貴金属は貴金属を相続する場合、相続手続きや相続税申告が必要です。しかし、いざ相続を行うとなると、どのように進めればいいのかわからず困ってしまう人も多いでしょう。
本記事では、貴金属の相続方法や相続税の申告方法、相続税が発生しないケースなどを詳しく解説します。家族が大切にしていた貴金属を安心して受け継ぎたい方は、是非ご一読ください。
貴金属を相続する際の手順
貴金属を相続する際の手順は以下のとおりです。
- 相続財産を確認する
- 法定相続人・遺言書の有無を確認する
- 遺産分割協議を行う
- 相続税の申告や納税を行う
相続財産を確認する
相続が発生した際には、まずは貴金属を含めた全ての相続財産を確認することが重要です。これは、相続税の計算や遺産分割協議を行う際に、全ての財産を把握しておく必要があるためです。
具体的には、不動産、預貯金、株式などの金融資産や保険金、借金なども相続財産に含まれます。特に不動産や株式などは評価額が高額になる場合があり、相続税の計算に大きく影響します。
また、借金も相続財産に含まれるため、相続放棄をするか限定承認をするかなどの判断が必要になるケースもあるでしょう。そのため、貴金属だけでなく全ての相続財産を把握してから手続きを進めることが大切です。
法定相続人・遺言書の有無を確認する
相続財産の確認が完了したら、次に遺言書の有無と法定相続人を確認しましょう。遺言書が存在する場合は、その内容に基づいて相続人が決定されます。
例えば、遺言書に特定の貴金属を特定の人に相続させる旨が記載されていれば、その貴金属は法定相続分とは関係なく遺言書に指定された人に相続されます。一方、遺言書がない場合の相続人は、民法で定められた法定相続人です。
法定相続人は配偶者と血族で構成され、相続順位が存在します。第一順位は子供、第二順位は親、第三順位は兄弟姉妹です。配偶者は常に相続人となりますが、その相続分は他の相続人の有無や数によって変動します。
遺産分割協議を行う
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、貴金属をどのように分割するかを話し合います。
遺産分割協議は民法で定められた相続人の権利を守るため、また相続人間で無用な争いを避けるために必要な手続きです。 遺言書があれば故人の意思に基づいて遺産分割ができますが、遺言書がない場合は相続人全員が納得する形で遺産を分割しなければなりません。
例えば、貴金属の種類や量、相続人の人数、それぞれの希望などを考慮して、貴金属を現物で分割したり売却して現金で分割したりする方法が考えられます。
遺産分割協議は、相続人全員が合意しなければ成立しません。円滑に進めるためには事前に貴金属の価値を把握し、それぞれの希望を整理しておくことが重要です。
相続税の申告や納税を行う
相続税の申告と納税は、相続財産の評価額の合計が基礎控除額を超える場合に必要です。基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 相続人の数」で計算されます。
納税は原則として申告と同時に行います。ただし、延納や物納などの制度も利用可能です。
- 延納…一定の要件を満たす場合に相続税の納付を分割して行うことができる制度
- 物納…相続税を現金ではなく相続財産で納付することができる制度
相続税の詳しい計算方法については後述します。
相続した貴金属の評価額を調べる方法
貴金属の相続税申告を行うためには、まず評価額を調べる必要があります。相続した貴金属の評価額を調べる方法は以下のとおりです。
- 購入店に確認する
- 買取業者や質屋に査定を依頼する
- インターネットで価格をチェックする
購入店に確認する
貴金属を購入した店舗に確認することで、評価額を調べられます。
貴金属の相続税評価額は、相続開始日の時価が基準となります。購入店は貴金属の専門知識を持ち、過去の販売履歴や現在の市場価格などを把握しているため、貴金属の種類や状態に応じた適切な買取価格を提示してくれる可能性が高いです。
ただし、購入店が閉店している、購入から長期間経過している場合は、この方法は利用できません。他の貴金属店などに査定を依頼したり、自分で情報収集して評価額を算出したりする必要があります。
買取業者や質屋に査定を依頼する
相続した貴金属の評価額を把握したい時、質屋や買取業者に査定を依頼するのもおすすめです。貴金属の種類、純度、重量、デザイン、状態などを総合的に評価し、現在の市場価格に基づいた買取価格を提示してくれるでしょう。
また、査定は無料で行ってくれる場合が多いので、気軽に複数の業者に依頼して比較検討することも可能です。
インターネットで価格をチェックする
相続した貴金属の評価額を調べる際、インターネットで価格をチェックするのも一つの手です。鑑定士に依頼したり、店舗に出向いたりする手間を省くことができます。
インターネットで価格をチェックするには、貴金属の種類に応じて適切なサイトで価格を調べることが重要です。例えばブランド品の貴金属であれば、そのブランドの公式サイトで過去の販売価格や現在の買取価格を参考にできます。
また、宝石専門の買取サイトでは、様々な宝石の相場価格や鑑定基準を掲載している場合があります。複数のサイトで価格を比較して平均値を算出することで、より客観的な評価額を導き出すことができるでしょう。
インターネットで価格をチェックする際には、情報の信頼性にも注意が必要です。公式サイトや実績のある買取サイトなど、信頼できる情報源を選びましょう。
貴金属を相続した場合の相続税の計算方法
相続する貴金属の評価額が確認できたら、それを元に相続税の計算を行います。相続税の計算方法は以下のとおりです。
- 貴金属を含む遺産総額を計算する
- 課税遺産総額を計算する
- 相続税の総額の計算する
貴金属を含む遺産総額を計算する
先述のとおり、相続税は被相続人が所有していた全ての財産に対して課される税金です。財産の価額を合計した「課税価格」を基に算出されます。したがって、貴金属を含む遺産総額の計算が必要です。
貴金属以外にも、不動産、預貯金、株式など、被相続人が所有していた全ての財産を時価評価し、その合計額を遺産総額として計算します。評価方法はそれぞれ異なり、不動産であれば固定資産税評価額、預貯金であれば残高、株式であれば1株当たりの株価などです。
正確な遺産総額の計算は、適正な相続税の申告と納税につながります。後々のトラブルを避けるためにも不可欠です。
課税遺産総額を計算する
遺産総額を算出したら、それを元に課税遺産総額を計算します。課税遺産総額を算出するためには、まず基礎控除額の把握が必要です。
基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 相続人の数」で求められます。例えば、相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 3人)です。
最後に遺産総額から基礎控除額を差し引きます。この結果がプラスであれば、それが課税遺産総額となり相続税がかかります。もしも基礎控除額の方が大きければ、相続税は発生しません。
相続税の総額を計算する
相続税の総額を計算するには、まず課税遺産総額を法定相続人の数で分割して各相続人の取得金額を算出します。次に、各相続人の取得金額に対して速算表に基づいて税率を適用し、それぞれの相続税額を算出します。
最後に、各相続人の相続税額を合計することで、相続税の総額が求められます。相続税の速算表は以下のとおりです。
課税遺産総額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超~ | 55% | 7,200万円 |
例えば、課税遺産総額が1億円、法定相続人が2人の場合、各相続人の取得金額は5,000万円となります。速算表に従って計算すると、各相続人の相続税額はそれぞれ800万円です。(5,000万円 × 20% − 200万円)
したがって、相続税の総額は1,600万円となります。
貴金属を相続しても相続税がかからないケース
先述のとおり、遺産総額が起訴控除以下であれば相続税はかかりません。
また、配偶者の税額控除で相続税がかからないケースもあります。これは、配偶者が相続する財産について、一定の条件を満たせば相続税が軽減される制度です。軽減される額は、配偶者の法定相続分または1億6,000万円のいずれか低い金額となります。
例えば、夫が亡くなり妻が貴金属を含む遺産を相続する場合、妻の相続分が1億6千万円以下であれば貴金属の価値に関わらず相続税はかかりません。
貴金属の相続税の申告期限
貴金属の相続税申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。もし、この期限内に申告を行わないとペナルティが発生する可能性があります。
例えば、相続人が2024年5月10日に被相続人の死亡を知った場合、相続税の申告期限は2025年3月10日となります。この期限までに貴金属を含む相続財産の評価を行い、申告書を作成して税務署に提出しましょう。
相続税の申告は複雑な手続きを伴うため、期限内に正確に申告を行うためには早めに準備を進めることが重要です。必要に応じて税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。
貴金属の相続税申告漏れは税務署にバレる
結論から言うと、貴金属も相続税の対象であり、申告漏れは税務署にバレる可能性が高いです。税務署は様々な方法で情報収集を行っており、相続税申告のチェック体制も強化されているためです。
例えば、税務調査の際に、自宅にある貴金属や宝石も調査対象となることがあります。貴金属も相続財産の一部であることを忘れずに適切に申告しましょう。
貴金属の相続税を申告しないリスク
貴金属の相続税を申告しないと、税負担が大きくなる可能性があります。あらかじめ確認しておきましょう。
- 延滞税が発生する
- 過少申告加算税が発生する
- 無申告加算税が発生する
- 重加算税が発生する
延滞税が発生する
相続税の申告期限を過ぎてしまうと延滞税が発生します。期限内に申告・納税をしないと、本来支払うべき税額に加えて延滞税を負担することになるのです。
延滞税の税率は、納付の遅れが2ヶ月以内であれば年7.3%、2ヶ月を超えると年14.6%になります。例えば、3ヶ月遅れて納付した場合の延滞税は以下のとおりです。
2ヶ月以内:100万円 × 7.3% × 2ヶ月/12ヶ月 = 約12,000円
2ヶ月を超えた期間:100万円 × 7.4% × 1ヶ月/12ヶ月 = 約6,200円
合計延滞税: 約12,000円 + 約6,200円 = 約18,200円
過少申告加算税が発生する
貴金属の相続税を過少に申告すると、税務調査で指摘を受けた際に本来納めるべき税額に加えて過少申告加算税を支払う必要が生じます。過少申告加算税は、自主的に申告した場合と税務調査を受けてから申告した場合で異なります。
税務調査を受ける前に自ら申告修正を行った場合は、税率は追加納付税額の5%または10%です。一方、税務調査で指摘されてから申告した場合は、追加納付税額の10%または15%と、より高い税率が適用されます。
無申告加算税が発生する
貴金属の相続税申告を怠ると、本来納めるべき税額に加えて、無申告加算税を支払うことになります。加算税の税率は、税務調査との関係や申告のタイミングによって異なります。
まず、自主的に申告した場合には税率は最も低く、相続税額の5%です。税務調査の事前通知を受ける前に申告すれば低い税率が適用されます。
次に低い税率は、税務調査の事前通知を受けた後、調査の開始前に申告した場合です。相続税額の10%または15%が加算されます。
税務調査で指摘された後に申告した場合には最も高い税率が適用され、相続税額の15%または20%が加算税となります。
重加算税が発生する
重加算税は、単なる申告漏れや過少申告だけでなく、悪質な脱税行為があったとみなされた場合に課せられます。本来の相続税に加えて、最大で40%もの加算税が課せられる可能性があります。
貴金属を相続する場合は相続税の確認をしよう
本記事では、貴金属の相続について解説しました。
貴金属を相続する際は、基本的に相続税を支払う必要があります。申告漏れがあると加算税のペナルティを受けることになるため、必ず申告を行いましょう。
相続税の申告を行うためには、まず貴金属の評価額を調べなければいけません。専門家に査定してもらったり、インターネットの情報を元に確認したりなどの方法で、評価額を把握しましょう。その後、他の遺産相続と合計して申告を行います。
ただ、相続税の申告には、必要書類の用意や手続きなど専門知識が必要です。もし自分一人で終えられるか不安な場合は、税理士に依頼するのがおすすめです。
とはいえ、税理士に依頼するとなると費用がかかります。相続税も含めると大きな負担となってしまうでしょう。
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