民間企業だけでなく、NPO法人の運営においても会計ソフトを利用する団体は増えています。しかし、NPO法人では一般企業とは異なる会計基準や勘定科目があるため、ソフト選びは慎重に行う必要があります。
「会計ソフトの選び方がよくわからない」
「そもそも自団体において必要かどうかわからない」
NPO法人の中には、このようなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、NPO法人におすすめの会計ソフトを5選紹介するとともに、選び方のポイントや導入メリット、よくある質問などをわかりやすくまとめました。NPO法人で会計ソフトの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
NPO法人と営利法人の会計の違い
NPO法人の会計処理は、一般の営利法人とは異なる点が多くあります。以下では、NPO法人の会計基準や目的、使用する書類の特徴、NPO法人会計基準について詳しく説明します。
- 会計の目的が異なる
- 使用する書類が異なる
- NPO法人会計基準がある
会計の目的が異なる
NPO法人は営利目的ではなく、社会貢献や公共の利益を目的とした活動を行います。そのため、会計の目的も営利法人とは異なります。
NPO法人の会計業務では、主に外部の支援者や監督機関に対して、財務状況の透明性を示し、信頼を得ることが目的です。そのため、利益追求を目指す一般企業とは異なる会計基準や報告書類が求められます。
使用する書類が異なる
NPO法人の会計では「活動計算書」という、一般企業の損益計算書に相当する独自の書類を使用します。この書類は、事業収入と支出の詳細を記録したもので、NPO法人の財務状況を外部に明確に示す役割を果たします。
特有の書類形式があるため、会計ソフトのなかでもNPO法人に対応しているものを導入する必要があります。
NPO法人会計基準がある
NPO法人は「NPO法人会計基準」に準拠した会計処理が求められます。この基準はNPO法人の活動内容を正しく支援者に伝えるために、市民がボランティアで作成したガイドラインです。
NPO法人会計基準に沿って会計を進めることで、財務状況の透明性を高め、支援者や監督機関からの信頼を確保することができます。
NPO法人における会計ソフトの利用状況
NPO法人では日々の会計処理や決算業務の負担軽減のため、会計ソフトを導入する団体が増えています。
なお、平成23年に実施された「非営利活動法人の活動の在り方に関するインターネットアンケート調査」によれば、約9割のNPO法人が何かしらの会計ソフトを使用しているとされています。令和6年現在においては、さらに会計ソフトの普及率は高まっていることが推定できます。
NPO法人が会計ソフトを選ぶときのポイント
NPO法人が会計ソフトを選ぶときのポイントは以下の通りです。
- NPO法人会計基準に対応しているか
- 誰でも操作しやすいか
- 外部データとの連携性は良いか
- お試しで使える期間があるか
NPO法人会計基準に対応しているか
NPO法人には特有の会計基準が存在し、営利法人とは異なる勘定科目や報告書が必要です。活動計算書や収支計算書などの特定の書類が求められるため、ソフトがこれらに対応していることは必須です。
会計基準に準拠しているかどうかを確認するために、ソフトの機能や利用者のレビューを参考にしてみましょう。ソフトによっては特定の機能が限定的な場合もあるため、自団体のニーズに合った機能が備わっているかを事前に調査することが必要です。
誰でも操作しやすいか
NPO法人は専門の会計担当者がいないことも多く、会計ソフトを使うのは一般のスタッフであることも少なくありません。そのため、誰でも簡単に操作できるUIを備えていることが重要です。
使い心地を確かめるために、トライアル版を利用して実際に操作してみることをおすすめします。使い勝手が良いかどうか、直感的に操作できるかをチェックし、必要な機能に対して簡単にアクセスできるかも確認しておきましょう。
外部データとの連携性は良いか
会計業務では銀行取引やクレジットカードの明細を取り込む必要があります。外部データと連携できる機能があると、手入力の手間が減り、エラーも防げます。
会計業務にかかる工数を大幅に削減できるため、残りのリソースを本来注力すべきコア業務に充てられるれるようになります。
検討しているソフトで連携可能な金融機関やサービスを確認し、自団体が使用している金融機関が対応しているかどうかを確認しましょう。また、操作感と同様に、連携機能がスムーズに働くかどうかも実際にトライアル版で試してみることをおすすめします。
お試しで使える期間があるか
先に触れた通り、操作性や連携性を確かめるためには、お試しで使える期間がある会計ソフトを選ぶことがポイントです。
サービスごとにトライアルの有無や無料で使える期間が異なるため、気になるソフトがあれば詳細をチェックしておきましょう。無料期間を終えた後、すぐに申し込みをしないとデータが引き継がれないものもあるので、条件や導入スケジュールをよく確認しておくことがポイントです。
NPO法人におすすめな会計ソフト5選
現代ではさまざまな会計ソフトが登場していますが、NPO法人に対応しているソフトとなるとどうしても数が限られてしまいます。そこでここからは、NPO法人に特におすすめの会計ソフトを5つ詳しく紹介します。
「どの会計ソフトを選べば良いかわからない」という場合にはぜひ参考にしてみてください。
- freee会計
- 会計王 NPO法人スタイル
- ee-会計ソフト
- ちまたの会計
- Excel簡単会計(NPO法人会計基準協議会)
それぞれの特徴やメリットを踏まえて、自団体に最適なソフトを選びましょう。
freee会計
freee株式会社が提供している「freee会計」は、クラウド型の会計ソフトとして、一般企業だけでなくNPO法人でも広く活用されています。NPO法人向けに開発された「freee NPO会計キット」を提供しているのが特徴です。
freee NPO会計キットは、NPO法人特有の会計処理に対応しており、特に決算書類の作成が非常にシンプルです。使い勝手が良く、初心者でも簡単に操作できる点が大きな魅力です。
さらに、NPO法人会計基準に準拠した内容で、必要な書類を迅速に作成できます。無料のトライアルも用意されているため、まずは実際に触れてみることをおすすめします。
使い勝手や機能を実際に体験することで、不安なく導入を進められるでしょう。
会計王 NPO法人スタイル
ソリマチ株式会社が提供する「会計王 NPO法人スタイル」は、NPO法人に特化した会計ソフトとして高い評価を得ています。このソフトは、NPO法人会計基準に完全に対応しており、PCにインストールして使用する仕様です。インターネット環境がない場所でも問題なく操作が可能で、初期費用だけで運用できる点もメリットです。
また、非営利事業とその他の事業を行っている法人にとっては、部門ごとに管理できる機能も便利です。
ee-会計ソフト
NPO会計支援センターが提供する「ee-会計ソフト」は、NPO法人の会計業務に特化した定額制のクラウド型会計ソフトです。この会計ソフトは、小規模から大規模までのさまざまなNPO法人に対応したバージョンを用意しているところが魅力です。NPO法人会計基準に対応しており、シンプルな操作感で誰でも簡単に使用することができます。
また、年度の初めから決算時期にかけてのサポート体制が充実しているため、会計業務に不安がある方でも安心して利用できるのが特徴です。特に初心者の方にとっては、必要なサポートを受けられる環境が整っていることは大きな安心材料となるでしょう。充実した機能を活用しながら、効果的に会計管理を進められます。
ちまたの会計
「ちまたの会計」は、NPO法人や地域サークル、ボランティア団体などを対象とした無料のクラウド会計ソフトです。このソフトは、非営利組織の会計に必要な帳簿や会計報告書類、基本機能を備えており、NPO法人にもおすすめです。
ちまたの会計の最大のメリットは、利用料金が永年無料であることです。そのため、初期費用をかけずに会計ソフトを導入したいNPO法人におすすめです。
また、PCやスマートフォン、タブレットからもアクセスできるため、常に最新の状態に更新されて手間がかかりません。無料で利用できるため、まずは登録してみて、自団体に合うかどうかを確認してみるのも良いでしょう。
Excel簡単会計(NPO法人会計基準協議会)
最後にご紹介するのは、NPO法人会計基準協議会が提供している「Excel簡単会計」です。このツールは一般的な会計ソフトとは異なり、Excelを使って会計業務を行うためのテンプレートですが、無料でダウンロード可能なところが大きな魅力。現金出納に基づいた入出金の記録や、財務諸表の作成などをサポートしてくれます。
一般的な会計ソフトと比べると入力の手間はかかりますが、Excelを使い慣れている方であれば問題なく利用できるでしょう。NPO法人の会計基準に準じた処理も可能です。
自動化された会計ソフトほどの機能はありませんが、シンプルで使いやすいため、「まずは無料のツールから試してみたい」と考えている方にとってはメリットが大きいかもしれません。上の4つのソフトを検討してみて、予算調整が難しい場合などに検討してみると良いでしょう。
NPO法人が会計ソフトを導入するメリット
NPO法人が会計ソフトを導入するメリットは以下の通りです。
- 会計業務を効率化できる
- コア業務に専念できる
- 信頼性が高まる
会計業務を効率化できる
会計ソフトを利用することで、手入力の作業が減り、煩雑な会計業務が効率化されます。自動仕訳機能があるソフトでは、毎日の取引の記録が簡単に行えるため、期末の決算業務もスムーズになります。
コア業務に専念できる
会計ソフトを使用することで、会計業務にかかる時間が短縮され、NPO法人が本来注力すべき社会貢献活動に専念できるようになります。ボランティアやスタッフもより多くのリソースを活動に投入できます。
信頼性が高まる
NPO法人においては、透明性が特に重要です。会計ソフトは、収入や支出のデータを一元管理できるため、各項目の状況を簡単に把握できます。
これにより、各種報告が容易になり、団体の信頼性が高まります。また、定期的な報告書の作成が簡単に行えるため、外部監査の際にもスムーズに対応できます。
NPO法人向けの会計ソフトに関するよくある質問
最後に、NPO法人向けの会計ソフトに関するよくある質問をまとめました。
NPO法人が会計ソフトを導入するべきタイミングは?
会計ソフトを導入するべきタイミングは団体ごとにさまざまですが、一例として以下のようなタイミングが挙げられます。
- 会計業務が複雑になり、手作業での管理が難しくなくなったとき
- リソースがなく、業務の効率化を図りたいとき
- 組織の成長に伴い、より高度な管理が必要になったとき
Nportとは?
Nport(エヌポート)とは、NPO法人の会計を支援するために開発されたアプリです。「 freee会計」と組み合わせて使うことで、財務諸表等をより簡単に作成できます。Nportを利用する際は、freee会計を導入する必要があります。
まとめ
NPO法人の決算業務には、一般企業とは異なる特有の注意点がいくつか存在します。これらの違いを理解して、適切な会計ソフトを導入することで、決算業務に伴うさまざまな課題を効率的に解決し、正確な会計処理を実現しましょう。
会計ソフトを導入することにより、NPO法人の会計業務が大幅に効率化され、本来の目的である社会貢献活動により多くのリソースを集中させられるようになります。また、透明性の高い会計報告により、支援者からの信頼を獲得しやすくなるため、団体の持続的な成長にもつながるでしょう。
この記事で紹介した5つの会計ソフトは、いずれもNPO法人の特定の会計基準に適合しています。しかし、特徴や強みが異なるため、自団体の規模や予算、必要とする機能を十分に考慮した上で、最も適したソフトを選ぶことが重要です。選び方のポイントも参考にしながら、じっくりと比較検討を行うようにしてみてください。
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