個人事業主や自営業の方が使用する屋号は基本的に決め方などが自由です。今回は、屋号について基本的な知識から登録や変更の流れを確認し、屋号に関する様々な疑問にも答えていきます。
屋号の登録は開業届で!2種類以上の屋号もOK
屋号の登録は開業届を提出するだけで完了です。また、一人の個人事業主や自営業の方が2種類以上の屋号を使用することも問題はありません。ここからは、屋号の登録や変更に関する手続きや、2種類以上の屋号を使用する場合の登録方法などについて確認してみましょう。
屋号は開業届の提出で登録完了
屋号は開業届を提出するだけで簡単に登録可能です。起業する時点で屋号が決まっている場合は、税務署へ提出する「個人事業の開業届出書」いわゆる開業届を提出する際に、屋号の欄にその名称とフリガナを記載して提出することで登録手続きは完了します。
もしも、開業届を提出する際に屋号が決まっていない場合は、屋号の欄は空白で提出しても問題ありません。その後、屋号が決まってから行う最初の確定申告で、申告書に屋号を記載して提出することで屋号の登録が完了するのです。
また、前述の通り必ず屋号を使用しなければならないという義務はないので、使用しない場合は開業届や確定申告書の屋号欄を空白のまま提出するだけで問題はありません。
2種類以上の屋号も登録可能
一人の個人事業主や自営業の方でも2種類以上の屋号を使用することが可能です。
例えば、焼肉店を経営している清田さんが「清田焼肉店」の業績が好調なためお寿司屋の出店も検討いていたとします。そのお寿司屋の屋号が「清田焼肉店」ままではお寿司屋だと分からないので、「キヨ寿司」というもう一つの屋号を使用することなどが分かりやすい例です。
このように2種類以上の屋号を使用することは可能で、新しく増やした屋号についても登録手続きを行うことができます。登録時と同じように開業届の屋号欄に屋号とフリガナを記載し、その他参考事項の欄に「屋号の追加登録」などと記載して提出するだけで登録手続きは完了です。
屋号の変更時も特別な手続きは不要
屋号を変更した時も特別な手続きは不要です。ただし、変更後初めて行う確定申告では申告書に変更後の屋号を記載しなければならないので注意してください。また、屋号の変更はこれまで築き上げてきた信用や知名度などをリセットしてしまう可能性もあります。
もともと、屋号の変更は不祥事や問題などを起こした事業者が行うイメージも強いため、慎重に検討を行った上で決定することが重要です。
屋号変更の証拠を残したいのなら
屋号の変更時に手続きは要りませんが、中には変更の証拠を残したい方もいらっしゃるでしょう。その場合は、2つの方法から選択できます。一つ目は開業届を再提出する方法です。その他参考事項の欄に「屋号の変更」と記載しておくと受理した税務署も分かりやすく丁寧な書類になります。
もう一つの方法は、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出する方法です。これは住所などが変わった時に提出する届出書ですが、屋号の欄に変更後の屋号を記載して提出します。この届出書も、その他参考事項の欄に「屋号の変更」と記載してから提出することが無難です。
屋号なしでも確定申告は可能
上手に利用することで様々な効果をもたらす屋号ですが、実は付ける義務はありません。確定申告書にも屋号の記載欄はありますが、屋号を使用しない場合は空欄で提出することも可能です。所得税の確定申告では納税者である個人事業主の方の氏名などが記載されていれば手続き上は全く問題ないので、屋号なしでも確定申告は可能となります。
屋号を付ける際のポイント
多くの人に屋号から事業内容を知ってもらうこと、多くの人に屋号を覚えてもらうことは、事業を進めていく上で大切です。ここでは屋号を付ける際に気を付けたい2つのポイントを解説します。このポイントをしっかりとおさえて、事業が発展していくよい屋号を付けてください。
屋号から業種がイメージできるもの
屋号は顧客や取引相手に、事業を印象づける重要な情報の一つです。イメージしやすく覚えてもらいやすい屋号は、事業内容をわかりやすくアピールする役割を果たしてくれます。例えばパン屋であれば「○○ベーカリー」、事務所であれば「○○オフィス」のような屋号をつけると、業種や事業内容がわかりやすいです。
読みやすさ
屋号には日本語のほか、英語やフランス語・イタリア語などを使用できます。ただしパッと見て読めない・読みにくいものだと、覚えてもらいにくいことが多いです。
覚えてもらいやすいように、読みやすい屋号を使用しましょう。普段使うことのない特殊な漢字にも注意が必要です。
屋号の例【そのまま使えるアイデア集】
「屋号を考えているものの、なかなかしっくりくるものが思いつかない…」そんなあなたのために、屋号の例をたっぷりとご紹介。
「〇〇屋」や「〇〇事務所」などベーシックなものはもちろん、「〇〇企画」「〇〇スタジオ」などのユニークなものまで、そのまま使えるアイデアをみていきましょう。
屋号例【店舗・ショップ系】
飲食店や小売など、店舗系のビジネスを展開している場合は「〇〇屋」や「〇〇店」などの基本に沿ったものがわかりやすいです。「タキミ」のような形で自身の名字をそのまま採用したり、展開する商品やサービス名を使ったりするのもよいでしょう。
【屋号の例】
など |
屋号例【事務所系】
事務所を構えるビジネスの場合は「〇〇オフィス」や「〇〇事務所」などが代表的なパターンです。また「〇〇デザイン」や「〇〇塾」など、事業内容に合わせて選べば、クライアントや顧客にも覚えてもらいやすくなります。
【屋号の例】
など |
屋号例【造語・英語・オリジナル】
自分の好きな言葉や理念を屋号につけるのもおすすめです。自身のビジネスで展開している内容と関連性があれば、より印象深いものとなるでしょう。たとえば言葉をつなげて造語を作ったり、英語やスペイン語など外国語を使うのもおすすめです。
屋号を付けるメリット
事業自体は個人名でも問題なく行なえます。しかし屋号で事業を行う方が、大きなメリットを得られるのです。一つは銀行口座を開設できること、もう一つは社会的な信用度が高まることです。
事業を進め発展させていく上でより重要になってくる屋号の持つメリットについて、順番に解説していきます。
屋号がついた銀行口座を持てる
個人名ではなく、屋号で銀行口座を開設できます。プライベート用と事業用とを分けてお金の管理ができるため、お金の流れを把握しやすくなります。
また帳簿の作成などが必要な確定申告のときにも便利です。
社会的信用を得られる
個人名よりも屋号を使って事業を行うほうが、取引や商談がスムーズに進む可能性が高いです。
屋号は事業として認識されやすく、社会的にも信用を得られやすい傾向にあります。
屋号に関するQ&A
屋号は気軽に使用できる反面、その決め方のルールなどは意外に知られていません。屋号で使用できる文字や屋号をつける際の禁止事項などがその例です。ここからは、個人事業主や自営業の方から寄せられた、屋号に関する疑問にQ&A形式で答えていきます。
Q1:屋号に使用できる文字は?
A:屋号のつけ方で最初に悩むのが使用する文字です。基本的に屋号はどのような文字でも使用することができ、漢字やひらがな・カタカナ・アルファベット・数字・記号などを任意で使用することができます。
ただし、屋号を商号登記する場合は商業登記規則という法律により使用できる記号などが限られているため注意が必要です。
Q2:屋号を付ける際の禁止事項は?
A:屋号の決め方は基本的に自由ですが、会社や法人と間違えられる可能性のある屋号を付けることは禁止されています。例えば、「株式会社」や「社団法人」などの文字は会社や法人と混同される恐れがあるため使用出来ません。
これは会社法という法律によって、法人として商業登記された会社や法人以外がこれらの名称を使用することを禁止されていることが理由です。
Q3:他の人と同じ屋号は付けられる?
A:他の人が使用している屋号と同じ屋号を付けることは可能です。ただし、不正競争防止法や商標法などに反する危険性があるためお勧めすることはできません。屋号を付けるときは事前に「オンライン登記情報検索サービス」などを利用して、類似した商号や商標権等が登録されていないか確認する必要があります。
Q4:屋号を付けたら印鑑を持つべき?
A:屋号を付けても基本的に印鑑は不要です。登記されている会社などは会社の実印を準備して印鑑登録しなければなりませんが、個人事業主が事業を行う上では事業用の印鑑を印鑑登録する必要はありません。
また、屋号入りの銀行口座を開設する場合も個人の銀行印を使用できるため、新しく印鑑を作る必要はありません。しかし、屋号の入った角印は請求書や領収書などに押印することもできるので、用意しておくと非常に便利です。
特に、会社相手に事業を行う場合は請求書に押印する角印をその会社に事前に届け出なければならないこともあります。そのような届出が不要な場合でも、相手に事業を行っているという安心感を与えられるという役割を果たすため、角印は持った方がいいでしょう。
Q5:屋号の決め方は?
A:おすすめの屋号の決め方は、覚えやすさを意識して屋号を決めることです。屋号はあなたの事業を表す代名詞と言えるでしょう。そのため、多くの人に覚えてもらえることが最も重要です。また、印象深い名称や発音のしやすい名称は覚えやすい屋号にも密接につながるため、これらのことも意識して屋号を検討してください。
また、屋号に使用する文字には縁起のいい画数が存在するため、画数で屋号を決めることも一つの選択肢になります。一般的に縁起のいい画数と言われているのは1画、3画、5画、7画、8画、9画、11画、13画、15画、16画、17画などです。
まとめ 屋号の手続きは簡単にできる!
ここまで屋号について基本事項からその決め方まで確認しました。屋号は基本的に決め方が自由なため、上手に活用すれば、事業の知名度向上できるなど事業を円滑に進めることが可能です。
また、屋号は登録や変更に関する手続きも簡単で、いくつかのポイントだけを抑えておけば特別な手間をかけることなく使用することができます。しかし、他の事業者の商標権を侵害したりすると損害賠償のリスク等もあるので、屋号を決定する際は必要最低限の事前調査を行いましょう。
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