「経理業務もAIで効率化できる」と聞くけれど、AIという言葉が抽象的で、「結局、何ができるの？」「今の業務がどのくらい楽になるの？」と疑問に思っていませんか？
最終更新日: 2025年10月27日
この記事はAIに詳しくない経理担当者の方に向けて、難しい話は一切抜きにして、「AIが経理業務の何を変えるのか」「どの程度のインパクトがあるのか」という疑問に、わかりやすくお答えします。
経理業務の効率化にAIがどう貢献するのか、その全体像をキャッチアップしましょう。
「ツールを導入したが、結局”ツール間の手作業”が減らない」 「”業務の属人化”が解消できず、入力作業に追われている」 …こんな根本的な課題を抱えていませんか？
この記事で解説する「AI」は、そうした”作業”を自動化する強力な手段です。 しかし、課題がもし”業務プロセス全体”にある場合、AI導入だけでは不十分かもしれません。
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経理AIは「面倒な手入力」と「繰り返しの判断」を自動化する
経理業務におけるAIの最大の貢献は、（1）AI-OCRによる「手入力の自動化」と、（2）AIによる「仕訳・消込の判断の自動化」の2点に集約されます。
調査によれば、経理担当者の約半数49.5%が紙書類の処理に月10時間以上を費やしており（※1）、紙の請求書1枚の処理には平均52分も要しているという実態（※2）があります。AIは、まさにこの「手作業」の領域をターゲットにしています。
これにより、請求書処理や経費精算にかかる工数が劇的に削減され、ヒューマンエラーの防止にも直結します。
経理AIでできること・効率化される業務（早見表）
| 業務分野 | AIでできること（活用技術） | どのくらい効率化できるか（効果） |
| 請求書処理 | 請求書の自動読み取り（AI-OCR） | 作業時間を最大70%〜90%削減（月間数百時間の事例も） |
| 経費精算 | 領収書の自動読み取り（AI-OCR） | 年間1万時間超の削減や、申請差し戻し9割削減の事例あり |
| 仕訳入力 | 勘定科目の自動提案（AI自動仕訳） | 自動化率80%〜90%を達成可能 |
| 入金消込 | 請求と入金の自動突合（AI自動マッチング） | 自動消込率 約95%を達成可能 |
| 監査・分析 | 不正や異常の自動検知（AI異常検知） | サンプリング（抜き打ち）から全件自動チェックへ移行 |
経理AIを支える2つのコア技術
経理業務のAI化は、「AI-OCR」と「AIによる自動仕訳」という2つの技術が支えています。AI-OCRはフォーマットが異なる書類からでも99%超の精度で文字を読み取り、自動仕訳は過去のデータを学習して勘定科目の判断を代行します。
1. AI-OCR（光学文字認識）
従来のOCR技術と決定的に違うのは、AIが「請求書」「領収書」といった帳票のレイアウトを学習・理解する点です。
そのため、取引先ごとにフォーマットがバラバラな書類でも、「取引先名」「日付」「金額」といった必要な情報をピンポイントで抽出します。最新のAI-OCRは、活字に対して99%を超える認識精度を達成しており、手作業による修正の手間を大幅に削減します。
2. AIによる自動仕訳（機械学習）
AI-OCRで読み取った情報や銀行の入出金データを基に、AIが過去の仕訳データを学習します。
「この取引先名、この摘要なら、この勘定科目」というパターンを覚え、新しい取引データに対しても最適な仕訳を自動で提案（サジェスト）します。担当者が行った修正も記憶するため、使えば使うほど自社のルールを学習し、精度が向上していくのが最大の特徴です。
AIで何ができる？ 5大業務の効率化インパクト【分野別】
AIは、請求書処理の手入力をゼロに近づけ、経費精算をスマホ完結にし、仕訳や消込の判断を自動化します。さらに、従来の抜き打ち監査を全件チェックに変え、決算の信頼性を高めます。
1. 請求書受領業務：「手入力ゼロ」と「インボイス対応」
できること
紙で届いた請求書をスキャン、またはPDFで受領するだけで、AI-OCRが「取引先名」「日付」「金額」「税率」を自動で読み取り、データ化します。
2023年10月に開始されたインボイス制度への対応も自動化されます。AI-OCRが「適格請求書発行事業者登録番号」を自動で抽出し、国税庁のデータベースとリアルタイムで照合。無効な番号や記載漏れがあればアラートを出し、確認作業の負荷を軽減します。
効率化インパクト
従来、紙1枚あたり平均52分もかかっていた処理時間が劇的に短縮されます。
これまで担当者が1枚ずつ目視で確認し、会計システムに手入力していた作業が、ほぼ「ゼロ」に近づきます。ある導入事例では請求書処理業務を月間500時間削減（※1）したケースや、自治体（柏市役所）で年間1,000時間以上の工数を削減（※2）した事例も報告されており、インパクトは絶大です。
2. 経費精算業務：「領収書の糊付け・入力」からの解放
できること
従業員がスマートフォンで領収書を撮影するだけで、AI-OCRが日付や金額、支払先を自動で読み取り、経費精算の申請データが自動作成されます。
効率化インパクト
従業員側は、領収書を台紙に「糊付け」したり、Excelに「手入力」したりする作業から解放されます。
経理側は、紙の原本との突合や、勘定科目のチェック作業が大幅に削減されます。AIが「規定違反（例：上限金額超え）」を自動で警告するため、承認作業の負担が激減。神奈川トヨタ自動車株式会社では全社の経費精算業務で年間15,000時間を削減（※1）、株式会社エスワイフードでは申請の差し戻し件数を9割削減（※2）したという成果も出ています。
3. 仕訳入力業務：「勘定科目の判断」をAIが代行
できること
銀行の入出金明細や、AI-OCRで読み取った請求書データを基に、AIが「摘要」や「取引先名」を解析し、適切な勘定科目を自動で提案（サジェスト）します。
効率化インパクト
新人担当者でも、AIのサポートによってベテラン並みのスピードで仕訳が可能になります。
使えば使うほどAIが自社の仕訳パターンを学習するため、自動化率は80%〜90%に達するケースも多く、これは現実的な数値とされています。担当者からは「『正しく仕訳が切れている』という納得感と安心感がある」という声（※）も上がっており、心理的な負担軽減にも寄与します。
4. 入金消込業務：「目視での突合」作業を自動化
できること
銀行から振り込まれた入金データと、自社が発行した請求データ（売掛金）を、AIが自動で突合（マッチング）します。
振込名義が請求先と微妙に異なる（例：「カ）」と「（株）」の違い）ケースや、振込手数料が差し引かれている場合など、従来は目視での確認が必要だった複雑なパターンもAIが学習し、高精度で紐付けます。
効率化インパクト
これまで担当者がExcelやシステム画面を睨みながら行っていた「目視チェック」作業の大部分が自動化されます。専用のプラットフォームでは、平均で約95%の消込率を達成したという報告もあり、売掛金の件数が多い企業では特に絶大な効果を発揮します。
5. 決算・分析業務：「異常検知」と「不正防止」
できること
AIが過去の膨大な仕訳データを学習し、「通常とは異なるパターン（異常値）」を自動で検知します。例えば、通常より極端に金額が大きい交際費、過去にない取引先からの請求、二重請求の疑いがある仕訳など、不正の兆候を検出します。
効率化インパクト
従来はサンプリング（抜き打ち）で行っていた監査やチェックを、AIが「全件自動チェック」するイメージです。これにより、ヒューマンエラーによるミスや、意図的な不正を早期に発見でき、月次決算の信頼性（内部統制）が飛躍的に向上します。
経理にAIを導入するメリットと、知っておきたい注意点
AI導入は工数削減やエラー撲滅といった直接的メリットに加え、分析業務へのシフトを可能にします。ただしAIは万能ではなく、業務フローの見直しとセットで考えるべき「協働のパートナー」です。
AI導入で得られる「3つの大きな効果・メリット」
1. 圧倒的な業務効率化と工数削減
「手入力」や「目視チェック」といった定型業務（ノンコア業務）から解放されます。AI搭載システムの導入で月次決算を従来の1ヶ月からわずか6営業日に短縮した事例（※）もあります。月末月初の業務集中が緩和され、残業時間の削減に直結します。
2. ヒューマンエラーの撲滅と品質向上
手入力による「転記ミス」や「入力漏れ」、勘定科目の「判断ミス」が劇的に減少します。調査では経理担当者の悩みのトップが「業務の属人化」（50.0%）（※）でしたが、AIによる自動化・標準化は、まさにこの問題の解決策です。申請の差し戻しを9割削減した事例のように、業務品質が向上します。
3. 「コア業務」へのシフトが実現
AI導入の最大の価値は、定型業務から解放された時間を「予算管理」「資金繰り分析」「経営陣へのレポート作成」といった、より付加価値の高い業務（コア業務）に使えるようになる点です。ある導入企業では、経理担当者が「本来の分析業務に集中できるようになった」と報告されています。
知っておきたい「AI導入の注意点」と「よくある疑問」
疑問：AIに仕事は奪われる？
回答：奪われるのではなく「協働する」パートナーになります。
AIは「手入力」や「単純な判断」を代行してくれますが、最終的な「確認・承認」や「高度な経営判断」は人間の仕事として残ります。調査結果の分析でも、AIは経理担当者の仕事を奪うのではなく、彼らをより付加価値の高い業務へと導く「協働者」であると結論付けられています。
注意点1：AIも100%完璧ではない
AI-OCRの読み取り精度は99%超と非常に高いですが、100%ではありません（特に手書きや癖のある文字）。そのため、「AIが読み取った結果を、人間が最終確認する」という業務フローが基本です。
注意点2：導入して終わり、ではない
AIツールを導入する際は、同時に「紙の原本の回覧を廃止する」など、AIの活用を前提とした業務フローの見直しもセットで行うことで、初めて最大の効率化効果が生まれます。
まとめ：AIは「経理業務のアシスタント」。まずはできることを知り、活用イメージを持とう
経理業務におけるAIは、主に「AI-OCR」と「自動仕訳」技術によって、面倒な「手入力」と「判断」の業務を自動化し、劇的な効率化を実現します。
これにより、請求書処理や経費精算などの工数が劇的に削減され、ヒューマンエラーも減らすことができます。
AIは仕事を奪う敵ではなく、私たちを定型業務から解放し、より付加価値の高い仕事に集中させてくれる「パートナー」です。
まずは「自分のあの作業もAIで楽になるかも？」と具体的な活用イメージを持つことが、経理DXの第一歩です。
AIで「手入力」は楽になる。では、その”先”の課題はどうしますか？
この記事で解説した通り、AIは面倒な「手入力」や「判断」を自動化し、経理業務を劇的に効率化します。
しかし、もし貴社の根本的な課題が、 「ツールは導入したが、ツール間のデータ入力作業が残っている」 「そもそも業務プロセス自体が属人化しており、AI導入だけでは対応しきれない」 といった点にある場合、AIツールを導入する”だけ”では、本当の課題解決にならないかもしれません。
私たちミツモアは、この記事で紹介した「AIによる作業効率化・自動化」はもちろん、 もうひとつの強力な選択肢である「業務プロセスごとの外部化（BPaaS）」も扱っています。
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