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【税理士監修】所得税が非課税となる対象世帯は?確認方法を解説

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最終更新日: 2024年10月23日

所得税の非課税世帯では、所得税を納める必要がないのをご存知でしょうか?所得税が非課税となる世帯は、基本的に年間の世帯年収103万円以下が対象となりますが、所得税は年収や各種控除を元に計算されるため特別なケースもあります。

今回の記事では、所得税や各種控除についてご説明すると共に、所得税の非課税世帯かどうかを調べる方法など具体例を用いてわかりやすく解説します。

この記事を監修した税理士

EMZ国際投資税理士法人 - 東京都港区六本木

そもそも所得税ってどんな税金?

そもそも所得税ってどんな税金
所得税は収入にかかる税金

そもそも所得税とはどんな税金なのでしょうか?一般的な会社員の場合、会社から天引きされているため馴染みがあるかもしれません。所得税は源泉徴収されていても、最終的には1年間に得た所得から計算されるほか、所得にはさまざまな種類があり区分けされています。

また、所得税の算出は納税者の所得額や所得の種類によって税率も異なります。以下で具体的に確認していきましょう。

所得税は1年間の所得にかかる税金

所得税とは、個人が1月1日から12月31日までの1年間で得た所得にかかる税金です。所得は下記の10種類に区分されています。

給与所得 勤務先から受け取る給料や賞与
事業所得 事業で得た所得
配当所得 株式や出資金の配当
利子所得 公債・社債・預貯金などで得た利子
不動産所得 地代・家賃・権利金など不動産の貸付で得た所得
退職所得 退職金や、退職に伴う一時恩給など勤務先から受け取る所得
山林所得 山林の伐採や売却で得た所得
譲渡所得 土地・建物・株式などの財産を売って得た所得
一時所得 生命保険の満期金や宝くじ当選金など、営利を目的としない行為から得た所得
雑所得 先物取引や仮想通貨、原稿料などの上記に当てはまらない所得

所得税を計算するに当たっては、まず上記の所得額合計から各種所得控除を差し引きますが、所得控除には下記の14種類があります。

基礎控除 すべての人一律に適用される控除
扶養控除 16歳以上の子供や親を扶養している場合に適用される控除
配偶者特別控除 納税者の合計所得が1,000万円以下の場合に配偶者の合計所得額によって適用される控除
配偶者控除 配偶者の合計所得48万円以下(令和元年度までは38万円)の場合に適用される控除
勤労学生控除 学校に通いながら働いている場合に適用される控除
寡婦(寡夫)控除 配偶者と死別または離婚して扶養家族がいる「母子家庭」「父子家庭」に適用される控除
障害者控除 納税者や控除対象配偶者、扶養家族が障害者の場合に適用される控除
寄付金控除 ふるさと納税や認定NPO法人などに寄付した場合に適用される控除
地震保険料控除 地震保険料を支払った場合に適用される控除
生命保険料控除 生命保険料や介護保険料、個人年金保険料を支払った場合に適用される控除
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済に掛け金を支払った場合に適用される控除
社会保険料控除 健康保険料・国民年金保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料・国民年金保険料・国民年金基金・厚生年金保険料などを支払った場合に適用される控除
医療費控除 一定額の医療費(薬代含む)を支払った場合に適用される控除
雑損控除 災害・盗難・横領によって損害を受けた場合に適用される控除

基礎控除を除く控除には、それぞれ適用の条件があるため注意してください。すべての所得を合算した額から上記の各種控除と給与所得控除(会社員の場合)を引いた残りの額を「課税所得」と言いますが、所得税を計算する際には課税所得額に応じた税率をかけて算出します。

所得税の計算方法

では、実際に所得税の計算方法をみていきましょう。所得税は次の計算式で算出します。

課税所得(所得額-各種控除)×所得税率

まず課税所得を計算するには、給与所得控除の計算をしなければなりません。所得税の計算は以下の流れとなります。

所得税を算出する流れ

一般的な会社員で、配偶者のいない場合を例にご説明します。

  • 年収:500万円
  • 基礎控除:48万円
  • 社会保険料控除:72万円

給与所得控除額を計算する

ここで注目なのが、「給与所得控除」です。給与所得控除は経費を計上できない会社員のための控除で、給与額によって下記のように計算方法が定められています。

 給与  給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%-10万円
55万円に満たない場合には55万円
360万円以下 収入金額×30%+8万円
660万円以下 収入金額×20%+44万円
850万円以下 収入金額×10%+110万円
850万円超え 195万円(上限)

このケースでは年収500万円ですから、下記の計算で算出します。

給与所得控除額=年収500万円×20%+44万円=144万円

課税所得額を計算する

すべての控除を合算し、課税所得を計算します。

控除の合計=基礎控除48万円+給与所得控除+144万円+社会保険料控除72万円=264万円

年収500万円から控除合計264万円を差し引いた額が、課税所得です。

課税所得=年収500万円-控除合計264万円=236万円

所得税を計算する

課税所得がわかったところで、いよいよ所得税を算出するわけですが、所得税法では課税所得額によって税率が異なる「超過累進課税方式」を採用しています。下記の所得税の累進課税表で対応している税率をかけて算出しましょう。

課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万~330万円 10% 97,500円
330万~695万円 20% 427,500円
695万~900万円 23% 636,000円
900万~1800万円 33% 1,536,000円
1800万~4000万円 40% 2,796,000円
4000万円超 45% 4,796,000円

上記で算出した課税所得が236万円ですから、対応する税率10%を掛けて控除額を引けば所得税額は以下となります。

所得税額=課税所得236万円×10%-控除額97,500円=138,500円

所得税が非課税の対象となる世帯

母子家庭では寡婦控除が適用される

基本的には年間世帯収入103万円以下が対象

年間世帯収入が103万円以下であれば、基本的に所得税の非課税対象となります。すべての人に適用される基礎控除48万円と、給与収入180万円以下の給与所得控除額55万円の合計が103万円になるため、課税所得はゼロとなるわけです。

また、特別なケースがあるので以下で確認しておきましょう。

特別なケース1:母子家庭の場合

母子家庭の場合は基礎控除48万円と、給与収入180万円以下の給与所得控除55万円のほか、寡婦控除27万円が適用されます。

基礎控除48万円+給与所得控55万円+寡婦控除27万円=130万円

つまり、年間世帯収入130万円までが所得税非課税となるわけです。

特別なケース2:配偶者がいる場合

配偶者がいる場合、基礎控除48万円と給与収入180万円以下の給与所得控除55万円のほか、配偶者控除38万円が加わります。

基礎控除48万円+給与所得控除55万円+配偶者控除38万円=141万円

特別なケース3:個人事業主(自営業)の場合

個人事業主には給与所得控除がありません。専業主婦と2人家族の場合、基礎控除48万円と配偶者控除38万円が適用されます。

基礎控除48万円+配偶者控除38万円=86万円

76万円以下であれば所得税は非課税となりますが、個人事業主の場合は青色申告の適用を受ければ最大65万円の控除を受けられます。

基礎控除48万円+配偶者控除38万円+青色申告控除65万円=151万円

所得税が非課税の世帯か調べる・確認する方法

所得税が非課税の世帯か調べる・確認する方法
非課税世帯か調べる簡単な方法もある

所得税の計算方法や各種控除、所得税の非課税世帯についてご説明しました。各種控除については、確定申告をしている方や経理関係の仕事をしている方以外は馴染みが薄く、「計算方法が難しい」と思っている方もいるかもしれません。実は、所得税が非課税世帯なのかを確認する簡単な方法があるのでご紹介しましょう。

非課税世帯になるのに申請や手続きは不要

非課税世帯の適用を受ける際、申請や手続きは不要です。

世帯収入を計算し非課税世帯かどうか調べる

非課税世帯の対象であるかを確認するのは、年間世帯収入を計算すればわかります。世帯収入103万円以下、また上記の特別なケースでご説明したように控除額合計を年収が下回れば、自動的に所得税が非課税となります。

ただ、前項の一覧表にある各種控除のどれが自分に適用されるのかを、理解していないと計算できません。

源泉徴収票で非課税世帯であるか確認する

会社員であれば、勤務先から源泉徴収票が発行されます。源泉徴収票とは1年間の収入や適用される控除額、源泉徴収された所得税などが記載されたものです。非課税世帯の対象であるのかは、源泉徴収票で簡単に確認できるので具体例をみてみましょう。

源泉徴収票で非課税世帯であるか確認
源泉徴収票で非課税世帯であるか確認
  • ①「支払金額」=給与収入
  • ②「給与所得控除後の金額」=①から給与所得控除を引いた額
  • ③「所得控除の額の合計額」=各種控除の合計

②「給与所得控除後の金額」が③「所得控除の額の合計額」と同じ、もしくは少ない場合は非課税世帯の対象となります。

実際に数字を当てはめてみましょう。ここでは簡単に基礎控除48万円のみで計算します。

源泉徴収票例
基礎控除48万円のみで計算した場合
②「給与所得控除後の金額」43万円-③「所得控除の額の合計額」48万円=-5万円

②「給与所得控除後の金額」が③「所得控除の額の合計額」より5万円少なくなったので、非課税世帯の対象であることが確認できました。もし年収があと6万円多かった場合では、非課税世帯の対象になりません。

では、収入がもう少し多い場合はどうなるでしょうか。

源泉徴収票例
この場合は非課税世帯の対象にならない
②「給与所得控除後の金額」70万円-③「所得控除の額の合計額」48万円=22万円

②「給与所得控除後の金額」が③「所得控除の額の合計額」を22万円超えてしまっているため、この場合は非課税世帯の対象にはなりません。ちなみに、所得税の非課税対象であるのが確定するのは12月の給与計算後になります。そのため、毎月の給料から天引きされている源泉所得税は、非課税対象である場合には年末調整で還付金として戻ってきます。

また、各種控除額は税制改正によって額が変更される場合があるので注意してください。実際、2020年より、所得税に適用される基礎控除と給与所得控除の内容が変更されています。

監修税理士のコメント

EMZ国際投資税理士法人 - 東京都港区六本木

2020年度税制改正で大きな影響がありました。それが、給与所得控除の引下(一律10万円引下げ)、基礎控除の引上(基礎控除に適用要件が設定され、基礎控除の額が最大38万円から48万円に引上げ)です。年収850万円を超えると、税額が上がるように設計されました。所得税の非課税世帯には直接の影響はありませんが、世帯収入の計算に影響がありますので、要注意です。

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EMZ国際投資税理士法人 - 東京都港区六本木

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