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カンパニー制とは?事業部制との違いやメリット、導入のポイントを解説

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最終更新日: 2022年11月01日

カンパニー制は社内事業を独立運営する組織形態です。各組織に経営責任が生まれて意思決定が速まるなどのメリットを期待できる反面、組織間の連携が不足するなどのデメリットもあるため導入には慎重な検討が必要です。

「カンパニー制ってどのような組織制度なの?」という疑問を持つあなたのために、カンパニー制度の特徴や導入のポイント、企業事例についてわかりやすく解説します。

カンパニー制とは

高層ビルを見上げる

会社がある程度の規模になってくると、意思決定のスピード感や柔軟性に陰りが見えてくるケースがあります。組織の機能を向上させるための手段として、しばしば導入を検討される組織形態が「カンパニー制」です。

事業を分社化して独立させる組織形態

カンパニー制の組織図
カンパニー制の組織図

カンパニー制とは社内の各事業部が個別の会社であるかのように、独立した運営を行う組織形態のことです。

導入によって独立した事業部は、人事や予算・投資・費用計上の権限を持ちます。執行役員も配置されますが、あくまで法律上は同一法人の扱いです。

カンパニー制では資本だけでなく負債の分配も行われ、事業部の抱えた損失を本体の会社が埋めることはありません。

導入のインパクトは大きく、事業の自立性や創造性・意思決定のスピード向上が期待されます。

日本ではソニーやトヨタ自動車などが導入

ソニーは1994年、日本ではじめてカンパニー制を導入しました。創業以来初の営業赤字を受けて、過度に細分化されて効率と組織力が弱まった大企業的体質を打破するための打ち手だったと考えられます。

他にも2013年にはトヨタ自動車が、製品軸ごとのカンパニーを設置するビジネスユニット制を導入した例が有名です。以来よりよい製品づくりの推進や、人材育成の取り組みを行ってきました。

2016年には楽天が社内カンパニー制を導入しています。迅速なサービス開発と提供を実現する体制づくりのために、当時60以上あったビジネスユニットを13のカンパニーに集約しています。

カンパニー制と他制度との違い

オフィス

カンパニー制のほかにも事業を独立させて会社を運営する制度には「事業部制」「持株会社制」などがあります。それぞれで組織形態や各部門の持つ裁量が異なります。

事業部制との違いは各部門の裁量

事業部制とカンパニー制の違い
組織図の比較

「事業部制」も事業ごとに分かれた組織を本社部門の下に配置するため、カンパニー制と比較される組織形態です。各事業部で意思決定のスピードが向上するなどのメリットに共通点はあるものの、各部門の持つ裁量の大きさに違いがあります。

事業部制において各部門に任せる活動は、あくまでひとつの事業に関するものでしかありません。生産や開発・営業活動についての裁量はあっても、経営戦略や新規事業に対する投資活動・人事に関する判断は本社が保有したままです。

持株会社制とは組織形態が異なる

カンパニー制とよく比較される運営形態が「持株会社制 (ホールディング制)」です。カンパニー制とは組織形態が異なります。持株会社制は独立したいくつかの会社が、経済活動を行わない「持株会社」を上におき本部とする組織形態です。

持株会社は子会社の株式を持っている点が特徴で、持株会社は子会社に対して経営上の決定権を持っています。持株会社はM&Aや事業の売却・子会社への権限移譲などができ、いわば子会社のブレーン的な役割を担っているのです。

カンパニー制のメリット

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カンパニー制には次の4つのメリットがあります。

  • 各組織における責任の明確化
  • 事業活動の活性化
  • 市場環境の変化に素早く対応可能
  • 優れた次世代リーダーの育成

責任の明確化や事業活動の活性化などの効果を通じて、組織力の強化や利益の増大といった効果も期待できます。

各組織における責任の明確化

カンパニー制を導入すると各組織は予算の配分や投資対象、人事など組織運営の大きな権限を持つようになります。

各組織が独立した会社としての扱いを受けるため、事業が好調であれ不調であれ、責任を経営者やバックオフィスに押し付けることはできなくなるのです。

また事業を横断して責任者が兼任するケースや、ひとつの仕事に複数の責任者が付く機会が少なくなります。責任者個人レベルでも、組織への貢献度を測りやすくなるでしょう。

事業活動の活性化

カンパニー制は各組織が独立した運営を行っています。それぞれの組織に属する社員が業績や収益率・負債など経営に対する意識を高め、事業活動が活性化されるのが導入のメリットです。

各組織と責任者の貢献度にも注目が集まるため、互いの組織が競争意識を持ち、よい刺激を与えあって高め合うという利点もあります。一組織としての柔軟性や判断力・実行スピードも高まるでしょう。

市場環境の変化に素早く対応可能

カンパニー制を導入すると、市場環境の変化にスピーディーに対応できるようになるという点も大きなメリットといえます。

組織は大きくなるほど意思決定を行うまでの過程が複雑になりがちです。ひとつの判断のために、さまざまな部署や役職を通して手続きを踏まなければなりません。時には社内政治や派閥に阻まれて、思うような意思決定ができないケースもあるでしょう。

しかしひとつの組織単位が小さくなれば、意思決定を行う機関と現場の距離が近くなります。実行に移すまでの時間が短縮された結果、市場環境の変化に素早く対応した事業運営が実現されて有利に活動できるのです。

もしひとつの事業が市場競争で敗れて撤退することになっても、カンパニーごとに収益を管理するカンパニー制であれば、会社全体に及ぶダメージは小さく済みます。

優れた次世代リーダーの育成

次世代リーダーの育成を促進できるという点も、カンパニー制のメリットです。カンパニー制では事業ごとに経営に関する大きな裁量が与えられており、事業責任者は経営者としてのスキルや責任感を身に付けられます。

各事業部は完全に独立した会社ではないものの、事業経営者は会社経営の疑似体験ができるため、次世代のリーダー候補にふさわしい人材に成長するでしょう。

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カンパニー制のデメリット

ミーティング

カンパニー制には多くのメリットがある一方で、事業間で連携が取りづらくなったり、経費コストが増えたりするデメリットも存在します。

カンパニー制の課題を解決できずに失敗してしまい、元の組織形態に戻した企業も少なくありません。失敗を防ぐためには、これらのデメリットも把握しておく必要があるといえます。

カンパニー同士の連携不足

カンパニー制は各組織内で経営が完結してしまうため、カンパニー同士のつながりが薄くなって連携しにくい環境を作り出すおそれがあります。

場合によってはカンパニー同士で業績をめぐって競争が生じ、人事交流や情報交換・技術提供が行われなくなる可能性も否定できません。

各事業間の連携によって生まれていた斬新なアイデアやシナジー効果が失われれば、会社全体の競争力低下につながるでしょう。事業単位の競争力を高める目的で導入された制度であるにもかかわらず、結果的に裏目に出てしまいます。

部門の重複によるコストの肥大化

カンパニー制を導入すると、本社が一括で管理していた機能をそれぞれの組織が持つ必要が出てきます。人事部や総務部・経理部といったバックオフィスで重複する部門が出てくるため、コストが肥大化するのは難点です。

部門を新設して人員配置する必要も出てくれば人件費も膨らみ、管理システムの導入などの環境整備がプラスされるとかなりの費用がかかるでしょう。間接部門をアウトソーシングするカンパニーもありますが、いずれにしてもコスト増は避けられません。

不正や隠ぺいリスクの増加

カンパニー制には不正や隠ぺいのリスクも伴います。事業部制などでは本社からの監視機能がはたらきますが、カンパニー制ではそれぞれの組織に意思決定権が与えられるため、本社の目が行き届きません。

いわゆるコーポレートガバナンス(企業統治)が機能しづらい状況となってしまい、本社にとって不都合なことは各組織で秘密裏に隠ぺいされるケースが出てくるのです。

たとえば重電メーカーの東芝では、2015年に複数の事業部をまたいで数千億円規模の不正会計が行われていたことが発覚しました。この不正会計の一因となったのが1999年より導入していた社内カンパニー制だとされており、東芝の監査部が機能していなかったことが第三者委員会の調査によって明らかになっています。

このような失敗を防ぐためにも社外取締役や監査役を配置するなどして、監視体制を構築することが大切です。

カンパニー制を導入する際のポイント

こぶしを合わせる4人

メリット・デメリットの両面を理解したうえでカンパニー制を導入するなら、組織がカンパニー制を受け入れられるような環境の整備が必要です。社員に対するケアや制度面など、カンパニー制導入のポイントになる点を解説します。

社員が納得できる評価基準を作る

カンパニー制を導入する際には、社員全員が納得できる評価基準を作って全社に浸透させましょう。

カンパニー制では各事業が独立するため、事業内容によって評価内容に大きな差が出る場合があります。人事部もそれぞれのカンパニーに新設され、人事権を持つ人物が従来と変わるため、評価基準がカンパニーによって変わってくる可能性が高いためです。

同じ業務を任されていても、所属しているカンパニーによって評価が大きく異なるようでは、社員には不満が蓄積しモチベーション低下につながります。

各組織で適切に人事評価ができるように、管理体制を整備しましょう。どうしても事業内容によって差が出る部分については、公正さが出るように評価基準を見直し、社員の理解を得られるように工夫する取り組みが重要です。

監視体制を強化して不正を防止

各組織が独立して重要な権限を付与されるため、カンパニー制を導入するなら企業本体で監視体制を強化して、不正防止に努めなければなりません。

カンパニー制は成果主義に傾きがちな組織体制です。また貸借対照表や損益計算書・キャッシュフロー計算書も企業本体とは独立して作成されるため、粉飾決算などの不正が起こりやすい環境になります。

本部でのチェックがしにくくなる分、会計監査人に監視を頼む・社外取締役や監査役を配置するといった工夫が必要です。第三者の目が行き届くような体制を作って、各組織の透明性を保持しましょう。

カンパニー間の交流は大切に

カンパニー制の導入により独立した組織同士の交流は、以前よりも希薄になってしまうでしょう。導入後は社員同士がカンパニーの垣根を超えて、コミュニケーションをとる機会を意識的に設けるのがポイントです。

定期的な情報交換の場や親睦を深める機会を持てば、導入前のように連携や新しいアイデアの創出・シナジー効果が生み出される環境を保ち続けられます。

社員にはカンパニー間の交流が企業全体のメリットになると周知して、制度導入によって必要な取り組みへの理解を得ましょう。

カンパニー制の企業事例

オフィス街に並び立つビルの風景

ソニーやトヨタ自動車、パナソニックなど、カンパニー制を導入してきた企業事例を紹介します。カンパニー制の導入により根本的な改革に成功した企業もいる一方で、失敗に終わって組織形態を再編したケースもあります。

ソニー

ソニーは1994年に日本で先駆けてカンパニー制を採用しましたが、2005年には同制度を廃止しました。

導入当初は93年から97年にかけて負債が25%減少し、利益も153億円から2,020億円まで13倍の成長を実現しましたが、その後はカンパニー間での連携が取れず、短期志向と部分最適に陥ってしまったのです。

そのため、主力製品であるテレビやビデオなどからなる5事業本部とVAIO事業部門に再編し、各事業・部門間で商品戦略や技術、マーケティングなどを横断的に連携するマトリックス的な組織改革を実施しました。

トヨタ自動車

トヨタは2016年4月よりカンパニー制を導入しています。「先進技術開発カンパニー」や「Toyota Compact Car Company」など、製品群ごとに7つのカンパニーを設置し、中短期の商品計画や製品企画はそれぞれのカンパニーが担当しています。

トヨタのカンパニー制の導入は「機能軸」ではなく「製品軸」による仕事へ移行して、機能の壁による調整や従業員の頑張りに依存しない体制の構築をねらいとしたものです。

すべての仕事を「もっといいクルマづくり」と、それを支える「人材育成」につなげることで、企業価値のさらなる向上に努めています。

パナソニック

パナソニックは2013年にカンパニー制を採用し、10年近くに渡って同制度での組織運営を実施してきました。そして中長期的な視点での競争力強化のため、2022年には持株会社制へのさらなる移行を進めていく方針です。

カンパニー制のもとでは電池など4つのカンパニーを重点事業として捉えていましたが、今後はオートモーティブ事業やスマートライフ事業などの事業部を「パナソニックホールディングス株式会社」の元に再編します。

各事業発展の基礎づくりをホールディングスとして支え、それぞれの成長を目指していきます。各社の自社経営を尊重しつつも、パナソニック全体としての経営基盤強化を図る大きな決断といえるでしょう。

シャープ

シャープは業績悪化の影響を受け、2015年より白物家電や液晶ディスプレイなどの製品を軸とした「コンシューマーエレクトロニクスカンパニー」や「ディスプレイデバイスカンパニー」など、5つのカンパニーを設置するカンパニー制への移行を実現しました。

組織形態の簡素化や意思決定のスピード向上による経営責任の明確化を実現し、収益開演を図る目的です。

シャープはカンパニー制度の導入により、27の事業部を5つのカンパニーと12の本部に削減し、組織のスリム化や人員削減なども同時に実施。組織改革だけでなく、収益状況の改善も同時に行っています。

カンパニー制は企業のあり方を改革する制度

夜も明かりがつくオフィスビル

企業を活性化させるための打ち手として、カンパニー制の導入は組織改革に効果を発揮する手段です。

事業活動の活性化や各事業の競争力向上だけでなく、事業運営の経験を積んだ人物が次世代リーダーとして活躍する未来も期待できます。

ただしカンパニー制の導入により事業間が連携不足に陥ったり、部門重複によるコスト増が生じたりというデメリットには注意が必要です。

導入を進める場合は生じる可能性が高い課題をあらかじめ把握して、解決するための取り組みを行いましょう。問題が解消されればカンパニー制のメリットを享受して、組織がよりよい方向に向かうはずです。

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