「バックオフィス業務の効率化を進めたいが、『AIツール導入』と『BPaaS導入』のどちらを選ぶべきか?」


DX推進や経営企画の担当者として、経営層から「コスト削減」と「生産性向上」を強く求められる中、この二択に悩むのは当然です。
バックオフィス業務では「人手が不足している」(34.7%)、「仕事が属人化している」(30.8%)といった課題が特に深刻であり、特に従業員100〜499名規模の企業ではこの傾向が顕著(※)です。
この記事ではBPaaSとAIの違いから、「AI導入」と「BPaaS導入」それぞれのメリット・デメリット、そして選ぶべき企業のタイプまで解説します。

「AI導入」と「BPaaS導入」、どちらが自社に最適かお悩みではないでしょうか。日々の業務を改善するためには、これらの選択肢を業務課題や目的から逆算して設計することが大切です。まずはミツモアの無料相談で、貴社に最適な解決策を確認してみませんか?
BPaaSとAIの違いは「サービスモデル」と「技術要素」

BPaaSとAIの違いは、両者が何を指すかという根本的な点にあります。
BPaaS(Business Process as a Service)は、業務プロセスそのものを外部委託する「サービスモデル」です。単なる業務代行(BPO)とは異なり、クラウドシステムと専門人材を組み合わせて、業務プロセス全体の最適化・標準化を実現します。市場は年平均14.8%で急成長しており、アウトソーシングの主流になりつつあります。
対照的に、AI(Artificial Intelligence)は、業務を自動化・高度化するための「技術要素」です。例えば、「ChatGPT」など生成AIの普及により、人事や財務といった社内業務の最適化を目的とした「ツール」としての導入が加速しています。
両者の関係性を整理すると、BPaaSは業務プロセス全体を請け負う「サービス」であり、AIはそのサービス品質を高めるために内部で活用される「技術」の一つ、という位置づけになります。
| 比較項目 | BPaaS (Business Process as a Service) | AI (Artificial Intelligence) |
| 分類 | サービスモデル / 契約形態 | 技術要素 / 機能 |
| 役割 | 業務プロセス全体のアウトソーシング(システム+人) | 業務の自動化・高度化支援(ツール) |
| 目的 | 業務プロセス全体の最適化、属人化の解消 | 特定業務の自動化、予測、分析 |
| 導入形態 | 外部ベンダーへの業務委託 | 自社システムへのツール導入・連携 |
| 関係性 | AIを活用してサービス品質を高める場合がある | BPaaSの中で強力な技術として利用される |
「AI導入」と「BPaaS導入」どちらを選ぶべきか
BPaaSとAIの概念的な違いを理解した上で、DX推進担当者にとっての現実的な問いは「アプローチA:AIを自社で導入・運用する」か、「アプローチB:BPaaSで業務ごと外部委託する」か、という選択です。
この2つのアプローチは、コスト構造、必要なリソース、導入スピードにおいて根本的に異なります。AI導入は「ハイリスク・ハイコントロール」な選択肢であり、BPaaS導入は「ローリスク・ローコントロール」な選択肢と言えます。
以下の比較表で、両者の違いを明確にします。
| 比較観点 | アプローチA:AIを自社導入・運用 | アプローチB:BPaaSを導入(外部委託) |
| 対象範囲 | 限定的(例:請求書処理「だけ」をAI-OCR化) | 広範囲(例:経理業務「全体」) |
| 導入コスト | 初期費用+月額利用料+内部人件費(隠れコスト) | 月額/年額のサービス利用料(コストが予測可能) |
| 必要なリソース | 高い(AI運用人材、データ整備、保守体制) | 低い(ベンダーへのディレクションのみ) |
| 導入スピード | 遅い(選定・PoC・定着化に壁) | 速い(既存サービスを利用) |
| メリット | 自社にノウハウが溜まる、柔軟なカスタマイズ | 即効性、リソース不要、属人化の即時解消 |
| デメリット | 使いこなせないリスク、データ整備・保守の負荷 | ノウハウが溜まらない、業務のブラックボックス化 |
| BPRの必要性 | 自社で実施する必要あり | ベンダーが主導する場合が多い |
「AI導入」が適している企業

AIの自社導入は、特定の業務を高度化し、自社にノウハウを蓄積したい場合に有効なアプローチです。しかし、その裏には「使いこなせない」という重大なリスクが潜んでいます。
AI導入の主なメリット:自社ノウハウの蓄積と柔軟性
最大のメリットは、AI活用による競争優位の構築です。特に製造業などでは、AIの活用が劇的な成果を生むケースがあります。
- パナソニック コネクト株式会社ではOpenAIの大規模言語モデルをベースに開発した自社向けのAIアシスタントサービス、「ConnectAI」で年間18.6万時間の業務時間削減を実現しました。(※1)
- 神戸製鋼所では、AI-OCRの活用により、帳票処理業務の時間を60%削減しています。(※2)
このように、特定の業務領域において、自社でデータを蓄積・活用し、業務を高度化できる点がAI自社導入の魅力です。
AI導入の注意点と「よくある失敗」:ツールが「塩漬け」になるリスク
「自社で使いこなせるか?」という点は、AI導入における最大の関門です。
調査によれば、生成AIを導入している企業の多くは試用段階に留まり、本格導入はわずか6%(※)に過ぎません。多くの企業が投資対効果を得られない「PoCの壁」に直面しています。
失敗の最大の要因は、「AIやデジタルの高度な知識・技術を持つ人材が足りない」(31%)こと(※)です。AIツールを導入しても、データ整備や運用保守を担う内部人材がいなければ、ツールは「塩漬け」になります。
さらに、見落とされがちなのが「隠れたコスト」です。
- 内部人件費: AIを有効活用するためのデータクレンジングや継続的な改善活動には、専門人材の工数がかかります。
- コンプライアンス負荷: 自社導入の場合、経済産業省の「AI事業者ガイドライン」が求める安全性やプライバシー保護、説明責任(アカウンタビリティ)を担保する体制を、自社で構築・維持する必要があります。
これらの管理・統制コストは、バックオフィス業務の「負荷軽減」という本来の目的と相反する結果を招くリスクがあります。
「BPaaS導入」が適している企業

BPaaSの導入は、深刻な人手不足や属人化に悩み、即効性のある解決策を求める企業に適しています。コア業務へのリソース集中を最優先する場合に有効です。
BPaaS導入の主なメリット:即効性とリソースの解放
BPaaSの最大の価値は、業務プロセスをシステムと専門人材ごと外部化することで、社内リソースを即座に解放できる点にあります。
- 三菱地所は、請求書処理にBPaaSを活用し、月間合計860分の業務時間削減を達成(※1)しました。
- KJRマネジメント(51〜300名、サービス業)は、経費精算業務をアウトソーシングし、専門性の高いコア業務へのリソース集中に成功(※2)しています。
ユーザーからは「業務プロセスが可視化され、ブラックボックスが解消された」「ノンコア業務から解放され、コア業務に集中できるようになった」といった声が上がっており、属人化の解消と従業員の負担軽減に直結します。
BPaaS導入の注意点と「よくある失敗」:従来のBPOと同じ結果になるリスク
一方で、「コスト削減止まりで、業務プロセスは改善されなかった」という、従来のBPO(業務代行)と同じ結果に陥るリスクも存在します。
重要なのは、導入するサービスの見極めです。
BPaaS市場は従来のBPOを上回る年平均13.3%の成長率で拡大していますが、これは単なる業務代行から、AIやRPAを組み込んで付加価値を高めるサービスへのシフトが進んでいることを示しています。
導入前に、そのサービスが「単なる業務代行」なのか、業務プロセスの変革(BPR)まで踏み込む「真のBPaaS」なのかを厳格に評価する必要があります。
第3の選択肢:AIとBPaaSを「組み合わせる」アプローチ
「AI導入」と「BPaaS導入」を比較してきましたが、市場のトレンドは両者の「融合」へと向かっています。それが「AI×BPaaS」という第3の選択肢です。
「AI×BPaaS」が解決すること【いいとこ取り】
AI×BPaaSは、ペルソナが抱える「AIの高度な自動化は欲しいが、自社での導入・運用リスクは負えない」という根本的なジレンマを解決します。
- AI導入の課題だった「自社での運用負荷・人材不足・コンプライアンス対応」を、BPaaSのサービス提供者が専門家としてすべて引き受けます。
- BPaaSの課題だった「単なる業務代行」を、AIの技術が解決し、業務の高度化・自動化を実現します。
これは、AかBかという二者択一ではなく、両方のメリットを享受できる、最も合理的かつ先進的な選択肢です。
AI×BPaaSは、従来のBPaaSと何が違うのか?
従来のBPaaSが「人手+クラウドシステム」による効率化だったのに対し、AI×BPaaSは、そこに「AIによる高度な自動化・分析・予測」が加わります。
これにより、企業は単なる業務効率化から、データに基づく「戦略的価値創造」へとシフトすることが可能になります。例えば、経理業務の自動仕訳の精度向上や、人事における採用マッチング精度の向上などが挙げられます。
自社に最適なアプローチを選ぶための判断基準
では実際のところ「A:AI導入」「B:BPaaS導入」「C:AI×BPaaS導入」のどれを選ぶべきでしょうか。以下の3つの質問で、自社のアプローチを判断してください。
Q1. 解決したいのは「特定業務」か「プロセス全体」か?
- 特定業務の高度化(例:不良品検知)が目的なら、「AI導入」が適しています。
- プロセス全体の標準化・効率化(例:経理業務)が目的なら、「BPaaS」または「AI×BPaaS」が適しています。
Q2. 社内にAIやデータを扱える「専門リソース」はあるか?
- 「ある」場合、「AI導入」も選択肢に入ります。
- 「ない」場合、「AI導入」は「人材不足」の壁に阻まれ、失敗リスクが極めて高くなります。「BPaaS」または「AI×BPaaS」が現実的な選択です。
Q3. 「即効性」と「自社ノウハウ蓄積」のどちらを優先するか?
- 「ノウハウ蓄積」が最優先なら、「AI導入」です。
- 「即効性」と「リソース解放」を優先するなら、「BPaaS」または「AI×BPaaS」です。
最後に、TCO(総所有コスト)の視点が不可欠です。
例えば請求書処理業務において、AI-OCRを自社導入した場合、ソフトウェア費用(例:年96万円)に加え、データ整備や運用管理のための内部人件費(例:年150万円)が発生します。
この場合、年間TCO(推定256万円)は、BPaaSを導入した場合の年間TCO(推定120万円)を大幅に上回る可能性があります。
「コスト削減」に応えるには、ツールのライセンス費用だけでなく、目に見えない内部人件費や管理コストまで含めたTCOで比較検討すべきです。
まとめ:AIとBPaaS、自社の課題に合わせたアプローチ選択を

本記事では、BPaaSとAIの違い、そして「AI導入」と「BPaaS導入」という2つのアプローチの比較、さらに第3の選択肢「AI×BPaaS」について解説しました。
- BPaaSは業務プロセス全体を請け負う「サービスモデル」
- AIは業務を自動化する「技術要素」
重要なのは、自社のリソース(特に専門人材の有無)、解決したい課題の範囲(特定業務かプロセス全体か)、そしてTCO(総所有コスト)の観点から、最適なアプローチを選択することです。
労働力不足が深刻化し、DX推進が待ったなしの状況において、自社のリソースをどこに集中させるべきか。この記事で得た判断基準が、貴社の最適なバックオフィス改革の第一歩となれば幸いです。
「AI導入」と「BPaaS導入」、貴社の最適解は?

AIの自社導入には「運用リスク」が、BPaaSには「単なる業務代行に終わる」リスクがあり、最適なアプローチは企業の課題によって異なります。
「自社の場合、AIで “作業” を自動化すべきか?」 「それとも、BPaaSで “業務ごと” 外部化すべきか?」この判断を誤ると、コストだけがかかり課題は解決しません。
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