「請求書の電子化は義務なの、それとも任意なの」
「紙のままではダメなのか、どこまで対応すればいいのか分からない」
電子帳簿保存法の改正や郵便料金の値上げをきっかけに、請求書の電子化を検討し始めた担当者からは、こうした声がよく聞かれます。義務化の対象を正しく理解しないまま進めると、対応の優先度を見誤ったり、必要以上に身構えてしまったりすることもあります。
本記事では、請求書の電子化の基本的な仕組みから、義務化との関係、導入するメリットやデメリットまで分かりやすく紹介します。

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請求書の電子化とは
ピー・シー・エー株式会社が2026年5月に実施した調査によると、請求書の送付形式は「PDFファイルをメールに添付」が36.0%、「紙で郵送」が32.0%となっており、合わせて約7割がアナログ・半アナログの運用にとどまっています(※1)。電子請求書配信サービスの利用は19.0%にとどまり、多くの企業でまだ電子化が進んでいない実態がうかがえます。
請求書の電子化とは、紙で作成していた請求書を電子データとしてやり取りすることです。作成から送付、受け取り、保管まで、請求書に関わる一連の業務を紙を使わずにおこなうことを指します。
電子化された請求書は電子請求書やWeb請求書と呼ばれ、紙の請求書と同じように法的な効力を持ちます。
電子請求書には2つの形式がある
電子請求書には、大きく分けて2つの形式があります。1つは、はじめからPDFやシステムを使ってオンラインで作成し、取引先に送付する形式です。もう1つは、紙で受け取った請求書をスキャンやスマートフォンでの撮影によってデータ化する形式です。
自社が発行する請求書はオンライン形式で電子化しやすい一方、取引先から紙で届く請求書は後者のスキャン形式で対応することになります。どちらの形式で電子化を進めるかによって、必要な準備も変わってきます。
電子帳簿保存法との関係、発行側は義務か任意か
請求書の電子化を検討するときに整理しておきたいのが、電子帳簿保存法との関係です。義務化の対象を正しく理解しておくと、対応の優先度を判断しやすくなります。
義務化されているのは受け取った電子データの保存
2022年の電子帳簿保存法改正により、取引先からメールやシステムで電子データとして受け取った請求書は、電子データのまま保存することが義務付けられました。2023年末までは猶予期間が設けられていましたが、2024年1月からはすべての法人と個人事業主が対応必須となっています。
つまり義務化されているのは、あくまで受け取った電子データの保存方法です。紙で受け取った請求書をそのまま紙で保存すること自体は問題ありません。
自社が発行する請求書の電子化は任意
一方、自社が請求書を発行する際に、紙にするか電子データにするかは任意です。法律で電子化が義務付けられているわけではないため、今まで通り紙で発行を続けても問題はありません。
ただし取引先から電子データでの発行を求められるケースや、郵送費の削減を目的に電子化を進める企業も増えています。義務ではないからこそ、自社のペースで検討を進めやすい領域ともいえます。
請求書を電子化するメリット
紙の請求書を電子化すると、電子データならではの変化がいくつも生まれます。具体的なメリットを見ていきましょう。
発行から到着までの時間を短縮できる
紙の請求書は印刷や封入、郵送の手間がかかり、取引先に届くまで数日かかることも珍しくありません。電子化すればメールやシステムで即日送付でき、郵送の遅延や紛失のリスクもなくなります。
Sansan株式会社が2025年3月に実施した調査では、請求書の発行を電子化した人の92.4%がメリットを感じており、「印刷や発送準備にかかる時間が減った」という回答が48.0%にのぼりました。実際に「トータルの業務時間が丸一日減った」(20代・製造業)という声も報告されています(※2)。
押印を電子印鑑に置き換えられる
紙の請求書では担当者の印鑑を1枚ずつ押す作業が発生しますが、電子化すれば電子印鑑を使ってデータ上で押印できます。テレワーク中でも押印のために出社する必要がなくなります。
検索性が上がり、必要な請求書をすぐ探し出せる
紙の請求書はファイルの中から手めくりで探す必要がありますが、電子化すれば取引先名や日付での検索がその場で可能になります。過去の請求書を確認したいときも、データを開くだけで見つかります。
保管にかかる物理的なスペースをなくせる
紙の請求書はファイリングして保管する場所が必要ですが、電子化すればデータとしてサーバーやクラウド上に保存でき、物理的な保管スペースが不要になります。
請求書を電子化するデメリット
紙にはなかった注意点も、電子化することで新たに生まれます。導入前に押さえておきたいポイントを紹介します。
取引先の受け入れ体制に対応が左右される
自社が電子化を進めても、取引先がデータでの受け取りに対応していなければ、これまで通り紙での発行も必要になります。取引先ごとに電子データを希望するかどうかを事前に確認し、対応を分けなければなりません。
データの改ざんや誤送信のリスクに備える必要がある
電子データは複製や編集がしやすい分、改ざんや誤送信のリスクが紙よりも高まります。メールの宛先ミスひとつで情報が漏えいする可能性もあるため、送付前の確認体制を整えておく必要があります。
ウイングアーク1st株式会社が2025年に実施した調査でも、電子帳票の受け取りと保管・管理で異なるツールを使っている人の75.5%が、情報漏洩リスクの高まりを懸念していると回答しています(※3)。
従業員のITリテラシーや社内フローの整備が欠かせない
紙の運用からデータでの運用に変わることで、業務のやり方自体が変わります。マニュアルや社内ルールを新たに整備し、従業員が迷わず対応できるよう研修をおこなう必要があります。
システム障害やデータ消失に備える必要がある
紙の請求書はその場に保管されていれば紛失のリスクは低いですが、電子データは保存先のシステム障害やクラウドサービスの停止によって、一時的に閲覧できなくなる可能性があります。バックアップ体制の確認も欠かせません。
請求書の電子化を社内の業務フローに導入する流れ
請求書の電子化を社内の業務フローに組み込む手順を紹介します。
電子化して送付する方法を決める
まずは、どの方法で電子化した請求書を送付するかを決めましょう。それぞれメリットとデメリットがあるため、自社の事業内容や取引先の状況を踏まえて選んでください。
| 送付方法 | メリット | デメリット |
| メールに請求書データを添付して送付 | 手軽に始められる、費用が発生しない | 1件ずつ手作業で送るため、件数が増えると対応しきれなくなる |
| Web上に請求書データをアップロードして送付 | 取引先が好きなタイミングでダウンロードできる | サービスによって一定期間でデータが削除される、相手が取得したか確認しづらい |
| 請求書管理システムで請求書データを送付 | 発行から送付まで一括でおこなえる、送付状況を追跡できる | 取引先にもシステムの導入が必要、運用費用がかかる |
取引先に電子化を案内する
送付方法が決まったら、紙の請求書に電子請求書への切り替え案内を同封しましょう。取引先に事前の連絡なく電子データをいきなり送るのは避けたい対応です。早めに案内しておくと、相手も準備しやすくなります。
一度の案内だけでは対応してもらえないこともあるため、複数回に分けて案内すると安心です。取引先が受け取りを拒否した場合に備えて、紙での送付も並行して準備しておきましょう。
社内ルールを見直し、研修をおこなう
請求業務のルールを見直し、誰が何をいつまでにおこなうのかを明確にしておきましょう。実際に運用しながら改善点を見つけ、少しずつルールを整えていく方法もおすすめです。整備したルールは、研修を通じて従業員に周知することも欠かせません。
請求書の電子化におすすめの発行システム5選
請求書の電子化を進めるなら、請求書発行システムの導入が近道です。まずは5製品の特徴を比較表で確認してみましょう。
| 製品名 | 料金 | 初期費用 | 無料トライアル | 主な機能 |
| freee請求書 | 0円〜 | 0円 | なし(無料プランあり) | 発行、送付、入金消込(上位プラン) |
| マネーフォワード クラウド請求書 | 2,728円/月〜 | 0円 | あり(1カ月) | 発行、送付、AI-OCR入力 |
| Misoca | 0円〜 | 0円 | なし(無料プランあり) | 発行、送付、ステータス管理 |
| MakeLeaps | 0円〜 | 0円 | あり(30日間) | 発行、送付、承認ワークフロー |
| BtoBプラットフォーム請求書 | - | - | - | 発行、受取、郵送代行 |
※-:公式Webサイトに記載なし
※ミツモア調べ(2026年8月時点)
freee請求書(freee株式会社)
freee請求書は40種類以上のテンプレートから自社に合った様式を選び、請求書を作成できるサービスです。入力フォームに沿って項目を埋めるだけの簡単設計で、誰でも扱えます。請求と入金のステータスは一覧画面で管理でき、送り漏れや入金漏れも防げます。
マネーフォワード クラウド請求書(株式会社マネーフォワード)
マネーフォワード クラウド請求書は、直感的な操作で請求書や見積書を作成できるクラウドサービスです。送付先や勘定科目の自動入力に対応し、帳票同士の変換もできます。法改正や増税への対応もベンダー側で行われるため、常に最新の状態で利用できます。
Misoca(弥生株式会社)
Misocaは、月5通までの請求書作成なら無料で利用できるサービスです。見積書や納品書の作成、取引先の登録は件数の制限なく使えるため、発行数が少ない個人事業主や小規模企業に向いています。
MakeLeaps(メイクリープス株式会社)
MakeLeapsは、請求書を含む9種類の書類をまとめて管理できるサービスです。書類ごとにフォルダで整理でき、見積書から請求書への変換もそのままおこなえます。30日間の無料トライアルが用意されています。
BtoBプラットフォーム 請求書(株式会社インフォマート)
BtoBプラットフォーム 請求書は、受け取りから発行まで自動化できるクラウド請求書発行システムです。紙の請求書を希望する取引先がいる場合でも、自社側の業務は電子化できるため、大幅な効率化につながります。
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