資料が必要です。預かり証明書や取引明細書は、証券会社に依頼して作成してもらいます。

書類名 交付機関等
証券会社の預かり証明書(残高証明書) 名簿管理人
家族全員の直近5年間の取引明細書 証券会社
配当金の支払通知書 証券会社
株券のコピー(株券を所有している場合) お手元のものをご利用ください

非上場株式は下記を準備します。各法人に依頼して準備してもらいます。

書類名 交付機関等
過去3期分の決算書や税務報告書の写し 当該企業

預貯金や現金に関する添付書類

預貯金や現金に関する添付書類は、相続税の申告書を作成するすべての人が準備する書類です。

書類名 交付機関等
預金残高証明書 金融機関
既経過利息計算書(定期預金の場合) 金融機関
預貯金通帳のコピー お手元のものをご利用ください
手元現金

預金残高証明書と既経過利息計算書は金融機関に依頼して作成してもらいます。

預貯金通帳のコピーは被相続人だけでなく、家族全員の分が必要です。過去3年間に贈与がなかったかを確認するためです。相続発生から3年より前に贈与された分は課税対象外になります。

保険・年金・退職手当に関する添付書類

生命保険や個人年金保険、退職手当金も相続財産になります。

年金については、国民年金を受給していた方が死亡したとき、遺族に支給される遺族年金は、相続税の課税対象外です。個人で加入していた年金保険の年金支払い保証期間内の死亡で、遺族の方が残りの期間年金を受け取る場合に、相続税が発生します。

必要な書類は以下の通りです。

書類名 交付機関等
保険支払通知書 生命保険会社
保険証券のコピー(継続している場合) お手元のものをご利用ください
解約返戻金がわかる資料(満期返戻金がある場合) 生命保険会社
退職金支払通知書 勤務先

保険支払通知書は各保険会社に依頼し、退職金の支払い通知書は勤務先に作成を依頼します。

その他に関する添付書類

そのほか、ゴルフ会員権などの権利、自動車を相続する場合は、その財産を証明する添付書類が必要です。

ゴルフ会員権などの権利を相続する場合は証券のコピー、自動車を相続する場合は車検証のコピーなどを準備します。

絵画や書、骨董品など価値のあるものを相続する場合は、品名、作品名などを書き出したものに写真を添付します。家財についても特記すべきものは書き出しておくようにします。

債務関係に関する書類とは?(相続財産確定)

遺産相続というと、財産が入ってくるイメージがありますが、借金などマイナスのものも遺産になります。プラスの遺産だけを相続することはできず、相続を決めると、借金も分割して相続することになります。

借金、債務と聞くと、大きな負債になるイメージもありますが、故人が支払うべき税金や、故人が名義人になっていた公共料金の支払い等も債務に含まれます。債務は、相続税から控除できます。葬式費用を負担した場合も債務として扱われ、控除できます。節税にもなるので、控除のための手続きとして書類を準備するとよいでしょう。

万が一、債務が大きく、大きな負債になる場合は、遺産相続の放棄手続きをとります。しかし、相続放棄した場合は、土地や家屋などの遺産も相続放棄することになるので、慎重に考えて決定しなければいけません。

相続放棄手続きは、相続発生から3カ月以内に行うことが定められています。気がついたときには期限が過ぎていて、借金を相続してしまった、ということがないようにしましょう。

借入金関係に関する添付書類

銀行のローンや、消費者金融などからの借入金(借金)がある場合は、どのくらいの金額が残っており、いつまでに返済する必要があるのかを証明する書類を添付します。

書類名 交付機関等
借入先金融機関の残高証明書(金融機関からの借入金がある場合) 金融機関
金融消費賃借契約書のコピー(金融機関以外からの借入金がある場合) お手元のものをご利用ください

残高証明書は借入先の金融機関等で取得します。

未払い金関係に関する添付書類

未払い金とは、医療費や公共料金等で、まだ支払っていない費用のことです。被相続人が名義人になっているものについて、未払いのものが含まれます。

書類名 交付機関等
医療費、公共料金などの請求書 お手元のものをご利用ください

名義人が死亡すると、銀行口座が凍結されてしまうため、引き落とし手続きをしていても支払いができなくなります。すると、電気会社等から故人宛てに「引き落としができなかった」という連絡があり、請求書等が送られてきます。

引き落としが少し遅れたからといって、電気や水道がすぐに止まることはありませんが、できるだけ早く、引き落とし口座変更の手続きもしておきましょう。

公租公課関係に関する添付書類

住民税や固定資産税、国民年金など、税金に関するものが公租公課関係の債務です。被相続人が払うべき税金で、死亡後に支払った、または支払うことになっているものがあれば、債務になります。

書類名 交付機関等
税金、年金、保険などの納税通知書 お手元のものをご利用ください

葬式費用に関する添付書類

葬儀に関する費用は債務の一部になります。相続税から控除できるので、どのくらいの費用がかかったか、わかる書類を作成しておきます。

書類名 交付機関等
葬儀関連領収書(領収書がないお布施などは、書き出しておくだけでOK) お手元のものをご利用ください
諸経費を書き出した出納帳 お手元のものをご利用ください
香典帳 お手元のものをご利用ください

葬儀費用に含まれるのは以下です。

・通夜、告別式の費用(葬儀会社に支払ったもの)
・通夜、告別式の飲食費
・葬儀を手伝ってくれた人への心付け
・お寺などに払ったお布施
・埋葬、納骨などの費用
・遺体や遺骨の運搬費
・通夜や告別式当日にわたす会葬御礼の費用

ただし、香典返しにかかった費用や墓地の購入にかかった費用、葬儀後に行った初七日など法事にかかった費用は葬式費用に含まれません。

専門家コメント: 『添付書類を自分で集める際に苦労するポイント』

大原政人税理士事務所 - 神奈川県川崎市川崎区

川崎・横浜起業支援、相続、確定申告センター代表の大原政人です。相続案件は約200件 確定申告案件は約1200件。セミナー・研修会講師 約180回。当事務所ではお客様と密接な関係を築き、悩みや問題を共有し、その解決に二人三脚で全力で取り組んでいる。

添付書類は多岐にわたり、その資料収集には多くの時間を費やすことになります。実際に、平日お仕事をされている方はみなさん会社を休んで収集されているのが現状です。現在では、郵送やインターネットでダウンロードできる書類も増えてはいますが、残念ながらすべての書類が該当するわけではありません。また、相続人全員の印鑑がなければ提出できない書類もありますので、相続人が遠方に在住していたり、連絡が取りづらい環境にいる場合、すぐに対応できないこともあります。さらに、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本が必要になるのですが、ここで例えば被相続人に隠し子がいたなんてことが発覚し、予期せぬ人が相続人に含まれる事態に発展する可能性もあります。戸籍謄本にかかわらず添付書類はなるべく早く収集し準備を進めましょう。もし忙しくご自身で必要書類を収集することが難しい場合は、専門家に依頼するのも一つの手です。身分に関する書類や銀行残高証明書などは委任状を提出する必要があり、時間と費用がかかりますが、後回しにして必要書類を集められず申告に遅れてしまうというリスクは避けられます。

控除の申告書

控除や特例を使えば、今住んでいる家を守れます

相続税の税率は1,000万円以下の相続で10%、3,000万円以下で15%と、かなり高額。しかも、遺産のほとんどを占めるのが、今住んでいる家屋であれば、相続税の支払いのために、大切な家を失うことにもなりかねません。その救済措置として、相続税にはさまざまな控除制度があります。控除を活用するために、相続税の申告書を提出する人も少なくありません。知らなければ損をしてしまう、控除について、しっかり知ってきましょう。

控除とは(基礎控除)

相続税の控除は、相続税の支払いによって生活ができなくなる、などの状況を避けるための制度です。相続するのが誰か、何を相続するのか、などによって活用できる控除が異なります。

控除制度を利用すれば、相続税を支払わなくてもいい、という人も少なくありません。相続税は申告税なので、控除の内容を知らなければ、活用できません。

さまざまな控除制度の中でも、相続を受けるすべての人が利用できるのが「基礎控除」です。基礎控除額は、相続人の数によって決まります。

・基礎控除の計算式
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人とは、相続が発生する人の数です。実際に相続する人ではないので、相続を放棄した人も含まれます。相続するのが妻と子ども2人の場合は、法定相続人の数は3人になり、
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
が基礎控除額となります。

相続税が発生するのは、基礎控除額を超える相続額なので、もし、5,000万円を相続する場合は、
5,000万円-4,800万円=200万円
分の相続税を支払うことになります。

原則として、相続額が基礎控除を超えない場合は、相続税の申告書を提出する必要はありません。

身分による控除の申告書

相続する人がどんな人なのかによっては、控除や特例制度が利用できることがあります。

主なものには以下があります。

・配偶者控除
相続人が夫、または妻の場合は、1億6,000万円または法定相続分のどちらか高い方まで控除が受けられます。法定相続分とは、民法で定められている相続の分割基準。子どもがある夫婦の場合、配偶者の法定相続分は2分の1です。

・未成年者控除
相続人が満20歳未満の未成年の場合に利用できる控除です。
6万円×(20-当時の年齢)
の額が控除できます。

・障害者控除
相続人に身体障害や精神障害があり、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳を所有しているなどの条件を満たした人は、障害者控除を受けることができます。控除の額は障害の区分によって異なり、一般障害者と障害の度合いがより重い特別障害者に区分されています。

一般障害者の場合:(85歳-相続開始時の年齢)×10万円
特別障害者の場合:(85歳-相続開始時の年齢)×20万円

・贈与税額控除
相続発生から3年位内に財産贈与があった場合に利用できる控除です。贈与があった際に支払った贈与税が相続税から差し引かれます。

・相次相続控除
10年以内に2回相続が発生した方が利用できる控除です。短い期間に相続が続くと、相続税の支払いが2倍になることもあります。そうなると、受け取る遺産は半分以下になることも。このような負担を軽減するための制度です。

控除額は複雑で、簡単には計算できませんが、
前回支払った相続税額×(1-(前回のから今回までの経過年数×10%))
が概算になります。

身分による控除を受ける場合は、相続税申告書の第5表配偶者の税額軽減額の計算書や、第6表未成年者控除額・障害者控除額の計算書、第7表相次相続控除額の計算書などを作成して申告します。

特例による控除の申告書

その他の特例にもさまざまな種類があります。よく使われるのが「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(小規模宅地等の特例)」です。その家に住んでいる人が、土地や家を相続したために、相続税を支払うことになり、土地と家を売らざるをえない、ということを避けるための制度です。

この特例を適用できる小規模宅地は
・住宅で使っている土地
・人に貸している土地
・事業で使っている土地
の3種類です。

これらの土地を、配偶者や子どもが受け継ぎ、そのまま住み続けたり、事業を継続する場合、特例が適用できます。この特例を使えば、一定面積までの不動産の評価を最大80%減額して評価でき、相続財産を大きく減額することができます。

小規模宅地等の特例に関する詳しい記事はこちら>>「小規模宅地の特例の節税効果を解説!不動産相続の最重要特例!!【税理士監修】

この特例を利用する場合は、第11・11の2表の付表の申告書を作成します。

控除や特例を使う場合に注意すること

相続税の申告書は、相続税が発生する場合のみ作成し、提出することになっています。相続財産額と基礎控除額を比較して、控除額内であれば、相続税は発生しないので、申告書を作成する必要はありません。

しかし、身分による控除や特例による控除は、発生した相続税に対して適用されるものです。基礎控除以外の控除を適用する時点で、相続税は発生しているので、申告書の提出が必要になります。相続税の申告をして始めて、これらの控除が活用できます。

控除や特例で相続税が0になったからと申告書を書かずにいると、追徴課税が発生することになりかねません。相続税が発生するものとして準備をしておけば、配偶者控除や小規模宅地の特例を活用した相続税の減額もすぐに適用できます。

相続税申告を税理士に相談するとどうなる?

早く正しい相続税申告の強い味方が税理士
早く正しい相続税申告の強い味方が税理士(画像提供:PIXTA)

相続税の申告書をどのように記入するか次第で、大きく税額が変わるのが相続税。できるだけ損をしないように申告書を作成したいですね。でも、申告書の作成は複雑で、とても大変です。そんなときに相談できるのが、税金のプロ、税理士です。実は、相続税の申告をする人のほとんどは、税理士に依頼しているというデータもあります。相続税の申告書作成を税理士に相談した場合、どんなメリットがあるのでしょうか。

自分で申告するメリット

相続税の申告書は、自分で作成することも、もちろん可能です。申告書はすべて国税庁のホームページからダウンロードできます。記載例も同時に掲載されており、それに則って記載すれば、申告書は作成可能です。

相続税に関する情報は、インターネット上にもたくさんあるので、作成時に注意すべきことを記載したブログなどを参考にしながら作成できます。特に計算方法が複雑な不動産の相続がない場合は、通帳などを見れば相続額が確定できるので、比較的容易に作成できるでしょう。

自分で申告するメリットは、作成費用がかからないこと。相続税の申告書作成などを税理士に依頼する場合は、相続財産額に応じて0.5~1.5%程度の報酬が相場です。財産総額が5,000万円だった場合は、50万円前後の費用がかかることになります。相続税の支払いも考えると、高額に感じる人も多いでしょう。

税理士に依頼するメリット

では、高額の費用を払っても税理士に依頼するメリットはなんでしょうか。

メリットは大きくわけて3つ。「時間が削減できる」「税務調査が防げる」「節税対策ができる」です。

・時間が削減できる
相続税の申告書は多岐に渡るだけでなく、複雑。自分で申告するためには、多くの時間をかけるだけでなく、税務署へ相談のために何度も足を運ぶことにもなります。

申告期限が決まっている相続税だからこそ、できるだけ時間をかけずに、正確な申告書を作成することは大切。必要な添付書類の取得もまとめて依頼できるので、安心です。

・税務調査が防げる
相続税申告書の第1表を見ると、右下に税理士の署名捺印欄があります。このことからわかるのは、税務署も、相続税申告書は税理士が作成することを前提にしている、ということです。ここに署名捺印がない場合は、税のプロである税理士が関わっていない申告書ということになり、税務署は「なにか間違いがあるかも」と疑って申告書を確認します。

すると、高い確立で税務調査の対象になってしまうのです。

税理士に依頼しておけば、必要な申告書の種類や記載方法、添付書類漏れなどの心配はありません。税務署も安心して書類確認をしてくれます。

・節税対策ができる
相続税にはさまざまな控除がありますが、それがどんな場合に適用できるのか、条件や計算方法は複雑です。そもそも、どのような特例や控除があるのかを知らなければ、必要な申告書を作成することもできず、結局無駄な税金を払ってしまうことにもなります。

相続税について深い知識を持っている税理士であれば、状況や条件を聞くだけで、どのような節税方法があるか、すぐに提案してくれ、必要な添付書類の取得や申告書作成をしてくれます。

一見高額に見える税理士への依頼ですが、その分メリットもとても大きいことがわかります。簡単に考えず、ポイントをしっかり抑えて申告書を作成してくれる税理士の強みを、活用してみることを検討してみてもよいのではないでしょうか。

相続税について熟知した、税理士さんを探すなら、ミツモアがおすすめです。多くの相続税申告を行っている全国の税理士がたくさん登録しており、無料で、最大5社の見積がもらえます。じっくり比較した上で、安心して依頼できる税理士さんが選べますよ。

【この記事を監修してくださったプロ税理士先生】

大原政人税理士事務所 - 神奈川県川崎市川崎区

川崎・横浜起業支援、相続、確定申告センター代表。相続案件は約200件 確定申告案件は約1200件。セミナー・研修会講師 約180回。当事務所ではお客様と密接な関係を築き、悩みや問題を共有し、その解決に二人三脚で全力で取り組んでいる。