シンクライアントはクライアント端末の処理を最小限に絞ったシステムです。テレワークやセキュリティ対策として注目を集めていますが、導入するのであれば気をつけたいポイントがあります。注目されるシンクライアントの概要やポイントを確認しましょう。
シンクライアントとは?
シンククライアントは「少ない」という意味のThinと「利用者側端末」を意味するClientを足し合わせた用語です。具体的にどのようなシステムか詳しく概要を確認しましょう。
ユーザー側の機能を限定する仕組み
シンクライアントとは従来ユーザーが使用する端末(クライアント端末)で行われる処理機能の大半を、サーバーに集約した仕組みです。処理の大半をサーバーに移すことでクライアント端末の役割を、画面の表示や入力操作などの最低限にできるのが特徴といえます。
つまりクライアント端末は、処理を行うサーバーに接続するための外部入力装置のような扱いにできるシステムといえます。
クライアント端末でデータ保管やアプリケーション処理は行いません。情報漏えいのリスクが低くなり、サーバー側で接続端末を管理できるメリットがあります。
1990年代からある概念ですが、システムやインターネットの発展とともに新たなメリットが生まれ、現在も注目され続けている仕組みです。
注目を集める理由
近年注目を集める理由は主に、セキュリティ対策とテレワークへの対応が可能であるためです。
テレワークでは社員が自宅にパソコンを持ち帰るため、情報漏えいのリスクが高まります。しかし、端末にデータを保管しないシンクライアントは情報漏えいのリスクを減らすことが可能です。
シンクライアントシステムは処理の大半を社内サーバーが行うシステムです。USBやソフトを使用して、社員が保有する端末をシンクライアント端末にするシステムもあります。テレワークで問題となる「社員による端末の性能差」という問題も解決が可能となっています。
テレワークの多くの問題を解決できることから注目を集めているシステムです。
シンクライアントのメリット
テレワークやセキュリティで注目を集めるシンクライアントですが、なぜ注目を集めているのでしょうか?注目を集める主なメリットを紹介します。
一括管理が可能
シンクライアントはサーバー側が主な処理を行います。そのため端末をサーバーで一括管理することが可能です。
例えば社員にパソコンを貸与する際、通常のクライアント端末はセットアップなどの処理が必要になります。また一台ごとに管理が必要となるため、使用する台数が増えると膨大な管理と処理が必要です。特にOSやソフトウェアのアップデートは管理者の負担が非常に大きくなります。
シンクライアントであればサーバー側で変更を行うだけでクライアント端末に反映されます。新規端末のセットアップもサーバーに接続するための処理だけと非常に簡単です。
管理者の負担を減らすことができるため、コスト削減にもつながるといえるでしょう。
セキュリティ対策にも
クライアント端末にデータが保管されないため情報漏えいリスクを減らすことが可能です。
たとえばクライアント端末を紛失した際や盗難された場合、通常端末ではデータが残っているため情報流出の可能性があります。しかしシンクライアントではデータを保管しないため、漏洩のリスクが低いと言えます。また端末の接続をサーバー側で管理できるため社内への不正侵入も防ぐことが可能です。
ほかにもアプリケーションのインストール権限がないため、不審なソフトを社員が入れるリスクを減らせるといったメリットもあります。
社員の住んでいる環境によってセキュリティの強度が異なるテレワークでも、セキュリティ対策の一定化が可能です。
端末に依存しない
端末に依存しないシンクライアントは災害に強いシステムです。
災害で事業所が使えなくなった場合でも、テレワーク体制に移行することで業務ができます。仮に災害でクライアント端末が破損したとしても、データセンターやサーバーが無事ならば早期の事業の復旧が可能です。
また平常時においても端末故障やトラブルの際、端末の入れ替えが簡単になります。接続処理が済んだ端末を用意できればすぐに作業を再開できるため、端末トラブルが業務に与える影響を小さくすることができるといえるでしょう。
シンクライアントのデメリット
さまざまなメリットがあるシンクライアントですが、メリットだけでなくデメリットもあります。導入を検討する前にデメリットの把握をしましょう。
ネットワーク環境が必須
シンクライアントはサーバーに常時接続する必要があります。そのためネットワークが用意できない環境では業務ができません。
また業務の効率性がネットワークに依存することになるのも、デメリットといえます。ネットワークが用意できたとしても通信環境が悪い場合、アプリケーションの動作が遅くなるケースや、データの保存に時間がかかるといった問題が発生します。
シンクライアントはネットワークに依存するシステムです。シンクライアントを導入するのであれば信頼性の高い、高速ネットワーク通信の確保が必要不可欠といえます。
サーバーに依存してしまう
処理の大半をサーバーで行うため、クライアント端末の性能はサーバーの性能に大きく左右されます。
とくに業務開始直後や昼休憩後の業務再開時間は、さまざまなクライアント端末が一斉に接続を行うため注意が必要です。なぜなら一斉接続はサーバーに負担がかかるからです。動作が非常に遅くなるだけでなく、一斉アクセスによりサーバーがダウンする可能性もゼロではありません。
またサーバーが脆弱である場合、従来の端末で快適に使用できたアプリケーションの動作が遅くなり、業務が非効率化することも懸念されます。
シンクライアントシステムを有効活用するのであれば、ネットワーク環境とともにサーバーの強化が必要といえるでしょう。
利便性が低下することも
シンクライアントは一括で管理することができるシステムです。一括で管理できることはメリットでもありますが、同時にデメリットとなり、利便性が低下するケースがあります。
業務をする上で必要になるアプリケーションが、シンクライアントのシステムでは動かないといった問題が少なくありません。
システムによってはユーザーがアプリケーションのインストールをできないたものがあります。そのため社員ごとに個別のアプリケーションを利用する部署では、業務の利便性が下がるケースも想定されます。
そのため導入の際は、業務に支障がないかを検討する必要があります。非常に便利なシンクライアントシステムですが、利便性が確保できるか確認をしましょう。
シンクライアントの種類
シンクライアントにはいくつかのタイプがあります。システム導入のポイントを確認する前に、どのようなタイプのシンクライアントがあるか把握しましょう。
画面転送型
画面転送型のシステムは、サーバー内で行われる処理の画面をシンクライアント端末に転送するタイプです。
画面転送型の中でも3種類に分類ができます。
- 「ブレードPC型」…処理基板を集約し端末一台ごとにリソースを割り当てる
- 「サーバーベース型」…サーバーに保管されたデスクトップ環境を複数の端末で使用する
- 「VDI型」…サーバーの中に端末ごとの仮想デスクトップを割り当てる
サーバー内で処理からデータの保管まで行うため、セキュリティ性が高くクライアント端末の性能が必要ないというメリットがあります。インターネット回線が高速になり、サーバーの性能が上がったため、現在主流の方法です。
ネットブート型
ネットブート型はクライアント端末のデータをダウンロードして使用するタイプです。設定されたOSイメージをダウンロードするため、クライアント端末を従来の端末のように使用できるメリットがあります。
起動時のデータダウンロードはOSレベルから行います。サーバー側でクライアント端末の基本設定やOS、ソフトのアップデートを一括管理できることがメリットです。また端末故障時にすぐに入れ替えが可能となります。
サーバーが近くにあり高速ネット回線が必要なことから、インターネットカフェや公共施設、教育機関で多く使用される方式です。一括で大量の端末を管理する環境で効果を発揮する方式といえるでしょう。
シンクライアント導入のポイント
シンクライアントはクライアント端末ではなく、サーバー側で処理を行うシステムです。従来より複雑となるため、抑えるべきポイントがいくつかあります。導入後に発生する問題やトラブルからポイントを紹介します。
問題が起きたときの事前対応を決めておく
シンクライアントは処理と操作を分けるシステムです。従来のクライアント端末では想定しなかった問題が発生しやすくなります。
とくに導入初期段階では、サーバーとの通信速度が遅くクライアント端末での操作性が悪いといった問題や、サーバーに保管されたシステムを自社にあわせきれず、セットアップがうまく行かないといった問題がしばしば発生します。
シンクライアントを導入するのであれば、こうした起こりうるトラブルを把握し、事前に対応策を決めておくとよいでしょう。トラブルを想定し導入することで社内の混乱を最小限に抑えることが可能になります。
必要な要素を洗い出す
シンクライアントは最近注目を集めるシステムです。それだけに各社が様々な機能を搭載したシステムを開発しています。新しいシステムは業務効率化が期待できますが、自社に適しているか確認することが重要です。
新しい機能を目的にシステムを導入したとしても、実際に社員が業務行うにあたり使い勝手が悪く、現場に即していない機能であれば、ムダとなる可能性があります。
また社員が業務に使用している機能を把握せず導入したため、現場の効率が低下してしまったケースも少なくありません。
必要な要素の洗い出しに失敗すると、業務の効率低下や導入後にシステム改修を行うことになり、追加コストが発生します。
こうした事態を防ぐためにも、どのようなシステムが必要か要素の洗い出しは重要といえるでしょう。
設定コストや拡張性にも注目
シンクライアントでしばしば発生する問題のひとつに、導入時期の違いによる互換性の問題があります。
とくにシステムの効果が出やすい部署から導入を始め、後に社内全体でシステムを導入したといったケースで起こりうるトラブルです。導入時期が違うためバージョンやOSの違いから設定が共通化できないといった問題や、システム共通化に高額なコストがかかるケースがあります。
とくに大きな企業の場合、複数のシンクライアントシステムが存在する可能性があります。複数のシステム運用管理は非常に大変です。場合によっては通常端末の管理より負担が大きくなる事例もあるため、導入の際はその後の拡張性も考えて導入をする必要があります。
ポイントを抑えてシンクライアントを導入しよう
シンクライアントはクライアント端末の処理を最小限に抑え、サーバー側で中心となる処理を行うシステムです。情報漏えいの危険性を抑え、新たな働き方であるテレワークにも対応できることから注目を集めています。
シンクライアントにはコスト削減や業務効率化が可能になるといった様々なメリットがありますが、同時に抑えるべきポイントやデメリットも多いシステムです。
それらの確認をしないで導入を行うと思わぬ事態を引き起こす可能性があります。今回はメリットと共に抑えるべきポイントを紹介しました。ポイントを抑え自社にあったシステムを賢く導入しましょう。
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