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アルコールチェック義務化で企業と安全運転管理者がやるべきこと

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最終更新日: 2025年10月03日

2023年12月1日から、アルコール検知器を用いたアルコールチェックが義務化されました。運送業をはじめ、事業で自動車やバイクを利用する多くの企業や個人事業主がアルコールチェック義務化の対象です。

「自社がアルコールチェック義務化の対象なのか知りたい」

「安全運転管理者に指名されたが、何をするべきか分からない」

「直行直帰時や安全運転管理者が不在時の対応について知りたい」

という方向けに、アルコールチェック義務化の対象事業所やアルコールチェック体制の具体的な構築ステップ、直行直帰時などの運用ルールまで解説します。

アルコールチェック義務化に関してよくある疑問を解消して、法令を遵守したクリーンな事業運営を行いましょう。

アルコールチェック義務化の概要

白ナンバー

まずは最低限押さえておきたい、アルコールチェック義務化の概要を解説します。

2023年12月1日より義務化が開始

2023年12月1日から「アルコール検知器の使用義務化規定」が施行されています。

本来は2022年10月に施行予定でしたが、半導体不足や物流停滞などの問題によりアルコール検知器の供給が追い付かず、必要台数を満たせない状態だったので施行期日が延期されました。

警察庁の発表によると、2023年4月に取りまとめられたアンケートで各事業所の7割にアルコール検知器が行きわたったことが明らかになりました。市場の状況を見てもアルコール検知器による検査が十分に可能だと判断され、2023年12月1日から義務化されました。

「白ナンバー車両」も対象に

運賃をもらって旅客や貨物などを運ぶ緑ナンバーの自動車だけでなく、条件によっては「一般的な白ナンバーの車両を使用する事業者」も対象になります。具体的な条件は以下の通りです。

  • 乗車定員が11人以上の自動車を1台以上保有している
  • 自動車を5台以上保有している

上記の条件にいずれかでも当てはまる場合は、業種に関係なく対象になります。社用車なども対象に含まれることがポイントです。

なお上記は「事業所ごとの条件」となります。

アルコール検知器によるチェックが義務化に

2023年12月1日以降は、これまでの目視等による確認に加えて検知器を使ったアルコールチェックが義務化されています。

アルコールチェックの義務化が進められたのは、2021年6月に千葉県八街市で起きた飲酒運転による児童5人の死傷事故が大きなきっかけです。

この事故によって、事業利用される緑ナンバーだけでなく、自家用車にあたる白ナンバーであっても事業に用いられる場合は厳格なアルコールチェックが必要であると判断され、検知器を用いたアルコールチェックが義務化されました。

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アルコールチェック義務化対象の事業所とは

アルコールチェック義務化対象の事業所は、以下の条件のうちいずれかに当てはまる事業所です。

  • 緑ナンバー車両を保有する事業者
  • 乗車定員11人以上の白ナンバー車を1台以上保有している事業所
  • 軽自動車・原付バイクを除く白ナンバー車を5台以上保有している事業者

社用車だけでなく、従業員の自家用車やリース車両、レンタカー等も、事業で使用されている場合は台数に計上します。

注意点は、企業全体ではなく事業所ごとに計算を行う点です。たとえば、本店に3台、A支店に2台、B支店に4台の車両を保有している企業であれば、法的な選任義務・チェック義務は発生しません。

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アルコールチェックをするための6ステップ

アルコールチェックを業務の一部として運用していくためには、事前の準備が必要です。それぞれのステップでやるべきことを確認して、アルコールチェック体制を整えましょう。

① 安全運転管理者を選任する

安全運転管理者を選任するには資格要件があります。

安全運転管理者の資格要件

  • 20歳以上
  • 2年以上の運転管理実務経験
  • 過去2年以内に公安委員会の解任命令を受けていない
  • 過去2年以内に重大な交通違反を犯していない

選任後は、15日以内に事業所の所在地を管轄する警察署へ、必要書類を揃えて届け出ます。

② アルコール検知器を導入する

アルコール検知器は以下のように種類が分けられます。

種類 特徴
半導体式 安価
電気化学式 高精度で業務利用に適する
据置型 事業所に設置するタイプ
携帯型 ドライバーが携帯するタイプ

自社の勤務体系に合ったアルコール検知器を導入しましょう。

導入後は法令に定められている「常時有効に保持する義務」を果たすため、メーカーの指示に従って定期的な点検やセンサー交換などのメンテナンスを行います。

③ アルコールチェックの運用ルールを作成する

アルコールチェックを円滑に実施するためには、詳細な運用ルールを事前に策定することが不可欠です。

まず、チェックは運転を含む業務の開始前と終了後の1日2回を基本とし、そのタイミングを明確にします。確認方法は、原則として安全運転管理者による対面での目視と検知器使用としますが、直行直帰などやむを得ない場合は、ビデオ通話や電話を用いる非対面での手順を定めます。

また、アルコールが検知された場合の運転禁止命令や、管理者が不在の際の代行手順など、あらゆる状況を想定したルールをマニュアルとして文書化し、全社で共有することが重要です。

④ ドライバーをはじめ従業員への周知・教育を行う

制度を実効性のあるものにするためには、全従業員への周知と教育が欠かせません。研修などを通じて、アルコールチェックが法的な義務であること、飲酒運転の危険性や厳しい罰則、そして自社の具体的な運用ルールについて、運転者だけでなく全従業員に理解を促します。

特に検知器の正しい使い方や、測定前に飲食や喫煙を控えるといった注意点、アルコールが体内で分解される仕組みなどの知識を共有することが重要です。さらに、チェックの拒否や不正行為が懲戒処分の対象となることを就業規則に明記し、制度の重要性を組織全体に浸透させます。

⑤ アルコールチェックを行う

アルコールチェックは策定した運用ルールに基づき、運転を含む業務の開始前と終了後の1日2回、確実に行います

原則として、安全運転管理者(またはその代行者)が運転者と対面し、顔色や声の調子などを目視で確認するとともに、アルコール検知器を使用させて測定結果を相互に確認します。

直行直帰などで対面確認が困難な場合は、運転者に携帯型検知器を携行させ、ビデオ通話や電話などを利用して、対面と同等の確認を行います。

酒気帯びの有無を確認することが目的であり、アルコールを飲まない従業員も例外なく対象となります。

⑥ アルコールチェックの結果を記録し1年間保存する

アルコールチェック実施後は、結果を記録して1年間保存するように法律で義務付けられています。

記録簿には以下の事柄を記載しましょう。

  1. 確認者名
  2. 運転者名
  3. 自動車登録番号
  4. アルコールチェックを実施した日時
  5. アルコールチェックの方法
  6. 酒気帯びの有無
  7. 指示事項
  8. その他備考

記録簿の様式は法的に決められているわけではありません。紙の帳票やエクセル、クラウドシステムなど、自社で管理しやすい方法を選択できます。

ただしどのような方法で保存するにしても、必要な時に即時提示できる形で保存・運用する必要があります。バックアップを取得するなどの対策が必須です。

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直行直帰・安全運転管理者不在時のアルコールチェックはどうする?

事業の形態によっては直行直帰で働くこともあります。また出張や休暇などの理由で安全運転管理者不在時にはどうやってアルコールチェックを行うべきか悩むこともあるでしょう。

ケース別にアルコールチェックの方法をご紹介します。

ケース1:直行直帰のドライバーのアルコールチェック方法

直行直帰の場合は対面での確認は難しいです。ドライバーには携帯型のアルコール検知器を携帯してもらい、さらに、対面に準ずる方法でアルコールチェックを実施します。

対面に準ずる方法とは以下の通りです。

  • スマートフォンやタブレット端末によるビデオ通話 ※ 推奨
  • 電話による音声確認

推奨されるのは、スマートフォン等のビデオ通話機能です。これにより管理者は運転者の顔色や声の調子を目視で確認し、同時に検知器の測定結果を画面越しに把握できます。

メールやチャットなど、音声による対話を伴わない報告は「対面に準ずる方法」とは認められない点にご注意ください。

ケース2:安全運転管理者が不在のアルコールチェック方法

安全運転管理者が不在の場合に備えて、あらかじめ補助者を指名しておきましょう。

補助者に特別な資格は不要ですが、正しい確認手順や、アルコールが検出された際の対応について事前に教育しておくことが重要です。

確認内容そのものは、安全運転管理者がアルコールチェックを行う場合と同一です。

なお、補助者が確認を行った場合でも、最終的な責任は安全運転管理者が負います。

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アルコールチェックでアルコールが検出されたときの対処法

アルコールが検出されたときは慌てずに対処することが必要です。対処方法を段階ごとに分けて解説します。

運転の即時中止を命令する

アルコールが検知された場合、まずは当該従業員の即時運転中止を命じましょう。道路交通法第65条で、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と定めているためです。

アルコール検知器の数値が、道路交通法上の酒気帯び運転の基準値である呼気1リットルあたり0.15mgを下回っていても、安全のために運転を禁止してください。

再検査を行い誤検知ではないか確認する

食事や習慣によってはアルコールが誤検出されることがあります。誤検出の原因になりやすいものには以下が挙げられます。

  • キムチや味噌汁など発酵食品
  • あんぱん
  • 栄養ドリンク
  • ノンアルコール飲料
  • エタノールを含むマウスウォッシュや歯磨き粉
  • 喫煙直後の呼気に含まれる一酸化炭素
  • 糖質制限によるケトン体の発生
  • 内服薬の影響

本人から飲酒をしていないと申告があり、アルコールの誤検出が疑われる場合は再検査を行います。

【再検査の手順】

  1. 水でうがいをする
  2. 5分から15分を目安に時間を空ける
  3. 別の測定器を用いて再検査する

測定器が1つしかない場合は、同一の測定器で再測定を行っても構いません。別の測定器を使うことで、機器の故障や誤作動などの可能性を排除できます。

再検査でアルコールが検出されなければ、1回目のチェックは誤検知であったことが分かります。運転禁止を解除して、業務を開始してもらいましょう。

アルコールが検出されたことを安全運転管理者へ報告する

再検査でもアルコールが検出された場合は、アルコール検出事案として迅速に対応する必要があります。

アルコールが検出されたことを安全運転管理者に報告します。安全運転管理者が不在の場合は、その業務を補佐する者へ報告しましょう。

記録簿の作成を行う

アルコールの検出報告を受けた場合、安全運転管理者は以下の点を記録しましょう。

  • アルコールが検出された従業員の氏名
  • アルコールが検出された日付
  • アルコールが検出された事業所(事業所が複数ある場合)
  • 検知されたアルコール濃度
  • 再検査の有無
  • 再検査の理由
  • アルコールが検出された従業員に与えた指示の内容(例:一時待機、自宅待機 など)
  • 代替措置の内容(代替運転手の手配 など)

記録簿はあくまで社内文書であり、警察など公的機関への提出を行うものではありません。そのため記録すべき内容が厳密に決まっているわけではありませんが、いつ、どこで、誰からアルコールが検出され、どのような指示を出したか、という点が明確になるように記録をしましょう。

警察への通報をする

特定のタイミングでアルコールを検知した場合は、警察への通報が必要です。代表的なタイミングは以下の通りです。

  • 本人が自家用車等を運転して通勤し、運転前のチェックでアルコールが検出された場合
  • 運転後のチェックでアルコールが検出された場合

特に、運転後チェックでアルコールが検出された場合は、業務中に飲酒をした、あるいは飲酒運転を行った可能性が極めて高いです。ただちに警察に通報しましょう。

懲戒処分を検討する

飲酒運転は重大なコンプライアンス違反であるため、懲戒処分の検討が必要です。

アルコールチェックで陽性反応となったことで懲戒処分を検討するのであれば、以下の点に注意しましょう。

  • アルコールチェックの拒否や陽性反応が出た際の罰則について、あらかじめ就業規則に明確に規定する
  • 処分の重さは事故の有無や業務への影響、常習性、本人の反省度などを総合的に考慮して判断する
  • 処分は就業規則に基づき、公平かつ客観的な基準で決定し、感情的な判断を行わない

処分の重さについて、過去の判例や各自治体の基準では、酒酔い運転は免職、酒気帯び運転は免職または停職と定められていることが多いです。

再発防止策を徹底する

アルコールチェックで陽性反応が出た場合、当該従業員のみの問題と考えてしまいがちですが、組織全体で再発防止に取り組むようにしましょう。

まずはアルコールが検知された従業員本人への指導や教育を行います。なぜアルコールが残ってしまったかを本人と振り返り、飲酒習慣の改善を指導しましょう。

次に、陽性反応発生日や発生部署などのデータを分析し、特定の年月日や部署でのみ多くアルコールが検知されていないかを確認します。組織的なリスクの特定につながるので、念入りに行いましょう。

アルコール依存症が疑われる場合は治療をサポートする

同一の従業員からのアルコール検知が繰り返される場合や、勤務態度が著しく変化したなど、アルコール依存症が疑われる場合は、医療機関への橋渡しも必要になります。

産業医との面談や休職の手配など、直接的なアプローチだけではなく、「最近、遅刻が多いみたいだけど体調は問題ない?」など、業務に支障をきたしている客観的事実を冷静に伝え、改善を促すことも重要です。

大切なことは、アルコール依存症は本人の意思の問題ではなく、病気であると認識することです。専門的な治療を受け、職場に復帰できるように手助けをしましょう。

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アルコールチェックを実施しなかったときの罰則

アルコールチェックを実施しないことは、安全運転管理者が行うべき業務の違反となり、業務怠慢と認識されます。アルコールチェックを実施しなかったときに受ける罰則について確認しましょう。

安全運転管理者の解任

公安委員会は、安全運転管理者がアルコールチェックをはじめとする道路交通法施行規則で定められた業務を怠っていると判断した場合、企業の代表者である使用者に対して解任を命じることができます。

アルコールチェックの未実施が発覚した際、まずは是正措置が指導されますが、改善が見られない悪質なケースでは解任命令に至ります。

安全運転管理者の業務怠慢は、重大な事故につながる危険性を放置する行為と見なされるため、厳しい措置が取られます。

選任義務違反や是正措置命令違反は50万円以下の罰金が科される

そもそも安全運転管理者を選任すべき事業者が選任していなかった場合や、公安委員会からの解任命令に従わなかった場合には、50万円以下の罰金が科せられます。

またアルコールチェックの実施体制に不備があるなど、安全運転管理者の業務が適切に行われていないと公安委員会が認めた場合、是正措置命令が出されます。

この命令に従わず、改善がみられない場合も同様に50万円以下の罰金が科される可能性があります。これらの罰則は企業の安全運転確保に対する責任を明確にするためのものです。

違反の種類 罰則の対象者 刑事罰の内容
安全運転管理者の不選出 企業 50万円以下の罰金
是正措置命令違反 企業 50万円以下の罰金

酒気帯び・酒酔い運転は車両提供者も懲役刑や罰金刑が科される

従業員が酒気帯び運転や酒酔い運転を行った場合、車両提供者も運転者とほぼ同等の刑事罰を受けます。

違反の種類 罰則の対象者 刑事罰の内容 行政処分(運転者)
酒気帯び運転 運転者 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 35点、免許取消(欠格期間3年)
車両提供者(企業等) 5年以下の懲役または100万円以下の罰金
酒酔い運転 運転者 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 13点~25点、免許停止または取消
車両提供者(企業等) 3年以下の懲役または50万円以下の罰金

罰則の重さからも分かるように、アルコールチェックは単なる事務作業ではなく、企業の存続を左右しかねない重大なリスクマネジメント活動です。

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アルコールチェックは飲酒運転を防止し、健全な事業活動のために重要な業務です。しかし、アルコールチェックには手間がかかります。

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