法人の中でも、合同会社は設立時の費用が抑えられるため、近年人気の法人形態です。
では、そんな法人の支払う税金とは具体的に何があるのでしょうか。
税金についてひとつずつ詳しくご説明していくとともに、法人を設立するメリットについてもご紹介します。
合同会社が支払う税金
合同会社は個人事業主に比べ、節税のメリットを多く受けることができます。
一方で、同じ法人でも合同会社と株式会社の支払う税金に差はなく、どちらも同じ法人税を支払います。
それでは、法人が支払う税金の種類について詳しく見ていくことにしましょう。
法人税
法人税は法人の所得に対して課せられる税金で、その税率は以下の通りです。ただし下記の表は普通法人、かつ資本金1億円以下の法人などに適用される税率です。全ての法人に適用されるわけではないので注意しましょう。
平成28年4月1日以後に事業を開始 | 平成30年4月1日以後に事業を開始 | |
年800万円以下 | 15% | 15%(19% ※1) |
年800万円以上 | 23.4% | 23.2% |
(※1):適用除外事業者の場合で平成31年(2019年)4月1日以後開始する事業年度について適用。
共に所得が800万円の時、法人は法人税15%に対し、個人事業主は所得税23%となるため、法人の方に税金上のメリットがあると言えます。
法人住民税
法人住民税は会社が登記している都道府県と市町村に支払う税金です。法人住民税は法人税割と均等割の2つから構成され、均等割については赤字でも納める必要があります。
東京都の法人税割の税率は以下の通りです。ただし下記の表は不均一課税適用法人の税率ですので、超過税率適用の法人の場合は税率が変わることに注意しましょう。詳細につきましては下記の参考サイトをご覧ください。
令和元年10月1日以後に開始する事業年度(標準税率%) | 平成26年10月1日から令和元年9月30日までに開始する事業年度(標準税率%) | 平成26年9月30日までに事業を開始する年度(標準税率%) | |
23区内に事務所がある場合 | 7.0% | 12.9% | 17.3% |
市町村に事務所がある場合 | 1.0% | 3.2% | 5.0% |
なお東京都の均等割については、均等割額の計算に関する明細書をご確認ください。
法人事業税
法人事業税は登記を行っている都道府県に、都道府県のサービスを利用している対価として支払う税金です。
東京都の法人事業税は以下の通りです。こちらも超過税率適用の法人の税率は異なりますので、注意してください。また、法人事業税に関しては、軽減税率適用法人か否かでも税率が変わります。詳細は下記参考サイトをご確認ください。
令和元年10月1日以後に開始する事業年度(標準税率%) | 平成28年4月1日から令和元年9月30日までに開始する事業年度(標準税率%) | |
年400万円以下の所得 | 3.5% | 3.4% |
年400万円超え年800万円以下の所得 | 5.3% | 5.1% |
年800万円を超える所得 | 7.0% | 6.7% |
地方法人特別税
地方法人特別税は平成20年度の税制改正で、地域間の税源格差を是正するために法人事業税の一部を切り離して創設されました。
対象法人は、平成20年10月1日以後に開始する事業年度の申告、及び平成20年10月1日以後に解散した法人です。
ただし、令和元年9月30日までに開始する事業年度をもって廃止されます。そのため、これから開始する事業年度に関しては、地方法人特別税は課されません。
なお、地方法人特別税に代わって、「特別法人事業税」が新設されます。令和元年10月1日以降に開始する事業年度より適用されますので、下記の参考サイトから詳細を確認しておきましょう。
基準法人所得割額又は基準法人収入割額(※2)に下記の税率が課せられます。
(※2)標準税率により計算した法人事業税の所得割額又は収入割額。
平成28年4月1日から令和元年9月30日までに開始する事業年度 | 平成27年4月1日から平成28年3月31日までに開始する事業年度 | |
外形標準課税法人以外の法人 | 43.2% | 43.2% |
外形標準課税法人 | 414.2% | 93.5% |
基準法人収入割額 | 43.2% | 43.2% |
消費税
消費税は商品やサービスを消費した場合に課せられる税金で、国に対する消費税と、都道府県や市区町村に対する地方消費税の総称です。事業者は、一般消費者から預かったこの消費税を納税する義務があります。
なお、消費税は法人のみに課せられるわけではなく、個人事業主にも同様の条件で課せられます。
参考:消費税のしくみ|国税庁 |
固定資産税
個人の場合にも住宅などの不動産を保有していれば、固定資産税が課せられます。
法人の場合も同様で、会社で保有している土地、建物、有価償却資産となる固定資産に対して1.4%の税率が課せられます。
その他の税金
上記に挙げた6つの税金以外にも、業種などにより以下の税金が存在します。
- 自動車関連税(自動車保有に関わる税金)
- 酒税
- 揮発油税
- 軽油取引税
- たばこ税
- 関税
- その他(印紙税、事業所税など)
ご自身の事業に特別にかかる税金について把握しておくことで、納税漏れなどを防ぎましょう。
合同会社を設立する6つのメリット
合同会社を設立するうえでは以下の6つのメリットが挙げられます。
|
以下、詳しく見ていきましょう。
1,法人の方が節税となる
個人事業主の場合は、下記の4つの税金を納めます。
- 所得税
- 住民税
- 消費税
- 個人事業税
法人の場合は前述した6つの税金を中心に納めることになりますが、実は法人の方が節税になることが多いのです。
なぜかというと、課税所得が330万円以上になると、個人事業主の所得税より法人の法人税の方が税率が低くなるためです。
個人の所得税率:330万円~695万円 税率20%
法人の法人税率:800万円以下 税率15%
また、法人は社員の給与を経費として計上できるため、税額を低く抑えることも可能です。
2,2年間の消費税納付の免除が受けられる
事業者は消費者から預かった税金を納付する義務があるとお伝えしました。
しかし、法人を設立して、下記条件を満たせば消費税の納税を免除されることがあります。
- 資本金が1,000万円未満
- 基準期間(2期前の事業年度)の売上が1,000万円以下
- 特定期間(事業開始から6ヶ月間)の売上が1,000万円以下
新しく設立した法人には2期前の売上がないので、2年間は消費税を納付する必要がないということですね。
ただし、上記にもあるように、特定期間(事業開始より6ヶ月間)における課税売上高が1,000万円を超えた場合には消費税納付の義務が発生するので注意が必要です。
3,経費にできる範囲が広い
個人と法人では経費にできる範囲が異なります。
<個人事業主の経費>
消耗品費、旅費交通費、接待交際費、水道光熱費、事務所の引っ越し費用、セミナー参加費
<法人の経費>
給料、住宅費、日当
個人事業主の経費に加え、上記の項目についても経費にできます。
さらに、法人は家族への役員報酬や、住宅を社宅扱いにすることで家賃も経費にすることが可能です。
経費を多く計上できるため、結果として利益を小さくすることになり、個人事業主より節税効果が高まるケースがあります。
4,給与所得控除が受けられる
個人事業主の所得は事業所得になりますが、法人の経営者は会社から給与を受け取るため給与所得となり、給与所得控除を受けることができます。給与所得控除は個人事業主が受けられる青色申告控除65万円以上の控除を受けることが可能です。
給与所得控除額については、以下の表を参考にしてください。
【平成29年分~令和元年分】
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 | |
---|---|---|
180万円以下 | 収入金額×40% 65万円に満たない場合には65万円 |
|
180万円超~360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 | |
360万円超~660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 | |
660万円超~1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 | |
1000万円超 | 220万円(上限) |
5,損金を10年繰り越しできる
青色申告をしている個人事業主が3年であるのに対し、法人は9年(平成30年4月1日以後に開始する事業年度は10年)繰り越すことができ、大きなメリットとなります。
6,社会的信用度が増す
法人を設立するには諸々手続きを行い、国から法人として認められた存在です。
そのため法人を設立することは、個人事業主よりも社会的信用度が高くなります。
企業によっては個人と取引を禁止するところもあり、事業を拡大する際に融資を受ける場合も法人の方にメリットがあります。
3つののデメリット
法人を設立するのは、メリットばかりではなくデメリットも存在するので注意が必要です。
デメリットについては、以下のようなことが挙げられます。
1,設立費用がかかる
詳細は後述しますが、法人設立の際に合同会社で10万円、株式会社で24万円の費用が最低限必要となります。
また同時に定款の認証を得るため公証人役場へ出向き、登記の申請のために法務局や税務局に出向く必要があるなど、諸々手続きが必要となります。
2,複雑な事務手続きとそれを専門家に委託する費用がかかる
法人設立には複雑な手続きがいくつか発生します。
自分でできるものもありますが、一部専門家(司法書士など)に委託するための費用が発生します。
3,社会保険加入が義務となり費用がかかる
個人事業主の場合は、自分自身の社会保険を支払うだけで済みます。
ところが法人で社員を雇った場合、社員の社会保険の加入が義務となり、さらに費用がかかります。
合同会社と株式会社の違い
それでは同じ法人でも、合同会社と株式会社ではどのような違いがあるのでしょうか?
以下で詳しく見ていくことにしましょう。
合同会社の方が設立費用が安い
前述させて頂いた通り、合同会社と株式会社では設立費用が異なります。
合同会社 | 株式会社 | |
定款用収入印紙代(電子定款の場合不要) | 4万円 | 4万円 |
公証人手数料 | 0円 | 5万円 |
登録免許税 | 6万円 | 15万円 |
合計 | 10万円 | 24万円 |
合同会社には定款の認証手数料がかからないことや、株式会社を設立時にかかる事務手数料などの負担がありません。
設立時に費用がかからないことは合同会社の大きなメリットと言えます。
利益分配や経営の自由度が高い
合同会社は利益の配分を社員の間で自由に決定することができますが、株式会社の場合は株主の持ち分割合に応じて決められます。
また株主総会を開催する手間もなく、経営に対する意思決定を自分たちだけで行うことができ自由な経営が可能になります。
合同会社は上場できない
合同会社は株式会社と同様に法人税法上では普通法人ではありますが、上場ができないというデメリットがあります。事業規模を拡大し増資を検討したい場合は、株式会社を設立し、第三者からの資金調達を効率的に行う必要があります。
ただし、合同会社でもクラウドファンディングを活用して資金調達をするという手段もあります。
合同会社の税金についてのまとめ
合同会社は個人事業主に比べ、税額の面でメリットを多く受けられます。
今後さらに事業を拡大していくためには、合同会社を設立し、社会的信用を上げていく必要があるでしょう。
合同会社の特徴をしっかり理解し、法人設立を検討してみてください。
監修税理士からのコメント
多田税理士事務所 – 兵庫県
会社化するにあたっては、設立コスト・設立後の税金と個人事業主のままであった場合の税金を比較するなど、総合的に考える必要があります。その際、会社の主たる税金である法人税と個人事業主の所得税を単純に比較するのではなく、その他の税金、社会保険料の負担、将来の利益水準等総合的に判断することが重要になります。
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この記事を監修した税理士
多田紘大税理士事務所 – 兵庫県