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土地を生前贈与するメリットとは!相続までの綿密な計画が必要【税理士監修】

最終更新日: 2018年11月22日

所有する土地を特定の人に譲ろうとするなら、生前贈与が最も確実な方法です。しかし、そこで問題になるのが贈与税です。贈与税は相続税に比べて税率が高いという理由だけで、生前贈与をためらう人は大勢います。とくに土地を生前贈与する場合は、いろいろな角度から検討しなければ、支払う税金が増えてしまいかねません。節税をするにはどうすればいいのか、具体例をあげながら分かりやすく説明していきます。

土地の生前贈与
土地を計画的に生前贈与する方法とは

土地の贈与・相続にかかわる税金

土地の生前贈与は、自分の思いどおりに土地の権利を移動できるというメリットがあります。しかし贈与税は相続税に比べて税率が高いことから、綿密に方策を練らないと、とんでもなく高額の税金を納めることにもなりかねません。節税を考えるうえで、まずは贈与税と相続税の概略からみていきましょう。

贈与と相続の違い

土地の権利は売買によって移動するのが一般的ですが、無償で権利が移動することもあります。それが「贈与」と「相続」によるケースです。前所有者が生前に権利を移動させたものが「贈与」であり、死後に移動させたものであれば「相続」になります。

贈与と相続は、土地を無償で得られますが、新しく所有者になった人には、それぞれに贈与税と相続税が課せられます。

贈与税と相続税

贈与税と相続税の税率を比較してみましょう。まず贈与税には、2つの区分があります。「特例贈与財産」と「一般贈与財産」です。「特例贈与財産」は、直系尊属(祖父母・父母)から20歳以上の子か孫への贈与に適用されます。「一般贈与財産」は、特例贈与財産の条件を満たさない贈与、つまり親族間で言うと、兄弟間、夫婦間、親から未成年の子に対しての贈与等に適用されます。ここでは、相続税と構図が近い「特例贈与財産」で比較してみましょう。

贈与税(特例贈与財産用)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
  200万円以下 10%
  400万円以下 15%  10万円
  600万円以下 20%  30万円
1000万円以下 30%  90万円
1500万円以下 40% 190万円
3000万円以下 45% 265万円
4500万円以下 50% 415万円
4500万円超 55% 640万円

相続税

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10%
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

それぞれの税金は基礎控除がありますが、まず単純に税率だけで比較してみましょう。たとえば5000万円で比較すると次のようになります。

  • 贈与税 (5000万円-640万円)×55%=2398万円
  • 相続税 (5000万円-200万円)×20%=  960万円

このことから、贈与税の税率がずいぶんと高いことが分かります。それでは、1000万円で比較したらどうなるでしょうか。

  • 贈与税 (1000万円-90万円)×30%=273万円
  • 相続税 1000万円×30%=300万円

一見贈与税の安く見えますが、実は相続税で課せられる1000万円は、基礎控除額を除いた金額なのです。相続税の基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人数ですから、法定相続人が1人だとしても基礎控除は3600万円になります。つまり、ここでいう1000万円とは、少なくとも4600万の相続財産に課せられたものなのです。

一方贈与税の基礎控除は、110万円ですから、これは110万円+1000万円=1110万円の数式から、1110万円の贈与に課せられた税金ということになります。つまり、上の比較は贈与税が1110万円を得た場合、相続税が4600万円を得た場合の税額ですから、ここからも贈与税の税率が相続税と比べて、ずいぶんと高率だという分かります。

土地の贈与に関しても同様で、価値評価をした上で課税対象とするので、特例などの制度を使わずに生前贈与をすると、相当に高額の税金を納めることになります。

贈与税と相続税にはどんな特例がある?

贈与税が相続税と比べて高い税率であることは分かりました。このため土地を生前贈与するには、特例などの制度をできる限り有効に活用した方がいいといえます。それでは贈与税にはどのような特例があるのか、相続税の特例と合わせてみていきましょう。

おしどり贈与

婚姻期間が20年以上の夫婦間においては、自宅の土地を贈与しても2000万円以下であれば贈与税は課せられません。これにより、たとえば夫名義の自宅を妻名義にするなどの贈与が非課税で可能になります。この特例が夫婦間における贈与の制度であることから、通称「おしどり贈与」と呼ばれています。

ただし、これは無条件で適用されるのではなく、贈与を行った翌年にきちんと確定申告をしないと適用されません。

また、おしどり贈与は、自分が住んでいる土地の贈与が対象ですから、所有している田畑山林などの贈与は、たとえ20年以上婚姻期間がある夫婦間でも通常の贈与税が課せられます。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、生前に贈与された額が2500万円以下であれば、本来納めるべき贈与税を先送りして、被相続人の死後に相続税として納めることができる制度です。あくまで課税の先送りに過ぎないので、相続時に忘れずに納付しなくてはいけません。またこの制度を適用すると、1年に110万円までの贈与が非課税になる暦年贈与が適用されなくなりますから、どちらを選択するか十分に検討しましょう。

またこの制度は孫にも適用されます。ただし代襲相続人でない孫は、相続税納付の際に20%加算されるので注意が必要です。

小規模宅地の特例

小規模宅地の特例は、相続税に適用される特例です。一定条件を満たす土地であれば、相続時に土地の評価を下げることができます。対象となる宅地は、居住用、事業用、貸付用の3種類です。

居住用だと、330平方メートルまでの敷地で評価額を80%下げることができます。これにより、本来課税対象となっていた相続財産が基礎控除内に収まる可能性もでてきます。

ただし、これは配偶者や同居していた親族に適用されるものです。同居していなかった親族は次の条件を満たす必要があります。

  • 被相続人に配偶者がいないこと
  • 被相続人と同居していた相続人がいないこと
  • 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族またはその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことのないもの
  • 相続開始から相続申告期限まで、引き続きその家屋を所有すること

「登録免許税」と「不動産取得税」

土地の所有名義を変更した際には、法務局に所有権の移転登記をします。その際にかかるのが、登録免許税です。登録免許税は、贈与と相続で税額が異なります。

  • 相続に伴う登録免許税  固定資産税評価額×0.4%
  • 贈与に伴う登録免許税  固定資産税評価額×2% (土地は2019年3月31日までに登記したものは1.5%)

また同時期に不動産取得税が課せられます。不動産取得税は、贈与で不動産を得た場合は「固定資産税評価額の2分の1の価額」の3%が課せられますが、相続で不動産を得た場合は、まったく課せられません。つまり所有者が生きているときに取得すれば課せられる税金なのです。

ここで注意が必要なのは、相続時精算課税制度で土地を得た場合です。相続税を納めるので相続と同じで非課税になると考えがちですが、所有者が生きているときに取得した土地なので、不動産取得税が課せられるのです。

生前贈与は状況次第?具体例を見ていこう!

土地の生前贈与を適切に行おうとすれば、状況によって判断が異なってきます。状況によっては、生前贈与をしない方がいいケースもあります。はたしてどんなふうに判断すればいいのか、各ケースごとにみていきましょう。

まずは何より状況確認

相続税は法定相続人の数によって基礎控除が異なってきますから、法定相続人の人数を確認しておくことが基本です。被相続人に子どもがいない場合には、親あるいは兄弟が相続人になることもあります。複雑なケースでは予め戸籍を確認して相続関係を把握しておくことが重要です。

また土地を所有しているケースでは、土地の評価額によって適切な節税方法が異なってきます。予め路線価などで土地価格の概要を把握しておきましょう。

例1)遺産額が相続税の基礎控除以下のケース

土地や資産をどう見積もっても相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)を超えないケースであれば、相続税が発生しないので、生前贈与を行わずにすべて相続にするのが最も経済的です。

もし特定の人に法定相続分を超えて土地を贈与したいのであれば、相続時精算課税制度を活用するのが最善でしょう。贈与した時点で取得者に対して登録免許税と不動産取得税がかかりますが、確実に目的の人に土地を贈与することができます。

例2)同居家族への自宅の譲渡を含むケース

同居家族が相続人の場合は、小規模宅地の特例を使える可能性が非常に高くなります。330平方メートルまでの敷地で評価額を80%下げることができまるのですから、これを活用しない手はありません。おしどり贈与や相続時精算課税制度では、贈与時に不動産取得税と登録免許税が発生しますから、小規模宅地の特例を活用した方が、より経済的だといえます。

例3)収入を生む不動産を譲渡するケース

アパートなどの収益を生む不動産は、相続した場合「小規模宅地等の特例」により200平方メートルまでの部分の評価が50%になるため、相続税の負担が軽減します。

一方贈与する場合を考えてみましょう。土地は路線価で評価されるため、市場価格の約80%の評価になります。建物は固定資産税評価額になるので、市場価格の約50%となります。このことから、現金で直接贈与するよりも、アパートを贈与した方が節税になることが分かります。

しかし、高額の額の税を納めることには変わりありません。このためアパートのような物件の場合、建物だけを贈与するケースがよく見られます。アパートのような貸物件の場合、利用形態の自由度が下がることからさらに評価が30%下げられます。つまり、建物を5000万円で建てたとすると、贈与財産の評価額は次のようになります。

5000万円×50%×(1-30%)=1750万円

5000万円の建物の贈与税の評価が1750万円になりますから、相当の節税になるといえます。もちろん相続時精算課税制度を使うことも可能です。その場合は、相続税の課税になりますから、さらに節税効果があります。しかも、いずれの場合においても、アパートを贈与された時点から家賃収入が発生しますから、収入面でのメリットが大きいのです。この家賃収入が親のままだと、いずれは相続財産に加えられることになりますから、建物を生前贈与することは、二重の意味の節税といえます。

もちろん登録免許税と不動産取得税を納付する必要があるので、これらの収支を考えたうえでの総合的な判断が必要です。

例4)地価が上昇することが見込まれているケース

未来の地価予測は誰しも正確にはできません。しかし都市の変貌を読み込んでいくと、ローカルエリアであれば予測がある程度見込めることもあります。たとえば、ニュータウン開発の予定がある土地、市街化調整区域から市街化区域への編入が見込まれる土地、都市計画道路の施行見込みがあり前面が幹線道路になる土地、新駅予定地に隣接する土地などです。これらは、タイミングにもよりますが、劇的に土地の評価が高騰する可能性があります。

相続税や贈与税は、相続や贈与が行われた時点での土地評価で税額が決まります。相続時精算課税制度においても、土地の評価は贈与を受けた時点のものを採用します。このため、現時点よりも相続時の方が明らかに土地の価格が高いことが予測される場合は、たとえ税率が高くても、生前贈与をしていた方が結果的に節税になるということもあり得るのです。

生前贈与の節税以外のメリット

生前贈与を選択する場合、その目的は必ずしも節税とは限りません。生前贈与は、節税以外にどのようなメリットがあるのでしょうか。

譲渡先を選べる

自分が生存している間に、自分の意志で譲渡する人を選べるのですから、これほど確実なことはありません。法定相続分以上に相続したいと思う人がいるのであれば、生前に譲渡するのが最善の選択です。

短期間で譲渡が可能

相続による土地の譲渡の場合、遺産分割協議を経て土地の所有権移転登記をします。しかし遺産分割協議は必ずしも円滑に進むとは限りません。さらには相続人が遠方に住んでいれば協議の開催が困難になります。こうした理由から、所有権を移転しようにも、なかなか事が運ばないのが相続のデメリットなのです。

生前贈与であれば、所有者の意思で所有権移転の手続が進められますから、相続人が早期に土地を利用したい場合には、大きなメリットだといえます。

相続人と確実な合意ができる

なんとか自分の願いどおりの土地利用をしてほしてと切望する場合は、譲渡される側と契約を交わすなどで意思を伝えることができます。相続人と確実な合意ができる点も生前贈与のメリットだといえます。

贈与の手続

それでは実際に土地を生前贈与をする場合、具体的にどのような手続をすればいいのでしょうか。順にみていきましょう。

贈与 手続き
贈与の手続きとは

贈与契約書の作成

土地の贈与は、不動産登記の名義変更を行って初めて成立します。登記名義の変更に際しては、変更の理由を明確にする必要があります。この贈与契約書を申請書に添付することで名義変更手続がスムーズに処理されます。

契約書の形式は定まったものはありませんが、契約書に記入する土地の地番は、登記上の地番を記入する必要があります。住民票や郵便配達に用いられる町名地番とはまったく異なっている場合がありますから、契約書作成前には必ず不動産登記簿を確認しましょう。

所有権移転登記

不動産登記の名義変更は法務局に所有権移転登記申請をします。登録免許税は、この際に収入印紙を申請書に張り付ける形で納付します。申請は多少複雑ですが、必要書類をそろえられたら本人申請も可能です。どうしても困難な場合は、司法書士に依頼すると手続代理をしてもらえます。

贈与税申告

贈与税申告は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日の間に行う必要があります。納税も同時期に現金で一括で納めなければなりません。どうしても一括が無理な場合は、分割で納税する延納制度があります。延納制度を活用する場合は、同時期に申請書を提出して許可を得る必要があります。

贈与にかかる費用

法務局に所有権の移転登記をする際に、登録免許税がかかります、登録免許税は固定資産税評価額の2%です。ただし土地については、2019年3月31日までに登記したもの)であれば、固定資産税評価額の1.5%になります。

また不動産取得税が「固定資産税評価額の2分の1の価額」の3%課せられます。

土地の所有権移転登記を司法書士に依頼した場合は、別途報酬が必要になります。

生前贈与は綿密な試算をもとにやろう

相続税や贈与税は複雑な税体系になっているために、いざ節税をしようとしても、なかなか一筋縄ではいきません。また財産が絡む話なので、ほんの僅かなボタンの掛け違いが、親族間の大きなトラブルに発展することもあります。土地の贈与や相続をスムーズに進めるためには、どうすればいいのでしょうか。

節税の道は険しい

ここまで贈与税や相続税に様々な特例があることを説明してきましたが、実際に経済性よく進めようとすれば、さまざまな困難に直面することになります。長期間にわたる展望があると、結果として大きな節税につながることもあります。生前贈与を検討されているのであれば、できるだけ早い段階で専門の税理士に相談することが節税への近道になります。

気持ちの話も同時に解決

しかし贈与や相続にかかる問題の中には税理士では解決できないものがあります。それは財産分与の問題です。誰にどれだけ相続するのか、あるいは贈与するのかは、被相続者しか決めることはできません。相続人の間にわだかまりが残ることがないよう。十分に相続人の理解を得る努力を惜しまないことが大切です。

相続税・贈与税専門の税理士を

相続税や贈与税は、他の税金と比べて税務調査の対象となる確率が高いとされています。税務調査というのは、申告後に財務内容の漏れや誤りを確認するために、税務署職員が故人の住んでいた家や申告者の自宅を訪ねてくる調査です。自己申告をしていた場合には、税務調査への対応は申告者自らが行う必要があります。

しかも実際の相続額よりも過少に申告していた場合は、10%~15%の過少申告加算税が課せられます。さらに、財産を隠蔽または仮装していたときは、35%~40%の重加算税が課せられるのです。国税庁の平成28年の調査報告によると、相続税の申告漏れによる課税価格は。一人当たり2,720万円、追徴課税は591万円とされています。

税理士に依頼すれば報酬が必要になりますが、本人申告をして追徴課税になるリスクや本来納付の必要がなかった税金まで納付してしまうミスをする事態を考えると、最初から税理士に依頼していた方が、結局安価で済んだということもあり得るのです。このことからも、土地が絡んだ贈与税や相続税に関しては専門の税理士に依頼するメリットは大きいと言えるでしょう。

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