売りに出したマンションがなかなか売れないと、このまま売れ残ってしまうのではないかと心配になるものです。
マンションが売れないのには理由があり、理由によっては対処法があります。
マンションが売れない10個の理由と7つの解決策を紹介します。
監修者
髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)
株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。
3ヶ月経っても売れなかったら売却戦略を見直そう
一般的にはマンションを売りに出してから3ヶ月ほどで売買契約を締結できることが多いです。
そのため3ヶ月が経過してもマンションが売却できないのであれば、マンションが売れないと判断して良いでしょう。
マンションが売れないのなら売れない理由を特定し、売却戦略を見直すことをおすすめします。
マンションが売れない10個の理由
中古マンションが売れない理由は全部で10個あります。
マンションが売れない理由 | 解決策 |
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1.売り出し価格が高すぎる 2.不動産会社との連携が上手くいっていない 3.囲い込みを受けている 4.内覧時の対応が良くない |
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5.マンションの立地に魅力が少ない | |
6.マンションの築年数が古い 7.マンションの管理費・修繕費が高額 8.マンションの管理状態が良くない 9.マンションの間取りに魅力が少ない |
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10.不動産市場が不況 | – |
売れない理由があっても工夫によって売却を成功させることもできます。まずは売れない理由を確認し、次に解決策を紹介します。
マンションを売る戦略に問題があるケース
マンションがなかなか売れない理由の中でも対策が取りやすいのが、売却戦略に問題があるケースです。
売れない原因がはっきりしているので対処がしやすく、ちょっとした工夫や変化で売買が成立することもあります。
売却戦略に問題があるケースを細分化すると、以下の4つになります。
1.売り出し価格が高すぎる
市場価格より高すぎる価格で売り出してしまうとマンションが売れにくくなります。
売り出し価格を高く設定してしまう原因のひとつが、より高く売りたいという気持ちです。
「思い入れのあるマンションだから安く売りたくない」「住み替えの資金をより多く確保したい」などの理由から、市場価格よりも高い値段を設定してしまうかもしれません。
しかしどのような商品であれ、相場よりも高いものは売れにくくなります。適切な価格を設定して売り出すことが大切です。
2.不動産会社との連携が上手くいっていない
必要な情報の提供が足りていないなど、不動産会社との連携がうまくいっていないときも売却活動は難航します。
いつまでにいくらで、どのような人に売却したいかといった情報を不動産業者に伝えるようにしましょう。
また室内の様子を写した画像の魅力が低く、内見の申し込みを阻んでいることがあります。
なるべく明るい時間帯に写真を撮影し、購入希望者の興味を引くような画像を掲載しましょう。
3.囲い込みを受けている
なかなか内覧の申し込みが届かないのであれば、不動産業者から「囲い込み」を受けているかもしれません。
囲い込みとは、物件情報を意図的に他社に流さないようにして買主と売主の双方から仲介手数料を得ようとする行為です。法律で禁じられている行為ではあるものの、囲い込みを受けているかを判断するのは難しいためこっそり行われていることがあります。
売却活動が進まないときは別の不動産会社に、自分が売りに出したマンションについて尋ねてみましょう。囲い込みを受けているのであれば実際には話が来ていないにも関わらず「商談中です」などと言われます。
囲い込みが発覚したら仲介契約を解除し、不動産業者を変更しましょう。
4.内覧時の対応が良くない
内覧対応は売主と購入希望者が直接やり取りできる貴重な機会です。物件だけではなく売主の人となりを見られることも心に留めておきましょう。
清潔感のある身だしなみをし、購入希望者からの質問には適切に答えましょう。
室内を清掃しておくことも大切です。特に水回りは掃除だけでは汚れが落ちないことがあるので、必要があればハウスクリーニングを受けることをおすすめします。
マンションの周辺環境に問題があるケース
マンションの立地条件になんらかの欠点がある場合もあります。
欠点や魅力を損なう要因とされることが多い条件を紹介します。
5.マンションの立地に魅力が少ない
駅からの距離やスーパー、ドラッグストアなどの商業施設が近くにないと、一般的には不便な場所だと認識されます。
ほかにも墓地や反社会的団体の事務所などの嫌悪施設(迷惑施設)がある、いわゆる「心理的瑕疵物件」の場合も売却活動が難航する傾向があります。
注意が必要なのは保育園や小学校などの教育施設が近隣にある場合です。登下校時間帯に騒がしくなるのではないかと心配する人もいるので、その心配を解消できると売却が近づくでしょう。
マンションそのものに問題があるケース
マンションが売れない原因の中には対処が難しく、明確な解決策が取りづらい問題もあります。以下の4つに当てはまる事柄を解消するには、多少の金銭的出費が発生する可能性が高いです。
6.マンションの築年数が古い
せっかくマンションを購入するのならば、なるべく長い期間住み続けたいというのは当然の心理です。築年数があまりにも古いと「購入してもすぐに大規模修繕などで住めなくなってしまうかもしれない」と購入を躊躇する要因になります。
築年数は購入時に組むローンにも影響します。マンションには法定耐用年数があり、鉄骨鉄筋コンクリート造であれば47年です。
住宅ローンは法定耐用年数の期間内に完済できるように組むことが多いので、築年数が古いと返済スケジュールが厳しくなります。そのため築年数が古いマンションは売れにくくなります。
物件の構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 |
47年 |
金属造 | 34~19年 (骨格材の肉厚による) |
木造・合成樹脂造 | 22年 |
7.マンションの管理費・修繕費が高額
マンションを購入すると、一軒家とは異なり毎月管理費や修繕費の積み立てが必要です。管理費などが高額な物件は購入後のコスト負担が重くなるため、購入の足かせになる可能性があります。
ただし管理費等が高額であることが必ずしも売却を遠ざけるとは限りません。十分に管理が行き届いていることや修繕依頼への対応の良さ等を
アピールすれば「管理がしっかりしていて安心できる」と判断してもらえるでしょう。
8.マンションの管理状態が良くない
共用部分の掃除が不十分であったり掲示物の管理が雑だったりといった、マンション全体の管理状態が悪いとせっかく内覧希望者がいても売却に結びつかないことがあります。
建物のオーナーではない一入居者の立場であったとしても、共用部分を軽く掃除したり管理会社に連絡を入れるなどすることで成約確率を上げられます。
9.マンションの間取りに魅力が少ない
厚生労働省が発表している「住宅市場動向調査(令和4年度版)」によると、中古マンション取得世帯の世帯主の年齢は30~40歳代が多く、あわせて57.8%を占めます。平均年齢は46.3歳でした。
全体の傾向として、30~40歳代は子育て中であることが多く、中古マンションを購入するときは子供の成長を見越してある程度広い家を検討しています。
すると2DKなどの物件では部屋数が少なく、家族1人1人が個人の時間を持ちづらいと考え購入候補から外れてしまうことがあります。
広さや部屋の数が十分だったとしても、間取りが独特な物件は実用性を厳しく見られる傾向があるので、実際に住んでみて感じた魅力や、生活上での注意などの情報を伝えられるようにしましょう。
マンション市場そのものが原因となっているケース
マンションそのものに問題がなくても売却活動がうまくいかないことがあります。原因と対策を確認しましょう。
10.不動産市場が不況
物件の条件や売却活動に不備がなくても、そもそも不動産市場の動きが鈍く、不況であることが原因で売却活動がスムーズに進まないことがあります。
不動産市場が不況のため売却活動がうまくいかないのであれば、売却戦略の見直しが有効です。
マンション売却に関して優先順位をつけ、どのように売っていきたいかを決めましょう。
マンションが売れないときの7つの解決策
マンションが売れない理由に対し、7つの解決策があります。
売れない原因別に解決策を確認しましょう。
マンションを売る戦略に問題があるケースの解決策
マンションを売る戦略に問題がある場合、解決策は以下の3つです。
1.不動産会社と相談し売却戦略を見直す
マンションに限らず、不動産売買がうまく進まないのであれば不動産業者に相談して売却戦略を見直し、計画の立て直しをしましょう。
売主と不動産業者の間で認識をすり合わせて、より良い売却戦略を立てましょう。
見直すべきポイントは物件や状況によって異なりますが、チラシなどの広告媒体に掲載されている情報やアプローチの見直しが効果的になることが多いです。
2.必要があれば仲介業者を変更する
不動産業者から囲い込みを受けている場合や売却戦略に納得できない場合は媒介契約を解除し、別の不動産業者に仲介を依頼しましょう。
不動産業者になんらかの落ち度があるのであれば、媒介契約を中途解約できます。しかし売主都合での契約解除の場合は違約金を請求される可能性があるので、不動産業者に明確な非がなければ媒介契約の更新時に解除を申し出ることが多いです。
媒介契約の種類 | 中途解約の可不可 |
---|---|
専属専任媒介契約 | 原則不可 |
専任媒介契約 | 原則不可 |
一般媒介契約 | 可能 |
3.不動産業者と「二人三脚で売却する」意識を持つ
マンションの売却活動において、不動産業者を信頼して任せることは大切なことです。しかし丸投げにして売れるのを待つだけにするのはやめましょう。
不動産業者も売却するマンションの特徴を理解していますが、実際に住んでいた人や所有者でないと分からないことがらもあります。
自分にとっては些細な情報に感じられても、同じ条件に当てはまる人にとっては購入の決定打になることもあります。
不動産業者と協力して、二人三脚で売却活動を行うという意識を持つ方が活動もスムーズにいくでしょう。
マンションの周辺環境に問題があるケースの解決策
マンションの周辺環境に問題がある場合の解決策は以下の2点です。
4.住んでいるからこそ分かる情報を掲載する
売れやすいマンションもあれば売れにくいマンションもあります。一般的には以下の条件に当てはまるマンションは売却活動が難航することが多いです。
- 車通りの多い幹線道路がある
- 駅からの距離が遠い
- 近隣に嫌悪施設がある
売れにくい条件に当てはまったからといってそのマンションが絶対に売れないわけではありません。一見デメリットであっても、見方を変えることでアピールポイントになり得ます。
デメリットをアピールポイントに変換するのであれば、自分がそのマンションを買ったときのことを思い出すと良いでしょう。
幹線道路が近い場合のアピールの仕方
幹線道路が近いというのは、車での行き来がしやすいと考えられます。ファミリー層であれば休日、レジャーに行きやすいとアピールできますし、働き盛りの世代にも車通勤がしやすいなどの訴求ができるでしょう。
家にいるときに近くを通る車の音や振動がどの程度感じられるかも伝えられるとなお良いです。
駅から遠い場合のアピールの仕方
駅から遠いというのは確かに大きなマイナスポイントですが、バスが通っていてスムーズに駅に出られるのであれば大きな問題とは考えない人もいます。また駅から離れているからこそ周辺が静かなど、色々と角度を変えてアピールするのも効果的です。
近隣に嫌悪施設がある場合のアピールの仕方
嫌悪施設に関しては人によって感覚が大きく異なるので、どのアプローチが良いかは一概には言えません。嫌悪施設の中でも特に意見が分かれるのが墓地です。
墓地が近くにある物件に対し、縁起が悪い、不気味と考える人もいます。しかし墓地の近くにある物件は周囲が開けていて風通しや日当たりが良いことが多く、公園などとは異なり夜中までたむろして騒ぐ人もいません。静かに暮らすことを考えると良い物件です。
5.物件そのものの魅力をアピールする
ネガティブな要素がある物件を売却するのであれば、宣伝活動がとても重要になります。
広告の内容をチェックし、より良い広告になるようにブラッシュアップしていきましょう。
日当たりや風通しの良さ、眺望などの特徴を掲載するほか室内の写真を多く掲載して物件の魅力をアピールするのもおすすめです。
マンションそのものに問題があるケースの解決策
マンションそのものに問題がある場合の解決策は以下の2点が挙げられます。
6.ハウスクリーニングや清掃を行う
汚れているものをわざわざ選んで買う人はいません。室内写真を撮る前や内覧の前には掃除をして、できる限り部屋をきれいにしましょう。
もし通常の掃除だけではきれいにならないのであればハウスクリーニングを依頼してきれいにしてもらうのがおすすめです。
全室に行う余裕がなければキッチンやトイレなどの水回りのみでも問題ありません。水回りがきれいなだけで部屋の印象はぐっとよくなります。
7.競合が少ないタイミングに売り出す
日本では自分が居住するための物件を購入する場合、新築が良いと考える人が多いです。新築マンションの内覧時期が重なっているのであれば、その時期を避けて売却活動を始めることをおすすめします。
どうしても新築マンションの内覧時期とかぶってしまうのであれば、南向きの部屋や眺望が良い部屋、高層階など人気の高い物件が成約してからにしましょう。不動産業者から情報を聞いて、できる限り悪影響のないようにしましょう。
2025年以降に中古マンションは売れにくくなる?
2025年になると1947~1949年生まれの団塊世代が全員後期高齢者になり、様々な社会問題が起こると言われています。「2025年問題」と言われることが多いです。
不動産業界に関しては以下の要素が影響を及ぼすと考えられています。
- 労働人口の減少
- 社会保障費の現役世代負担の増加
- 人口減少による街のコンパクト化
2025年には総人口の19%にあたる2180万人が75歳以上の後期高齢者になります。一方、20~64歳の労働人口は6635万人と、総人口の54%しかいません。社会保障費用の現役負担額が増加し、マイホームを購入する余裕がなくなるのではないかと考えられています。
日本の総人口が減ることで地方では街の機能を一部に集約させていき、街のコンパクト化が進むと考えられています。利便性は上がる一方で、街の中心部から離れた土地の価値は下がる一方になります。
東京や大阪など人口が多く、人気のエリアに建っているマンションであれば2025年問題の影響を感じづらいでしょう。しかしそれ以外の地方にあるマンションは売却の難易度が上がっていくと予想されます。
マンション売却を考えているのであればなるべく早く行動することをおすすめします。
マンションが売れない理由を知って正しい対処をしよう
マンションが売れない理由は千差万別ですが、おおむね10個の理由に分けられます。理由によっては根本的な対処が難しいものの、不動産業者と二人三脚で売却するという意識を持ち、積極的に売却活動に関わっていくことが大切です。
媒介契約を結ぶ不動産業者の選定も売却活動に大きく関わります。複数社から見積もりをとって、見積額の根拠を聞いてみましょう。納得できる説明をしてくれた業者はマンション売却の経験が豊富である可能性が高いです。
まずは不動産査定を受けて、それからマンションを売ってくれる業者を選定しましょう。