不動産をできるだけよい条件で売りたい場合は、不動産会社選びにこだわるのがおすすめです。どのような不動産会社を選ぶかによって、売却価格や満足度が変わります。希望を実現するために、不動産会社を決める際の判断基準をチェックしましょう。
監修者
髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)
株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。
売却を依頼する不動産会社を選ぶ判断基準6つ
不動産の売却で後悔しないようにするには、判断基準を設けて、間違いのないように不動産会社を選びましょう。不動産会社選びの基本となる項目を6つ紹介します。
- 対象不動産のある地域に詳しい
- 条件が似た不動産の売却実績が豊富
- 査定の根拠が明確
- 担当者の対応が誠実
- 行政処分歴がない
- 宅建業の免許番号
対象不動産のある地域に詳しい
売却したい不動産がある地域の事情に詳しい不動産会社であるかどうかは、重要な判断基準の1つです。
全国展開の不動産会社だから安心とは言い切れません。その地域でどのような不動産が求められているかという点を深く理解できていた方が、より好条件で売却できるためです。
その地域で長く安定的な実績のある不動産会社であれば、地域のニーズに詳しいと判断できます。
条件が似た不動産の売却実績が豊富
実際に売却しようと考えている不動産と、似たような不動産を扱った実績があるかという点も重要なポイントです。多くの実績があるほど、豊富な売却ノウハウを持っていると考えられます。
不動産会社によって得意とするジャンルが異なる点にも注意しましょう。賃貸仲介をメインにしている場合、売買仲介では十分な売却力を持っていない恐れがあります。
事前にWebサイトなどを確認し、どこを強みとしているのか確認しましょう。直近で似た不動産の売却実績があれば、売却先がスムーズに見つかる可能性も高いといえます。
査定の根拠が明確
査定額の高さだけで選ぶのではなく、なぜその額になるのか、根拠までしっかりと説明してもらえるかも重要です。高額な査定額が出た場合、納得できる根拠があるか確認しましょう。
中には契約ノルマのために、査定額を高く提示しているだけというケースもあります。納得のいく説明をしてもらえない場合、担当者の知識や経験が不足している可能性もあり、満足のいく結果にならないでしょう。
土地のデメリットなども把握した上で、どのように売り出せば効果的なのかまで、しっかりと説明できる不動産会社の方が、スムーズな売却を期待できます。
担当者の対応が誠実
不動産売却には早くても3カ月程度、長ければ半年程度など、まとまった時間がかかります。担当者とは引き渡しを終えるまでの付き合いになるので、誠実な対応ができて実力がある人物かどうかを見極めることも大切です。
担当者と会ったときに、これまでの実績や得意なエリアなどを確認しましょう。不動産売却にまつわる税金など、専門的な質問に対してスムーズに分かりやすく答えられるかどうかも、チェックポイントです。
行政処分歴がない
依頼を考えている不動産業者が、行政処分を受けていないかチェックすることも大事です。不適切な取引をしたり、役員や個人が刑罰の対象となったりした場合には、行政処分を受けます。
国土交通省が提供する『ネガティブ情報等検索サイト』を使用し、会社名・店名・免許番号などを入力すると、宅建業者の情報を確認できます。
利用を考えている不動産会社が、過去に行政処分を受けていないか確認してみましょう。宅地建物取引業者が免許を更新した地域の建築・不動産を管轄する部署のWebサイトに、直近で処分を受けた業者の情報が掲載されているケースもあります。
宅建業の免許番号
不動産会社の中には悪徳業者もいます。宅建業の免許番号を確認し、無免許でないことを把握しておきましょう。
免許を取得した後も、5年に一度免許を更新しなければなりません。『東京都知事免許(3)第◯◯◯号』となっている場合、()内の数字が更新回数です。数字が大きいほど、長い歴史があると判断できます。
ただし必ずしも免許番号が大きいから安全とはいえません。事業譲渡している場合、免許の再取得の必要がなく、役員の変更届を出すだけでよい決まりです。不動産業務の経験が十分にない人物が、数字が大きい番号を取得しているケースもありえます。
大手不動産会社のメリット・デメリット
どのような不動産でも、大手不動産会社での売却に向いているわけではありません。所有する物件の特徴によっては、思ったようなメリットを享受できない場合もあります。大手不動産会社に売却を依頼する際の、メリット・デメリットを見ていきましょう。
大手不動産会社がおすすめなケース
大手不動産会社は所有している不動産の価値が比較的高く、人気が出やすい土地や物件の売却を考えている人におすすめです。
不動産の買い手として、初めて不動産を購入する若い人が想定できる場合も、大手不動産会社が向いています。
不動産の購入経験がない人はインターネットで情報を収集するケースが多く、知名度の高い不動産会社に購入希望者が集まりやすいのが特徴です。
また小さな不動産会社では中古マンションの取り扱いがないケースもあるので、マンションの売却を考えている場合は大手不動産会社を頼りましょう。
メリット
大手不動産会社は抱えている顧客数が多いので、集客数に強みを持っています。ネームバリューによって買い手が安心しやすく、購入に踏み切りやすい点もメリットです。
全国に顧客を持っていて従業員数も多いため、研修や教育に力を入れており、従業員に一定のレベルが期待できる点も魅力でしょう。
資金に余裕があるので、宣伝などを大々的にしてもらえるケースが少なくありません。多くの大手不動産会社が、チラシ・インターネット広告・ラジオ・テレビCMなど、豊富な宣伝方法を展開しています。
デメリット
大手不動産会社は顧客が多いので、自社が持っているリストの中だけで売主と買主をマッチングさせられます。ほかの不動産会社に介入されないように、囲い込みをされる可能性がある点はデメリットです。
売主と買主の両方が自社の顧客だと、どちらからも仲介手数料を得られる分、利益が大きくなります。自社で完結させたいという思惑が働き、売主が希望する価格を下げてでも売却を成立させようとする傾向です。
多くの顧客を抱えているので優先的に対応してもらえなかったり、親身になってもらえなかったりと、ビジネスライクに感じやすい点にも注意しましょう。
中小不動産会社のメリット・デメリット
不動産会社の良し悪しを決めるのは、会社の規模だけではありません。中小不動産会社のメリットとデメリットを確認しましょう。
中小不動産会社がおすすめなケース
所有する不動産が郊外にある場合や、築年数が古めの不動産の売却を考えている場合は、中小不動産会社がおすすめです。地域の情報に詳しい中小不動産会社は、地元のニーズをよく理解しています。
郊外の築年数が古い物件は、売却価格が安くなるのが一般的です。大手不動産会社は運営に必要な経費が莫大なため、より多くの利益が得られる物件の情報を求めています。
売却益が低めの不動産の場合、大手に依頼すると対応を後回しにされる可能性があり、中小不動産会社の方が熱心に売却活動を行ってくれる傾向です。
メリット
地域密着型の中小不動産会社は、地元の物件の管理や不動産の取引を行う過程で、自然に情報が入ってきやすい環境です。
大手不動産会社が知らない、地元の情報網を持っているケースも少なくありません。その地域のニーズを理解していることから、思わぬ好条件での売却が実現する可能性があります。
また顧客数が少ないので、どのようにすれば売主の希望通りに売却できるのか、親身になって考えてくれるでしょう。
デメリット
高額物件を持っている人や短期で売りたい人には、中小不動産会社はあまり向いていません。取り扱うエリアの範囲が小さいため、期待したような高額での売却が難しいケースがあります。
ただしその不動産会社がどのようなコネクションを持っているかによっても、結果が変わる点に注意しましょう。査定を受けた上で判断することが大事です。
またあまりにも小規模な不動産業者は、信頼性が低いケースがあります。大手不動産会社のような知名度がないのをよいことに、隠れて詐欺まがいの行為をしている可能性もゼロではありません。
不動産会社を探すときは一括査定がおすすめ
不動産を売却する際は、一括査定を受ける方法がおすすめです。一度に複数の不動産会社の査定を受けられるので、手間がかかりません。
比較対象があると、より自分に合った不動産会社が見つかります。複数の不動産会社から簡易査定を受け、高い金額を出した2~3社に訪問査定を依頼しましょう。
金額の高さだけに満足せず、高額である根拠や営業方法などについても質問することが大事です。中小か大手かで悩んだ場合は、所有する不動産の特徴に合う方を選びましょう。