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遺留分ってなに?計算方法を相続人のパターン別で解説!!

最終更新日: 2022年12月17日

遺言によって子供のうち一人に全財産を渡すことはできるのでしょうか。また、配偶者や子供の相続を無しにすることはできるのでしょうか。これらのことを考えるには遺留分という考え方を知る必要があります。法律で認められている、近親者が必ず得ることができる相続財産の割合である遺留分につき、計算方法と合わせて解説します。

遺留分とは?法律で認められた相続の権利

遺留分としてどれだけの財産が自分に最低限保証されるかの計算をする前に、まずは遺留分とは何かについて解説します。遺留分が認められる人は法律で決まっています。遺留分があっても遺留分減殺請求の手続きをしなければ、いったん他の人に相続された相続財産を取り戻すことはできません。

遺留分とは?

遺留分とは、亡くなった方の兄弟姉妹以外の法定相続人が遺言の内容にかかわらず受け取れる、最低限の相続の割合です。民法にて、遺言を作成することで、遺産分割の割合を自身で自由に決めることができることが規定されておりますが、民法の但し書きにて、遺留分については遺言があっても兄弟姉妹以外の法定相続人は財産を得る権利を有することが明記されております。これは、被相続人本人の財産は自身の意思で分割方法を自由に決められると言っても、財産を持つ過程で家族(=遺留分対象者)の協力が必須であったものも多く、また被相続人の財産は遺留分対象者の今後の生活の基盤となるものも含まれるはず、との考え方から定められたものです。

遺留分が認められる人

遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人です。つまり、亡くなった方の配偶者・子・親に遺留分が認められることになります。また、遺留分は代襲相続が認められます。たとえば、亡くなった方に子がいても、亡くなった方よりその子の方が先に亡くなっている場合、その亡くなった子の子、つまり孫にあたる人に遺留分が引き継がれます。亡くなった方の兄弟姉妹は遺留分が認められないので、遺留分の代襲相続も認められず、甥や姪にも遺留分がありません。

遺言で遺留分よりも少ない財産を割り当てられた場合

遺言で財産の割り当てが明記されており、自分が遺留分を下回る金額のみ相続することとなった場合にはどうなるのでしょうか。遺留分の財産を受け取る権利は民法に明記されているので、相続人は権利を主張することで遺留分を受け取ることができます。しかし、これはあくまで権利であり、行使するか否かは当人の自由意志に任されます。初期の家族会議で遺留分を主張し円満に合意できればまったく問題ありません。一方、遺言や遺産分割協議でいったん別の人に相続がされた場合は、後からでも遺留分を請求することは可能ですが、「遺留分減殺請求」という手続きをしなければ、別の人が相続したままとなります。

遺留分減殺請求をする方法

「遺留分減殺請求」の手続きは難しいものではありません。訴訟による請求も可能ですが、当事者の話し合いもしくは裁判所での調停で合意するケースが大半です。それらで合意できなかった場合初めて訴訟となります。

請求は遺留分を請求する権利を持つ人が遺留分を侵害した人に対して、遺留分減殺請求をする旨の意思表示をすることから始まります。意思表示は、口頭・電話・書面等で可能ですが、調停・訴訟を見据えて行う場合は内容証明郵便で意思表示を行い、遺留分減殺請求をしたという証拠を残す方法をとることも可能です。意思表示のみで遺留分の返還がされない場合は、話し合い⇒調停⇒訴訟と進むことになります。

遺留分減殺請求には時効がある

遺留分減殺請求は、被相続人が亡くなり遺留分侵害にあたる遺贈や贈与があったことを知った日から1年間でなくなります。また、被相続人の死亡を知らなかった、或いは遺留分侵害を知らなかった場合でも被相続人が亡くなり相続が開始したときから10年間が過ぎた場合に時効が成立します。

遺留分の割合の計算方法

遺留分 計算
遺留分の計算方法とは(画像提供:takasu/Shutterstock.com)

ある人の具体的な遺留分の割合は、「相続財産の総遺留分の割合×ある人の法定相続分の割合」になります。少々わかりにくい式ですが、総遺留分の割合と法定相続分の割合の違いを説明し、相続人として誰がいるのかのパターン別に具体的な計算方法をご紹介します。

総遺留分の割合とは?法定相続分の計算との違いは?

総遺留分の割合とは、相続財産全体のうち、遺留分として対象者に分配される総量のことで、遺留分の対象者の構成によって以下表の通り規定されております。例えば相続財産全体が100あり、遺留分の対象者が配偶者と子一人であれば、遺留分の総額は相続財産全体の1/2なので50が遺留分の総額となる、というように規定されております。
法定相続分の割合とは、法律で定められた「法定相続人はどのように相続財産を分けるか」について推奨されている割合で、法定相続人のパターンごとにすべて規定されております。必ずその割合で相続しなければならないわけではなく、話合いで合意できなかった時に分配する目安の割合が決められているだけなので、遺言書や話合いでの合意で自由に相続分を変更できます。
相続人  総遺留分の割合 各相続人の財産全体に占める遺留分割合

遺留分割合一覧表
各相続人の財産全体に占める遺留分割合

遺留分の計算は相続財産総額にこの二つの割合を掛け合わせることで算出されます。
具体的に遺留分の計算をするにあたり、相続財産が3,000万円を例に、代表的なパターンをご紹介します。総遺留分の割合、法定相続分の割合ともにパターン別に法律で規定されているので、割合は明確に決定されます。

配偶者のみしかいない場合の遺留分

配偶者のみしかいない場合は、相続財産に占める総遺留分の割合は1/2です。そして法定相続分の割合は法定相続人が1人なので1/1です。したがって、3,000万円の相続財産がある場合は、3,000万円×1/2(総遺留分の割合)×1/1(法定相続分の割合)=1,500万円の遺留分が認められることになります。

子二人のみしかいない場合の遺留分

相続人が子のみで、子が2人いるケースの遺留分を考えてみます。親・配偶者がおらず子のみしかいない場合は、相続財産に占める総遺留分の割合は1/2です。子が2人の場合は法定相続人が2人おり均等に分けるので、法定相続の割合は1/2となります。したがって、3,000万円×1/2(総遺留分の割合)×1/2(法定相続分の割合)=750万円の遺留分が認められることになります。

配偶者と子がいる場合の遺留分

相続人に配偶者と子が2人いる場合の遺留分を考えてみます。この場合、規定の通り、総遺留分の割合は1/2となります。法定相続分の割合は配偶者が1/2、二人の子供は1/4ずつとなります。したがって、配偶者は3,000万円×1/2(総遺留分の割合)×1/2(法定相続分の割合)=750万円、子はそれぞれ3,000万円×1/2(総遺留分の割合)×1/4(法定相続分の割合)=375万円の遺留分が認められます。

配偶者・親・子がいる場合の遺留分

相続人に配偶者・親・子2人がいる場合の遺留分を考えてみます。相続には順位があり、配偶者は常に法定相続人ですが、子は第1順位、親は第2順位と規定されており、第1順位の相続人がいる際は第2順位の相続人への法定相続分の割合は0となります。したがって、配偶者と子がいる場合の遺留分と同じとなり、配偶者は750万円、子はそれぞれ375万円の遺留分が認められます。

兄弟姉妹の遺留分

相続人に兄弟のみがいる場合を考えてみます。兄弟は相続の順位が第3順位なので、親や子がいない場合は法定相続人となることができます。しかし、遺留分は認められないので、遺留分は0です。したがって、他の人に全ての相続財産を相続させるという遺言があったら、兄弟姉妹は何も相続しないということになります。

遺留分総額・基礎財産の計算方法

実際の遺留分の計算は、遺留分の基礎財産に前項で説明した割合をかけて計算することになります。遺留分の基礎財産がどれだけになるかによって、実際に遺留分として請求できる金額が変わってくるので、遺留分について考えるときには、遺留分の基礎財産をしっかりと確認する必要があります。相続財産の内容によっては、遺留分の基礎財産の計算が複雑になるので注意しなければなりません。

遺留分の「基礎となる財産」とは?

遺留分の計算をするときの基礎となる財産は、相続税計算の財産総額とは異なる計算にて算出します。現預金、金融資産、土地などの不動産といったプラスの財産のほかに、マイナスの財産である借金(負債)も含みます。また、1年以内に生前贈与があった場合は、相続財産となるべきものが生前に贈与されていると考え、基礎となる財産に含めます。1年以上前の贈与であっても、遺留分として相続される分を少なくするために贈与を行った場合のように、亡くなった被相続人と贈与を受けた人の両方が、相続人の遺留分を侵害することを知りながら贈与を行った場合には、その贈与財産も含まれます。

相続財産に土地などの不動産があった場合の遺留分

遺留分の計算をするときに、相続財産に土地などの不動産がある場合には、その評価が問題となります。遺留分の計算をする場合の不動産の評価方法は、相続税の計算のときに行う路線価による評価と異なり、時価による評価を行います。路線価による評価を行うと不動産の評価が低くなることが多いので、遺留分権者にとって不利益になるからです。

遺留分に注意!事前の準備でもめない相続を

遺留分 相談 税理士
遺留分に関する相談は税理士に!(画像提供:Tom Wang/Shutterstock.com)

遺留分を含めた相続でのトラブルの多くは、事前の準備で発生する確率を下げることができます。相続トラブルの予防策として遺言書の作成があげられますが、その遺言書も遺留分に留意したものになっていなければ、トラブルのもとになります。仲の良かった親族が相続で不仲になるような事態を避けるには、相続専門の税理士への依頼が最適です。

遺留分でのトラブルをなくすための方法

遺留分でのトラブルを避けるためには、遺留分に留意した遺言書を作成することが大切となります。遺留分に留意し、遺留分以外の相続財産を遺言作成者が自由に分けるのであれば、後からトラブルになることはありません。ただし、遺留分の計算は複雑ですので専門家である税理士に依頼するほうが安心できます。遺言書を作成や生前に相続対策を考えるときには、早い段階での税理士への依頼がおすすめです。

相続対策は税理士におまかせ

遺言書作成などの事前の相続対策だけでなく、相続発生後も専門家が介入することでトラブルが少なくなります。税理士は税金の専門家なので相続税申告を任せることができますし、トラブルの多い遺産分割協議も専門家の介入でスムーズにいくことがあります。しかし税理士全員が、遺留分の計算や相続手続きに得意なわけではありません。相続対策を税理士に依頼するときには、相続の専門知識が豊富で経験のある税理士を選ぶ必要があります。

相続に強い税理士を探すのに便利なサイトとして「ミツモア」があります。ミツモアに登録している税理士は、ご依頼の方の利益を考えて誠心誠意、相続対策をしてくれます。相続対策は誰に相続させるかといったデリケートな問題を扱うので、信頼できる税理士に依頼したいものです。ミツモアでは税理士を選ぶときに、口コミでその税理士の評判が分かるのも、安心して利用できる理由の1つです。