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相続税の税務調査の実態〜調査ではどこまで調べられるの?

最終更新日: 2024年06月28日

相続税を申告した方の中には、「相続税の税務調査の事前通知が来た!どう対処したら良いの?」「相続税の税務調査の実態が知りたい」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。今回は相続税の税務調査の実態や確率、基本的な調査の流れや申告漏れがあった場合について確認していきましょう。節税方法や不安を感じた場合の解決方法もお伝えしていきます。

この記事を監修した税理士

高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

相続税の税務調査の実態

マルサ
税務調査には2種類のパターンがある

税務調査には「任意調査」と「強制調査」(マルサ)の2種類があります。以下の表で二つの調査の違いを確認しておきましょう。

 連絡の有無調査の目的・内容頻度
任意調査あり(数週間~数か月前に電話により告知)
日程調整が可能
適切な税の申告がされているかを、書類や質問を通じ確認される数年に1回
一般的な税務調査はこの「任意調査」を指す
強制調査なし。裁判所の令状が出た時に、強制的に行われる悪質な隠蔽、巨額な脱税が疑われるときに差し押さえられる

相続税の税務調査にくる確率は?

多くの場合は「任意調査」ですので、税務署より電話で通知が来てから準備を行う流れになります。相続税の税務調査が行われる確率は約2割です。国税庁の発表によると平成29年度の相続税の税務調査の実施調査件数12,576件でした。

そのうち申告漏れなどで本来申告した金額と違ったケース(非違件数)は10,521件で全体の83%にあたります。8割以上は申告漏れがあったという計算で、1件当たりの追徴税額は623万円に上りました。非違件数の10,521件のうち無申告の事案は1,216件です。国税庁では無申告事案に対して「公平感を著しく損なう」と述べています。

無申告の場合はペナルティーとして無申告加算税や延滞税を払うことになってしまいますので、通知があった時は必ず申告を行いましょう。

相続税の税務調査の対象になるのは?

相続税の課税対象となる相続財産を相続した「相続人」が税務調査の対象となります。複数の相続人がいる場合は全員が対象となりますが、実際は「全員がその場にいなければならない」という決まりはありません。

税務調査の目的は①正しく申告されているか、②申告漏れはないかを調べることなので、適正な申告をしていれば税務調査の対象になる確率は無申告に比べれば低いです。

逆に無申告の場合は、税務調査に入る可能性は高いです。税務署は事前調査を行った後で実地調査を行いますので、各金融機関や公的機関を通じて資産の情報をあらかじめ調べています。この時点で不明な点や怪しい部分を洗い出していることが多いです。

個人の税金情報をシステムで管理しているので、無申告である事は分かってしまいます。資料を揃え正確な申告をする事で、煩雑な税務調査を避けられる可能性が高くなります。

税理士を起用していない相続税申告には間違いが多い

相続税は、

  • 仕組みが複雑で。専門家でも判断の難しい点が多い
  • 正しい計算をするには、亡くなった方の財産をもれなく把握しなければならない

上記のような理由により、一般の方が自力で申告するには非常にハードルの高い税金です。また納税額が数百万円~数千万円になることも珍しくなく、1つのミスで大きな追徴課税を受けやすい税金でもあります。

よって、税務署は税理士等の専門家による申告より、ミスの件数や追徴課税額の大きくなりそうな一般の方の申告に対して調査を行いやすい傾向があります。

ある大手税理士法人の分析では、相続税全体の申告に対する調査率が20%であるのに対し、税理士による相続税の申告に対する調査率は1%程度という結果が出ています。

Point!
・税務署は追徴課税をしやすい素人の申告を狙っている!

相続税の税務調査の基礎

税務調査
税務調査の基本的な実施事項について

それでは実際に相続税の税務調査とはどのように行われているのでしょうか?

税務調査はパーソナルな事を調べられますので、不安や疑問がつきものです。「通帳まで見られるのではないか?」「どこまで調べるの?」と言った声も多いです。申告の必要がない場合や調査の時期と流れ、調査範囲や申告漏れがあった場合について見ていきましょう。

相続税の税務調査のために準備しておくもの

・相続税申告書

・相続税申告書の添付資料

・相続税申告書作成で使用した計算根拠となる資料

・土地や建物など不動産に関する資料

・被相続人の通帳

・相続人の通帳

その他にも、申告漏れが指摘されそうなものがあれば用意知っておくようにしましょう。なぜなら、税務署は何らかの情報をもっている可能性が高いからです。また、通帳から大きな額の出し入れがあった場合は、その理由を説明できるようにしておきましょう。

税務調査でよく聞かれること

・被相続人の趣味や仕事に関して

・被相続人の生前の状況について

・相続人の職業や状況について

・相続について

はじめはカジュアルな会話から調査が始まります。段々と核心に迫った質問がされるので、嘘をつくことや不適切な回答をしないようにしましょう。

申告の必要がない場合はあるの?

正味の遺産総額が基礎控除額より少ない場合は申告の必要はありません。基礎控除額の計算式は以下の通りです。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

【例.法定相続人が4人の場合】
3,000万円+600万円×4=5,400万円

基礎控除額は5,400万円となりますので、正味の遺産総額が5,400万円以下であれば申告は必要ありません。ただ先に書いた通り無申告の場合でも税務署は事前調査を行っています。

事前調査で疑問点が多い場合は「相続税についてのお尋ね」が郵送で届きますので必ず返信するようにしましょう。「相続税についてのお尋ね」の返事を怠ると、実地調査が行われる確率が高くなりますので封書の内容をきちんと確認し返送しましょう。

調査の時期と流れ

相続税の税務調査は1~2年後の秋に行われることが多いです。申告から5年後は、一部の場合を除き時効が成立するため税務調査は行われません。

流れとしては以下の通りです。
①税務署から電話があり、調査がある旨と日程について連絡がある。日程は必ずしも合わせる必要はなく、ずらしても調査結果に影響はない。

②実地調査:1~2日間かけて主に被相続人が生前住んでいた家で行われる。調査官は2人の事が多い。相続人が立ち会うが、全員が立ち会う必要はない。

③調査官から質問や確認作業がある。主に被相続人の状況について聞かれる。

  • 収入や財産についての確認
  • 出費やその用途
  • 贈与や寄付について
  • 家族構成、仕事や年齢などの基本情報
  • 金融機関や投資について
  • 相続人の職業や年齢など


④8割の確率で修正申告をを求められる

相続税の税務調査ではどこまで調べる?

税務調査では一体どのような資料が確認されるのでしょうか?

一般的には被相続人の通帳、親族の通帳、その他の有価証券中心に確認します

「通帳まで見られるの?」と疑問を感じる方もいらっしゃると思いますが、申告漏れの内訳で多いのは現金・預貯金ですので調査官も念入りにチェックします。
主に過去10年間のお金の出し入れについて見られますので、過去にどのような用途で入出金があったのかを確認しておきましょう。

申告漏れがあった場合

申告漏れがあった場合は追徴課税を徴収されてしまいます。

追徴課税は加算税と延滞税があり、加算税は無申告の場合や過少申告など、延滞税は納税が遅くなった時に課せられます。詳細は以下の表をご覧ください。

 どういう場合に課されるか税率
加算税・無申告加算税
申告すべきケースで無申告の場合
50万以下は15%
50万以上の金額は20%
・過少申告加算税
実際の金額より少なく申告した時
修正した税額に対して
50万以下は10%
50万以上の部分は15%
・重加算税
書類の改ざんや隠蔽工作など悪質なケース
※一番税率が高い
無申告:40%
過少申告:35%
延滞税納税が遅れた際2か月以内:7.3%
2か月を超える場合:14.6%

明らかな隠蔽工作が行われていたり、金額が大きかったりするなど悪質な脱税を行うと刑事罰が科される可能性がありますので注意しましょう。

追徴課税になりやすいのはどんな人?傾向と対策

【調査の対象になりやすい人】

①富裕層
まず調査の対象となりやすいのは、高額の土地や建物・株や保険金・現金預金などを相続した方、いわゆる富裕層です。相続財産が高くなると必然的に相続税も高くなりますので、税務署としては調査で追徴課税できる可能性が高くなるのも当然ですよね。

また、医者や弁護士、国会議員などの高所得が見込まれる職業の人も対象になりやすいと言われています。

②相続税が無申告の人
次に対象となりやすいのは相続税を申告していない、いわゆる無申告の人です。上記でもお話しした通り税務署は亡くなった方の財産を把握しています。相続税は財産があったことを知っていた、知らなかったにかかわらず納めなければいけないものですので、もちろん税務調査により追徴課税される可能性が高くなります。

③税理士が代理申告していない人
最後は税理士が代理申告しているかどうかです。税理士の申告と一般の方の申告ではミスをしている確率は雲泥の差。また調査の際も税理士が同席するかしないかで追徴課税の可能性も変わってきますので、税務署は税理士のついていない申告者を対象にしやすい傾向があるといわれています。

④生前に事業を行っていた人

⑤生前に海外資産を保有していた人

Point!
・税務調査で対象になりやすいのは、「富裕層や高額所得者」「無申告者」「税理士を付けていない人」

【対策:亡くなった方の財産をしっかりと把握する】

現金や口座の預金、保険金や株式などはその存在や金額の把握はそれほど難しくないと思います。問題は下記のような財産です。

①土地や建物などの不動産
存在を把握することは簡単ですが、金額の算定が非常に難しいです。相続の状況により計算方法も変わってきますので、国税庁等のHPを参照するか税務署・税理士等の専門家に相談するのがいいかと思います。

②名義預金
名義預金とは亡くなった方が相続した方の名義で口座を作り、そこに入金したお金のことです。生前の入金であれば通常贈与税の対象となり、年間110万円までなら非課税となりますが、相続した方が名義預金の存在を知らなかった場合は相続税の対象となりますので、注意が必要です。

③嗜好品や骨とう品など
亡くなった方が趣味で色々なものを収集していたり、先祖から伝わるものを代々受け継いでいた場合、それらが意外に高値であることがあります。税務署から調査が来た際にこれらの申告が漏れていると、思わぬ追徴課税を受けることがあります。

Point!
・相続財産の内容と金額を漏れなく把握すること。リストを作って管理しよう!

対策① 生前贈与の有無を確認

土地や家など贈与より相続であげたほうが税金を安くできる財産がある場合、生前贈与(相続時加算制度)を利用しているケースがあります。ただ、この制度は生前贈与の事実が確認できないと税率の高い贈与として課税される可能性が出てくるため、当事者間での契約書、登記の変更がされているかをしっかりと確認しましょう。

Point!
・生前贈与を行っていたら、その証拠書類をそろえておこう。

対策② 書面添付制度の活用を

書面添付制度とは申告書の提出の際、税理士が計算の根拠や相談を受けた内容等を記載した書面を添付する制度のことです。この書類を添付することは税理士のお墨付きを得たことになりますので、調査の対象となる確率はかなり低くなることが予想されます。ただし、書面添付制度は税理士にとってリスクにもなるため、依頼料が高くなったり、申告書の作成に時間がかかったりという側面もあります。

Point!
・書面添付制度は強力な制度だが、コスト増や手間増などのデメリットもある。

相続税を節税するにはどうしたらいい?

相続税申告書
相続税を節税するポイント

相続税の税務調査の実態が分かったところで、節税方法についてもご紹介していきます。

節税をする上で大事なポイントは「財産の評価」「特例・控除の適用」です。どちらも知識があれば節税をする事は可能ですので、具体的に確認してみましょう。

相続財産を適切に評価する

相続財産には土地・家屋などの不動産と現金や小切手などの動産、事業用財産や有価証券などが存在しますが、特に「不動産」は過大評価をしてしまうと税額が大きく膨らんでしまいます。

相続財産は時期や人により評価が異なることがあり解釈が難しいため、相続専門の税理士に頼むのがべストと言えるでしょう。

特例・各種控除などを適用させる

相続税の控除は配偶者の税額軽減未成年・障害者控除など7種類存在します。いずれも条件を満たす事で一定の金額が控除されますので、適用されるかチェックしておきましょう。

この他に小規模宅地など様々な特例も存在します。相続税は申告種類なども含め、特例が多岐に渡り複雑です。適用要件が複雑で見落としやすい事から、やはり専門家に相談する事をおすすめします。

払いすぎていたら「更正の請求」をしよう

相続税は「更正の請求」という税額が確定した後に金額を更生して請求できる特例が設けられています。税額が増える場合はいつでも更生の請求ができますが、減る場合には「被相続人が死亡してから5年10ヶ月以内」に申請を行わなくてはいけません。

相続税の申告期限が「被相続人が死亡してから10ヶ月以内」なのですが、プラス5年で5年10か月という期限が設けられていますのでご注意ください。払い過ぎてしまった場合には期間内に「更正の請求」を行いましょう。

相続財産とは?相続税に関するあれこれ

税理士へ相続税に関する相談をする男性
相続税に関する質問事項をピックアップ(画像提供:imtmphoto/Shutterstock.com)

相続税の申告でよくある質問についてまとめてみました。相続税の対象になる財産や、相続税の申告は相続財産がいくら以上あるとしなければならないのかなど、参考にして頂ければ幸いです。

相続税の対象となる財産は?

申告漏れ相続財産 種類別構成比表 平成25~29年
申告漏れ相続財産 種類別構成比 平成25~29年

対象となる財産は大きく分けて4つあります。

①相続や遺贈で取得した財産
もっとも一般的なもので、亡くなった方の現金預金、土地や建物などの不動産、自動車や骨とう品などの動産、株や投資信託などがあります。

②相続や遺贈で取得したとみなされる財産
死亡保険金や死亡退職金など、掛け金を払っていたり労働を提供していたのが亡くなった方で、受け取るのがが相続をする人であるものも対象となります。

③相続開始前3年以内に亡くなった方から贈与により取得した財産
贈与により取得した財産には通常贈与税がかかりますが、相続開始(亡くなった)前の3年以内分に関しては、相続税の対象となります。

④相続時精算課税により取得した財産
土地や建物などの高額資産は相続税より贈与税が高くなる傾向があるため、相続時精算課税を使った方が有利になる場合があります。この制度を使っていた場合、相続により取得した財産としてカウントします。

Point!
・相続の対象となる財産は4種類。特に②と③は忘れがちなので注意!

相続税を税理士に依頼するといくらかかる?

相続税の費用は相場があまりないため税理士によってまちまちですが、相続財産の〇%、相続税の〇%というように、ある程度はっきりとした基準を設けているところもあります。税理士に依頼をしようと思ったときは、最初に報酬の基準はあるか、想定額がどれくらいになるか事前に確認したほうがいいでしょう。合い見積もりを取ることもおすすめです。

Point!
・税理士への費用は事務所によってまちまち。依頼時に必ず確認しよう!

監修税理士のコメント

高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

相続税の税務調査の対象になる確率は他の税目より高く、状況によっては避けられない部分もあります。特に上記に記載した税務調査の対象になりやすい人に該当する場合、税務調査が入るという前提で申告書を提出した方が良いと思います。したがってまず財産を漏れなく洗い出し、正しい申告書を提出し、根拠となる資料をきちんと準備しておくことをおすすめします。しかし、特に財産の洗い出しについては相続人の方が完璧に行うことは不可能に近いです。できれば生前から被相続人の方がきちんと整理して書類等に残しておくのがよろしいのではないでしょうか?

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相続税は相続税法に定められた様々な縛りがあり、専門知識がないと適切な申告が難しい分野です。申告書類も種類が多く煩雑ですが、税務調査は申告書類を基に質問されます。

事前調査によりあらかじめ疑問点を絞ってることが多いので、調査官の質問に答えるのが大変なケースもあります。専門の税理士に相談するのが無難でしょう。

税理士に相談するメリット

税理士に相談するメリットは以下の3つです。

  • 適切な相続税を納めることが出来る
  • 税務調査で調査官に質問されても代わりに答えてくれる
  • 税務調査のアドバイスを受けることが出来る

特に税務調査では税理士がいた方が良いことが分かります。

税理士にも専門がある

税理士にも専門分野があります。特に相続税は税理士によって解釈や評価が異なる事が多いです。所得税や法人税が専門の税理士に相談してしまうと本来支払う必要のない税金を払う事態になりかねません。

相続税の税務調査の通知が来たらすぐに相続税専門の税理士に相談することをおすすめします。

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この記事を監修した税理士

高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

高崎文秀(たかさきふみひで)文京区水道橋駅近くで、低価格で品質の高いサービスをご提供する税理士事務所を運営。起業家向けに月額1万円、決算料なしからの税務顧問を提供する。 創業したばかりでお金と時間に余裕がない、という方でも経理、節税、税務調査などを心配せず、本業に集中して頂き、1日でも早く事業を軌道に乗せて頂くことをコンセプトしている。事務所HP : https://ft-taxacc.com/