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相続における重畳的債務引受と免責的債務引受について分かりやすく説明! 相続で負債がある時の対応は?

最終更新日: 2020年09月16日

相続財産には、預金や不動産といったプラス財産だけでなく、借金などのマイナス財産(債務)も含まれます。

みなさんの中には、「相続財産に債務が含まれているが、実際にどのように相続手続きを行ったら良いのかわからない」と、お悩みの方もいらっしゃると思います。また、相続財産の一部として債務を引受ける場合、「重畳的債務引受」や「免責的債務引受」という方法を使う場合もありますが、あまり馴染みのない言葉でピンときません。

そこで、今回は、重畳的債務引受や免責的債務引受とは何か?について分かりやすく説明するとともに、相続財産に負債が含まれている場合の対応についても見ていきます。

この記事を監修した弁護士

石尾理恵弁護士

 

 

相続案件を中心に取り扱う事務所に所属し、遺産分割、遺留分侵害請求、相続放棄、遺言書作成のなど相続案件を数多く取り扱っている。日々、依頼者の安心・納得を重視して、相続事件を解決している。

重畳的債務引受とは

重畳的債務引受とは
重畳的債務引受とは

一般的に、債務者が負っている債務(借金)を第三者が引受ける方法には、

  1. 重畳的債務引受
  2. 免責的債務引受

の2つの方法があり、民法で定められています。相続においても、亡くなった方に借金がある場合は、その借金を含めて相続することになり、相続人が債務者になります。相続人が複数人いる場合は、上記の債務引受の方法を使って、債務者となる相続人を限定することが行われるケースがあります。

まず、ここでは、債務引受の方法の中の「重畳的債務引受」について見ていきます。

重畳的債務引受とは

債務引受の方法の一つである「重畳的債務引受」とは、債務を引受ける人(引受人)が、従来の債務者と連帯して同等の債務を負担するというものです。つまり、引受人が債務を引受けるとともに、従来の債務者もその債務を負担し、引受人と従来の債務者が連帯債務関係になる債務の引取方法です。

この債務引受の方法では、従来の債務者も債務は免除されません。そのため、もし引受人が破産などで支払いができない場合であっても、従来の債務者が、債権者に対して支払いをしなければなりません。重畳的債務引受は、債務の引受人と従来の債務者の両者が債務を負担する、つまり、債務が両者に併存するために、「併存的債務引受」とも呼ばれています。

一方、後段で説明します「免責的債務引受」では、従来の債務者は債務が免除されますので、債務を負担する必要はなくなります。

重畳的債務引受の要件

ここでは、重畳的債務引受の効力が生じる要件について見ていきます。重畳的債務引受は、次の①から③のうち、いずれかの場合に効力が生じます。

①:債権者、債務者、引受人の三者による契約

契約時に、その契約の効力が生じます。

②:債権者と引受人の間の契約

契約時に、その契約の効力が生じます。また、債務者の意思に反していても、債務者の意思に関係なく、その契約は有効です。

③:債務者と引受人の間の契約

この場合は、債権者の承諾が必要です。債権者の承諾を得たときから、その契約の効力が生じます。

重畳的債務引受と求償権

次に、重畳的債務引受の契約を締結した場合、求償権が生じるのかどうかについて見ていきます。求償権とは、連帯債務者の中の1人が他の連帯債務者の分まで肩代わりして弁済した場合に、肩代わりして弁済した人が他の連帯債務者に対して「肩代わりした分を返して」と求めることができる権利のことをいいます。

重畳的債務引受は、「債務の引受人」と「従来の債務者」が連帯して債務を負担するものですので、連帯債務と考えられます。そのため例えば、債務の引受人に代わって、従来の債務者が債務を弁済した場合は、この従来の債務者に求償権が生じて、債務の引受者に対して求償することができます。

免責的債務引受とは

免責的債務引受とは
免責的債務引受とは

次に、債務引受のもう一つの方法である「免責的債務引受」について見ていきます。重畳的債務引受と免責的債務引受は、どちらも債務引受の方法ですが、それぞれの要件や効果などが違います。

ここでは、免責的債務引受の概要や要件について見ていきます。重畳的債務引受と免責的債務引受の違いについても多少触れますが、両者の違いについては、次項でまとめて説明します。

免責的債務引受とは

免責的債務引受とは、債務者が負っている債務を第三者が代わりに引受けることです。この債権引受では、債務は従来の債務者から引受人に完全に移転して、従来の債務者は債務を免除されます。つまり、債権者は従来の債務者に対して弁済を求めることはできず、従来の債務者は弁済する必要がなくなります。

重畳的債務引受では従来の債務者は免除になりませんので、この点が免責的債務引受と重畳的債務引受の大きく違う部分です。

免責的債務引受の要件

ここでは、免責的債務引受の効力が生じる要件について見ていきます。免責的債務引受の効力が生じる要件は、次の通りです。

債権者、債務者、引受人の三者による契約

契約時に、その契約の効力が生じます。

債権者と引受人の間の契約

この場合は、債権者が債務者に「免責的債務引受の契約をした」ことを通知しなければいけません。債権者が債務者に通知したタイミングで契約の効力が生じます。ちなみに、通知は債権者から行う必要があり、引受人から通知しても契約の効力は発生しません。

債務者と引受人の間の契約

この場合は、債権者の承諾が必要です。債権者の承諾が引受人に到達した時から、その契約の効力が生じます。

免責的債務引受と求償権

免責的債務引受により、従来の債務者は債務を免除されますので、債権者が従来の債務者に対して弁済を求めることはありません。免責的債務引受の場合は、引受人だけが債務を負うことになるため、引受人と従来の債務者の間で求償権が発生するケースはありません。

重畳的債務引受と免責的債務引受の違い

重畳的債務引受と免責的債務引受の違い
重畳的債務引受と免責的債務引受の違い

両方の債務引受とも、債務者が負っている債務を第三者が引き受けることをいいますが、両者には次の点で違いがあります。

  1. 債務引受の要件
  2. 連帯債務か否か
  3. 求償権

これまでにも両者の違いについて部分的には見てきましたが、ここでは両者の違いを整理して説明します。

債務引受の要件の違い

基本的には、「債権者」「債務者」「引受人」の三者の承諾により債務引受の契約の効力が生じますが、債務引受の契約方法によって、効力の生じる要件に違いがあります。

「債権者、債務者、引受人の三者による契約」の場合、三者が契約当事者のため、契約時に効力が生じます。また、「債務者と引受人の間の契約」の場合、債権者が契約当事者でないため、債権者の承諾を得たときから契約の効力が生じます。上記の2つの契約方法は、両者ともに同じ要件です。

一方で、「債権者と引受人の間の契約」の場合、債務者が契約当事者でありませんが、

  • 重畳的債務引受:契約時に効力が発生
  • 免責的債務引受:債権者が債務者に通知したタイミングで契約の効力が発生

というように、両者で要件が違いますので注意が必要です。

連帯債務か否か

重畳的債務引受と免責的債務引受の根本的な違いは、従来の債務者の債務が免除されるかされないかです。重畳的債務引受では、債務を引受ける側が当初の債務者と連帯して、同等の債務を負担します。従来の債務者も債務は免除されません。一方、免責的債務引受では、債務は従来の債務者から引受人に完全に移転し、従来の債務者は債務が免除されます。

求償権の有無

重畳的債務引受は従来の債務者も債務が免除されませんので、従来の債務者が債務を弁済した場合は、求償権が発生し、債務の引受者に対して求償することができます。一方、免責的債務引受の場合は、引受人だけが債務を追うことになるため、引受人と従来の債務者の間で求償権は発生しません。

相続における重畳的債務引受と免責的債務引受のメリットやデメリット

相続における重畳的債務引受と免責的債務引受のメリットやデメリット
相続における重畳的債務引受と免責的債務引受のメリットやデメリット

相続財産に借金などのマイナス財産(債務)が含まれている場合、民法上、相続人が法定相続分通りに負債を相続することになり、全ての相続人が債務者になってしまいます。

この場合、遺産分割協議書を作成して負債の相続人を決めるとともに、重畳的債務引受や免責的債務引受の契約を締結することがあります。これにより、債権者に対して、遺産分割協議書の通りに、特定の相続人がその債務を引き受ける(負債を相続する)ことを主張できるようになります。

ここでは、相続で用いられる重畳的債務引受と免責的債務引受のメリットやデメリットについて、相続人の観点から見ていきます。

重畳的債務引受のメリット

負債を相続する場合、遺産分割協議書を作って、特定の相続人が債務を相続したとしても、そのことを債権者に主張することはできません。重畳的債務引受の契約を締結して債権者から承諾を得ることにより、債権者に対して、遺産分割協議書の内容を主張することができるようになります。

ただ、遺産分割協議書の内容を主張できることはメリットですが、重畳的債務引受では、従来の債務者も債務は免除されませんので、大きなメリットではありません。一方、債権者にとっても、従来の債務者よりも引受人の方が明らかに資力がある場合は、貸し倒れリスクを多少軽減できることがありますが、これも大きなメリットではありません。

重畳的債務引受のデメリット

債務者(相続人)、債権者ともに、特にデメリットはありません。

免責的債務引受のメリット

遺産分割協議書だけでは債権者に主張することはできませんが、免責的債務引受の契約を締結すれば、債権者にも主張することができるようになります。債権者に主張することにより、免責的債務引受では債務が免除されますので、債務を引受けた相続人が支払えなくなった場合でも、従来の債務者であった他の相続人は支払う義務を負いません。債務者にとっては、従来の債務者が免責される点が一番のポイントで、一番のメリットです。

一方、債権者にとっては、従来の債務者よりも引受人の方が明らかに資力がある場合は、貸し倒れリスクを多少軽減できることがありますが、大きなメリットではありません。

免責的債務引受のデメリット

債務者(相続人)にとっては、特にデメリットはありません。

一方、債権者にとっては、免責的債務引受では、従来の債務者は債務を免責されますので、従来の債務者よりも引受人の方が明らかに資力がある場合を除き、引受人の資力不足による貸し倒れリスクが増加します。債権者にとっては、従来の債務者が免責される点が、一番のデメリットです。

債務の相続について

債務の相続について
債務の相続について

これまでに債務引受について見てきましたが、実際に相続財産に負債が含まれている場合は、いくつかの課題や懸念点に出くわします。

ここでは、相続財産に負債が含まれている場合に考える必要がある、次の項目について見ていきます。

  1. 債務の相続とは(負債相続のルール)
  2. 債務の遺産分割
  3. 債務引受の契約

債務の相続とは(負債相続のルール)

相続財産に借金などのマイナス財産(債務)がある場合は、民法上、その債務は相続人が法定相続分に応じて相続することになり、全ての相続人が債務者になります。債権者は、債務者である各相続人に対して、法定相続分に応じた金額の弁済を求めることができます。次項で説明しますが、債務の遺産分割も可能です。

相続放棄を行うことにより相続人でなくなった場合は、プラス財産もマイナス財産(債務)も放棄することになりますので、債務の弁済を求められることはありません。特に、プラス財産よりマイナス財産の方が多い場合は、相続放棄はオプションの一つです。

なお、遺言により遺産を譲り渡す(遺贈する)事もでき、遺贈する場合、遺産を具体的に特定せずに、「遺産の半分」とか「遺産の4分の1」など一定の割合によって行うこともできます。
このような遺贈を「包括遺贈」といい、包括遺贈を受ける人(包括受遺者)は相続人と同じ権利や義務が生じ、マイナス財産(債務)も合わせて継承しなければいけません。包括受遺者がいる場合は、法定相続人に加えて、包括受遺者も債務を相続することになります。

債務は遺産分割できる?

債務がある場合は、民法上、その債務は相続人が法定相続分に応じて相続することになりますが、遺産分割協議書において債務の遺産分割を行ったり特定の相続人が全債務を相続したりすることができます。しかし、遺産分割協議書を作っただけでは、そのことを債権者に主張することはできません。

このようなことを避けるために、重畳的債務引受や免責的債務引受の契約を締結して、債権者に主張できるようにする必要があります。

相続人間の取り決めには債権者の承諾が必要

遺言がなくて遺産分割を行う場合は、通常は遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、あくまで、相続人の間で遺産をどのように分割するかを取り決めたものですので、債権者のような第三者には主張できません。

債権者に主張するためには、これまで見てきたように重畳的債務引受や免責的債務引受の契約を締結することになりますが、契約をすることで「債権者」にとって不利になる場合があります。そのため、債務引受の契約を締結する場合は、必ず、債権者の承諾が必要になります。

特に、契約方法の中の一つである「債務者と引受人の間の契約」については、相続人だけが契約当事者で、債権者が契約当事者ではありませんので、相続人だけの契約では効力が発生せず、債権者の承諾を得て初めて契約の効力が生じます。

債務が含まれる相続の場合、税理士に相談を

債務が含まれる相続の場合、税理士に相談を
債務が含まれる相続の場合、税理士に相談を

遺言がない場合、通常は遺産分割協議書を作成して遺産を分割しますが、この遺産分割協議書は第三者に対しては主張できません。例えば、遺産分割協議書により法定相続分を超えて相続した不動産については、登記をしないと第三者への主張はできません。債務の場合も同様で、遺産分割協議書の内容を債権者に主張するためには、重畳的債務引受や免責的債務引受の契約を締結する必要があります。

債務がある場合は、遺産分割協議書を作成して重畳的債務引受や免責的債務引受の契約を締結する以外に、限定承認を行う、相続放棄を行うなど、いろいろなオプションを検討しないといけません。

相続は、ケースバイケースで個々の状況によって対応が違っています。いろいろなオプションの中から最適な選択が行えるように、相続に強い税理士にご相談することをお勧めします。

この記事を監修した弁護士からのコメント

石尾理恵弁護士

 

 

相続が発生した場合、それぞれの相続人が法定相続分に応じた割合で債務を引き受けます。そして、マイナスの財産がプラスの財産を上回ることが明らかな場合は、相続放棄をすべきです。反対に、プラスの財産の方が多いため単純承認する場合は必ず遺産分割協議をする必要があります。

遺産分割協議において、一人の相続人が多くの遺産を引き継ぐ場合、残りの相続人はプラスの財産はほとんど引き継げないのに、債務だけは法定相続分に従って債権者に請求されるということがないように、免責的債務引受などの契約締結を忘れないようにしましょう。

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