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路線価と時価の違いを分かりやすく説明 路線価による土地評価額から時価を計算するには?

最終更新日: 2023年01月13日

「父が亡くなり相続が発生したが、遺産の中に不動産が含まれており、どのように評価をしたらよいか分からないな」あるいは「土地の価格って、時価や路線価など、いろんな価格があって、良く分からないわ」という方も多いと思います。

銀行預貯金や株式であれば評価額は一つしかなく明確ですが、不動産の場合はそう簡単にはいきません。そこで今回は、路線価と時価の違いや路線価から時価を算出する方法など、不動産の価格について説明します。

この記事を監修した税理士

税理士法人better - 東京都中央区日本橋人形町

税理士法人better-東京都中央区 大下宏樹(おおしたこうき)代表社員 1982年香川県高松市出身。明治大学商学部卒業。会計事務所にて相続税申告業務を経験、大手監査法人勤務の後、相続税専門税理士法人better設立。 香川県で3代続く公認会計士・税理士一族の次男。3兄弟全員が同業。独自のシステムである「better相続」により、従来の高額でアナログなサービスを見直し、低額かつ定額の相続税申告を提供。

路線価と時価の違いとは

路線価と時価の違いとは
路線価と時価の違いとは

土地の価格は「一物四価」とも「一物五価」と言われていて、数種類の土地価格が存在します。土地価格は、利用目的によって次のような指標となる価格があります。

  1. 時価
  2. 公示価格
  3. 都道府県地価調査価格
  4. 路線価
  5. 固定資産税評価額

ここでは、それぞれの土地の価格について見ていきます。

時価とは

「時価」とは、実際に売買取引されている価格のことです。下記で説明する「公示価格」を目安として、土地の形状や周辺環境、将来性、売買の時期や需給バランスなどの評価に加え、当事者それぞれの事情などを総合的に考慮して評価します。

公示地価とは

「公示価格」とは、地価公示法に基づいて国土交通省が公示する標準地の価格のことです。正式には「地価公示価格」といい、国土交通省が毎年1月1日を評価時点として3月下旬に公示してします。

私たちが土地取引や資産評価をする際の価格の客観的な目安として活用されており、一般的な土地取引の公的指標として扱われています。また、公共事業で取得する土地価格の算定基準としても活用されます。

土地は更地の場合が一番価値があり価格が高いため、建物の敷地の場合にはその建物がないものとして更地で評価します。

都道府県地価調査価格とは

「都道府県地価調査価格」とは、国土利用計画法に基づき都道府県知事が公示する標準地の価格のことです。公示価格が1月1日時点の価格であるのに対して、この都道府県地価調査価格は毎年7月1日を評価時点として9月後半頃に発表されています。

公示地価の補完的な指標であると同時に、地方公共団体等による買収価格の算定の規準となっています。

路線価とは

土地評価の基になる価格が、その土地が面している道路ごとに設定されているので、その価格のことを「路線価」といいます。路線価は1月1日を評価時点として、1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度を目途に国税庁が評価して公示されます。

この路線価は、相続税や贈与税等の税金を計算する際の算定基準になります。なお、路線価が定められていない地域もありますが、その場合は後述の「路線価が定められていない区域の場合は?」をご覧ください。

固定資産税評価額とは

固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税、不動産取得税や登録免許税の算定基準となる価格で、市町村(東京23区の場合は都)が3年毎に算出しています。通常、固定資産税評価額は公示価格の70%程度に設定されています。

固定資産評価額は各市町村長が価格を決定し、固定資産税台帳に「固定資産の所有者・所在・価格」が登録されます。固定資産税台帳は、所轄の役所(東京都の場合は、固定資産が所在する区にある都税事務所)で閲覧することができます。

また固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に添付されている課税明細書で確認することもできます。

土地の公的価格まとめ

土地の価格について、一覧表にまとめます。

地価の種類 時価 公示価格 都道府県地価調査価格 路線価 固定資産税評価額
所管官庁 国土交通省 都道府県 国税庁 市町村(東京23区は都)
基準日 毎年1月1日 毎年7月1日 毎年1月1日 3年毎の1月1日
公表時期 3月下旬 9月下旬 7月初旬 4月初旬
時価/公示価格との比較 時価の指標 時価の指標 公示価格の80%程度 公示価格のの70%程度
利用目的 実際の売買価格相場 ①一般的な土地取引の公的指標

②公共事業の買収価格の算定基準

①公示価格の補完

②地方公共団体等による買収価格の算定規準

相続税、贈与税の評価に利用 固定資産税/都市計画税、不動産取得税、登録免許税の算定に利用

公示価格と都道府県地価調査価格は、国土交通省ホームページ「標準地・基準地検索システム」で検索可能です。

路線価は、国税庁のホームページ「路線価図・評価倍率表」で検索することができます。

固定資産評価額は、固定資産税の納税通知書で確認するか、所轄の役所で(東京都の場合は、固定資産が所在する区にある都税事務所)で閲覧することができます。

路線価から時価を求めるための計算方法

路線価から時価を求めるための計算方法
路線価から時価を求めるための計算方法

2020年1月1日の路線価が7月1日に発表されました。その概要が新聞にも掲載されていましたので、ご覧になった方もいらっしゃると思います。

みなさんがお持ちの不動産について、路線価がわかれば、おおよその時価についても算出することができます。

ここでは、

  1. 路線価を調べる
  2. 路線価から時価を算出する

の手順で、おおよその時価を求める手順を説明します。なお、土地の評価額は所有形態(自用地/借地権)で評価方法(計算方法)が違いますので、参考までに借用地についても簡単に説明します。

国税庁のサイトで路線価を調べる

路線価図の検索方法

①国税庁のホームページ「路線価図・評価倍率表」にアクセスします。

財産評価基準書路線価図・評価倍率表|国税庁

②全国地図が表示されますので、路線価を知りたい土地のある都道府県を選択します。

③「路線価図」を選択します。

④土地のある市区町村を選択します。

⑤土地のある地区を選択します。

⑥路線価図が表示されます。

路線価図の見方

路線価図の見方
路線価図の見方 出典:国税庁

路線価図を見ると、「200C」や「250D」といった、数字とアルファベットが混じったものが記載されています。

路線価は1㎡当たりの価額(千円単位)で表示されます。表示されている数字の部分(200や250)が路線価で、この場合は、200千円/㎡、250千円/㎡です。英字の部分(CやD)は借地権割合で、路線価図にその借地権割合が示されています。たとえば、A:90%、B:80%、C:70%、D:60%等々です。

路線図の見方については、国税庁のホームページを参照ください。

路線価による土地評価額を計算する

上記で求めた路線価をもとにして、土地評価額を算出します。

ここでは、「路線価200C」の路線に面している「土地500㎡」について、土地評価額を算出してみましょう。

「路線価200C」とは、以下のことを表しています。

  1. 路線価:200千円
  2. 借地権割合:C(ここでは70%とします)

自用地の計算方法

基本的には、

「土地評価額」=「路線価」✕「土地面積」

で評価額を求めます。今回の例では、

土地評価額=200千円/㎡✕500㎡=100,000千円(1億円)

となります。

借用地の計算方法

人から土地を借用して、その土地の上に建物を建てている場合、その土地には借地権が設定されています。借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権を言います。この借地権も、相続税や贈与税の課税対象になります。

借地権の価額は、自用地として求めた土地評価額に「借地権割合」を乗じて求めます。

基本的には、

「借地権の土地評価額」=「路線価」✕「土地面積」✕「借地権割合」

で評価額を求めます。今回の例では、

借地権の土地評価額=200千円/㎡✕500㎡✕70%=70,000千円(7,000万円)

となります。ちなみに、土地を貸している地主側の土地評価額は、

地主側の土地評価額=200千円/㎡✕500㎡✕(100%−70%)=30,000千円(3,000万円)

となります。

奥行価格補正率

評価する土地の形状などが違っており、正確に評価額を求めるために、奥行価格補正率などの各種補正率で補正します。一般には、土地が道路からの奥行きが短いと評価が高く、奥行きが長いと評価が低くなる傾向があります。

奥行価格補正率を加味した、自用地の場合は、

「土地評価額」=「路線価」✕「奥行価格補正率」✕「土地面積」

で評価額を求めます。詳細は国税庁のホームページを参照ください。

また奥行価格補正率については、国税庁のホームページの奥行価格補正率表を参照ください。

例えば今回の土地が、「普通住宅地区」で「奥行7m」の場合、国税庁のホームページの奥行価格補正率表によると「奥行価格補正率0.95」が得られますので、次のように計算します。

「奥行価格補正率を加味した土地評価額(自用地)」=「路線価200千円/㎡」✕「奥行価格補正率0.95」✕「土地面積500㎡」=95,000千円(9,500万円)

なお該当の土地が、2つ以上の道路に面しているとか、角地や準角地であるかなどによって、計算方法が若干変わります。上記で紹介した国税庁のホームページを参照したり専門家にご相談されたりすることをお勧めします。

路線価の土地評価額を割り戻して公示地価を求める

路線価による土地評価額が求められたら、その評価額をもとに、公示価格を求めます。「路線価」は地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度を目途に、国税庁が評価して公示されます。

よって、「公示価格」=「路線価の土地評価額」÷「80%」により求められます。先ほどの奥行価格補正率を加味した土地評価額(自用地)を使用すると、公示価格は次のようになります。

「公示価格」=9,500万円÷80%=11,875万円

なお、路線価はあくまで公示価格の80%程度を目途に決められており、正確に80%ではありません。おおよその公示価格としてお考えください。

路線価が定められていない区域の場合は?

「固定資産税評価額と評価倍率表」の利用

全国全ての地域に「路線価」が定めらているとは限りません。路線価が設定されていない区域もあります。その場合は、路線価の代わりに、「固定資産税評価額と評価倍率表」を使って土地評価額を求めます。「評価倍率表」についても、路線価を求める場合と同じ国税庁のホームページ(路線価図・評価倍率表)から得られます。

①国税庁のホームページ「路線価図・評価倍率表」から該当都道府県を選択し、下記画面から「評価倍率表」の「一般の土地等用」を選択

②評価倍率表より、該当地区を選択

③倍率表より、借地権割合と倍率を取得

「固定資産税評価額と評価倍率表」による土地評価額の計算方法

この評価倍率表より、「借地権割合」と「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」を取得します。この倍率による土地評価額は、

「倍率による土地評価額」=「固定資産税評価額」✕「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」

で求めることができます。また、公示価格についても、

「公示価格」=「倍率による土地評価額」÷「80%」

で求めることができます。

計算例

上記の計算例を見てみましょう。評価倍率表より

借地権割合:50%
固定資産税評価額に乗ずる倍率等:宅地・1.1
固定資産税評価額:1億円

この例の場合、

倍率による土地評価額=固定資産税評価額1億円✕倍率1.1=1.1億円
公示価格=倍率による土地評価額1.1億円÷80%=1.375億円

のようになります。なお、該当する土地が借用地の場合は、評価倍率表の借地権割合(この例の場合は50%)を使って同様に計算します。

路線価と時価が乖離する場合とは

路線価と時価が乖離する場合とは
路線価と時価が乖離する場合とは

路線価は、地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度を目途に評価されます。しかし時価は、土地の形状や周辺環境、将来性、売買の時期や需給バランスなどにより変わってきます。そのため土地によっては、路線価と時価が想定以上に乖離してしまう場合があります。

ここでは、路線価と時価の乖離について見ていきます。

相続税の申告に用いるのは路線価か時価か

相続税は時価評価が原則ですが、例外的に不動産だけは時価ではなく、路線価による土地評価額が使われています。基本的には路線価による評価額は時価の8割程度のため、相続税申告の際には、路線価による評価額で申告する方が納税額は抑えられます。

しかし、路線価による土地評価額が時価を上回る場合は、路線価による土地評価額で申告しなくてもよく、他の合理的な方法によって評価することも認められています。つまり、路線価による土地評価額が時価を上回る場合は、安価である時価でも申告することが可能です。

代償分割で用いる評価額は?

遺産分割には、次の3種類があります。

  • 現物分割:不動産や預貯金などの遺産を、相続人で分割する方法
  • 換価分割:遺産を換金し、その換金された金額を相続人で分配する方法
  • 代償分割:自宅などの不動産が主な遺産であり、現物分割や換価分割ができない時の分割方法

代償分割とは、ある相続人が不動産などの遺産を相続し、代わりにその相続人が他の相続人に対して、相応の金銭などを渡す方法です。それでは、代償分割の代償金は、相続税評価額(路線価)をベースに考えるのでしょうか?あるいは、公示価格をベースにするのでしょうか?

結論から言いますと、代償分割は遺産分割協議書の上で決定しますので、特に決まりはなく、相続人同士が合意すればどういう決め方をしても成立します。特に決まりがないのは、相続税を取る国税庁にすれば、代償分割はあくまで相続人間の遺産の分割にすぎず、どのように分割しようと相続税の総額が変わることがないからです。

時価が路線価による地価評価額を下回る場合

時価は「公示価格」を目安として、土地の形状や周辺環境、将来性などの評価に加え、当事者それぞれの事情などを総合的に考慮して評価します該当の土地が、

  • 非常に狭い過小宅地で間口も狭い
  • 高圧線が近くにある
  • 土地に面している道路が建築基準法上の道路がない

などの制約がある場合、時価に影響してしまいます。このように当事者にとって利用価値が低い土地の場合は、地価が下がる傾向にあり、場合によっては路線価による地価評価額を下回ってしまいます。

正確な時価を知りたい場合は不動産鑑定士による鑑定がおすすめ

土地の評価は土地の形状や周辺環境などによって変わり、私たち素人にとっては正確に土地評価を行うのは難しいところです。正確な土地評価を行いたい場合は、土地評価の専門家である不動産鑑定士にご相談することをお勧めします。

相続の土地の評価で困ったら税理士に相談を

相続の土地の評価で困ったら税理士に相談を
相続の土地の評価で困ったら税理士に相談を

相続財産に不動産が含まれている場合、その不動産の相続税評価額を正確に算出するためには、相続関係の知識に加えて、不動産の知識も必要です。

相続開始後10ヶ月以内に相続税の申告をしなければならず、時間的に余裕はありません。また不動産評価額が判明しても、相続税評価額の観点では、小規模宅地等の特例をはじめ各種特や控除が活用できる場合もあります。相続で損をしないためにも、相続税申告の経験が豊富な税理士に相談することをお勧めします。

特に相続に強い税理士であれば相続税申告に強いだけでなく、不動産鑑定士のダブルライセンスだったり不動産鑑定士と提携したりしていますので、相続資産に不動産が含まれている場合でもワンストップで対応してもらえます。

監修税理士のコメント

税理士法人better - 東京都中央区日本橋人形町

不整形地や路線価地域であるが、路線価を付されていない土地などの場合、評価を行う者によって評価額が大幅に変動する可能性が高いです。不動産の評価額計算を誤ると相続税に対する影響が大きいため、複雑な不動産を所有している場合には、相続税専門の税理士に相談することをオススメします。

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