個人事業主になると、源泉徴収をしなくてはいけないことがあります。しかし、中には「源泉徴収の仕組みはわかりづらい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、「個人事業主が源泉徴収しなくてはいけないケース」や「源泉徴収義務者になったときの手続き」について解説します。
源泉徴収を知っておかないと、取引先に迷惑をかけてしまうこともありますので、ぜひ最後まで読んでください。
所得税の仮払い「源泉徴収」とは
サラリーマンとは違い、個人事業主になると給与や報酬を支払う立場になることもあるでしょう。
源泉徴収は税法で定められている義務なので、しっかり理解しておきましょう。
源泉徴収の仕組みとは
源泉徴収とは、「報酬の支払者が」「報酬(給与)の受取人に代わって」所得税を納税するために、あらかじめ報酬から所得税を天引きする方式のことです。
会社員か裸個人事業主になられた方は、思い出してみてください。給料の明細書から毎月所得税が天引きされていましたよね?これは、会社が従業員にかわって、所得税を納めるためだったのです。
今までは意識していなかったかもしれませんが、従業員から預かっていた所得税を会社が後日、税務署に納税していたたというわけですね。
このように個人事業主になると、お給料や報酬を支払う立場にもなるので、源泉徴収をして、所得税を代わりに納税するようになります。
個人事業主で源泉徴収支払い義務が発生するケース
個人事業主の源泉徴収は、仕組みが複雑です。
なぜかというと、報酬によっては源泉徴収が不要なケースがあることや、そもそも源泉徴収をする必要がない個人事業主もいるからです。
個人事業主で源泉徴収義務者に該当するケース
従業員を雇っている個人事業主は、源泉徴収をしなくてはいけません。
その他にも、源泉徴収が必要な報酬を支払ったときは源泉徴収をする義務があります。どのような報酬のときに源泉徴収が必要なのかご紹介しますね。
源泉徴収の対象となる報酬の種類
まずは、源泉徴収の対象となる報酬を以下の通りまとめましたので、ご覧ください。
- ライターの原稿料・講演料・デザイン料等
- 弁護士や司法書士、税理士、弁理士などに支払う報酬
- 社会保険診療報酬支払基金法の規定により支払われる診療報酬
- プロ野球選手やプロ格闘家、モデル、外交員などに支払う報酬
- 芸能人や芸能プロダクション等を営む個人に支払う報酬
- 宴会等において、接待等を行うことを目的とするホステスに支払う報酬
- 契約金など、役務の提供を約束し一時に支払う報酬
- 広告宣伝のための賞金、馬主が受ける競馬の賞金
たとえば税理士個人に報酬を払うときは、源泉徴収が必要です。税理士からの請求書を見ればわかりますが、報酬から源泉所得税が引かれています。
しかし、税理士法人の場合は源泉徴収の対象ではありません。基本的に、支払いを受けける側が法人の場合は、源泉徴収をする義務はないと覚えておきましょう。
個人事業主で源泉徴収義務者に該当しないケース
実は、お給料や源泉徴収が必要な報酬を払っていても、源泉徴収義務者に該当しない個人事業主がいます。その条件をまとめましたのでご覧ください。
- 常時2人以下で、お手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与などを支払っている人
- 給与などの支払いがなく、弁護士報酬などの「報酬・料金」だけを支払っている人
たとえば、お手伝いさんを2人だけを雇っている個人事業主は、源泉徴収が必要な報酬を払ったとしても、源泉所得税を預かる必要はありません。ただし、例外的にホステス報酬を支払った場合には、源泉徴収をしなければいけないです。
とはいえ、源泉徴収をしないで済むなら、事務作業の負担が減るので良いですよね。もし「源泉徴収で事務作業を増やしたくない…」とお考えでしたら、上記の条件に当てはまるようにしましょう。
源泉徴収義務者になったらすべきこと
源泉徴収義務者になると、源泉所得税を管理して納税をしなくてはいけません。そのほかにも提出する書類も増えてきます。一つひとつ解説していきましょう。
給与支払事務所等の開設届出書等の提出
従業員にお給料を払うことになった場合は「給与支払事務所等の開設届出書」を管轄の税務署へ提出してください。
給与支払事務所等の開設届出書とは「従業員を雇い、お給料を支払います」と税務署にお知らせする書類です。
源泉徴収税を計算
源泉所得税は自分で計算しなくてはいけません。しかも、お給料と報酬で源泉所得税の計算方法は違います。
給与に対する源泉所得税は、「給与所得の源泉徴収税額表」を参照しながら、収入ごとに記載されていると所得税を探すだけなので簡単です。
一方で、報酬にかかる源泉所得税はご自身で計算する必要があります。報酬にかかる源泉所得税の計算方法は下記の通りです。
- 報酬(100万円以下の場合)→報酬額に10.21%をかける
- 報酬(100万円超の場合)→(報酬 − 100万)× 20.42% + 102,100
ほとんどの報酬は100万円以下だと思いますので、「報酬額に10.21%をかけた金額が源泉所得税になる」と覚えておけば問題ないでしょう。
源泉徴収票や支払調書を作成
源泉徴収義務者になると、源泉徴収票や支払調書も作成しないといけません。下記をご覧ください。
- お給料を支払った場合→源泉徴収票
- 源泉徴収が必要な報酬を払った場合→支払調書
源泉徴収票は、年間に支払ったお給料と源泉徴収した所得税を証明する書類になり、支払調書は、年間に支払った報酬額と源泉徴収した所得税をまとめた書類になります。
そのため、源泉徴収票や支払調書を作成するさいは、年間に支払った報酬等の金額と源泉所得税額を集計する必要があります。
日頃からしっかり帳簿を更新されていれば、すぐに終わる作業ですが、帳簿ができていないと時間がかかってしまうかもしれません。
支払調書を支払者に渡すのは義務ではない
源泉徴収票は従業員に渡す義務がありますが、支払調書は取引先に渡す義務はありません。
しかし、法定調書を作成する際に支払調書も合わせて作成するので、ほとんどの事業者は支払調書も取引先に渡しています。
手間な場合は、取引先から支払調書を求められたときに渡してあげるようにしましょう。
源泉徴収税を毎月税務署へ納める
源泉所得税の納税は原則、報酬等の支払日の翌月10日までになります。
しかし「毎月納税するのは正直めんどう」と考える方がほとんどです。そこで「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」も合わせて提出しておくことをおすすめします。
この書類を提出すれば、源泉所得税を納める期日を半年に1回に減らすことができますので、事務作業のコストを下げられます。
ただし、従業員が9人以下でないと適用されず、納期の特例の対象にならない源泉所得税もありますので注意してください。
源泉徴収税の計算・手続きが面倒なら税理士に
ここまで読んでくださった方ならお気づきだと思いますが、源泉所得税の管理は大変そうですよね。
たしかに、税理士に依頼をしなくても源泉所得税を管理、納税することはできます。
しかし、事務コストや税務署からお尋ねがあるリスクを考えれば、税理士に任せておくのが安心ではないでしょうか。
税理士なら支払調書などの法定調書もおまかせ
税理士に依頼をすれば、支払調書の作成だけではなく、法定調書の作成も一任してくれます。また源泉所得税の管理から納付書の作成も代行してもらえるところがほとんどです。
この事務コストを増やすくらいなら、税理士に依頼をして本業に専念するのがいいかもしれません。
税理士なら源泉徴収税の計算などのミスを防げる
税務署による源泉所得税の取り締まりは厳しいとよく言われており、源泉所得税の納税が遅れると、税務署からお尋ねがきます。
税務署からお尋ねが来てしまうと、不安になりますよね。個人で源泉所得税を管理するのは大変です。プロに任せてしまうのがいいと思います。
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