アルコールチェックの義務化が2023年12月1日から始まりました。条件によっては「白ナンバー車両」も義務化の対象になるため、注意が必要です。
そんな中「自社がアルコールチェック義務化の対象なのか」「対象であれば、誰が、何をしなければならないのか」といった不安を抱いている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、アルコールチェック義務化の概要を解説し、対象となる企業の条件や取るべき対策などを紹介します。
アルコールチェック義務化の概要
まずは最低限押さえておきたい、アルコールチェック義務化の概要を解説します。
2023年12月1日より義務化が開始
2023年12月1日から「アルコール検知器の使用義務化規定」が施行されています。
本来は2022年10月に施行予定でしたが、半導体不足や物流停滞などの問題によりアルコール検知器の供給が追い付かず、必要台数を満たせない状態だったので施行期日が延期されたのです。
警察庁の発表によると、2023年4月に取りまとめられたアンケートで各事業所の7割にアルコール検知器が行きわたったことが明らかになりました。市場の状況を見てもアルコール検知器による検査が十分に可能だと判断され、2023年12月1日の義務化が決定しました。
「白ナンバー車両」も対象に
運賃をもらって旅客や貨物などを運ぶ緑ナンバーの自動車だけでなく、条件によっては「一般的な白ナンバーの車両を使用する事業者」も対象になります。具体的な条件は以下の通りです。
- 乗車定員が11人以上の自動車を1台以上保有している
- 自動車を5台以上保有している
上記の条件にいずれかでも当てはまる場合は、業種に関係なく対象になります。当然、社用車なども対象に含まれることがポイントです。
なお上記は「事業所ごとの条件」となります。
アルコール検知器によるチェックが義務化に
2023年12月以降は、これまでの目視等による確認に加えて検知器を使ったアルコールチェックが義務化されています。
アルコールチェックの義務化が進められた背景には、2021年6月に千葉県八街市で起きた飲酒運転による児童5人の死傷事故が大きなきっかけとなりました。
この事故によって従来のチェック体制では不十分と判断され、アルコールチェック検知器の使用義務規定が導入されたのです。
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アルコールチェック義務化対象の事業所がやるべき3つのこと
自社がアルコールチェック義務化の対象企業であれば、早急な対応が必要です。事業所がやるべきことを3点紹介します。
「安全運転管理者」を決める
アルコールチェック義務化の条件に当てはまる事業所は、安全運転管理者の選任が必要です。必要書類をそろえ、都道府県公安委員会に届け出をしましょう。
安全運転管理者は、運転者の状況把握や安全運転指導など自動車の安全な運転に必要な役割を担います。例えば、運転者の酒気帯びの有無の確認や確認内容の記録と保存、運転日誌の備え付けなどを行います。
選任する際は
- 自動車の運転の管理に関して2年以上の実務経験がある
- 20歳以上(副安全運転管理者を選任する場合は30歳以上)
などの要件を満たさなければなりません。
規模が大きな事業所では、安全運転管理者だけでは手が回らないこともあるでしょう。副安全運転管理者や安全運転管理者を補助する人などが、業務を代行することも可能です。
副安全運転管理者は1年以上自動車の運転の管理に関する実務経験があり、20歳以上であれば選出できます。
アルコール検知器を導入する
アルコールの有無を計測できるアルコール検知器を購入し、常時使用できる状態にしましょう。国家公安委員会が定める条件は「数値・警告音・色などでアルコールの有無や濃度を示せるもの」です。
常時使用できる状態でなければならないので、ただ設置するだけでなく定期的なメンテナンスなどを行う必要があります。
購入を検討しているものが一定の品質基準を満たしているかどうかが気になる場合や、どのようなものを購入すべきか迷っている場合は「アルコール検知器協議会」のサイト上で認定機器一覧をチェックし、参考にするとよいでしょう。
アルコールチェックの実施と記録・保管をする
安全運転管理者を選定し検知器を導入したら、アルコールチェックの実施と記録を行います。
チェックするタイミングは出勤時と退勤時の1日2回です。朝礼や終礼などの従業員が集まったタイミングで行うと効率的です。
記録用紙に、以下の項目を記録しましょう。
- 検査日時
- 運転者名
- 自動車登録番号もしくは識別番号
- 検査結果
- 確認方法(アルコール検知器使用の有無、対面・カメラ越しなど)
- 指示事項
- 確認者名
なりすましがないように、本人確認ができる体制も整えておくと安心です。
なお、アルコールチェックの記録は1年間保存しましょう。保存形式に特に決まりはなく、紙とデータのどちらでも保存が可能です。Excelなどのソフトを使ってパソコン内にデータを保管しても、ノートや記録用紙などの状態で保管しても構いません。
データで保管した方が利便性は高いですが、紙で保存する場合には「どこに保管したか分からなくなった」「間違えて破棄してしまった」などのトラブルを防ぐために、社内で保管のルールを決めておきましょう。
アルコールチェックを行う際のポイント
アルコールチェック義務化対象の事業所がやるべきこと3点を紹介しましたが、実施に際してのポイントや注意点をまとめました。
非対面の場合はモニター越しでも可能
直行直帰の際や出張時にアルコールチェックをするときは、安全運転管理者が対面で直接確認するのは難しい状況です。対面でのチェックが困難な場合は、スマホやモニター越しでも構いません。
例えば運転者にあらかじめ携帯型のアルコール検知器を持たせて、業務開始時と終了時にスマホのカメラ機能を使って報告させる方法があります。
アプリやシステムの導入を検討してみる
アルコールチェックの記録は手作業でもできますが、手書きだと記載漏れや管理上の不備が発生することがあります。特に多くの運転者を抱える事業所は、チェックだけでも膨大な時間が必要です。
ミスをなくして記録と保存を効率化するには、アプリや管理システムの導入がおすすめです。
管理システムを導入すると自動でチェック結果の記録・保存ができ、スムーズに業務を開始できます。直行直帰や出張が多い業種の場合、遠隔地でも本人確認が可能なシステムを導入するとチェックが楽になります。
専用アプリをインストールしたスマホと、携帯型のアルコール検知器をBluetooth(ブルートゥース)で接続し、運転者が息を吹き込むだけでアルコールチェックが完了する便利なサービスもあります。
アルコールチェックアプリについては、以下の記事をご参照ください。
アルコールチェックの周知と安全教育
アルコールチェック義務化にあたり、肝心な運転手がアルコールチェックの必要性を十分に理解できていないと違反につながります。「なぜチェックしなければならないのか」「チェックを怠るとどうなるのか」などを運転者に伝え、教育することが大事です。
重要性が理解できていても、アルコールチェックの方法に対して間違った認識をもっていると、意図せずに違反してしまうこともあります。
チェックの方法や手順を明確にし、社内ルールとして周知徹底しましょう。疑問や不明点がある際はいつでも確認できるように、マニュアルも整備しておくと安心です。
アルコールチェックをしなかった場合の罰則
アルコールチェックを怠った場合には、どのような罰則があるのでしょうか?併せて、飲酒運転をしてしまった場合の罰則についても解説します。
安全運転管理者の解任
アルコールチェックを怠ると「安全運転管理者の業務違反」になり、解任される可能性があります。安全運転管理者が不在の状態では社用車が利用できなくなり、業務が停滞します。
業務を停止せざるを得ない状況になれば、経営に大きな打撃を与えるでしょう。新しい安全運転管理者を選任するには、必要書類をそろえて都道府県公安委員会に届け出る必要があります。
過去2年以内に安全運転管理者などの解任命令を受けた者は、安全運転管理者になれません。酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転などの違反をして2年以上経過していない者も、安全運転管理者の資格がないと判断されます。
飲酒運転は懲役刑もしくは罰金の可能性
アルコールチェックをせず飲酒運転を防げなければ、重大な事故を起こす可能性があります。飲酒運転は法律違反なので、刑事罰を受けることになります。
酒酔い運転をした場合の罰則は、運転者や車両などを提供した者は5年以下の懲役刑、または100万円以下の罰金刑です。酒類の提供者や同乗者も、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
飲酒運転をした本人だけでなく、飲酒していると知りながら運転させた人や車両の提供者、同乗者なども罪に問われます。
飲酒運転させない環境作りを徹底しよう
アルコールチェックの義務化に対応するには、チェック体制を徹底して飲酒運転をさせない仕組みを作ることが大事です。まずは事業所ごとに安全運転管理者を選任し、アルコール検知器を導入しましょう。
勤務形態に応じて運転者に携帯用のアルコール検知器を持たせ、どのような状況でも対応できるようにします。従業員にアルコールチェックの重要性や、飲酒運転の危険性をしっかりと伝えて理解を求めましょう。
チェックの記録や保存は手作業でも構いませんが、アプリやシステムを導入すると運用が楽になります。運転者の数が多い場合は、導入を検討するとよいでしょう。
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