「税務調査が急に厳しくなるのは、本当?」
「申告や記帳で、何か見直したほうがいい?」


そこでKSK2による変更点から、税務調査への影響、リスク診断チェック、税務対策まで、国税庁の一次情報をもとに整理して見ていきましょう。
KSK2(次世代国税総合管理システム)とは?
KSK(国税総合管理システム)を約25年ぶりに刷新したのが、KSK2(次世代国税総合管理システム)です。国税庁が公表しているKSK2の開発コンセプトは次の3つです。
| コンセプト | 内容 |
|---|---|
| データ中心の事務処理 | 紙を前提とした内部事務を、データ中心の処理へ切り替える |
| データベース・アプリケーションの統合 | 税目ごとに縦割りとなっているデータベースとアプリケーションを統合する |
| オープンシステムへの刷新 | 独自の大型コンピュータから、汎用OSを用いたオープンシステムへ移行する |
つまり、税務調査を厳しくするためではなく、業務基盤そのものを現代化するプロジェクトであることです。
ただし、KSK2は「AI税務調査システム」ではありません。国税庁はすでに一部の調査対象選定にAIを活用していますが、KSK2はそのデータ基盤を強化するものであり、AIによる自動判定システムそのものが新設されるわけではないです。
KSK2によるビフォアフター5選
KSK2の稼働で、実務にはどのような変化が起きるのでしょうか。国税庁の公表資料と関連発表から確認できる変化を、現行KSKとの比較で整理します。
| 観点 | KSK | KSK2 |
|---|---|---|
| 1. データの持ち方 | 所得税・法人税・消費税など税目ごとの縦割りで保持 | 納税者単位で税目横断に一元管理 |
| 2. 紙の申告書 | 紙のまま保管され、検索・突合の対象外 | AI-OCRでデータ化し、電子申告と同じように検索・突合が可能 |
| 3. 調査官のアクセス | 税務署に持ち帰ってから照会するのが基本 | GSSネットワーク(政府の閉域網)端末から現場で直接参照できる方向 |
| 4.システム基盤 | 独自の大型コンピュータ(メインフレーム)・COBOL | 市販OSベースのオープンシステム・Java |
| 5. 申告書等の様式 | 控用あり、カラー印刷を多用 | 控用廃止・原則白黒化、合計1,793件が改定 |
特に事業者の実務に直結するのは、最下段の「5. 申告書等の様式」です。KSK2への移行に伴い、申告書・申請届出書・法定調書などが大規模に改定されます。対象は合計1,793件で、内訳は次のとおりです。
| 区分 | 件数 |
|---|---|
| 相続税・贈与税関係 | 369件 |
| 申告所得税関係 | 218件 |
| 法人税関係 | 156件 |
| 酒税・消費税・法定資料関係ほか | 1,050件 |
| 合計 | 1,793件 |
改定内容には控用の廃止や原則白黒化などが含まれます。旧様式で提出すると受け付けられないケースが出るため、税理士事務所では顧問先が使用している様式の棚卸しが必要になります。
KSK2で税務調査はどう変わるか
KSK2の本質は基幹システムの刷新ですが、副次的に税務調査の運用が変わる可能性があります。データ基盤の強化によって「起きやすくなること」を、その理由と合わせて整理します。
| 起きやすくなること | その理由 |
|---|---|
| 税目横断での突合がしやすくなる | 税目別のデータベースが統合され、法人税と消費税、所得税と源泉所得税などを納税者単位で参照できるようになるため |
| 同業比較・時系列異常値の抽出精度が上がる | 複数年度のデータを横断的に扱えるようになり、同業種の平均からの乖離や前年比の不自然な動きを機械的に抽出しやすくなるため |
| 取引先データとの照合が容易になる | 法定調書・支払調書・インボイス制度で蓄積された取引データなど、外部から収集した情報との突合がしやすくなるため |
| 個人事業主の所得区分の妥当性確認 | 事業所得と給与所得、副業と本業、事業所得と雑所得の区分など、税目横断で整合性を確認しやすくなるため |
| インボイス登録者の売上・仕入照合 | 取引先側の仕入計上データと、事業者側の売上データを機械的に突き合わせやすくなるため |
上表はあくまで「起きやすくなる」可能性の整理であって、「必ず税務調査が来る」という意味ではありません。KSK2稼働後に急に調査件数が数倍になるといった話ではなく、これまで見落とされがちだった不整合が発見されやすくなるという範囲です。
例えば、個人事業主については、「会社員から独立して事業所得と給与所得が混在する年、副業から本業化して所得区分の判断が変わった年、インボイス登録で消費税の課税事業者になった年」などが、突合の対象になりやすい局面です。過去数年の申告内容を一度整理し、税理士に相談しておくと安心です。
KSK2税務調査リスク診断チェック
自社が「KSK2稼働後に拾われやすい状態なのか」が気になった方に向けて、10問のセルフチェック診断を用意しました。売上変動・所得区分・帳簿の管理体制・相談体制などから、税務調査で機械的な抽出対象になりやすいかを4段階で判定します。
※ 実際の状況は条件によって異なる場合があります。本診断結果はあくまでも目安としてご利用ください。
KSK2に向けた5つの実務対策
過度な不安をあおる必要はありませんが、KSK2に向けて、事業者と税理士が今から準備できる対策を5つ挙げます。それぞれ「これまで何が課題だったか」「KSK2稼働で何が変わるか」を先に整理し、その上で解決策を示します。
1. 適正申告の徹底
| 課題 | KSK2で変わること |
|---|---|
| 曖昧な計上や根拠が薄い経費処理が残っていても、税目縦割りの中では見つかりにくかった | 納税者単位・税目横断でのデータ突合により、不整合や無理のある処理が可視化されやすくなる |
最も基本的で最も重要な対策です。KSK2の稼働で変わるのは検知の効率であって、税務署が見るポイント自体が急に変わるわけではありません。これまで曖昧にしてきた計上区分・在庫評価・役員給与の妥当性・私的経費の混入などを、決算前に洗い直しましょう。
修正すべき箇所が見つかったら、稼働前の段階で修正申告や次期以降の改善方針をまとめておくと安全です。
2. 書面添付制度の活用
| 課題 | KSK2で変わること |
|---|---|
| 申告書に疑義があると、税理士への事前確認を経ずに実地調査へ進むことがあった | データ突合の効率化で疑義自体が拾われる頻度が上がる可能性があり、事前に説明できる仕組みの価値が増す |
書面添付制度は、税理士が申告書の作成過程を「税理士法第33条の2に規定する書面」として添付する制度です。添付があると、税務調査の前に税理士への意見聴取が行われ、その段階で疑義が解消されれば実地調査に至らないケースがあります。
顧問税理士がいる事業者は、次回申告時に書面添付を依頼できるか相談しておきましょう。書面添付は税理士側の作業工数が増えるため、追加費用や対応可否は事務所によって異なります。
3. 特殊事情を書き添える(法人事業概況説明書/青色申告決算書)
| 課題 | KSK2で変わること |
|---|---|
| 摘要欄や備考欄が空欄でも通っており、特殊事情を書く習慣がない事業者が多かった | 同業比較や前年比の異常値が機械的に抽出されやすくなり、背景説明のない申告が拾われやすくなる |
法人の場合
法人税申告に添付する「法人事業概況説明書」の摘要欄が対象です。期中に大きな売上減少があった年度、一時的な特別損失を計上した年度、事業内容を変更した年度などは、その背景を1〜2行で書き添えておきましょう。「主要取引先の廃業により売上が前年比△40%」「本社移転費用を特別損失に計上」といった一文があるだけで、機械的な抽出後の人の判断に情報が渡り、余計な問い合わせを減らせます。
個人事業主の場合
法人事業概況説明書の提出義務はありませんが、青色申告決算書の「本年中における特殊事情」欄や、確定申告書第二表の備考欄で同じ役割を果たせます。売上が前年から大きく動いた年、事業内容を切り替えた年、廃業した副業がある年などは、青色申告決算書の該当欄に一文添えておくと、機械的な抽出後の説明工数を減らせます。
4. 帳簿・証憑のデジタル管理体制
| 課題 | KSK2で変わること |
|---|---|
| 紙で保管している事業者が多く、調査時に根拠資料をすぐ提示できないことがあった | KSK2側でデータ突合が進むため、事業者側もデータで根拠を返せる状態が求められやすくなる |
電子帳簿保存法の要件に沿った形で、帳簿と証憑をデジタルで保管する体制を整えましょう。会計ソフトの導入、電子取引データの保存ルール策定、スキャナ保存の運用整備がその中心になります。取引先・日付・金額から該当データを即座に呼び出せる状態になっていると、調査時の対応工数が大きく下がります。
制度対応が未着手の場合は、税理士や会計ソフトベンダーに現状の棚卸しを依頼するところから始めるとスムーズです。
5. 顧問税理士との事前相談
| 課題 | KSK2で変わること |
|---|---|
| 自社にどんなリスクがあるのか、事業者自身では判断が難しかった | 業種・規模・過去の申告内容によって影響が異なるため、外部からの棚卸しの価値が上がる |
KSK2稼働で不安を感じている場合、まず顧問税理士に現状のリスクを整理してもらうのが最短です。相談時は「過去3期の申告内容」「同業他社との違いが説明しづらい項目」「電子帳簿保存法への対応状況」を用意しておくと、話が具体的に進みます。
実際に税理士に相談した事業者の声
KSK2そのものへの言及はまだ少ない時期ですが、ミツモア経由で顧問税理士に相談した事業者からは、「制度対応の複雑さ」「申告業務の負担」といった、KSK2稼働後にも共通する悩みが多く寄せられています。実際の口コミを3件紹介します。
私の事務所は小規模なのですが、計算はできても会計記帳や申告業務ができず悩んでいた時に出会ったのがこちらの事務所でした。 毎月定期的にコミュニケーションを取りながら会計や税務について教えてくださり、わからないことを何でも伺える部分がが非常に親切で助かっています。 毎月必要な資料や確定申告や決算月に必要になる資料も丁寧に教えてくださり準備がしやすい点も好印象です。
依頼時の困りごと 新設法人で必要な手続きが多くあるが手続きを理解している社員がいないため 合同会社の顧問税理士を依頼しました。 各種質問事項への回答が適切で、今回初めて上期の源泉所得税支払いのための納付書作成を依頼しましたが、素早く回答いただけるので助かっています。
個人事業主なので確定申告の作業時間が取れず、今回は税理士の方にお願いしました。 チャットでのやり取りだけでなく、電話やビデオ通話などでスピーディーに対応していただき、その都度進捗状況を詳しく丁寧に報告いただけたのでとても安心してお任せすることができました。 説明がわかりやすかったのでとても助かりました。 今回は確定申告をすべて丸投げする形でお願いしましたが、他の方に頼むよりも費用は低く抑えられました。 また節税対策など別のことでお願いするかもしれないので、その際はよろしくお願いします。
ミツモアの顧問税理士カテゴリは、多数の口コミで平均評価4.91を得ています。もちろん低評価の口コミも一定数あり、税理士との相性は事務所ごとに異なります。KSK2への備えを機に、複数の税理士を比較して自社に合う相手を選ぶのが安心につながります。
顧問税理士がいない場合の探し方
これまで税理士に相談する機会がなかった事業者や、KSK2をきっかけに顧問契約を検討したい事業者は、複数の税理士を比較して自社に合う相手を選ぶのが安心です。ミツモアでは、事業規模・業種・相談したい内容に合わせて複数の税理士から見積もりを取り寄せられます。単発のスポット相談から受け付ける税理士も多いため、まず無料で見積もりを取り比較してみてください。
KSK2に関するよくある質問
KSK2はいつ稼働しますか?
稼働日は令和8年(2026年)9月24日(木)です。国税庁が公表している国税システム更改スケジュールに基づいており、最新情報は国税庁の公式サイトで確認できます。
e-Taxの停止期間はいつですか?
KSK2への切り替え作業のため、稼働直前と直後にe-Taxが2回停止します。
| 停止期間 | 時間 | 影響 |
| 1回目:9月19日(土)〜9月24日(木) | 9/19 0:00〜9/24 8:30(最大約5日間) | 申告・申請・届出・納付のすべてが不可 |
| 2回目:9月26日(土) | 終日 | e-Taxが利用不可 |
停止期間中は、e-Tax経由での申告書提出、電子申請、ダイレクト納付などの電子的な手続きが行えません。9月末に申告期限を迎える法人や、月末に給与所得・退職所得の源泉徴収税を納付する事業者にとっては、実務スケジュールへの影響が大きくなります。9月中旬までに提出を済ませ、月末月初に集中する納付や申請は8月末〜9月上旬に前倒しを検討しましょう。
KSK2はAIによる税務調査システムですか?
いいえ。KSK2は基幹システムの刷新であり、AIが自動的に調査対象を決めるシステムではありません。国税庁はすでに一部の調査対象選定にAIを活用していますが、KSK2はそのデータ基盤を強化する位置づけです。「AIが全部見抜く」ではなく「データ基盤が整うことで、これまでより効率的・横断的に見られるようになる」というのが実像に近い表現です。
個人事業主にも影響はありますか?
あります。ただし濃淡があります。所得税関係の申告書218件の様式が改定されるため、令和8年以降の確定申告では新様式に対応する必要があります。また、事業所得と給与所得、副業と本業、事業所得と雑所得の区分などが、税目横断での突合の対象になります。一方で、9月末のe-Tax停止期間は主要な確定申告時期(2〜3月)と重ならないため、直接影響は法人と比べて相対的に軽めです。
様式改定はいつから対応が必要ですか?
令和8年6月頃から順次切り替わります。旧様式で提出すると受け付けられないケースが出るため、税理士事務所では顧問先が使用している様式の棚卸しが必要です。改定件数は合計1,793件(相続贈与369件、所得税218件、法人税156件、酒税・消費税・法定資料関係ほか約1,050件)です。
控用の廃止・白黒化とは何ですか?
KSK2ではAI-OCRの活用を前提に様式が刷新されるため、これまで一部の申告書で用意されていた「控」の様式が廃止されます。また、印刷は原則白黒化されます。写しが必要な場合は、電子申告の受信通知や自社で印刷したコピーを保管する運用に切り替わります。
顧問税理士がいない場合はどうすればよいですか?
まず一度、複数の税理士から見積もりを取って比較検討することをおすすめします。KSK2への対応方針、電子帳簿保存法への対応状況、書面添付制度の可否など、事務所によって得意分野や料金体系が異なります。ミツモアでは事業規模・業種・相談内容に合わせて複数の税理士から無料で見積もりを取れます。単発のスポット相談から対応する税理士もいるため、まずは気軽に相談してみるのがよいでしょう。
