新築の購入や家の改修をしたから住宅ローン控除の適用を受けたいけれど、必要書類や手続きがわからないと悩んでいる方もいるでしょう。
住宅ローン控除は1年目と2年目以降では申請方法が異なります。初年度は、会社員であっても確定申告しないと住宅ローン控除を受けられません。
確定申告で住宅ローン控除の適用を受けるには、以下のような書類が必要です。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 床面積を明らかにする「登記事項証明書」
- 取得対価を明らかにする「工事請負契約書」や「売買契約書」
必要な書類の詳細やその入手方法、確定申告の方法、住宅ローン控除を受けるときに注意すべきポイントを解説します。
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住宅ローン控除を受けるには確定申告が原則必要
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンとして支払った金額を元に算出した控除額を、所得税(納める予定の税金)から差し引ける仕組みです。
課税される所得金額ではなく税金から直接控除されるため、適用すればかなりの金額を節税できるでしょう。
住宅ローン控除を受けるためには原則として確定申告が必要です。年末調整のみでは受けられないので、会社員などの給与所得者であっても必ず確定申告しましょう。
ローン残高の0.7%の金額を、最長13年間税金から減らせる
住宅ローン控除を受ける最大のメリットは、トータルで数百万円もの減税ができることです。
住宅ローン控除は年末時点における住宅ローン残高の0.7%を、税金から減額できます。1年あたりの控除額は最大で35万円にもなり、適用期間は最長で13年間です。
所得税を超えた分は、住民税が減額対象となります。住宅ローン控除を適用すれば、所得税が0円になる人も少なくありません。
なお控除金額の割合や限度額は税法改正により変更されることがあるため、適用を考えている人は要件を良くチェックしましょう。
住宅ローン控除は確定申告で申請する必要がある
住宅ローン控除の適用を受けるには、適用初年度で確定申告を、2年目以降は年末調整で申請する必要があります。
確定申告は納税者自身が手続きしなければならないので、申告を忘れないようにしましょう。また年末調整では書類の提出が必要です。
住宅ローン控除の適用を受けずにいても、誰かが代わりに税金から控除してくれるわけではない点に注意しましょう。
住宅ローン控除を受けるための具体的な条件
住宅ローン控除を受けるには、以下の条件すべてを満たす必要があります。
- 住宅の新築等の日から6か月以内に居住している
- 住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住している
- 住宅の床面積が50㎡以上の場合は、床面積の2分の1以上を居住用とし、合計所得金額が2,000万円以下である
- 住宅の床面積が40平方メートル以上50㎡未満の場合は、床面積の2分の1以上を居住用とし、合計所得金額が1,000万円以下である
- 返済期間10年以上の住宅ローンを有する
- 一定の譲渡所得の特例の適用を3年間にわたり適用されていない
- 親族など特別な関係のある者からの住宅の取得ではない
条件を満たさないと適用は受けられません。必ず事前に確認しておきましょう。
住宅ローン控除を受けるために必要な書類
確定申告で住宅ローン控除を受けるための必要書類をまとめました。
住宅ローン控除に必要な書類を「住宅ローン控除申請書」と呼ぶケースもありますが、正確には以下の書類を意味します。
必要書類 | 入手方法 |
---|---|
確定申告書 | 税務署または国税庁の公式サイトで入手 |
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 税務署または国税庁の公式サイトで入手 |
本人確認書類の写し (マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カード/住民票+本人確認書類) |
お持ちの本人確認書類をコピー
住民票は市役所などで発行 |
建物・土地の登記事項証明書 | 法務局の窓口またはオンラインで申請 |
建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し | 契約時に売主から取得
紛失した場合は担当した仲介業者へ相談 |
源泉徴収票 | 勤務先から入手 |
住宅ローンの借入金年末残高証明書 | 金融機関から郵送される
※金融機関によっては発行依頼が必要 |
特例住宅の証明書類 | 契約した不動産会社から入手 |
住宅ローン控除に必要な書類を「住宅ローン控除申請書」と呼ぶケースもありますが、正確には上記の書類を意味します。
確定申告書
確定申告書は全国どこの税務署でも無料で配布されています。書き損じに備えて何枚かもらっておくのがよいでしょう。
国税庁のホームページからダウンロードしたり、確定申告書作成コーナーで入力したりした確定申告書を印刷して使っても問題ありません。
税務署に提出に行く際には必ず原本のコピーを取り、必ず税務署の印鑑(収受印)をもらっておくようにしましょう。確定申告書の控えはさまざまな場面で必要になりますが、多くの場合、税務署の押印がないと真正のものとみなしてもらえません。
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」は、住宅ローン控除を受ける際の確定申告で必ず必要になる書類です。
税務署で無料で配布されているほか、国税庁のホームページでもダウンロードできます。ホームページから印刷して使う場合には提出前に原本のコピーを取り、そのコピーにも税務署の印鑑(収受印)をもらうようにしてください。
「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」には表面と裏面に記入項目がありますので、建物や土地の登記事項証明書や契約書の内容から順番に記入していくようにしましょう。
特に重要なのは表面の「居住用部分の家屋又は土地等に係る住宅借入金等の年末残高」の部分と裏面の計算欄です。住宅ローン控除の金額は「年末時点での住宅ローン残高×控除割合(居住を開始した年度により異なります)」で計算するので、記入に間違いがあると控除の適用額に大きな違いが出てしまいます。
本人確認書類の写し
本人確認書類として、以下いずれかの写しが必要です。
- マイナンバーカード
- マイナンバー通知カードまたはマイナンバーが記載された住民票+運転免許証やパスポートなどの本人確認書類
マイナンバーカードの写しを用意できれば、住民票の写しは必要ありません。お持ちでなければ、マイナンバーが記載された書類ともう1点別の本人確認書類をセットで提出する必要があります。
建物・土地の登記事項証明書
登記事項証明書(登記簿謄本とも言います)は最寄りの法務局で取得できます。取得は有料で、1通あたり600円です。窓口で印紙を購入し、申込用紙に貼付けて納付してください。
法務局のホームページからオンラインで請求することも可能ですが、経験のない方にはやや難しいので、不安な方は窓口に取得しに行くのがよいでしょう。
登記事項証明書は、いわばマイホームの「戸籍」のようなものです。役所に登録されている正式な物件情報や住所がわかります。さまざまな場面で必要になりますから、まとめて何枚か取得しておくと便利です。
建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し
建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写しは、契約した不動産会社や工務店から取得しているはずです。
「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」には、不動産の購入価格(取得対価)を記入する必要がありますから、契約書から転記するようにしましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票は、勤務先の企業が年末ごろに給与明細と一緒にして渡してくれるのが一般的です。もし紛失してしまった場合には、経理部や人事部などの部署で再発行してもらうようにして下さい。
確定申告書では、源泉徴収票に記載されているあなたの年間の所得金額を記入する必要があります。
所得金額というのは収入の金額から必要経費の金額を差し引きした金額のことで、サラリーマンの方の場合は勤務先が発行してくれる源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が年間の所得金額に該当します。
住宅ローンの借入金年末残高証明書
住宅ローンを組むと、毎年末(11月ぐらいです)にローンを組んだ金融機関から「年末残高証明書」が送付されてきます。これは確定申告で必要になる書類ですので、必ず保管しておくようにしましょう。紛失した場合には再発行してもらえます。
住宅ローン控除は、これに記載されている住宅ローンの年末残高に、控除率(居住を開始した年度により異なります)をかけた金額で計算します。
たとえば、令和5年中に住宅を取得し居住を開始した人で、年末段階で3000万円の住宅ローンが残っている人の場合、3000万円×0.7%=21万円の税額控除を受けることが可能です。
かなり収入が多い人でない限りは所得税の負担額は0円となることが多いので、必ず住宅を購入した初年度に確定申告をし、税額控除を適用してもらうようにしましょう。
認定住宅等の証明書類
「認定長期優良住宅、認定低炭素住宅」または「一定の耐震基準を満たす中古住宅」の場合、証明書類のコピーが必要です。
長期優良住宅、低炭素建築物の場合
長期優良住宅・低炭素建築物いずれの場合も、確定申告に際して、行政から発行された「認定通知書」の写しが必要です。
長期優良住宅とは、長期的に安心して住めると国から認定された住宅です。以下の条件に該当する住宅を指します。
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低炭素建築物とは二酸化炭素の排出を抑制する対策が取られた建築物です。以下の条件を満たす建築物が認定を受けられます。
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一定の耐震基準を満たす中古住宅
一定の耐震基準を満たす中古住宅で住宅ローン控除を受ける場合、以下いずれかの書類が必要です。
必要書類 | 書類の内容 | 入手方法 |
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耐震基準適合証明書 | 以下いずれかによる現地調査後に発行される、耐震基準を満たしていることを証明する書類
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調査担当者から入手 |
住宅性能評価書 | 国土交通大臣に登録した第三者評価機関による評価が記載された書類 | 評価担当者から入手 |
もし書類を紛失してしまった場合、早めに担当者へ確認しましょう。
【1年目】住宅ローン控除に必要な確定申告の手続き
住宅ローン控除の適用を受ける際、1年目は確定申告が必要です。住宅ローン控除の申請方法は、以下の流れで進めます。
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住宅ローン控除を受けるために必要な作業は、1年目がもっとも複雑かつ手順が多いです。必要書類の書き方とあわせて、手続きの流れを解説します。
①住宅借入金等特別控除額の計算証明書の記入
まずは「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算証明書」を使って、住宅ローン控除の控除額を計算しましょう。100%本人所有の一戸建てとします。
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②確定申告書の作成
住宅ローン控除の申請に関わる部分のみの記入方法について、サラリーマンを例に説明します。
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次に確定申告書の第二表も記入します。
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③申告書の提出
確定申告は、主に「税務署で直接手続きをする」と「郵送する」「e-Taxをする」の3つの方法で手続きすることが可能です。どの方法でも手続きはほとんど同じですが、早く還付金を受け取りたい方はe-Taxを選択しましょう。
ただし、e-Taxを利用するには「利用者識別番号」が必要です。利用者識別番号はオンラインや税務署で取得することが可能なので、事前に準備しておきましょう。
④還付金振込
住宅ローン控除によって還付金が発生した場合、後日税務署から振り込まれます。還付金は確定申告後1ヵ月〜1ヵ月半後に振り込まれることが一般的です。
なおパソコンで確定申告を行う「e-Tax」を利用した場合は還付金の振込が少し早くなります。多くの場合、確定申告から約3週間後には還付金を受け取れます。
2年目以降の住宅ローン控除の手続き【給与所得者・個人事業主】
住宅ローン控除の手続きは、初年度と2年目以降で大きく異なります。
2年目以降は用意する書類・手続きともに負担が小さくなるケースがほとんどです。確定申告の有無や必要書類は、控除を受ける人のパターンによって異なります。
給与所得者は年末調整だけで完了
会社員や公務員などの給与所得者は、2年目以降は年末調整の際に住宅ローン控除の手続きが可能です。確定申告が必要なのは初年度だけとなります。なお年末調整における必要書類は以下のとおりです。
【必要書類】
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「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は、1年目の確定申告をした年の9月頃に、9年分(控除期間が13年の場合は12年分)まとめて税務署から送付されます。
住宅借入金等特別控除申告書の書き方
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は、納税者自身で必要箇所の記入を行います。書き方の手順は以下のとおりです。
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書類下部の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」はすでに印字された状態のため、特に対応する必要はありません。
個人事業主は2年目以降も確定申告が必要
個人事業主の場合、所得税の正確な金額を算出・納税するためには確定申告が必要です。そのため2年目以降も、確定申告によって住宅ローン控除の適用を受けるための手続きをします。
ただし初年度の確定申告に比べ、必要書類および作業が少なくなります。用意が必要な書類は以下2点です。
【必要書類】
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ただし繰り上げ返済や借り換えなどを行う場合、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」の内容と実際のローン残高が異なる可能性があります。
もしローン残高の変更につながる事態が発生した場合、必ず金融機関へ連絡し、書類の再発行を依頼しましょう。
住宅ローン控除の確定申告・年末調整を忘れた場合は?
確定申告・年末調整の際に住宅ローン控除を忘れてしまっても、5年前までなら遡って手続きが可能です。
たとえば2021年分の手続きを忘れた場合、2022年〜2026年末までに確定申告をすれば、住宅ローン控除の手続きをしたとして還付が受けられます。その年に住宅ローン控除の手続きを忘れてしまっても、5年以内にしっかり手続きすれば問題ありません。
なお給与所得者が2年目以降の住宅ローン控除を忘れてしまった場合、勤務先に年末調整の修正ができないか相談するとよいでしょう。会社は給与や所得税に関する情報をまとめた「法定調書」という書類を、税務署へ提出するよう義務付けられています。
書類の提出期限は翌年1月末であり、期限前であれば年末調整の修正が受けられる可能性があります。年末調整の修正ができない場合は、給与所得者でも確定申告が必要です。
借り換えやすまい給付金で住宅ローン控除を受ける際のポイント
確定申告で住宅ローン控除を受ける際、関連する他の制度についても確認しておくと安心です。制度の組み合わせによって税負担が軽減するケースもあれば、控除額が減ってしまう可能性もあります。
住宅ローンの借り換えをした場合
住宅ローンを途中で借り換えしても、以下の2点を満たしている場合は住宅ローン控除の適用を引き続き受けられます。
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ただし、借り換えたとしても住宅ローン控除の適用期間が延長されるわけではありません。居住用に供した年から5年間適用している場合は、6年目からとして適用されます。
借り換えた場合は、借り換え後の住宅ローンの残額等の確証となる書類を勤務先に提出しましょう。継続のときと同じ書類に、新しいローンを反映した数値を記載して手続きを行います。
この場合の控除対象になる住宅ローン等の残高は、以下のように決まります。
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すまい給付金を活用すれば税負担が軽減する
すまい給付金は消費税率引上げによる負担を軽減するために設けられたもので、新築の際に最高50万円の給付金が得られる制度です。住宅ローン控除は税額から直接控除する仕組みのため、所得税が小さい、すなわち収入が小さい人ほど恩恵が小さくなります。
すまい給付金制度であれば、住宅ローン控除の効果が及ばない人でも、住宅購入にかかる負担を抑えられるのです。
すまい給付金は、以下の条件を満たす人が対象となります。
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また対象住宅は以下のとおりです。
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ふるさと納税と住宅ローン控除の併用は注意が必要
住宅ローン控除とふるさと納税を併用すると、それぞれの制度で受けられる控除額が減ってしまう可能性があります。
ふるさと納税は自治体への寄付金額から算出した金額を所得税から控除できる制度です。一方で住宅ローン控除でも同様に、住宅ローン残高から算出した金額を所得税から控除します。
そのため両方の制度を併用すると控除できる税額が重複してしまい、メリットが小さくなってしまう可能性があるのです。住宅ローン控除を最大限に適用するには、ふるさと納税の額に注意が必要です。
住宅ローン控除額の計算方法
住宅ローン控除額の計算方法は以下のとおりです。
住宅ローン控除額=年末のローン残高×0.7% |
原則として、年が経過するほど住宅ローン控除の適用額も小さくなっていきます。
監修税理士からのコメント
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銀行から融資を受けてご自宅を建てられた場合、一定要件を満たすことにより住宅借入金特別控除を適用することが可能です。
銀行交渉と住宅建築会社との打ち合わせは同時進行になります。その時に“住宅借入金特別控除”を適用したい旨を、銀行及び建築会社に伝えておけば要件が満たすように段取りしてくれるでしょう。
建築後に引き渡しを受けてから、確定申告をすれば住宅ローン控除の適用は完了です。「どう進めたらいいかわからない」などお悩みに方は、税理士に相談すると安心ですよ。
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この記事の監修税理士
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