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2020年10月に酒税の税法が改正!〜ビール・日本酒は値下がり、ワインは値上げ〜

最終更新日: 2023年03月13日

2018年に酒税法改正があったのはご存知でしょうか。2020年10月から2026年10月にかけて、段階的に酒税率が変更になります。

これにより、ビールや日本酒は値下がりし、発泡酒や新ジャンル、ワインは値上がりすることが考えられます。

お酒好きの人の家計には影響が避けられないこの問題、酒税の歴史やお酒の種類ごとに丁寧に解説していきます!

そもそも酒税とは?

酒税とは
そもそも酒税とは?

酒税は日本の税収の一端を担う大切な国税です。私たちはどんなお酒に酒税を支払っているのか、ちょっと気になりますよね。

また酒税はどのような目的で定められていて、どのくらいの税収になり、私たちの国を支えているのでしょうか。

まずは歴史や諸外国の事情とあわせて、酒税に関する基礎を知っておきましょう。

酒税とは?〜酒税法で区分される4つの分類〜

酒税は「アルコール分1%以上の飲料」にかけられる国税です。消費税と同じく間接税で、酒類の価格に消費税とは別途に上乗せされる仕組みとなっています。酒税法上、酒類は4つに分類されます。各分類における品目を見ていきましょう。

  • 発泡性酒類 

ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類(新ジャンル、チューハイなど)

  • 醸造酒類 

清酒、果実酒(ワインなど)、その他の醸造酒

  • 蒸留酒類 

連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ

  • 混成酒類 

合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒

このなかで「発泡性酒類」にあたるビール系飲料やチューハイなどと、「醸造酒類」にあたる清酒や果実酒などの酒税の税率が、2020年10月から2026年10月まで6年かけて改定されます。

酒税の目的

酒類には消費税もかかっているのに、そのうえ酒税まで課される理由はなんでしょうか。それは、日本ではお酒は嗜好品の一種として考えられていることがあります。

飲酒の功罪は昔から議論されており、一般的にお酒は主要な生活必需品ではないと言えるでしょう。

また酒類の消費は安定しており、国として多額で安定した税収を期待できるのも理由のひとつです。さらには、酒税を課すことで適量以上の消費を抑制し、ひいてはアルコールによる社会的費用を抑制する効果があるとも考えられています。

このような理由から、諸外国でも酒類に間接税が課されていることが多いようです。

課税数量と課税額の推移

現在、酒税の規模は、平成30年(2018年)度の決算額で1.27兆円と、国税全体の約2.1%を占めています。下記のグラフのとおり、近年の酒税収入のピークは平成6年(1994年)度の2.12兆円から減少に転じ、24年間で8,500億円もの減収になっています。

酒税はかつて主要税目だった時代もありました。約120年前の明治30年代は、酒類にかかる税金は製造者に課せられる「酒造税」でした。その税収は当時の国税収入の実に40%を占める年もあり、1930年頃までは税収の中心的存在にありました。

2018年4月には酒税の税収を改善する目的で酒税法の改正が行われ、2020年から2026年までに段階的に税制が変更されることになりました。

「酒類の課税数量と課税額の推移」

(出典:財務省)
出典:財務省

2020年10月から酒税はどのように改正されたのか

ビールが安くなる?税制改正による変更点
2020年10月から酒税はどのように改正されたのか

それでは、2020年の10月から2026年に向けてどのような段階を踏んで、酒税が改正されるのかを見ていきましょう。

酒税の増減のタイミングは、種類によってそれぞれ違います

発泡酒や新ジャンルを含むビール系飲料、チューハイと醸造酒とリキュール、日本酒とワインの3項目に分けて説明していきます。

ビールは減税、発泡酒と新ジャンルは増税

酒税のなかで、課税数量も課税額も1位なのが発泡性酒類を含むビール系飲料です。結論から言うと、最終的に2026年にはビール、発泡酒、新ジャンルの区分がなくなります。チューハイ等を除く「発泡性酒類」という分類に一本化され同じ税率が適用されます。

具体的にいえば、ビールには2020年9月以前は350mlあたり77円の酒税がかかっていましたが、2020年10月に70円に、2023年10月には63.35円、最終的に均一の税額となる2026年10月の54.25円まで、6年かけて22.75円の値下げとなります。

一方、値上げとなるのが発泡酒と新ジャンルです。発泡酒の酒税は2020年9月以前は350mlあたり46.99円だったのが、2026年10月に54.25円に段階を踏まずに7.26円上がります

新ジャンルは、2020年の9月以前は28円でしたが、2020年10月以降37.8円になり、2023年の10月には46.99円で発泡酒と同額になり、最終的に2026年の10月に54.25円と、実に2倍近く値上がる予定です。

(出典:財務省)
出典:財務省

チューハイ、蒸留酒、リキュール類は2026年に増税

炭酸水などで割らずにすぐ飲めることから「RTD(レディー・トゥー・ドリンク)」と呼ばれ人気のチューハイやサワー類は増税となりますが、2026年まで据え置かれます。現行の350mlあたり28円のまま、2026年10月で一気に35円になるのです。

また、この税区分には、低アルコールの蒸留酒およびリキュールの一部も含まれます。

(出典:財務省)
(出典:財務省)

日本酒は減税、ワインは増税

日本酒とワインの酒税の税率は2023年10月に一本化されます。それぞれ2段階を経て、日本酒は値下げ、ワインは値上げが行われるのです。

下記の税率の図表は1klですがこれを350mlあたりの酒税額に換算して説明します。日本酒は2020年10月に42円から38.5円値下げとなっており、2023年10月には35円となります。

一方ワインは、2020年10月に28円から31.5円に値上げされ、2023年10月には35円になり、醸造酒の税率は一本化されるのです。

最終的に税率は、チューハイやサワーと同じとなります。 

出典:財務省
出典:財務省

酒税の税率〜計算方法〜(2020年10月以降)

酒税の税率〜計算方法〜(2020年10月以降)
酒税の税率〜計算方法〜(2020年10月以降)

この章では、酒税法上の4つの分類ごとに代表的なお酒の税額を実際に計算します。

酒税は分類ごとにかかる税率が異なっています。そのなかでもアルコール度数や原材料によってさらに税率が変わるのです。

2026年10月にはビール系飲料の発泡性酒類、ワインと日本酒の醸造酒類は税率が一本化されるので、税率の計算は少し分かりやすくなります。

発泡性酒類の税率

発泡性酒類の代表格、ビールの酒税額を計算します。2023年10月までの税率は、1,000,000ml(1kl)あたり200,000円です。一般的な350ml缶のビールの場合の税額は以下のとおりです。

【ビール】

200,000(円)÷1,000,000(ml)=0.2(円/ml)

0.2(円/ml)×350(ml)=70(円)

2023年10月までは350ml缶1本につき70円の税金がかかる計算です。

それでは、同じく2023年までの新ジャンルの酒税額を計算します。新ジャンルの税率は2023年10月まで1,000,000ml(1kl)あたり108,000円です。

【新ジャンル】

108,000(円)÷1,000,000(ml)=0.108(円/ml)

0.108(円/ml)×350(ml)=37.8(円)

350ml1缶に対する課税額は37.8円となります。2023年10月までは新ジャンルの酒税の税率はビールの約半分です。2026年10月には350ml1缶あたりの課税額が54.25円に一本化されるので、大きな改変と言えるでしょう。

醸造酒類の税率

醸造酒類の代表的なお酒に日本酒とワインがあげられます。日本酒の2023年10月までの酒税額は、1,000,000ml(1kl)あたり110,000円です。一升瓶が1,800mlですから税額の計算は以下のようになります。

【日本酒】

110,000(円)÷1,000,000(ml)=0.11(円/ml)

0.11(円/ml)×1800(ml)=198(円)

2023年10月までは日本酒の一升瓶1本につき198円の税金がかかっています。

一方ワインは2023年10月までの酒税額は1,000,000mlあたり90,000円です。一般的なワインボトルは750mlですから、税額は下記の計算になります。

【ワイン】

90,000(円)÷1,000,000(ml)=0.09(円/ml)

0.09(円/ml)×750(ml)=67.5(円)

2023年10月まではワイン1本につき67.5円の税金がかかります。

2023年10月以降は、日本酒もワインも1,000,000ml(1kl)あたり100,000円で一本化されるので酒税の税率は同じになります。小売価格は日本酒が値下げ、ワインは値上げとなるでしょう。

蒸留酒類の税率

蒸留酒類の代表的なお酒に焼酎やウイスキー、ブランデーがあげられます。今回の酒税法改正では、蒸留酒類の税率変更はありません。

焼酎で例をあげると、アルコール度数が21度未満の焼酎の酒税額は、1,000,000ml(1kl)あたり200,000円で、アルコール度数が20度を超えると1度ごとに10,000円が加算されます。

アルコール度数が25度の焼酎、一升瓶1本分の税額は下記のように導き出されます。

【焼酎】

(200,000+50,000)(円)÷1,000,000(ml)=0.25(円/ml)

0.25(円/ml)×1800(ml)=450(円)

アルコール度数25度の焼酎は一升瓶1本につき450円の酒税がかかっています。蒸留酒はアルコール度数が高いぶん、税率が高くなる傾向があります。

混成酒類の税率

最後に混成酒類の税額を計算します。混成酒類で最も身近なのはみりんかもしれません。混成酒類も今回の酒税法改正の変更がない分野です。

みりんの税額は1,000,000ml(1kl)あたり20,000円とほかの酒類に比べて低くなっています。みりん1リットルあたりの税額を計算してみましょう。

【みりん】

20,000(円)÷1,000,000(ml)=0.02(円/ml)

0.02(円/ml)×1000(ml)=20(円)

みりん1リットルには20円の酒税が課されていることがわかります。

【事業者向け】酒税を申告・納付する

【事業者向け】酒税を申告・納付する
【事業者向け】酒税を申告・納付する

酒税の基礎から税制改正まで説明してきました。酒税の概要や今後の酒税の動向について理解いただけたのではないでしょうか。

ここからは、酒税の申告・納付について解説したいと思います。酒類を扱う事業者の人はぜひ参考にしてください。

酒税を納付するのは「製造者」

まずは、酒税の納税義務者は「酒類製造者」又は「酒類を保税地域より引き取る者」になります。酒類販売者は納税義務者ではないので注意してください。

また、酒類製造者の納税義務が発生するのは、「酒類を製造場から移し出した時」とされています。

単に製造場から移し出すだけでなく、製造した酒類が製造場で飲用されたり、製造場に現存する酒類が滞納処分により換価されたりする場合などを含むため、移し出しの定義は幅広いです。

酒税の申告書

次に酒税納税申告書の作成方法について見ていきましょう。下図の申告書に必要事項を記載した上で、酒類の製造場の所在地を所轄する税務署に提出します。

酒税納税申告書
酒税納税申告書

記載事項は以下のとおりです。

  1. 標題、申告を要する酒税の年及び月の欄
  2. 「申告者」の欄(製造者の所在地・電話番号、事業者の住所・電話番号、氏名、個人番号等)
  3. 提出年月日
  4. 「納付すべき税額等の計算」欄(算出税額、端数切捨額、還付を受ける金額、納付すべき税額)
    ※修正申告を行う場合は、右の欄を使用する。

上記が酒税額の一般的な申告書の記載事項になります。

仮に、酒税額の還付が見込まれる場合は、還付される税金の受け取り場所等を記載しなければいけません。そして、必要事項を記載した申告書を税額算出表等の添付書類と併せて、酒類の移し出し等があった月の翌月末日までに税務署に提出します。

なお、税額算出表とは、酒類の分類や税率などを記載し酒税を算出するために利用されるものです。

酒税の納付方法

最後に酒税の納付方法について解説します。酒税は、酒税納税申告書の提出と同時に納付するわけではなく、申告書提出月の翌月末日が納付期限です。納付期限を過ぎると延滞金を支払わなければならないため、忘れずに納付するようにしましょう。酒税も他の国税と同様の納付方法を利用することができます。

現金で納付したい場合は申告した酒税に基づきバーコード付納付書の発行を請求できるため、納付書とともに最寄りのコンビニエンスストアで支払えます。ただし、納付金額が30万円以下でないと納付書が発行できないので注意が必要です。税務署の窓口で現金納付したい場合は、送付される納付書で納付することもできます。

また、e-Taxを利用したインターネット経由での納付やクレジットカードでも酒税を納付することができるため大変便利です。しかし、クレジットカードを利用する場合は納付額とは別に決済手数料が掛かってしまうので注意してください。

以上のように、様々な納付方法がありますが、酒税は高額になることも多いので、現金納付でなく、e-Taxや振替納税を利用するようにしましょう。

監修税理士のコメント

多田紘大税理士

毎日晩酌する方や、飲み会に定期的に参加しアルコールを飲まれる方は影響が小さくありません。1本あたりの影響は大きくても数十円ですが、それが毎回となると結構な金額になると想像します。

段階的に税率が変更されていくことから、これを機に自らのアルコールとの向き合い方も段階的に見直してもよいかもしれません。

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