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バックオフィスのAI活用ガイド。業務別のメリットと導入の最適解を解説

最終更新日: 2025年10月29日

生成AIの業務活用が活発化しており、多くの企業がその活用法を模索しています。特に、定型業務が多いバックオフィス部門において、AI活用は待ったなしの経営課題です。しかし、「どこから手をつけるべきか」「具体的な効果は何か」が見えず、導入に踏み切れないケースも少なくありません。

本記事では、バックオフィスAI活用の現実的な第一歩から、部門別の具体的な活用例、そして導入を成功させるための必須ポイントまでを網羅的に解説します。

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バックオフィスAI活用の現実:8割が活用、効果は「文書チェック」から

まず押さえるべき事実は、バックオフィス現場でのAI活用がすでに現実のものとなっている点です。生成AIを業務に活用しているバックオフィス担当者は約8割に達しています(※)。

注目すべきは、その効果実感の源泉です。同調査で最も効果を実感している業務は「文書の確認・校正・チェック」(約7割)でした。これは、AIの活用が「壮大なDX(デジタルトランスフォーメーション)」である前に、日々の煩雑な「文書処理」という身近な課題解決から始まっていることを示しています。バックオフィスのAI活用は、この現実的なスタートラインから始めるのが成功の鍵です。

【業務別】バックオフィスAI活用の4つの主要領域

プログラミング

バックオフィスAI活用の効果は、経理、人事、総務、法務の主要4領域で具体的に現れます。それぞれの領域で、AIがどのように業務を効率化し、価値を生み出すかを解説します。

経理:AI-OCRと自動仕訳による請求書処理の劇的効率化

経理部門では、AI-OCR(光学的文字認識)と自動仕訳機能の連携が最も強力なユースケースです。従来、膨大な時間を要していた紙やPDFの請求書処理が劇的に変わります。

AI-OCRが請求書情報を読み取り、会計システムやERPに自動で仕訳データを連携させることで、手入力作業をほぼゼロに近づけます。AI-OCRと自動仕訳の導入により、請求書処理時間を85%削減(月40時間から6時間へ短縮)した商社の事例が報告されています(※1)。また、年間4,000時間近い業務削減を達成した事例も紹介されており、月末月初の業務負荷軽減に絶大な効果を発揮します(※2)。

人事:採用とオンボーディングのプロセスを自動化

人事領域では、採用プロセスのスクリーニングや、入社手続き・オンボーディング(定着支援)にAIが活用されています。

例えば、デジタルアシスタント(AIチャットボット)を活用し、新入社員からの定型的な質問(社内規定、各種申請方法など)に自動で応答させる仕組みです。日立などの企業では、オンボーディングプロセスにAIを活用し、人事部門の工数削減と新入社員の体験向上を両立させています(※)。これにより、人事業務の属人化を防ぎ、より戦略的な人材開発にリソースを集中できます。

総務:社内FAQと文書検索のインテリジェント化

総務部門は「社内の何でも屋」として、多様な問い合わせに対応する必要があります。ここにAI検索やインテリジェントなFAQボットを導入することで、自己解決率が飛躍的に向上します。

従来のキーワード検索とは異なり、AIは自然言語での曖昧な質問(例:「出張費の精算方法を教えて」)の意図を汲み取り、社内規程やSharePoint、各種マニュアルから最適な回答を瞬時に提示します。総務担当者が日々対応していた定型的な問い合わせ業務をAIに任せ、より複雑なファシリティ管理やイベント企画に注力できます。

法務:契約レビューAIによるリスク検出と平準化

法務部門では、契約書のレビュー(審査)業務にAIが導入されています。AIが契約書案を読み込み、不利な条項、欠落している必須条項、リスクのある文言を瞬時にハイライトします。

これにより、法務担当者の一次チェックの負荷が大幅に軽減されます。AIがリスクの「見落とし」を防ぎ、人間はより高度な法的判断や交渉戦略の策定に集中できます。

主要AIソリューションの「使いどころ」比較

天秤と指先

バックオフィスAI活用を実現するソリューションは多岐にわたります。AI-OCRのような特化型ツールから、Copilotのような汎用型アシスタントまで、それぞれの「使いどころ」を理解することが重要です。

AI-OCR / 請求書処理ソリューション

経理業務、特に請求書や帳票の処理に特化したAIです。単なる文字認識(OCR)を超え、読み取った情報が「請求日」「金額」「支払先」のどれに該当するかをAIが判断し、仕訳データを自動生成します。TOKIUMなどのベンダーは、2024年1月から完全適用された電子帳簿保存法の要件にも完全対応しています。

  • 価格帯: クラウド型の場合、月額3万〜20万円+従量課金(1枚数円〜数十円)が一般的です。
  • 使いどころ: 請求書処理の工数を抜本的に削減したい経理部門。

社内FAQ / 検索(エンタープライズ検索)

総務や人事、IT部門への社内問い合わせ対応に特化したAIです。社内のドキュメント(SharePoint、Box、Google Driveなど)やナレッジベースと連携し、自然言語での質問に対して、関連する社内文書を引用元として明示しながら回答を生成します。

  • 価格帯: 接続するデータソースやユーザー数に応じて変動します。
  • 使いどころ: 社内からの定型的な問い合わせを削減し、自己解決率を高めたい総務・人事・IT部門。

Microsoft Copilot (Copilot for Microsoft 365)

Word、Excel、PowerPoint、Teamsなど、日常的に使用するMicrosoft 365のアプリケーション群に組み込まれたAIアシスタントです。

「会議の議事録を要約して」「このデータからグラフを作成して」といった指示を出すだけで、Office資産を横断して作業を実行します。

  • 価格帯:1ユーザーあたり月額4,497円
  • 使いどころ: 特定業務の自動化というより、バックオフィス全般の「文書作成」「情報要約」「データ集計」といった日常業務の生産性を底上げしたい場合。

契約レビューAI

法務部門の契約書審査業務に特化しています。LegalForceなどの主要サービスは、条項データベースに基づきリスクを判定し、修正案を提示します。

  • 価格帯: 個別見積(初期費用+月額費用)が主流ですが、関連サービスには月額1.1万円から利用できるものもあります(比較記事、2025年)。
  • 使いどころ: 契約書レビューの速度と品質を両立させたい法務部門。

ERP統合AI(レポーティング/異常検知)

SAPの「Joule」のように、基幹システム(ERP)に組み込まれるAIです。勘定残高、購買データ、在庫、人事給与データなど、ERP内の膨大なデータを横断的に分析し、異常検知や経営レポートの要約を生成します。

  • 価格帯: ERPのライセンスやオプションとして提供されます。
  • 使いどころ: ERPデータを活用し、経営管理や内部統制の高度化を目指す経理・経営企画部門。

バックオフィスAI活用を成功させる導入のポイント

ポイント

AI活用の導入には、期待と同時に不安も伴い、日本での導入の課題として「人材不足」「コスト」「サイバーセキュリティ不安」が挙げられています(※)。これらの課題を乗り越え、成功に導くためには、スモールスタート、ガバナンス、ROIの3点が不可欠です。

ポイント1:スモールスタート(PoC)で効果を実証する

いきなり全部門での導入を目指すのではなく、まずは3か月程度のPoC(概念実証)から始めるべきです。対象業務を絞り込み(例:経理部門の請求書処理)、AI導入前後のKPI(処理時間、エラー率など)を比較検証します。

ここで「調査結果」にあるような「請求書処理85%削減」といった定量的な成果を実証できれば、それが経営層を説得し、本格導入の予算を獲得するための強力な上申資料となります。

ポイント2:セキュリティとガバナンスを設計する

AI活用、特に生成AIの導入において、セキュリティとガバナンスの設計は最優先事項です。

  • 法規制対応: 2024年1月からの電子帳簿保存法(電帳法)や2023年10月開始のインボイス制度への対応は、経理AIツール選定の絶対条件です。また、2022年4月に改正された個人情報保護法の観点から、従業員データや顧客データをAIに学習させる際の取り扱いルールを明確化する必要があります。
  • 運用ルール: プロンプト(指示文)による情報漏洩を防ぐためのガイドライン策定、利用ログの監査体制、AIが生成した情報の正確性を担保するチェックフローを構築しなければなりません。

ポイント3:ROI(投資対効果)を明確に試算する

AI導入は「コスト」ではなく「投資」です。導入を推進するためには、明確なROI(投資対効果)の試算が不可欠です。

基本的な算式は「(削減される人時 × 人件費単価) – (AIの初期費用 + 運用費用)」です。前述の「A商社の月40時間が6時間に短縮(85%削減)」といったベンチマークを活用し、自社の業務量に当てはめて試算します。この具体的な数値的根拠こそが、AI導入プロジェクトを「体感」や「流行」で終わらせず、経営戦略として推進するための鍵となります。

まとめ:AI活用は「文書チェック」から始め、業務変革を実現する

バックオフィスAI活用は、もはや未来の話ではなく、具体的な業務改善の手段として機能し始めています。ATLEDの調査が示す通り、8割の担当者が活用し、約7割が「文書チェック」という身近な業務で効果を実感しています。

経理業務の時間削減、日常業務の効率化、契約レビューAIによる法務リスクの平準化など、活用領域は明確です。

成功の鍵は、いきなり全社変革を目指すのではなく、まずはPoCでスモールスタートを切り、ガバナンスを固め、明確なROIを示すことです。まずは貴社のバックオフィスで最も負荷が高い「文書処理」業務から、AI活用の第一歩を踏み出してください。

バックオフィスのAI活用でお悩みではありませんか?

ガッツポーズを挙げるビジネスマンのイラスト

本記事で解説した通り、AI-OCRによる経理効率化から、Copilotによる日常業務の補助、FAQボットによる総務・人事の問い合わせ削減まで、AI活用の選択肢は多岐にわたります。

しかし、「どのAIツールを導入すべきか?」だけで悩んでいないでしょうか。

本当の課題は「ツールの隙間に残る手作業」や「業務プロセス自体の属人化」にあるかもしれません。その場合、「AIツール導入」が最適解とは限らず、「業務プロセスごと外部化(BPaaS)」すべきケースも多々あります。

そして、この「AIツール導入」と「業務プロセスの外部化」のどちらか一方に偏った判断が、AI導入に失敗する原因といっても過言ではありません。

私たちミツモアの業務支援サービスでは、「AIによる作業自動化」と「BPaaSによるプロセス外部化」の両方を組み合わせ、貴社の状況にとって本当に効果が出る「最適な複合ソリューション」を設計・ご提案します。

まずは無料相談で、専門コンサルタントに「どこから手をつけるべきか」をお気軽にご相談ください。

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